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情報 - (2014/07/07 (月) 19:31:05) の1つ前との変更点

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 豪華絢爛な輝きが至る所より放たれているが、人の気配は微塵も感じられない。シャンデリアやソファーはとても高級であるにも関わらず、ここまで静謐だと薄気味悪さを感じてしまう。  それでいて、内部は埃一つも落ちていない。ここ、F-9エリアのホテルではまだ戦いは起こっていないとミーナは思う。尤も、ホテルだって戦場の一角だから、いつ戦火が飛んだとしてもおかしくないが。  ダークマンという闇の殺し屋を自称した不気味な人物と出会ってから、ミーナは情報収集の為にホテルに訪れたが、ここでも何も得られない。他の参加者を捜してみたが、一向に見つからなかった。もしかしたら入れ違いになっただけで、今もこのホテルの何処かにいるかもしれないが、捜す為にまたホテルを見て回るのは流石に骨が折れる。  もしも本当に自分以外の誰もいなかったら、それこそ時間を無駄に消耗するだけだ。それくらいなら、他の場所に向かう方がずっと有意義だろう。 (それにしても、あのダークマンという人は一体何者だったのでしょう……やはり、運営側のアバターなのでしょうか? 私の名前を一瞬で当てたのですから)  ソファーのゆったりとした感触を腰で感じながら、ミーナは思案を巡らせる。  ダークマンはいきなり現れたと思ったら、メールで告げられる死者のことや【設定】画面から入力できるアバターの変更機能について説明をしてきた。有益な情報だったが、どうしてわざわざ説明してくれたのかが理解できなかった。  まさか、殺し合いが始まってからもう六時間以上も経過するのに誰とも会えなかった自分に哀れみを感じて、運営側が特別に情報を提供してくれたのか? そんな可能性が芽生えたが、それが本当ならあまりにも恥ずかしかったのですぐに否定する。  例え情報を提供するにしても、自分は殺し合いを打ち破る方針でいる。それは運営側も把握しているはずだ。それにも関わらずに情報を与えたということは、自分は見縊られていることになる。 (……そういえば、ダークマンはデータを取ったと言っていましたが、あれは何を意味しているのでしょう? 私に、特別なデータなんてないはずなのに)  現実の世界ではジャーナリストとして活動をして、インターネットの世界ではネットゲームの初心者に過ぎない。そんなミーナを詳しく解析したって、何も出てくる訳がない。精々、野球選手としてのデータや所属するデンノーズのポジションくらいだ。  そんなものをわざわざ得る必要があるとはとても思えない。  殺し合いの場に放り込まれてからも、やったことと言えば快速のタリスマンを使って移動速度を上げたことだけ。  そこまで考えた所で、ミーナはバグと接触した時のことを思い出した。 (まさか、彼らは私がこの殺し合いの根底に関する何かの情報を掴んだと思って、ダークマンを差し向けたのでしょうか? あの時、私が見た光景を他の参加者に話されたら、そこから何らかの不備が起こってしまう可能性だって0とは言い切れません。それを潰す為に、運営側は私に接触した……?)  可能性は次々に浮かび上がってくる。  ダークマンは自分に振れた際に、何か奇妙なプログラムをアバター内に潜ませたことだって考えられる。あのバグのことを他の参加者に話したら即座に記憶を消去されてしまうか、あるいはその瞬間にこのアバター内に潜ませたウイルスが発動して強制的にデリートされるか……そんな不安がミーナの脳裏に浮かんでいく。  もちろん、これがただの杞憂であることだってあり得た。バグの処置を済ませているのなら、例え他の参加者に話した所でどうにもならないかもしれない。  それでも、この情報を話すタイミングを見計らわなければならなかった。あるいは、自分に何かがあっても他の誰かに伝わるように、何らかの形にして残すべきか。 (何にせよ、ここまで誰とも出会えないのは辛いですね……だからといって、ここで拡声器を使うのもリスクが大きすぎます。もしもこのアメリカエリアに集まったのが危険人物ばかりだったら……いいえ、流石にそれは考えすぎですね)  何にせよ、今はまだその時ではない。  仮に拡声器を使うとしても、頼れる仲間が出来てからだ。何の力もない自分が一人で拡声器を使うのは自殺行為に等しい。  とにかく、このホテルに留まっていても得られる物は何もない。今は情報収集と、他の参加者を見つける為に移動するしかなかった。 (先はまだまだ長そうですが、諦める訳にはいきません。私が頑張らなければ、この殺し合いだって止められないかもしれませんから)      ※※※  黒の名を持つアバター達との戦闘を乗り越えたフォルテは、E-8エリアのショップに並んでいる商品を見ていた。  ここには武器や各種チップを始めとする様々な武器や、更には参加者名簿というアイテムまで存在する。参加者名簿とは、殺し合いに参加させられた人間やAIどもの名前が書かれているのだろう。名前の通りの代物だが、有益なことに変わらない。  だが、フォルテにはそれをわざわざ手にする必要があるのか疑問だった。どうせ破壊すると決めた者達の名前をわざわざ知った所で大した意味があるとも思えない。  とはいえ、買わなければその真価を知ることはできないだろう。250ポイントの価値があるのだから、ただ参加者の名前だけが書かれている訳ではないかもしれない。例え名前だけしかなくても、それならば破壊するだけだ。 (人間どもによって生み出された施設を利用する羽目になるとは皮肉なものだ……)  フォルテは今の自分の姿を思い返して自嘲する。  回復する為の手段を捜す為にショップを訪れたが、これでは愚かな人間どもと同じだった。 (人間どもに生み出されたオレが、人間どもと同じことをする……つくづく因果なものだ。だが、それも人間どもを消し去ってしまえば関係なくなる)  しかしフォルテはすぐに思案を振り払う。  ここに来たのは回復アイテムを見つける為であって、感傷に浸る場合ではない。傷を治して、再び狩り場へと戻る。それだけだ。  回復アイテムの欄には見覚えのあるリカバリー系のチップは全て揃っている。加えて回復ポーションという物や、治癒の水というアイテムまであった。どれも効果は高いらしいが、その分だけポイントも消耗する。  ここは下手にポイントを惜しまないで確実な回復をするべきだ。ポイントを惜しんで半端な回復しかせず、それが原因で敗北などしては笑い話にもならない。  HPを完全に回復させる完治の水を一つ買う為に必要なのは500ポイント。問題ない。  他の回復アイテムは安いがどれも大した効果しか持たない。手元に置いてもいいだろうが、そこまで役に立つとも思えなかった。武器の類も回復アイテムを買ってしまっては入手できなくなるが、目的ではないので構わない。  フォルテは500ポイントを消費して完治の水を手に入れて、それを使う。すると、先程まで減少していたHPがみるみるうちに回復していった。  これでまた戦うことができる。戦い、全ての物を破壊することができる。  効果を実感したフォルテは、参加者名簿の方に目を向ける。残るポイントさえ使えばそれを買うことができるが、未だに悩んでいた。 (そういえば、あのキリトという人間とシルバー・クロウという人間は顔見知りだったな……ならば、この殺し合いにはオレの知っている奴らも紛れ込んでいるのか?)  キリトとシルバー・クロウとの戦いをフォルテは思い出す。  奴らのやり取りを見る限り、どうも顔見知りらしい。それを考えると、この殺し合いは顔見知り同士の戦いが起こる可能性だってある。元の世界での関係を問わず。  それに思い当ったフォルテは残る全てのポイントを使い、参加者名簿を手に入れる。そして名簿を開いた瞬間、フォルテは目を見開いた。 「キリトにシルバー・クロウ……それに、ロックマン! なるほど、キサマまでこの世界にいるとは……」  参加者名簿に書かれているのはフォルテが戦ってきた者達の名前だけではない。何と、元の世界で戦ったことのあるネットナビの名前も書かれているのだ。  奴との戦いがこの世界でもできる……そう考えた瞬間、フォルテは微かながらの笑みを浮かべる。 「キサマまでもがいるとは、どうやら楽しみはまた一つ増えたようだな……」  弱者の割には見込みのあるロックマンも仕留めたいが、過度な期待はしない。奴が自分と戦う前にデリートされたら、それだけのナビだったと言うだけ。  何にせよ、あのネットナビもこの仮想世界の何処かにいる。それが確証できただけでも、参加者名簿を手に入れた甲斐があるだろう。  もうこのショップに長居は無用だ。ダメージを回復させたからには、次の参加者を捜すしかない。  フォルテは空高く跳躍して、戦場を疾走した。 「キリト、シルバー・クロウ、ロックマン……待っていろ、人間とネットナビどもよ!」  駆け抜けるフォルテは静かに呟く。  彼が次にどこへ向かうのかはまだ誰にもわからなかった。      ※※※ 「……危なかった。もう少し前進していたら、彼に見つかる所でした」  E-9エリアに存在する小さな建物の陰で、ミーナは呟く。  ホテルを離れて、再び快速のタリスマンを使ってアプドゥを発動させた彼女は、E-9エリア経由でE-8エリアのショップを目指して走っていた。不幸にも、発動している最中も誰とも出会うことはなく、あっという間に効果が切れてしまう。  しかしショップまでそこまで遠くなかったので、気を取り直してショップに向かおうとした。その直後、この都市の雰囲気に合わないような人影を発見したのだ。  ボロボロのローブを纏ったその参加者に、ミーナは見覚えがある。名前はわからないが、殺し合いのオープニングが行われた空間で轟音を響かせた人物だ。  記憶が正しければ、彼は周りの参加者などまるで気に掛けずに攻撃していた。素性はわからないが、危険人物である可能性は高い。そんな人物と接触なんかしたら、100%の確率で殺されてしまう。  ミーナは再びアプドゥを発動させて逃げようとしたが、そう思った矢先にフォルテはここから去っていく。距離がそれなりに離れていたおかげで、気付かれずに済んだのだ。 「まさか、彼がこんな近くのエリアにいたなんて……もしもさっきのホテルで拡声器を使っていたら、見つかっていたかもしれませんよ……」  ホッ、とミーナは一息をつく。  参加者と巡り合えない不幸を嘆いていたが、今だけは不幸中の幸いと呼ぶべきかもしれない。もっとも、ここから誰とも会えないままなのは嫌だが。 「とにかく、今はショップに向かいましょう……どうか、友好的な人と出会えますように」  ミーナは祈る。  あの空飛ぶ妖精とも出会いたいが、今になって考えると彼女が信頼できるかどうかはわからない。もしかしたら、あのローブを纏ったアバターのように危険人物である可能性もある。  話をしていない内からこんなことを言うのは失礼だろうが、それでもやはり不安だった。  でも、彼女とも力を合わせられるなら合わせたい。そう、ミーナは強く願っていた。 [E-9/アメリカエリア/午前] 【ミーナ@パワプロクンポケット12】 [ステータス]:健康 [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1(本人確認済み)、快速のタリスマン×3@.hack、拡声器 [思考] 基本:ジャーナリストのやり方で殺し合いを打破する 。 0:ショップに向かう。 1:殺し合いの打破に使える情報を集める。 2:ある程度集まったら拡声器で情報を発信する。 3:榊と会話していた拘束具の男(オーヴァン)、白衣の男(トワイス)、ローブを纏った男(フォルテ)を警戒。 4:ダークマンは一体? 5:他の参加者にバグについて教えたいが、そのタイミングは慎重に考える。 [備考] ※エンディング後からの参加です。 ※この仮想空間には、オカルトテクノロジーで生身の人間が入れられたと考えています。 ※現実世界の姿になりました。 ※ダークマンに何らかのプログラムを埋め込まれたかもしれないと考えています。 [E-8/アメリカエリア・ショップ付近/午前] 【フォルテ@ロックマンエグゼ3】 [ステータス]:HP100%、MP40/70 [装備]:{死ヲ刻ム影、ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個、参加者名簿 [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 1:アメリカエリア経由でアリーナへ向かう。 2:ショップをチェックし、HPを回復する手段を探す。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:シルバー・クロウの使ったアビリティ(心意技)に強い興味。 5:キリトに対する強い苛立ち。 6:ロックマンを見つけたらこの手で仕留める。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※バルムンクのデータを吸収したことにより、以下のアビリティを獲得しました。 •剣士(ブレイドユーザー)のジョブ設定 ・『翼』による飛行能力 ※レンのデータを吸収したことにより、『成長』または『進化の可能性』を獲得しました。 ※ポイントを全て消費しました。 ※参加者名簿を手に入れたのでロックマンがこの世界にいることを知りました。 【備考】 ※E-8エリアのショップには完治の水@.hack//が500ポイントで売られています。 ※参加者名簿は250ポイントで売られています。 ※回復ポーション及び治癒の水を始めとする他のアイテムが何ポイントで売られているかは後続の書き手さんにお任せします。 ※ただし、上記のポイントはE-8エリアのショップの値段なので、他のエリアのショップで売られているアイテムも同じ値段とは限りません。 |072:[[夢みるアバター! 失った仲間たち]]|投下順に読む|074:[[Roots:/殺戮のマトリックスエッジ]]| |072:[[夢みるアバター! 失った仲間たち]]|時系列順に読む|074:[[Roots:/殺戮のマトリックスエッジ]]| |063:[[顔のない王]]|フォルテ|082:[[空の境界・――遥かに羽撃く]]| |069:[[プレイ時間 6時間21分]]|ミーナ|087:[[Investigate;調査]]|
 豪華絢爛な輝きが至る所より放たれているが、人の気配は微塵も感じられない。シャンデリアやソファーはとても高級であるにも関わらず、ここまで静謐だと薄気味悪さを感じてしまう。  それでいて、内部は埃一つも落ちていない。ここ、F-9エリアのホテルではまだ戦いは起こっていないとミーナは思う。尤も、ホテルだって戦場の一角だから、いつ戦火が飛んだとしてもおかしくないが。  ダークマンという闇の殺し屋を自称した不気味な人物と出会ってから、ミーナは情報収集の為にホテルに訪れたが、ここでも何も得られない。他の参加者を捜してみたが、一向に見つからなかった。もしかしたら入れ違いになっただけで、今もこのホテルの何処かにいるかもしれないが、捜す為にまたホテルを見て回るのは流石に骨が折れる。  もしも本当に自分以外の誰もいなかったら、それこそ時間を無駄に消耗するだけだ。それくらいなら、他の場所に向かう方がずっと有意義だろう。 (それにしても、あのダークマンという人は一体何者だったのでしょう……やはり、運営側のアバターなのでしょうか? 私の名前を一瞬で当てたのですから)  ソファーのゆったりとした感触を腰で感じながら、ミーナは思案を巡らせる。  ダークマンはいきなり現れたと思ったら、メールで告げられる死者のことや【設定】画面から入力できるアバターの変更機能について説明をしてきた。有益な情報だったが、どうしてわざわざ説明してくれたのかが理解できなかった。  まさか、殺し合いが始まってからもう六時間以上も経過するのに誰とも会えなかった自分に哀れみを感じて、運営側が特別に情報を提供してくれたのか? そんな可能性が芽生えたが、それが本当ならあまりにも恥ずかしかったのですぐに否定する。  例え情報を提供するにしても、自分は殺し合いを打ち破る方針でいる。それは運営側も把握しているはずだ。それにも関わらずに情報を与えたということは、自分は見縊られていることになる。 (……そういえば、ダークマンはデータを取ったと言っていましたが、あれは何を意味しているのでしょう? 私に、特別なデータなんてないはずなのに)  現実の世界ではジャーナリストとして活動をして、インターネットの世界ではネットゲームの初心者に過ぎない。そんなミーナを詳しく解析したって、何も出てくる訳がない。精々、野球選手としてのデータや所属するデンノーズのポジションくらいだ。  そんなものをわざわざ得る必要があるとはとても思えない。  殺し合いの場に放り込まれてからも、やったことと言えば快速のタリスマンを使って移動速度を上げたことだけ。  そこまで考えた所で、ミーナはバグと接触した時のことを思い出した。 (まさか、彼らは私がこの殺し合いの根底に関する何かの情報を掴んだと思って、ダークマンを差し向けたのでしょうか? あの時、私が見た光景を他の参加者に話されたら、そこから何らかの不備が起こってしまう可能性だって0とは言い切れません。それを潰す為に、運営側は私に接触した……?)  可能性は次々に浮かび上がってくる。  ダークマンは自分に振れた際に、何か奇妙なプログラムをアバター内に潜ませたことだって考えられる。あのバグのことを他の参加者に話したら即座に記憶を消去されてしまうか、あるいはその瞬間にこのアバター内に潜ませたウイルスが発動して強制的にデリートされるか……そんな不安がミーナの脳裏に浮かんでいく。  もちろん、これがただの杞憂であることだってあり得た。バグの処置を済ませているのなら、例え他の参加者に話した所でどうにもならないかもしれない。  それでも、この情報を話すタイミングを見計らわなければならなかった。あるいは、自分に何かがあっても他の誰かに伝わるように、何らかの形にして残すべきか。 (何にせよ、ここまで誰とも出会えないのは辛いですね……だからといって、ここで拡声器を使うのもリスクが大きすぎます。もしもこのアメリカエリアに集まったのが危険人物ばかりだったら……いいえ、流石にそれは考えすぎですね)  何にせよ、今はまだその時ではない。  仮に拡声器を使うとしても、頼れる仲間が出来てからだ。何の力もない自分が一人で拡声器を使うのは自殺行為に等しい。  とにかく、このホテルに留まっていても得られる物は何もない。今は情報収集と、他の参加者を見つける為に移動するしかなかった。 (先はまだまだ長そうですが、諦める訳にはいきません。私が頑張らなければ、この殺し合いだって止められないかもしれませんから)      ※※※  黒の名を持つアバター達との戦闘を乗り越えたフォルテは、E-8エリアのショップに並んでいる商品を見ていた。  ここには武器や各種チップを始めとする様々な武器や、更には[[参加者名簿]]というアイテムまで存在する。参加者名簿とは、殺し合いに参加させられた人間やAIどもの名前が書かれているのだろう。名前の通りの代物だが、有益なことに変わらない。  だが、フォルテにはそれをわざわざ手にする必要があるのか疑問だった。どうせ破壊すると決めた者達の名前をわざわざ知った所で大した意味があるとも思えない。  とはいえ、買わなければその真価を知ることはできないだろう。250ポイントの価値があるのだから、ただ参加者の名前だけが書かれている訳ではないかもしれない。例え名前だけしかなくても、それならば破壊するだけだ。 (人間どもによって生み出された施設を利用する羽目になるとは皮肉なものだ……)  フォルテは今の自分の姿を思い返して自嘲する。  回復する為の手段を捜す為にショップを訪れたが、これでは愚かな人間どもと同じだった。 (人間どもに生み出されたオレが、人間どもと同じことをする……つくづく因果なものだ。だが、それも人間どもを消し去ってしまえば関係なくなる)  しかしフォルテはすぐに思案を振り払う。  ここに来たのは回復アイテムを見つける為であって、感傷に浸る場合ではない。傷を治して、再び狩り場へと戻る。それだけだ。  回復アイテムの欄には見覚えのあるリカバリー系のチップは全て揃っている。加えて回復ポーションという物や、治癒の水というアイテムまであった。どれも効果は高いらしいが、その分だけポイントも消耗する。  ここは下手にポイントを惜しまないで確実な回復をするべきだ。ポイントを惜しんで半端な回復しかせず、それが原因で敗北などしては笑い話にもならない。  HPを完全に回復させる完治の水を一つ買う為に必要なのは500ポイント。問題ない。  他の回復アイテムは安いがどれも大した効果しか持たない。手元に置いてもいいだろうが、そこまで役に立つとも思えなかった。武器の類も回復アイテムを買ってしまっては入手できなくなるが、目的ではないので構わない。  フォルテは500ポイントを消費して完治の水を手に入れて、それを使う。すると、先程まで減少していたHPがみるみるうちに回復していった。  これでまた戦うことができる。戦い、全ての物を破壊することができる。  効果を実感したフォルテは、参加者名簿の方に目を向ける。残るポイントさえ使えばそれを買うことができるが、未だに悩んでいた。 (そういえば、あのキリトという人間とシルバー・クロウという人間は顔見知りだったな……ならば、この殺し合いにはオレの知っている奴らも紛れ込んでいるのか?)  キリトとシルバー・クロウとの戦いをフォルテは思い出す。  奴らのやり取りを見る限り、どうも顔見知りらしい。それを考えると、この殺し合いは顔見知り同士の戦いが起こる可能性だってある。元の世界での関係を問わず。  それに思い当ったフォルテは残る全てのポイントを使い、参加者名簿を手に入れる。そして名簿を開いた瞬間、フォルテは目を見開いた。 「キリトにシルバー・クロウ……それに、[[ロックマン]]! なるほど、キサマまでこの世界にいるとは……」  参加者名簿に書かれているのはフォルテが戦ってきた者達の名前だけではない。何と、元の世界で戦ったことのあるネットナビの名前も書かれているのだ。  奴との戦いがこの世界でもできる……そう考えた瞬間、フォルテは微かながらの笑みを浮かべる。 「キサマまでもがいるとは、どうやら楽しみはまた一つ増えたようだな……」  弱者の割には見込みのあるロックマンも仕留めたいが、過度な期待はしない。奴が自分と戦う前にデリートされたら、それだけのナビだったと言うだけ。  何にせよ、あのネットナビもこの仮想世界の何処かにいる。それが確証できただけでも、参加者名簿を手に入れた甲斐があるだろう。  もうこのショップに長居は無用だ。ダメージを回復させたからには、次の参加者を捜すしかない。  フォルテは空高く跳躍して、戦場を疾走した。 「キリト、シルバー・クロウ、ロックマン……待っていろ、人間とネットナビどもよ!」  駆け抜けるフォルテは静かに呟く。  彼が次にどこへ向かうのかはまだ誰にもわからなかった。      ※※※ 「……危なかった。もう少し前進していたら、彼に見つかる所でした」  E-9エリアに存在する小さな建物の陰で、ミーナは呟く。  ホテルを離れて、再び快速のタリスマンを使ってアプドゥを発動させた彼女は、E-9エリア経由でE-8エリアのショップを目指して走っていた。不幸にも、発動している最中も誰とも出会うことはなく、あっという間に効果が切れてしまう。  しかしショップまでそこまで遠くなかったので、気を取り直してショップに向かおうとした。その直後、この都市の雰囲気に合わないような人影を発見したのだ。  ボロボロのローブを纏ったその参加者に、ミーナは見覚えがある。名前はわからないが、殺し合いのオープニングが行われた空間で轟音を響かせた人物だ。  記憶が正しければ、彼は周りの参加者などまるで気に掛けずに攻撃していた。素性はわからないが、危険人物である可能性は高い。そんな人物と接触なんかしたら、100%の確率で殺されてしまう。  ミーナは再びアプドゥを発動させて逃げようとしたが、そう思った矢先にフォルテはここから去っていく。距離がそれなりに離れていたおかげで、気付かれずに済んだのだ。 「まさか、彼がこんな近くのエリアにいたなんて……もしもさっきのホテルで拡声器を使っていたら、見つかっていたかもしれませんよ……」  ホッ、とミーナは一息をつく。  参加者と巡り合えない不幸を嘆いていたが、今だけは不幸中の幸いと呼ぶべきかもしれない。もっとも、ここから誰とも会えないままなのは嫌だが。 「とにかく、今はショップに向かいましょう……どうか、友好的な人と出会えますように」  ミーナは祈る。  あの空飛ぶ妖精とも出会いたいが、今になって考えると彼女が信頼できるかどうかはわからない。もしかしたら、あのローブを纏ったアバターのように危険人物である可能性もある。  話をしていない内からこんなことを言うのは失礼だろうが、それでもやはり不安だった。  でも、彼女とも力を合わせられるなら合わせたい。そう、ミーナは強く願っていた。 [E-9/アメリカエリア/午前] 【ミーナ@パワプロクンポケット12】 [ステータス]:健康 [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1(本人確認済み)、快速のタリスマン×3@.hack、拡声器 [思考] 基本:ジャーナリストのやり方で殺し合いを打破する 。 0:ショップに向かう。 1:殺し合いの打破に使える情報を集める。 2:ある程度集まったら拡声器で情報を発信する。 3:榊と会話していた拘束具の男(オーヴァン)、白衣の男(トワイス)、ローブを纏った男(フォルテ)を警戒。 4:ダークマンは一体? 5:他の参加者にバグについて教えたいが、そのタイミングは慎重に考える。 [備考] ※エンディング後からの参加です。 ※この仮想空間には、オカルトテクノロジーで生身の人間が入れられたと考えています。 ※現実世界の姿になりました。 ※ダークマンに何らかのプログラムを埋め込まれたかもしれないと考えています。 [E-8/アメリカエリア・ショップ付近/午前] 【フォルテ@ロックマンエグゼ3】 [ステータス]:HP100%、MP40/70 [装備]:{死ヲ刻ム影、ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1個、参加者名簿 [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 1:アメリカエリア経由でアリーナへ向かう。 2:ショップをチェックし、HPを回復する手段を探す。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:シルバー・クロウの使ったアビリティ(心意技)に強い興味。 5:キリトに対する強い苛立ち。 6:ロックマンを見つけたらこの手で仕留める。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※バルムンクのデータを吸収したことにより、以下のアビリティを獲得しました。 •剣士(ブレイドユーザー)のジョブ設定 ・『翼』による飛行能力 ※レンのデータを吸収したことにより、『成長』または『進化の可能性』を獲得しました。 ※ポイントを全て消費しました。 ※参加者名簿を手に入れたのでロックマンがこの世界にいることを知りました。 【備考】 ※E-8エリアのショップには完治の水@.hack//が500ポイントで売られています。 ※参加者名簿は250ポイントで売られています。 ※回復ポーション及び治癒の水を始めとする他のアイテムが何ポイントで売られているかは後続の書き手さんにお任せします。 ※ただし、上記のポイントはE-8エリアのショップの値段なので、他のエリアのショップで売られているアイテムも同じ値段とは限りません。 |072:[[夢みるアバター! 失った仲間たち]]|投下順に読む|074:[[Roots:/殺戮のマトリックスエッジ]]| |072:[[夢みるアバター! 失った仲間たち]]|時系列順に読む|074:[[Roots:/殺戮のマトリックスエッジ]]| |063:[[顔のない王]]|フォルテ|082:[[空の境界・――遥かに羽撃く]]| |069:[[プレイ時間 6時間21分]]|ミーナ|087:[[Investigate;調査]]|

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