「ただいま……ッ」
凄まじい轟音が治まってからものの数分、妹紅は何事も無かったかのように妬み屋の中へと入ってきた。
「あーあ、逃がしたか」
手頃な椅子に寄りかかり、平静を装いながら愚痴をこぼす。しかしその深層では激しい怒りに包まれていた。
「お疲れ様っ、どこかケガしてないっ?」
「大丈夫、多少ダメージは喰らったがこの程度、慣れてる」
「そう、ハイっ、お水っ」
「ああ、ありがとう。ところで慧音は?」
中にはwataとパルスィしか見当たらない。二人の様子から察するに平気なのだろうがこの目で確認しておきたい。
「ああ、二人なら奥で寝かせてあるよっ」
「失礼するよ」
妹紅は二人に一瞥だけして妬み屋の奥へと進んで行く。
薄暗い部屋には二人分の布団が敷かれており、そこに慧音と慧音と一緒にいた男の姿があった。
「うぅ……」
「慧音……?」
僅かに慧音の呻くようなか細い声が聞こえた。
「妹紅か……?」
「ああ、大丈夫か?」
「私は大丈夫だ……。それより、つゆくさ君は……?」
慧音の口から聞きなれない人物の名前が聞こえた。恐らく流れから察するに慧音の隣で寝ているこの外来人の男が「つゆくさ」というのだろう。
呑気に寝息を立てているあたり、別段心配する必要はないように思える。
「ああ、安心しろ。そいつも無事だよ」
「そうか、よかった……」
深い、本当に深い安堵のため息を漏らす。
この男は慧音にとって何なのか?
そんな疑問が妹紅の脳裏をよぎると同時に何かモヤモヤとした気持ちが湧きあがる。
今はまだ妹紅にとってこのモヤモヤの正体はわからないがいずれわかる日が来るだろう。気づくその日にはつゆくさにとっての受難の日々の始まりとも言えるわけだが……。
「なぁ慧音……」
「ん、どうした?」
「いや、なんでもない。おやすみ、今日はゆっくり休め」
「ああ、流石に少し疲れた…な……」
<暗転>
「あ、どうだったーっ?」
「ああ、取り合えず大丈夫そうだ。一応念には念を入れて明日、永遠亭の方に行こうと思うんだが」
「それはいい考えだねっ、ついでにこれも永遠亭さんの方に届けてもらえるかなっ?」
と、wataの手から割と小さめな小包が渡される。
意外と重みがあるようでズシリと手に圧力がかかる。
「なんだ、これは?」
「ん、ヒミツだよっ! 開けちゃあダメだからねっ」
何かよくわからんが念を押される。怒りを買わないように開けないことにしておくが。
「ん、わかったよ」
「ところでもこたんは今日止まってく?」
「そうだな、疲れたしそうする」
「はい、もう布団は敷いてあるからゆっくりおやすみっ」
場所:【人間の里・妬み屋/1日目・深夜】
名前:慧音 つゆくさ パルスィ wata 妹紅
備考:つゆくさは気絶中 翌日永遠亭へ出発予定
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