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Fragmentation;分裂 - (2013/11/09 (土) 01:37:27) の1つ前との変更点

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エリアの最北まで到着すると、ブラックローズは思わず安堵に胸を撫で下ろす。 途中襲われないかと神経を張り巡らせてはいたものの、結論から言えばそれは杞憂に終わったようだ。 後ろにはたった今抜けてきたビル群がくっきりと見えている。夜が明けたこともありがたかった。やはり明るいと安心するものだ。 「中々幸先良いっすね、ダンナ。このまま何ともなしに行って欲しいもんだ」 しんがりを務めていたアーチャーが軽薄な口調で言った。 参加者でなくダンのスキル――サーヴァントというらしい存在だというが、ブラックローズは彼に対しどういう態度で接すればいいのか分からなかった。 まず先の罠の一件だ。毒の中で必死にもがいたことは記憶に新しい。 あの苦しみが彼によるものだということを考えると、それがたとえ彼の意図したところでないとしても、複雑な感情を抱かざるを得なかった。 また彼がサーヴァント、人間でないということもどう捉えればいいのか分からない。 ムーンセル(というスーパーコンピュータのようなもの)が集積したデータにより作り上げた英雄の再現……だというが、正直ブラックローズの理解を越えるところがある。 話してみたところ、その反応は生身の人間と何ら変わりなく、彼がデータだけの存在だとは全く思えなかった。 しかし、アウラの件もあった。ブラックローズ自身は彼女と直接対話する機会はそれほどなかったのだが、それでも彼女がただのAIでないことは分かった。 要するにアーチャーもまたアウラのような究極AIの一種……なのだろうか。それにしてはアウラと比べ神聖さというか、超常的なものを感じなかったが。 それにもう一つ。彼の人間性――彼が人間でないと分かったうえでの表現だ――があまり信用できないということだ。 先ほどの弓使いとの一戦。あれを仕掛けてきたのがアーチャーでないかという疑念は拭えなかった。 一応取り繕ってはいたものの、状況的には彼が最も怪しい。決定的な証拠がない以上何ともいえないが。 こんなことなら矢を回収しておけばよかったと思うが、今言っても後の祭りだ。今更戻る訳にも行かない。 (まぁ……ダンさんは信用できそうだし、大丈夫……だよね) ちら、とブラックローズは同行者である老人、ダン・ブラックモアを見た。 彼は周りに警戒を配りつつも、ブラックローズや黒雪姫に威圧感を与えてはいない。 かつては軍人だったという彼は常に冷静沈着で、何というか大人という感じがする。 デスゲームにおいてその落ち着いた物腰や性格はかなり頼りになった。 その能力的にもだが、やはりこういう場で一人しっかりした大人がいるというのはありがたい。 黒雪姫の手前ああは言ったものの、ブラックローズもこの場で戦えるのは一人というのは心細かった。 八相との戦いにおいて、こうしたデスゲームに近いものを潜り抜けてきたブラックローズであるが、結局のところ彼女はただの女子高生、速水晶良に過ぎないのだから。 そういう意味でダンが同行してくれて本当に良かったと思う。 「これがゲートのようだな」 ダンがそう言って目の前の電話ボックスを見上げた。 最初は面食らったが、どうやらこれがこのエリアのワープゲートらしいのだ。 一体どんな思惑でこんなデザインを採用したのかは全く分からないが、まぁ考えるだけ無駄と言う気もしたのでそれ以上は考えないで置く。 「どうやら一度に一人しか転移できないようだな」 電話ボックスの中を検分したダンが言った。 どうやら英語の説明文を読んでいるらしかった。考えてみれば当たり前なので驚くことではないが、今まで意思疎通に全く問題がなかっただけに少し意外に思えた。 今更だが、このPCに搭載された翻訳システムの高性能さに舌を巻く。外人でありながら流暢に日本語を話す砂嵐三十郎だって、時たま変な表現を使ってしまうというのに。 いや自分が気付いていないだけで、ダンからすると変な表現に翻訳されている可能性もあるか。 それとももしかしたらこのくらいのシステムも、未来では何てことのないものだったりするのだろうか。 ダンと黒雪姫は自分からしたら数十年先の人間だ。彼らの技術水準と自分の常識は違うのかもしれない。 「ブラックローズ」 と、そこでダンより声が掛けられた。 安堵故か呆としていたブラックローズは、そこではっとして顔を上げた。 そこには少しだけ厳格な顔を浮かべたダンの姿があった。 「私とアーチャーが先に行く。軽くエリアを調査して危険がないか確認したい。  しばらくしたら報告に帰ってくるつもりだが、その間黒雪姫の護衛を頼みたい」 そう落ち着いた口調で言われ、ブラックローズはゆっくりと頷いた。 ここでダンと離れるのは少し不安になったが、しかし自分もまた戦うことができる以上、守られてばかりではいられない。 黒雪姫が微笑を浮かべているのが見えた。そこに不安は見られない。その信頼に自分は答えて見せなければならないのだ。 大丈夫だ。周りに人影はないし、たとえ敵が来ても自分なら持ちこたえることくらいはできる筈。 「分かった。では任せたぞ」 その首肯が信用に足ると思ってくれたのか、ダンはそう言い残して電話ボックスに入っていった。 扉が閉まった後、がちゃ、と受話器を取る音がして、次の瞬間にはダンの姿が消えていた。そのお付であるアーチャーもまた消えている。 「……行ってしまったな」 それを見届けた黒雪姫がぽつりと漏らした。 そして少しだけ間があった。ひゅう、と風がビルの方から吹いてきたのが分かる。 「大丈夫、私が守るから」 ブラックローズは声を震わせないよう精一杯気を張りつつ、そう口にした。 「分かってる。信用しているよ、黒薔薇さん」 すると黒雪姫はそう優雅に言ってのけた。 その艶やかな濡羽色の長髪が風に吹かれ、さわさわと揺れる。背中越しには蝶の羽がふんわりと浮いているのが見えた。 落ち着いている、ブラックローズはその事実に感嘆とした。 「あの」 ブラックローズは思わず尋ねていた。 何故そんなに落ち着いて居られるのか、と。 「ふむ。何故、か」 尋ねられた黒雪姫はふっと柔和な笑みを浮かべ、 「なに、簡単なことだよ。君を信じているからだ。  君は命を呈してまで私の為に戦ってくれた。見ず知らずの私の為にだ。  こんなデスゲームの中でも、君のような人が居てくれる。それだけで希望を持つには十分だろう」 凛とそう答えて見せた。 「私は寧ろ君に尋ねたい。  何故――どうして私の為に戦ってくれたのだ? こんな場所で出会った、見ず知らずのプレイヤーを守る為に」 黒雪姫はすっとブラックローズを見据えた。 その眼差しはあまりにも真直ぐで、ブラックローズは思わずたじろいでしまった。 肩に、何か重く冷たいものがのしかかる。 自分は彼女のような人間にそうまで信じられるような人間ではない。そのことは自分が一番知っていた。 それが後ろめたい。本物じゃない、虚像の自分を無理に被って見せてるみたいで。 カイトに対して弱みを見せることができなかった。何とかしてお姉さんぶろうとしていた、あの時と何も変わっていない。 「……ごめん。私は、貴方にそう言われるほど良い人じゃないと思う」 ぽつりと、ブラックローズは言葉を漏らしていた。 黒雪姫の足元が見える。汚れた乳白色のコンクリートと漆黒のドレスがいささかミスマッチだった。 「私は……多分、強がってみせただけ。  誰かを守る力強いお姉さん、みたいなキャラクターを演じたかったのかも。  私、弟が居てさ。きっとだから、こういう場所でもそういう風に振る舞えたら、少しは気分が楽になるかなって……」 上手く言葉が繋がらず、要領の得ないことを言っていると思う。 けれど、それがきっと本心だった。別に自分は博愛主義とか、正義感に燃えて黒雪姫の為に戦ったんじゃない。 速水晶良が弱い自分から目を逸らす為に、ブラックローズという強くて格好良い重剣士を演じたかった。それだけなのだ。 これがカイトだったらまた違ったのかもしれない。でも、自分はそうでもしなくては戦えなかった。 要するに自分は、黒雪姫を利用したのだ。自分の為に、体の良い弱者である彼女を。 「ごめんね。だから、どうしてかと問われると、きっと自分の為としか言いようがないと思う」 ブラックローズは今度は空を仰いだ。空から夜の黒が脱色されていくのが見える。 黒雪姫を見るのが少し怖かったのかもしれない。これがただのゲームなら、コマンドを入力しないだけで誤魔化せるのに。 「……そうか。君は向き合っているのだな」 黒雪姫の呟きは、エリアの果てに吹く風に紛れ、誰にも拾われることなく霧散していった。 それから少しのだけあった静寂を経て、ダンとアーチャーが帰ってきた。 幸いにして敵襲はないままに終わった。ダンの方も特に向こうのエリアに異常はなかったらしい。 「ま、入り口周りをちょろっと探索しただけだけどな。  妙に入り組んだ構造してやがるし、手がかかりそうですぜ、ありゃ」 そう語るアーチャーの口調は相変わらず飄々としていて軽い。 「とはいえルート変更の必要性は感じられなかった。  入り組んではいるが、こちらには人数が居る。手分けして探索していけば他エリアを経由するより早く目的地に着けるだろう」 ダンは冷静にそう分析し、そしてそのままブラックローズたちはウラインターネットに突入することになった。 ダン、黒雪姫、ブラックローズの順で転移する。そう決めた後は迅速に行動することになり、早速ダンたちが再度転移した。 黒雪姫が転移する際、ブラックローズに柔らかな微笑みを残した。 先ほど少し恥ずかしい独白をしてしまった手前どうなるかと思ったが、彼女の所作に特に変ったところは見られない。少なくとも外見的には。 そのことに一応安堵しつつ、最後にブラックローズが電話ボックスに入った。 転移する前にちらりと後ろを振り返る。そこにはゲーム開始からずっと歩いてきたアメリカエリアのビル群が広がっている。 徐々に陽が昇り始めてきたこともあり、ようやく見通せるようになったエリアだが、しかし自分はもうこのエリアを後にするのだ。 向かう先のウラインターネットは暗い空間だと言う。そう思うと、この夜明けの光景が何だかとても貴重なものに思えた。 (また……見れるよね、陽の光。勿論、黒雪姫やダンさんも一緒に) そう思い、ブラックローズは受話器を取り転移した。 先に待っているのは、仄暗い迷宮、ウラインターネット。 @ ウラインターネットに転移し、手分けしてエリアの探索に乗り出すことになった訳だが、そこで彼らは少し揉めることとなった。 二手に分かれて探索することはすっと決まったのだが、その組み合わせで少々議論が起きた。 アーチャーを勘定に入れれば四人の集団であるので、二人ずつで別れるのが自然ではあるが、そこで黒雪姫が自分がアーチャーと同行するのはどうかと提案したのだ。 「……ふむ、それは何故だ?」 ダンが尋ねると、黒雪姫は戦力バランスの為だと答えた。 これから未知のエリアを探索するに当たって、ブラックローズと黒雪姫はこと戦闘に関しては素人である。 それ故、同じチームに固まらせるのは得策ではなく、実戦経験のあるダンとアーチャーがそれぞれ付いた方がいい。 またブラックローズは実際の経験はなくとも少なくともこの仮想空間内では戦力となる。 対してダンは経験はあるが、この場での戦闘能力は高いとはいえない。これがライフルの一丁でもあれが別だっただろうが。 そこで分かれるとしたらダンとブラックローズ、アーチャーと自分――その組み合わせがいい。そう告げたのだ。 確かに理には適っていた。 とはいえ急にきっぱりとした主張を述べた黒雪姫に対し、ダンは困惑を覚えているようだった。 それを見たアーチャーは相変らず軽薄な口調で、 「いいじゃないですか、ダンナ。このお姫様の言うことも一理ありますぜ」 「しかしお前が単独で動くという手もある」 「そりゃちょっとそっちのお嬢ちゃんに負担掛け過ぎってもんですよ。  大丈夫ですって、俺なら姫様の一人や二人守って見せますから」 そうした話し合いを経て、結局組み合わせは黒雪姫の提案通りとなった。 ダンは納得しきっていないようだったが、しかしあまり時間を掛けてもいられなかった。 二人ずつのチームに分かれ、先ずはエリアを探索する。ある程度付近をマッピングした後、転移ゲートで再度で合流する。 そう手筈を定め、彼らは分かれることとなった。 ウラインターネットは暗く入り組んでいた。 全体的に幾何学的な意匠の空間は、不気味であるが近未来的で、なるほど確かにインターネットの裏側だという雰囲気でもある。 そんな中で黒雪姫とアーチャーは無言で歩き出していた。 「……で?」 ダンたちの姿が見えなくなった後、アーチャーが不意に口を開いた。 出会った当初から自分に対し警戒心を抱いているようであった黒雪姫の突然の誘い。その真意を確かめる為に、アーチャーは敢えて彼女の意見に賛成したのだ。 「何の用だ、姫様?  アンタはあの褐色のお嬢ちゃんと仲好さ気に見えたんだがな。  俺とわざわざ二人っきりになってどうするつもりだ。  まさかこのハンサム顔に釣られたとか言わないよな」 顔を向けず、背中越しに語るその口調は変らず軽いものではあったが、同時に突き離すような冷徹さも含まれていた。 問い掛けに対し沈黙が帰ってきた。 言いようもない緊張を孕んだ静寂の中、妙な気配を感じたアーチャーがちら、と背後を振り向くと、 「はっ! そういうことか」 そこに居たのは漆黒の刃を備えた異形。 光沢を湛え彫刻のような美しさを持つその姿に、アーチャーは見覚えがあった。 アメリカエリアで襲われたあのマシン。唐突そのものにしか思えなかったあの襲撃にも、ちゃんと裏があった訳だ。 「成程ね。こりゃ納得だわ。はぁまた面倒なもの連れてきちまったなぁ、俺も」 異形――ブラック・ロータスはもはや彼にとって正体不明の何かではない。明確な敵だ。 無害な姫様だと思っていたが、とんだ猫被りであった。いや、蝶被りとでもいうべきか。 「分かっているなら早いな。お前は私が討つ」 「やれやれ、やる気満々ってか。  ならしゃーないな。まっどうみても『敵意のない者』じゃないのは助かるが」 言いながらアーチャーは弓を構える。緑のマントがエリアの闇の下、ゆらりと舞った。 ロータスはその手と一体になった鋭い刃をアーチャーへと向け、対峙する。 「正直迷っていた。並行世界の概念を聞かされた時、正体を明かすべきかな。  色々理由はあれど、つまるところ私は怖かったのだ。騙していたことが知れるのがな。  結局保留にしてしまった訳だが……これで私は――」 「あん? 何の話だ」 「何でもないさ、お前にとってはな。ただの気付けだ。  ただ――私なりのケジメを付けたいということだ。お前を討ち、彼女を守る。  そうすることであの凛とした黒薔薇さんに向き合いたい」 対等に、同じ立場でな、とロータスは最後に添えた。 「はぁ、よく分からんが、あのお嬢ちゃんを守る為に俺を討つってか? 自分の誇り為に?  はいはい格好いいことを言いなさる。騎士道だとか友愛だとか誇りだとか、凄いもん引っさげて戦ってますね。  俺には眩しすぎてとてもじゃねえが直視できねえよ。  まぁ、でも……俺にだって負けられねえ理由くらいはある」 アーチャーは口元を釣り上げ言った。 相も変わらず、軽薄でいい加減で、同時に妙に醒めている、そんな笑みであった。 「弓兵……お前を倒し、私は彼女を守る」 「じゃ、やるとしますか。さっさと倒してダンナの下に戻らねえと。  面と向かってヨーイドン、てのは性に合わないけどな」 そうして二人は一歩を踏み出した。 守るべきものを、守る為に。 @ 「私、避けられたのかも……しれません」 同時刻、ブラックローズとダンは探索を進めつつ会話を交わしていた。 「ふむ」 「さっきちょっと恥ずかしい所を見せてしまって、それで黒雪姫も私と一緒に居たくなかったのかも……」 そう語るブラックローズには、不安の色が滲んでいた。 無理もない、とダンはその機微を理解した。 この状況に適応し切れてはいないのだろう。剣を持ち勇ましく戦っては見せても、彼女は一般人だ。 自分やアーチャーのように実際の戦場を生きた訳ではない。 それにカイトのこともある。先ほど遭遇したあの不気味なツギハギだらけのアバター。 ブラックローズがカイトという人物をとても頼りにしているのはその言葉で分かった。 そこであんなものを見せられては不安にもなるだろう。 「大丈夫だ。黒雪姫は君のことをそんな風に思ってなどいない」 ダンはそう穏やかに語り掛けた。 正直な話、軍人時代には自分がこのような立場になるとは思っていなかった。 心を凍りつかせていた人間が、少女の心情を慮り励ます立場になるなど。 しかし言葉自体は本心から出たものであった。 黒雪姫の提案の裏にあるものは、恐らくブラックローズへの不信などではない。 去り際に見せた黒雪姫の視線。あの中に宿っていたのはそんな柔なものではなく、寧ろ確固たる戦意であった。 「そう……ですか」 「ああ、自信を持つといい」 少し気弱になっていたブラックローズだが、それでも歩みを止めることはなかった。泣き言も漏らしはしなかった。 恐ろしいだろうに、それでも剣を持てる以上は戦おうとしている。 強かだ。彼女は戦士でもあるのだ。彼女だって一つの戦を潜り抜けたのだから。 とはいえ同時にただの少女でもある。それ故に、自分のような人間が助けていかなくてはならない。 「大丈夫だ。アーチャーも信用できないかもしれないが、あれで物事を深く考えている。  腕も立つ。思慮もある。何よりその意志がある。  ただそれを決して誇ろうとはしない……そういう英霊なのだ、アレは」 そうして二人はエリアの奥へと進んで行く。 早くはないが、落ち着いた足取りではあった。迷う様子もない。 だが、 「またしても人間……、それも二人」 彼らは遭遇する。 憎悪に満ちた破壊を振りまく死神に。 不運にも、同じくウラインターネットを彷徨っていた死神と行き遭ってしまう。 死神――フォルテは恐るべき脅威として二人に迫っていた。 【B-10/ウラインターネット/1日目・早朝】 【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】 [ステータス]:HP80%/デュエルアバター [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3 [思考] 基本:バトルロワイアルには乗らない。 1:ブラックローズ、ダンと共に行動する。 2:緑衣のアーチャーを討つ。 【ダン・ブラックモア@Fate/EXTRA】 [ステータス]:健康 、令呪二画 [装備]:不明 [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3 [思考] 基本:軍人ではなく騎士として行動する 1:黒雪姫、ブラックローズと共に月海原学園を目指す。 2:ウラインターネットを探索する。 3:岸波白野陣営を警戒。 [サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド) [ステータス]:単独行動中。 [思考] 基本:ダンを優勝させる。その為には手段は選ばない。 1:ダンにバレないように他の参加者を殺す。 2:黒い機械(ブラック・ロータス)を倒す [備考] ※時期としては二回戦開始当初、岸波と出会ったばかりの頃。 ※令呪によってアーチャーは『バトルロワイアルおいての戦意なき者への攻撃』を禁じられています。 【ブラックローズ@.hack//】 [ステータス]:HP50% [装備]:紅蓮剣・赤鉄@.hack//G.U. [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2 [思考] 基本:バトルロワイアルを止める。 1:黒雪姫、ダンと共に行動する。 2:あの黒いロボットは一体……? 3:カイト(?)に対する疑念。 [備考] ※参戦時期は本編終了後 【フォルテ@ロックマンエグゼ3】 [ステータス]:HP45%、MP40/70、オーラ(※) [装備]:{死ヲ刻ム影、ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個 [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 1:アメリカエリア経由でアリーナへ向かう。 2:1の道中でショップをチェックし、HPを回復する手段を探す。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:シルバー・クロウの使ったアビリティ(心意技)に強い興味。 5:キリトに対する強い苛立ち。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※バルムンクのデータを吸収したことにより、以下のアビリティを獲得しました。 ・剣士(ブレイドユーザー)のジョブ設定 ・『翼』による飛行能力 ※レンのデータを吸収したことにより、『成長』または『進化の可能性』を獲得しました。 ※オーラが復活しているかは後の書き手さんに任せます。 |050:[[ヒロイックピンク インフィニティ]]|投下順に読む|052:[[convert vol.1 to vol.2]]| |050:[[ヒロイックピンク インフィニティ]]|時系列順に読む|052:[[convert vol.1 to vol.2]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ブラック・ロータス|063:[[顔のない王]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ダン|063:[[顔のない王]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ブラックローズ|063:[[顔のない王]]| |037:[[Confrontation;衝突]]|フォルテ|063:[[顔のない王]]|
エリアの最北まで到着すると、ブラックローズは思わず安堵に胸を撫で下ろす。 途中襲われないかと神経を張り巡らせてはいたものの、結論から言えばそれは杞憂に終わったようだ。 後ろにはたった今抜けてきたビル群がくっきりと見えている。夜が明けたこともありがたかった。やはり明るいと安心するものだ。 「中々幸先良いっすね、ダンナ。このまま何ともなしに行って欲しいもんだ」 しんがりを務めていたアーチャーが軽薄な口調で言った。 参加者でなくダンのスキル――サーヴァントというらしい存在だというが、ブラックローズは彼に対しどういう態度で接すればいいのか分からなかった。 まず先の罠の一件だ。毒の中で必死にもがいたことは記憶に新しい。 あの苦しみが彼によるものだということを考えると、それがたとえ彼の意図したところでないとしても、複雑な感情を抱かざるを得なかった。 また彼がサーヴァント、人間でないということもどう捉えればいいのか分からない。 ムーンセル(というスーパーコンピュータのようなもの)が集積したデータにより作り上げた英雄の再現……だというが、正直ブラックローズの理解を越えるところがある。 話してみたところ、その反応は生身の人間と何ら変わりなく、彼がデータだけの存在だとは全く思えなかった。 しかし、アウラの件もあった。ブラックローズ自身は彼女と直接対話する機会はそれほどなかったのだが、それでも彼女がただのAIでないことは分かった。 要するにアーチャーもまたアウラのような究極AIの一種……なのだろうか。それにしてはアウラと比べ神聖さというか、超常的なものを感じなかったが。 それにもう一つ。彼の人間性――彼が人間でないと分かったうえでの表現だ――があまり信用できないということだ。 先ほどの弓使いとの一戦。あれを仕掛けてきたのがアーチャーでないかという疑念は拭えなかった。 一応取り繕ってはいたものの、状況的には彼が最も怪しい。決定的な証拠がない以上何ともいえないが。 こんなことなら矢を回収しておけばよかったと思うが、今言っても後の祭りだ。今更戻る訳にも行かない。 (まぁ……ダンさんは信用できそうだし、大丈夫……だよね) ちら、とブラックローズは同行者である老人、ダン・ブラックモアを見た。 彼は周りに警戒を配りつつも、ブラックローズや黒雪姫に威圧感を与えてはいない。 かつては軍人だったという彼は常に冷静沈着で、何というか大人という感じがする。 デスゲームにおいてその落ち着いた物腰や性格はかなり頼りになった。 その能力的にもだが、やはりこういう場で一人しっかりした大人がいるというのはありがたい。 黒雪姫の手前ああは言ったものの、ブラックローズもこの場で戦えるのは一人というのは心細かった。 八相との戦いにおいて、こうしたデスゲームに近いものを潜り抜けてきたブラックローズであるが、結局のところ彼女はただの女子高生、速水晶良に過ぎないのだから。 そういう意味でダンが同行してくれて本当に良かったと思う。 「これがゲートのようだな」 ダンがそう言って目の前の電話ボックスを見上げた。 最初は面食らったが、どうやらこれがこのエリアのワープゲートらしいのだ。 一体どんな思惑でこんなデザインを採用したのかは全く分からないが、まぁ考えるだけ無駄と言う気もしたのでそれ以上は考えないで置く。 「どうやら一度に一人しか転移できないようだな」 電話ボックスの中を検分したダンが言った。 どうやら英語の説明文を読んでいるらしかった。考えてみれば当たり前なので驚くことではないが、今まで意思疎通に全く問題がなかっただけに少し意外に思えた。 今更だが、このPCに搭載された翻訳システムの高性能さに舌を巻く。外人でありながら流暢に日本語を話す砂嵐三十郎だって、時たま変な表現を使ってしまうというのに。 いや自分が気付いていないだけで、ダンからすると変な表現に翻訳されている可能性もあるか。 それとももしかしたらこのくらいのシステムも、未来では何てことのないものだったりするのだろうか。 ダンと黒雪姫は自分からしたら数十年先の人間だ。彼らの技術水準と自分の常識は違うのかもしれない。 「ブラックローズ」 と、そこでダンより声が掛けられた。 安堵故か呆としていたブラックローズは、そこではっとして顔を上げた。 そこには少しだけ厳格な顔を浮かべたダンの姿があった。 「私とアーチャーが先に行く。軽くエリアを調査して危険がないか確認したい。  しばらくしたら報告に帰ってくるつもりだが、その間黒雪姫の護衛を頼みたい」 そう落ち着いた口調で言われ、ブラックローズはゆっくりと頷いた。 ここでダンと離れるのは少し不安になったが、しかし自分もまた戦うことができる以上、守られてばかりではいられない。 黒雪姫が微笑を浮かべているのが見えた。そこに不安は見られない。その信頼に自分は答えて見せなければならないのだ。 大丈夫だ。周りに人影はないし、たとえ敵が来ても自分なら持ちこたえることくらいはできる筈。 「分かった。では任せたぞ」 その首肯が信用に足ると思ってくれたのか、ダンはそう言い残して電話ボックスに入っていった。 扉が閉まった後、がちゃ、と受話器を取る音がして、次の瞬間にはダンの姿が消えていた。そのお付であるアーチャーもまた消えている。 「……行ってしまったな」 それを見届けた黒雪姫がぽつりと漏らした。 そして少しだけ間があった。ひゅう、と風がビルの方から吹いてきたのが分かる。 「大丈夫、私が守るから」 ブラックローズは声を震わせないよう精一杯気を張りつつ、そう口にした。 「分かってる。信用しているよ、黒薔薇さん」 すると黒雪姫はそう優雅に言ってのけた。 その艶やかな濡羽色の長髪が風に吹かれ、さわさわと揺れる。背中越しには蝶の羽がふんわりと浮いているのが見えた。 落ち着いている、ブラックローズはその事実に感嘆とした。 「あの」 ブラックローズは思わず尋ねていた。 何故そんなに落ち着いて居られるのか、と。 「ふむ。何故、か」 尋ねられた黒雪姫はふっと柔和な笑みを浮かべ、 「なに、簡単なことだよ。君を信じているからだ。  君は命を呈してまで私の為に戦ってくれた。見ず知らずの私の為にだ。  こんなデスゲームの中でも、君のような人が居てくれる。それだけで希望を持つには十分だろう」 凛とそう答えて見せた。 「私は寧ろ君に尋ねたい。  何故――どうして私の為に戦ってくれたのだ? こんな場所で出会った、見ず知らずのプレイヤーを守る為に」 黒雪姫はすっとブラックローズを見据えた。 その眼差しはあまりにも真直ぐで、ブラックローズは思わずたじろいでしまった。 肩に、何か重く冷たいものがのしかかる。 自分は彼女のような人間にそうまで信じられるような人間ではない。そのことは自分が一番知っていた。 それが後ろめたい。本物じゃない、虚像の自分を無理に被って見せてるみたいで。 [[カイト]]に対して弱みを見せることができなかった。何とかしてお姉さんぶろうとしていた、あの時と何も変わっていない。 「……ごめん。私は、貴方にそう言われるほど良い人じゃないと思う」 ぽつりと、ブラックローズは言葉を漏らしていた。 黒雪姫の足元が見える。汚れた乳白色のコンクリートと漆黒のドレスがいささかミスマッチだった。 「私は……多分、強がってみせただけ。  誰かを守る力強いお姉さん、みたいなキャラクターを演じたかったのかも。  私、弟が居てさ。きっとだから、こういう場所でもそういう風に振る舞えたら、少しは気分が楽になるかなって……」 上手く言葉が繋がらず、要領の得ないことを言っていると思う。 けれど、それがきっと本心だった。別に自分は博愛主義とか、正義感に燃えて黒雪姫の為に戦ったんじゃない。 速水晶良が弱い自分から目を逸らす為に、ブラックローズという強くて格好良い重剣士を演じたかった。それだけなのだ。 これがカイトだったらまた違ったのかもしれない。でも、自分はそうでもしなくては戦えなかった。 要するに自分は、黒雪姫を利用したのだ。自分の為に、体の良い弱者である彼女を。 「ごめんね。だから、どうしてかと問われると、きっと自分の為としか言いようがないと思う」 ブラックローズは今度は空を仰いだ。空から夜の黒が脱色されていくのが見える。 黒雪姫を見るのが少し怖かったのかもしれない。これがただのゲームなら、コマンドを入力しないだけで誤魔化せるのに。 「……そうか。君は向き合っているのだな」 黒雪姫の呟きは、エリアの果てに吹く風に紛れ、誰にも拾われることなく霧散していった。 それから少しのだけあった静寂を経て、ダンとアーチャーが帰ってきた。 幸いにして敵襲はないままに終わった。ダンの方も特に向こうのエリアに異常はなかったらしい。 「ま、入り口周りをちょろっと探索しただけだけどな。  妙に入り組んだ構造してやがるし、手がかかりそうですぜ、ありゃ」 そう語るアーチャーの口調は相変わらず飄々としていて軽い。 「とはいえルート変更の必要性は感じられなかった。  入り組んではいるが、こちらには人数が居る。手分けして探索していけば他エリアを経由するより早く目的地に着けるだろう」 ダンは冷静にそう分析し、そしてそのままブラックローズたちはウラインターネットに突入することになった。 ダン、黒雪姫、ブラックローズの順で転移する。そう決めた後は迅速に行動することになり、早速ダンたちが再度転移した。 黒雪姫が転移する際、ブラックローズに柔らかな微笑みを残した。 先ほど少し恥ずかしい独白をしてしまった手前どうなるかと思ったが、彼女の所作に特に変ったところは見られない。少なくとも外見的には。 そのことに一応安堵しつつ、最後にブラックローズが電話ボックスに入った。 転移する前にちらりと後ろを振り返る。そこにはゲーム開始からずっと歩いてきたアメリカエリアのビル群が広がっている。 徐々に陽が昇り始めてきたこともあり、ようやく見通せるようになったエリアだが、しかし自分はもうこのエリアを後にするのだ。 向かう先のウラインターネットは暗い空間だと言う。そう思うと、この夜明けの光景が何だかとても貴重なものに思えた。 (また……見れるよね、陽の光。勿論、黒雪姫やダンさんも一緒に) そう思い、ブラックローズは受話器を取り転移した。 先に待っているのは、仄暗い迷宮、ウラインターネット。 @ ウラインターネットに転移し、手分けしてエリアの探索に乗り出すことになった訳だが、そこで彼らは少し揉めることとなった。 二手に分かれて探索することはすっと決まったのだが、その組み合わせで少々議論が起きた。 アーチャーを勘定に入れれば四人の集団であるので、二人ずつで別れるのが自然ではあるが、そこで黒雪姫が自分がアーチャーと同行するのはどうかと提案したのだ。 「……ふむ、それは何故だ?」 ダンが尋ねると、黒雪姫は戦力バランスの為だと答えた。 これから未知のエリアを探索するに当たって、ブラックローズと黒雪姫はこと戦闘に関しては素人である。 それ故、同じチームに固まらせるのは得策ではなく、実戦経験のあるダンとアーチャーがそれぞれ付いた方がいい。 またブラックローズは実際の経験はなくとも少なくともこの仮想空間内では戦力となる。 対してダンは経験はあるが、この場での戦闘能力は高いとはいえない。これがライフルの一丁でもあれが別だっただろうが。 そこで分かれるとしたらダンとブラックローズ、アーチャーと自分――その組み合わせがいい。そう告げたのだ。 確かに理には適っていた。 とはいえ急にきっぱりとした主張を述べた黒雪姫に対し、ダンは困惑を覚えているようだった。 それを見たアーチャーは相変らず軽薄な口調で、 「いいじゃないですか、ダンナ。このお姫様の言うことも一理ありますぜ」 「しかしお前が単独で動くという手もある」 「そりゃちょっとそっちのお嬢ちゃんに負担掛け過ぎってもんですよ。  大丈夫ですって、俺なら姫様の一人や二人守って見せますから」 そうした話し合いを経て、結局組み合わせは黒雪姫の提案通りとなった。 ダンは納得しきっていないようだったが、しかしあまり時間を掛けてもいられなかった。 二人ずつのチームに分かれ、先ずはエリアを探索する。ある程度付近をマッピングした後、転移ゲートで再度で合流する。 そう手筈を定め、彼らは分かれることとなった。 ウラインターネットは暗く入り組んでいた。 全体的に幾何学的な意匠の空間は、不気味であるが近未来的で、なるほど確かにインターネットの裏側だという雰囲気でもある。 そんな中で黒雪姫とアーチャーは無言で歩き出していた。 「……で?」 ダンたちの姿が見えなくなった後、アーチャーが不意に口を開いた。 出会った当初から自分に対し警戒心を抱いているようであった黒雪姫の突然の誘い。その真意を確かめる為に、アーチャーは敢えて彼女の意見に賛成したのだ。 「何の用だ、姫様?  アンタはあの褐色のお嬢ちゃんと仲好さ気に見えたんだがな。  俺とわざわざ二人っきりになってどうするつもりだ。  まさかこのハンサム顔に釣られたとか言わないよな」 顔を向けず、背中越しに語るその口調は変らず軽いものではあったが、同時に突き離すような冷徹さも含まれていた。 問い掛けに対し沈黙が帰ってきた。 言いようもない緊張を孕んだ静寂の中、妙な気配を感じたアーチャーがちら、と背後を振り向くと、 「はっ! そういうことか」 そこに居たのは漆黒の刃を備えた異形。 光沢を湛え彫刻のような美しさを持つその姿に、アーチャーは見覚えがあった。 アメリカエリアで襲われたあのマシン。唐突そのものにしか思えなかったあの襲撃にも、ちゃんと裏があった訳だ。 「成程ね。こりゃ納得だわ。はぁまた面倒なもの連れてきちまったなぁ、俺も」 異形――ブラック・ロータスはもはや彼にとって正体不明の何かではない。明確な敵だ。 無害な姫様だと思っていたが、とんだ猫被りであった。いや、蝶被りとでもいうべきか。 「分かっているなら早いな。お前は私が討つ」 「やれやれ、やる気満々ってか。  ならしゃーないな。まっどうみても『敵意のない者』じゃないのは助かるが」 言いながらアーチャーは弓を構える。緑のマントがエリアの闇の下、ゆらりと舞った。 ロータスはその手と一体になった鋭い刃をアーチャーへと向け、対峙する。 「正直迷っていた。並行世界の概念を聞かされた時、正体を明かすべきかな。  色々理由はあれど、つまるところ私は怖かったのだ。騙していたことが知れるのがな。  結局保留にしてしまった訳だが……これで私は――」 「あん? 何の話だ」 「何でもないさ、お前にとってはな。ただの気付けだ。  ただ――私なりのケジメを付けたいということだ。お前を討ち、彼女を守る。  そうすることであの凛とした黒薔薇さんに向き合いたい」 対等に、同じ立場でな、とロータスは最後に添えた。 「はぁ、よく分からんが、あのお嬢ちゃんを守る為に俺を討つってか? 自分の誇り為に?  はいはい格好いいことを言いなさる。騎士道だとか友愛だとか誇りだとか、凄いもん引っさげて戦ってますね。  俺には眩しすぎてとてもじゃねえが直視できねえよ。  まぁ、でも……俺にだって負けられねえ理由くらいはある」 アーチャーは口元を釣り上げ言った。 相も変わらず、軽薄でいい加減で、同時に妙に醒めている、そんな笑みであった。 「弓兵……お前を倒し、私は彼女を守る」 「じゃ、やるとしますか。さっさと倒してダンナの下に戻らねえと。  面と向かってヨーイドン、てのは性に合わないけどな」 そうして二人は一歩を踏み出した。 守るべきものを、守る為に。 @ 「私、避けられたのかも……しれません」 同時刻、ブラックローズとダンは探索を進めつつ会話を交わしていた。 「ふむ」 「さっきちょっと恥ずかしい所を見せてしまって、それで黒雪姫も私と一緒に居たくなかったのかも……」 そう語るブラックローズには、不安の色が滲んでいた。 無理もない、とダンはその機微を理解した。 この状況に適応し切れてはいないのだろう。剣を持ち勇ましく戦っては見せても、彼女は一般人だ。 自分やアーチャーのように実際の戦場を生きた訳ではない。 それにカイトのこともある。先ほど遭遇したあの不気味なツギハギだらけのアバター。 ブラックローズがカイトという人物をとても頼りにしているのはその言葉で分かった。 そこであんなものを見せられては不安にもなるだろう。 「大丈夫だ。黒雪姫は君のことをそんな風に思ってなどいない」 ダンはそう穏やかに語り掛けた。 正直な話、軍人時代には自分がこのような立場になるとは思っていなかった。 心を凍りつかせていた人間が、少女の心情を慮り励ます立場になるなど。 しかし言葉自体は本心から出たものであった。 黒雪姫の提案の裏にあるものは、恐らくブラックローズへの不信などではない。 去り際に見せた黒雪姫の視線。あの中に宿っていたのはそんな柔なものではなく、寧ろ確固たる戦意であった。 「そう……ですか」 「ああ、自信を持つといい」 少し気弱になっていたブラックローズだが、それでも歩みを止めることはなかった。泣き言も漏らしはしなかった。 恐ろしいだろうに、それでも剣を持てる以上は戦おうとしている。 強かだ。彼女は戦士でもあるのだ。彼女だって一つの戦を潜り抜けたのだから。 とはいえ同時にただの少女でもある。それ故に、自分のような人間が助けていかなくてはならない。 「大丈夫だ。アーチャーも信用できないかもしれないが、あれで物事を深く考えている。  腕も立つ。思慮もある。何よりその意志がある。  ただそれを決して誇ろうとはしない……そういう英霊なのだ、アレは」 そうして二人はエリアの奥へと進んで行く。 早くはないが、落ち着いた足取りではあった。迷う様子もない。 だが、 「またしても人間……、それも二人」 彼らは遭遇する。 憎悪に満ちた破壊を振りまく死神に。 不運にも、同じくウラインターネットを彷徨っていた死神と行き遭ってしまう。 死神――フォルテは恐るべき脅威として二人に迫っていた。 【B-10/ウラインターネット/1日目・早朝】 【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】 [ステータス]:HP80%/デュエルアバター [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3 [思考] 基本:バトルロワイアルには乗らない。 1:ブラックローズ、ダンと共に行動する。 2:緑衣のアーチャーを討つ。 【ダン・ブラックモア@Fate/EXTRA】 [ステータス]:健康 、令呪二画 [装備]:不明 [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3 [思考] 基本:軍人ではなく騎士として行動する 1:黒雪姫、ブラックローズと共に月海原学園を目指す。 2:ウラインターネットを探索する。 3:[[岸波白野]]陣営を警戒。 [サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド) [ステータス]:単独行動中。 [思考] 基本:ダンを優勝させる。その為には手段は選ばない。 1:ダンにバレないように他の参加者を殺す。 2:黒い機械(ブラック・ロータス)を倒す [備考] ※時期としては二回戦開始当初、岸波と出会ったばかりの頃。 ※令呪によってアーチャーは『バトルロワイアルおいての戦意なき者への攻撃』を禁じられています。 【ブラックローズ@.hack//】 [ステータス]:HP50% [装備]:紅蓮剣・赤鉄@.hack//G.U. [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2 [思考] 基本:バトルロワイアルを止める。 1:黒雪姫、ダンと共に行動する。 2:あの黒いロボットは一体……? 3:カイト(?)に対する疑念。 [備考] ※参戦時期は本編終了後 【フォルテ@ロックマンエグゼ3】 [ステータス]:HP45%、MP40/70、オーラ(※) [装備]:{死ヲ刻ム影、ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個 [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 1:アメリカエリア経由でアリーナへ向かう。 2:1の道中でショップをチェックし、HPを回復する手段を探す。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:シルバー・クロウの使ったアビリティ(心意技)に強い興味。 5:キリトに対する強い苛立ち。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※バルムンクのデータを吸収したことにより、以下のアビリティを獲得しました。 ・剣士(ブレイドユーザー)のジョブ設定 ・『翼』による飛行能力 ※レンのデータを吸収したことにより、『成長』または『進化の可能性』を獲得しました。 ※オーラが復活しているかは後の書き手さんに任せます。 |050:[[ヒロイックピンク インフィニティ]]|投下順に読む|052:[[convert vol.1 to vol.2]]| |050:[[ヒロイックピンク インフィニティ]]|時系列順に読む|052:[[convert vol.1 to vol.2]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ブラック・ロータス|063:[[顔のない王]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ダン|063:[[顔のない王]]| |035:[[時空隔絶~無印と続編~]]|ブラックローズ|063:[[顔のない王]]| |037:[[Confrontation;衝突]]|フォルテ|063:[[顔のない王]]|

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