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宿命の刻 - (2020/06/13 (土) 18:17:15) の1つ前との変更点

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     5◆◆◆◆◆  そうして、俺たちはゴブリンズを相手にギリギリの勝利を納めた。  勝利と同時に、ネットスラムに跋扈していた大量のエネミーは消滅し、トラップも起動しなくなる。みんなで捕まえたゴブリンたちは、敗北を認めたのか頷いていた。 「ゴ、ゴブ……また負けたでゴブ~! 悔しいが、あんた達の走りのテクと機転の良さは見事だったゴブよ」  マルチナからは先程までの覇気は微塵も感じられない。もう、俺たちにとっての脅威にはならないはずだ。  そして、撃破数に応じてランキングも決まる。直接撃破した俺とジローさん、そして黒雪にゴブリン捕獲のカウントが加えられ、ナビゲーターを勤めていたユイやアーチャーには加算されていない。  俺とジローさんが同率一位で、黒雪が二位になる。ユイには何も与えられないことだけが不満だが、文句を言っても仕方がない。   「約束通り、あんた達にはアイテムを渡すゴブ……勝者になったあんた達への褒美ゴブよ。  しかし! 例え、何度敗れようとも……あたしたちのプライドは折れてないでゴブ! 再び来るのであれば、ゴールド・ゴブリンズは応えるでゴブよ!  その時まで、あんたたちには敗北することなど許さないでゴブ!」  その叫びを最後に、マルチナたちゴールド・ゴブリンズはネットスラムから去っていく。卑怯なトラップは仕掛けたけど、勝者に対する敬意は忘れていなかったから、元々のゲームでは悪い奴らではないのかもしれない。  もっとも、レースのリターンマッチに付き合える余裕はないけど…… 「皆さん、お疲れ様です」  そして、俺たちの働きをねぎらってくれるのはユイだった。 「ああ。あいつらのトラップには苦労したけど、どうにか勝てたな……みんな、ありがとう。  特にジローさんのアイディアがあったから、逆転ができた」 「……キリト、ごめんよ。俺が無謀なことを言ったせいで、みんなを危険な目に遭わせちゃって」 「何を言ってるんだ! 一度にゴブリンを3体も捕まえられたのは、ジローさんとアーチャーがいたからこそだ!  俺だって、ユイがいたからあいつらをぶっ飛ばすことができたし、この通りピンピンしてる。だから、ジローさんを責める理由なんてないさ!」 「その通りガキーン!」  落ち込むジローさんを励ましていると、今度はクソアイアンが割り込んでくる。 「我が主よ。あの圧倒的な状況を打ち破る策を生み出した、その機転の良さには敬意を感じるでガキーン! やはり、あなたこそが我が主と呼ぶにふさわしいでガキーン!」 「アイアン……」 「これからも、我が主には忠誠を誓うでガキーン……もしも、また何かあったらその笛で呼んでほしいガキーン!」  そして、役割を果たして満足したのか、クソアイアンは姿を消した。  ユニークな奴だったが、誠実なことは確かだった。ジローさんとアーチャーのことをきちんとサポートしてくれたし、何よりも彼がいなければ俺たちの勝利はなかった。立派な対主催騎士団のメンバーと呼ぶにふさわしい。  いつか、また力を借りる時が来るかもしれないが、その時まで彼には休んでもらおう。 「……さて、果たして何がゲットできたのやら」  俺はストレージを操作しながら、このイベントで得られたアイテムを探す。  ここまで苦労したからには、相応の対価があるはずだ。この殺し合いの鍵を握るとまではいかなくても、何か大きな効果を秘めたアイテムが支給されてもおかしくない。  微かな期待と共に指を動かしていくが、ストレージに書かれた名前を見て、俺の指はすぐに止まってしまった。 「……何……!?」  口から出てきた声は震えていて、自分の目を疑っている。  瞼をこすり、再び凝視するけど俺の前に表示された名前は微塵も変わらない。そのまま、オブジェクト化を選ぶと、それは俺の手中で実体化された。  かつて、アインクラッドに囚われた俺が守りたいと思った少女……サチが俺のために残してくれた、あのメッセージ録音クリスタルだ。 「キリト……? それは、いったいなんだ?」 「サチの、クリスタル……」 「えっ?」 「サチが、俺のために残してくれたクリスタルだ……俺のためのメッセージが録音された、あのクリスタルだ……!」  その瞬間、ジローさんだけでなく、周りにいるみんなが絶句するけど、今の俺に返答する余裕などない。  クリスタルの形と、放たれる淡い輝きには見覚えがある。このクリスタルの中に、かつての俺を救ってくれたサチの想いが凝縮されていた。ここでクリスタルに触れれば、サチの歌声が再生されて、そして俺が思い出せないサチの最後の言葉を聞くことができるだろう。  しかし、クリスタルのメッセージを聞くことができない。  この指が動かなかった。サチを守れず、遠い過去の世界に置いて来てしまった俺に、今更サチの言葉を聞く資格があるとは思えなかった。 ――キリト、それでお前は何を選ぶ?――  不意に、AIDAによって生み出された過去の世界で聞いた、オーヴァンからの問いかけが脳裏に蘇る。 ――何時か私も、貴方の未来に追いつけるかな――  そして、そう言い残しながら”オワリ”を選んだサチの笑顔も、続くように蘇る。  あれから俺は、未来のために戦ったはずだった。そうして、サチに続いてアスナまでも失ってしまったけど、今を生きているユイを守るために戦うと誓った。けれど、また迷いが生まれてしまう。  サチが生きていた証が、こうして手のひらの中に戻ってきた。その事実に俺の胸中は乱れてしまい、息も乱れていく。  だけど………… 「ようやく見つけたぞ! キリトッ!」  俺を呼ぶ叫び声によって、沈みかけた意識が強制的に覚醒した。  この声を忘れるわけがない。このデスゲームで二度も激突した宿敵であり、雌雄を決することを互いに臨んだ相手だ。奴の声を聞いたことで、俺は反射的にSAOアバターに切り替えながら、クリスタルをポケットにしまう。  振り返ると、やはり奴の姿が目に飛び込んできた。俺と同じように、黒を基調としたカラーリングの死神……フォルテの姿が。 「お前は……フォルテ!」  その名を叫びながら、俺は双剣を構えた。         † 「なるほど、こんな所にいたとはね」  フォルテがキリトたちと遭遇する場面を、少し離れた場面で視認している男がいる。  その名をオーヴァン。彼もまた、遅れてネットスラムに到着して、キリトたちを発見した。フォルテとの協力を榊より指示されたが、フォルテにその意思が感じられないため、単独行動を取る羽目になる。  もっとも、オーヴァンとしてはそれで構わない。自分たちの目的はユイの確保であり、キリトたちはあくまで障害物に過ぎず、フォルテは自ら排除を引き受けようとしている。あとは、隙を見てユイを捕えるだけだ。 「彼らの意識は、皆フォルテに向いている。今のフォルテなら、キリトを含めた3人を上手く抑えてくれるだろう……」  キリトだけでなく、他の三人もフォルテを睨みつけている。全員、死神とは深い因縁で繋がっているはずだが、オーヴァンは特に興味を示さない。  一応、フォルテも榊からユイの確保を命じられてはいるものの、戦いの衝動でキリトごとユイをデリートする危険もある。その前に、まずはユイを捕える方法を考えなければいけない。  すべては”真実”を知るため。それぞれの因縁が絡み合った戦いが訪れるのを、オーヴァンは待ち望んでいた。 「さあ、宿命の刻が訪れた。ここが正念場となるだろう」 【A-10/ウラインターネット・ネットスラム/一日目・真夜中】 【Bチーム:ネットスラム攻略組】 【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】 [ステータス]:HP70%/デュエルアバター 、令呪一画、徐々に芽生えつつある憎しみ [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3、{エリアワード『絶望の』×2、『選ばれし』×2 、noitnetni.cyl_1-2、エリアワード『虚無』、noitnetni.cyl_3 }@.hack//、{インビンシブル(大破)、パイル・ドライバー、サフラン・ハート、サフラン・ヘルム、サフラン・ガントレット、サフラン・アーマー、サフラン・ブーツ、ゲイル・スラスター}@アクセル・ワールド、破邪刀@Fate/EXTRA、死のタロット@.hack//G.U.、ヴォーパルの剣@Fate/EXTRA、アンダーシャツ@ロックマンエグゼ3、蒸気バイク・狗王@.hack//G.U. 、不明アイテム×1 [ポイント]:358ポイント/0kill(+1) [思考] 基本:バトルロワイアルには乗らない。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:ハルユキ君やニコの仇を取る為にも、キリト君やハセヲ君と共にオーヴァンを打倒する。 3:どんな手段を使おうとも、オーヴァンや榊たちを倒してみせる。 [サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド) [ステータス]:ダメージ(中)、魔力消費(中) [備考] ※時期は少なくとも9巻より後。 【ジロー@パワプロクンポケット12】 [ステータス]:HP100%、リアルアバター [装備]:DG-0@.hack//G.U.(4/4、一丁のみ) [アイテム]:基本支給品一式、ピースメーカー@アクセル・ワールド、非ニ染マル翼@.hack//G.U.、治癒の雨×2@.hack//G.U. 、プチグソの笛@.hack// 、不明支給品0~1(本人確認済み) 、不明アイテム×1 [ポイント]:0ポイント/1kill [思考] 基本:殺し合いには乗らない。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:ユイちゃんの事も、可能な限り守る。 3:『オレ』の言葉が気になる…………。 4:レンのことを忘れない。 5:みんなの為にも絶対に生きる。 6:黒雪姫のことが心配。 [備考] ※主人公@パワプロクンポケット12です。 ※「逃げるげるげる!」直前からの参加です。 ※パカーディ恋人ルートです。 ※使用アバターを、ゲーム内のものと現実世界のものとの二つに切り替えることができます。 【キリト@ソードアート・オンライン】 [ステータス]:HP65%、MP90%(+50)、疲労(大)、SAOアバター [装備]:{虚空ノ幻、虚空ノ影、蒸気式征闘衣}@.hack//G.U.、小悪魔のベルト@Fate/EXTRA、{ダークリパルサー、ユウキの剣、死銃の刺剣、エリュシデータ}@ソードアート・オンライン [アイテム]:折れた青薔薇の剣@ソードアート・オンライン、黄泉返りの薬×1@.hack//G.U.、桜の特製弁当@Fate/EXTRA、ナイト・ロッカー@アクセル・ワールド、不明支給品0~1個(水系武器なし) 、プリズム@ロックマンエグゼ3、サチのクリスタル@ソードアート・オンライン、基本支給品一式 [ポイント]:200ポイント/0kill(+1) [思考・状況] 基本:みんなの為にも戦い、そしてデスゲームを止める。 0:今はフォルテと戦う。 1:ユイのことを……絶対に守る。 2:ハセヲやロータスと共にオーヴァンと戦う。 [備考] ※参戦時期は、《アンダーワールド》で目覚める直前です。 ※使用アバターに応じてスキル・アビリティ等の使用が制限されています。使用するためには該当アバターへ変更してください。 SAOアバター>ソードスキル(無属性)及びユニークスキル《二刀流》が使用可能。 ALOアバター>ソードスキル(有属性)及び魔法スキル、妖精の翅による飛行能力が使用可能。 GGOアバター>《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。 ※MPはALOアバターの時のみ表示されます(装備による上昇分を除く)。またMPの消費及び回復効果も、表示されている状態でのみ有効です。 【ユイ@ソードアート・オンライン】 [ステータス]:HP100%、MP60/70、『痛み』に対する恐怖、『死』の処理に対する葛藤/通常アバター、サチ/ヘレンに対する複雑な想い、オーヴァンやフォルテへの憎しみ/ピクシー、キリトの胸ポケットの中 [装備]:空気撃ち/三の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:セグメント3@.hack//、第二相の碑文@.hack//G.U.、桜の特製弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式 [ポイント]:0ポイント/0kill [思考] 基本:パパとママ(キリトとアスナ)の元へ帰る。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:『痛み』は怖いけど、逃げたくない。 3:また“握手”をしてみたい。 4:『死』の処理は…… 5:危険人物を警戒する。 6:私にも、碑文は使えるだろうか……。 7:サチ/ヘレンさんの行いは許せないけど、憎まない。 8:オーヴァンやフォルテのことは絶対に許さない。 [備考] ※参戦時期は原作十巻以降。 ※《ナビゲーション・ピクシー》のアバターになる場合、半径五メートル以内に他の参加者がいる必要があります。 ※リーファを殺害したのはラニ=Ⅷであるかもしれないことを知りました。 ※サチ/ヘレンとキリトの間に起こったことを知りましたが、それを憎むつもりはありません。 【フォルテGX・レボリューション@ロックマンエグゼ3(?)】 [ステータス]:HP???%、MP???%(HP及びMP閲覧不可)、PP100%、激しい憤怒、心意覚醒、憑神覚醒 [AIDA]<Gospel>(第七相の碑文を完全に取り込んでいます) [装備]:ジ・インフィニティ@アクセル・ワールド、{ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:{ダッシュコンドル、フルカスタム}@ロックマンエグゼ3、完治の水×2@.hack//、黄泉返りの薬×2@.hack//G.U、SG550(残弾24/30)@ソードアート・オンライン、{マガジン×4、ロープ}@現実、不明支給品0~4個(内0~2個が武器以外)、参加者名簿、基本支給品一式×2 [ポイント]:1120ポイント/7kill(+2) [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 0:キリトたちとの決着をつける。 1:仲間との絆を力とするキリトを倒し、今度こそ己が力を証明する。 2:すべてをデリートする。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:ゲームに勝ち残り、最後にはオーヴァンや榊たちを破壊する。 5:オラクルが警告した“災い”とやらも破壊する。 6:ネットスラムに辿り着いたら、一応はユイの身柄も確保する。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※『第七相の碑文』の覚醒及び『進化の可能性』の影響により、フォルテGXへと変革しました。  またそれに伴い獲得アビリティが統合・最適化され、以下の変化が発生しました。 〇『進化の可能性』の影響を受け、『救世主の力』をベースに心意技を習得しました。  心意技として使用可能な攻撃はエグゼ4以降のフォルテを参考にしています。 〇AIDA<????>がAIDA<Gospel>へと進化しました。ただし、元となったAIDAの自我及び意識は残っていません。  また第七相の碑文はAIDA<Gospel>に完全に吸収されています。 〇碑文の覚醒に伴いデータドレインを習得し、さらにゲットアビリティプログラムと統合されました。  これによりフォルテのデータドレインは、通常のデータドレインと比べ強力なものとなっています。 〇オーラや未来予測など、その他のアビリティがどう変化したかは、後の書き手にお任せします。 ※オラクルを吸収し、預言の力を獲得しました。未来予測にどんな影響を与えるかは後の書き手にお任せします。 ※オラクルが警告した“災い”の姿を予言しましたが、現段階では断片のみしか見えていません。今後、どうなるかは後の書き手にお任せします。 ※オーヴァンから『忘刻の都 マク・アヌ』にて得た"情報"を聞きましたが、それほど重要視していません。 【オーヴァン@.hack//G.U.】 [ステータス]:HP100%、SP60%、PP60% [装備]:魔剣・マクスウェル@.hack//G.U. [アイテム]:{銃剣・白浪、DG-Y(8/8発)}@.hack//G.U.、{スパークブレイド、妖精のオーブ×2、ウイルスコア(T)}@.hack//、基本支給品一式 [ポイント]:1500ポイント/5kill(+0) [思考] 基本:“真実”を知る。 0:ユイの身柄を確保する。 1:利用できるものは全て利用する。 2:トワイスと<Glunwald>の反旗、そしてフォルテを警戒。 3:リコリスの調査はGM側からの信用を得てから。 4:ゲームを進めるが、必要以上にリスクを背負うつもりはない。 5:いずれコサック博士とフォルテの"真実"も知る。 6:ユイを確保したら、GMの隙を見て対主催生徒会と交渉するための鍵にする。 [備考] ※Vol.3にて、ハセヲとの決戦(2回目)直前からの参戦です。 ※サチからSAOに関する情報を得ました。 ※ウイルスの存在そのものを疑っています。 ※榊の語る“真実”――ゲーム崩壊の可能性について知りました。 ※このデスゲームにクビアが関わっているのではないかと考えていますが、確信はありません。 ※GM達は一枚岩でなく、それぞれの目的を持って行動していると考えています。 ※スケィス以外の『八相』及びAIDAがモンスターエリアにも潜んでいるかもしれないと推測しています。 ※榊からコサック博士とフォルテの過去、及びロックマンの現状について聞きました。ただしコサック博士の話に関しては虚偽が混じっていると考えています。 ※榊からこのデスゲームの黒幕がモルガナであることと、その目的を聞きました。  しかし、それが本当に“真実”の全てであるか疑問を抱いています。 |139:[[GoGo☆プチグソレース]]|投下順に読む|141:[[TRIALS of AI(1)]]| ||時系列順に読む|~| |139:[[GoGo☆プチグソレース]]|ブラック・ロータス|~| |~|キリト|~| |~|ユイ|~| |~|ジロー|~| |138:[[Secret of Ai]]|フォルテGX|~| |~|オーヴァン|~| ----
     5◆◆◆◆◆  そうして、俺たちはゴブリンズを相手にギリギリの勝利を納めた。  勝利と同時に、ネットスラムに跋扈していた大量のエネミーは消滅し、トラップも起動しなくなる。みんなで捕まえたゴブリンたちは、敗北を認めたのか頷いていた。 「ゴ、ゴブ……また負けたでゴブ~! 悔しいが、あんた達の走りのテクと機転の良さは見事だったゴブよ」  マルチナからは先程までの覇気は微塵も感じられない。もう、俺たちにとっての脅威にはならないはずだ。  そして、撃破数に応じてランキングも決まる。直接撃破した俺とジローさん、そして黒雪にゴブリン捕獲のカウントが加えられ、ナビゲーターを勤めていたユイやアーチャーには加算されていない。  俺とジローさんが同率一位で、黒雪が二位になる。ユイには何も与えられないことだけが不満だが、文句を言っても仕方がない。   「約束通り、あんた達にはアイテムを渡すゴブ……勝者になったあんた達への褒美ゴブよ。  しかし! 例え、何度敗れようとも……あたしたちのプライドは折れてないでゴブ! 再び来るのであれば、ゴールド・ゴブリンズは応えるでゴブよ!  その時まで、あんたたちには敗北することなど許さないでゴブ!」  その叫びを最後に、マルチナたちゴールド・ゴブリンズはネットスラムから去っていく。卑怯なトラップは仕掛けたけど、勝者に対する敬意は忘れていなかったから、元々のゲームでは悪い奴らではないのかもしれない。  もっとも、レースのリターンマッチに付き合える余裕はないけど…… 「皆さん、お疲れ様です」  そして、俺たちの働きをねぎらってくれるのはユイだった。 「ああ。あいつらのトラップには苦労したけど、どうにか勝てたな……みんな、ありがとう。  特にジローさんのアイディアがあったから、逆転ができた」 「……キリト、ごめんよ。俺が無謀なことを言ったせいで、みんなを危険な目に遭わせちゃって」 「何を言ってるんだ! 一度にゴブリンを3体も捕まえられたのは、ジローさんとアーチャーがいたからこそだ!  俺だって、ユイがいたからあいつらをぶっ飛ばすことができたし、この通りピンピンしてる。だから、ジローさんを責める理由なんてないさ!」 「その通りガキーン!」  落ち込むジローさんを励ましていると、今度はクソアイアンが割り込んでくる。 「我が主よ。あの圧倒的な状況を打ち破る策を生み出した、その機転の良さには敬意を感じるでガキーン! やはり、あなたこそが我が主と呼ぶにふさわしいでガキーン!」 「アイアン……」 「これからも、我が主には忠誠を誓うでガキーン……もしも、また何かあったらその笛で呼んでほしいガキーン!」  そして、役割を果たして満足したのか、クソアイアンは姿を消した。  ユニークな奴だったが、誠実なことは確かだった。ジローさんとアーチャーのことをきちんとサポートしてくれたし、何よりも彼がいなければ俺たちの勝利はなかった。立派な対主催騎士団のメンバーと呼ぶにふさわしい。  いつか、また力を借りる時が来るかもしれないが、その時まで彼には休んでもらおう。 「……さて、果たして何がゲットできたのやら」  俺はストレージを操作しながら、このイベントで得られたアイテムを探す。  ここまで苦労したからには、相応の対価があるはずだ。この殺し合いの鍵を握るとまではいかなくても、何か大きな効果を秘めたアイテムが支給されてもおかしくない。  微かな期待と共に指を動かしていくが、ストレージに書かれた名前を見て、俺の指はすぐに止まってしまった。 「……何……!?」  口から出てきた声は震えていて、自分の目を疑っている。  瞼をこすり、再び凝視するけど俺の前に表示された名前は微塵も変わらない。そのまま、オブジェクト化を選ぶと、それは俺の手中で実体化された。  かつて、アインクラッドに囚われた俺が守りたいと思った少女……サチが俺のために残してくれた、あのメッセージ録音クリスタルだ。 「キリト……? それは、いったいなんだ?」 「サチの、クリスタル……」 「えっ?」 「サチが、俺のために残してくれたクリスタルだ……俺のためのメッセージが録音された、あのクリスタルだ……!」  その瞬間、ジローさんだけでなく、周りにいるみんなが絶句するけど、今の俺に返答する余裕などない。  クリスタルの形と、放たれる淡い輝きには見覚えがある。このクリスタルの中に、かつての俺を救ってくれたサチの想いが凝縮されていた。ここでクリスタルに触れれば、サチの歌声が再生されて、そして俺が思い出せないサチの最後の言葉を聞くことができるだろう。  しかし、クリスタルのメッセージを聞くことができない。  この指が動かなかった。サチを守れず、遠い過去の世界に置いて来てしまった俺に、今更サチの言葉を聞く資格があるとは思えなかった。 ――キリト、それでお前は何を選ぶ?――  不意に、AIDAによって生み出された過去の世界で聞いた、オーヴァンからの問いかけが脳裏に蘇る。 ――何時か私も、貴方の未来に追いつけるかな――  そして、そう言い残しながら”オワリ”を選んだサチの笑顔も、続くように蘇る。  あれから俺は、未来のために戦ったはずだった。そうして、サチに続いてアスナまでも失ってしまったけど、今を生きているユイを守るために戦うと誓った。けれど、また迷いが生まれてしまう。  サチが生きていた証が、こうして手のひらの中に戻ってきた。その事実に俺の胸中は乱れてしまい、息も乱れていく。  だけど………… 「ようやく見つけたぞ! キリトッ!」  俺を呼ぶ叫び声によって、沈みかけた意識が強制的に覚醒した。  この声を忘れるわけがない。このデスゲームで二度も激突した宿敵であり、雌雄を決することを互いに臨んだ相手だ。奴の声を聞いたことで、俺は反射的にSAOアバターに切り替えながら、クリスタルをポケットにしまう。  振り返ると、やはり奴の姿が目に飛び込んできた。俺と同じように、黒を基調としたカラーリングの死神……フォルテの姿が。 「お前は……フォルテ!」  その名を叫びながら、俺は双剣を構えた。         † 「なるほど、こんな所にいたとはね」  フォルテがキリトたちと遭遇する場面を、少し離れた場面で視認している男がいる。  その名をオーヴァン。彼もまた、遅れてネットスラムに到着して、キリトたちを発見した。フォルテとの協力を榊より指示されたが、フォルテにその意思が感じられないため、単独行動を取る羽目になる。  もっとも、オーヴァンとしてはそれで構わない。自分たちの目的はユイの確保であり、キリトたちはあくまで障害物に過ぎず、フォルテは自ら排除を引き受けようとしている。あとは、隙を見てユイを捕えるだけだ。 「彼らの意識は、皆フォルテに向いている。今のフォルテなら、キリトを含めた3人を上手く抑えてくれるだろう……」  キリトだけでなく、他の三人もフォルテを睨みつけている。全員、死神とは深い因縁で繋がっているはずだが、オーヴァンは特に興味を示さない。  一応、フォルテも榊からユイの確保を命じられてはいるものの、戦いの衝動でキリトごとユイをデリートする危険もある。その前に、まずはユイを捕える方法を考えなければいけない。  すべては”真実”を知るため。それぞれの因縁が絡み合った戦いが訪れるのを、オーヴァンは待ち望んでいた。 「さあ、宿命の刻が訪れた。ここが正念場となるだろう」 【A-10/ウラインターネット・ネットスラム/一日目・真夜中】 【Bチーム:ネットスラム攻略組】 【ブラック・ロータス@アクセル・ワールド】 [ステータス]:HP70%/デュエルアバター 、令呪一画、徐々に芽生えつつある憎しみ [装備]:なし [アイテム]:基本支給品一式、不明支給品1~3、{エリアワード『絶望の』×2、『選ばれし』×2 、noitnetni.cyl_1-2、エリアワード『虚無』、noitnetni.cyl_3 }@.hack//、{インビンシブル(大破)、パイル・ドライバー、サフラン・ハート、サフラン・ヘルム、サフラン・ガントレット、サフラン・アーマー、サフラン・ブーツ、ゲイル・スラスター}@アクセル・ワールド、破邪刀@Fate/EXTRA、死のタロット@.hack//G.U.、ヴォーパルの剣@Fate/EXTRA、アンダーシャツ@ロックマンエグゼ3、蒸気バイク・狗王@.hack//G.U. 、不明アイテム×1 [ポイント]:358ポイント/0kill(+1) [思考] 基本:バトルロワイアルには乗らない。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:ハルユキ君やニコの仇を取る為にも、キリト君やハセヲ君と共にオーヴァンを打倒する。 3:どんな手段を使おうとも、オーヴァンや榊たちを倒してみせる。 [サーヴァント]:アーチャー(ロビンフッド) [ステータス]:ダメージ(中)、魔力消費(中) [備考] ※時期は少なくとも9巻より後。 【ジロー@パワプロクンポケット12】 [ステータス]:HP100%、リアルアバター [装備]:DG-0@.hack//G.U.(4/4、一丁のみ) [アイテム]:基本支給品一式、ピースメーカー@アクセル・ワールド、非ニ染マル翼@.hack//G.U.、治癒の雨×2@.hack//G.U. 、プチグソの笛@.hack// 、不明支給品0~1(本人確認済み) 、不明アイテム×1 [ポイント]:0ポイント/1kill [思考] 基本:殺し合いには乗らない。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:ユイちゃんの事も、可能な限り守る。 3:『オレ』の言葉が気になる…………。 4:レンのことを忘れない。 5:みんなの為にも絶対に生きる。 6:黒雪姫のことが心配。 [備考] ※主人公@パワプロクンポケット12です。 ※「[[逃げるげるげる!]]」直前からの参加です。 ※パカーディ恋人ルートです。 ※使用アバターを、ゲーム内のものと現実世界のものとの二つに切り替えることができます。 【キリト@ソードアート・オンライン】 [ステータス]:HP65%、MP90%(+50)、疲労(大)、SAOアバター [装備]:{虚空ノ幻、虚空ノ影、蒸気式征闘衣}@.hack//G.U.、小悪魔のベルト@Fate/EXTRA、{ダークリパルサー、ユウキの剣、死銃の刺剣、エリュシデータ}@ソードアート・オンライン [アイテム]:折れた青薔薇の剣@ソードアート・オンライン、黄泉返りの薬×1@.hack//G.U.、桜の特製弁当@Fate/EXTRA、ナイト・ロッカー@アクセル・ワールド、不明支給品0~1個(水系武器なし) 、プリズム@ロックマンエグゼ3、サチのクリスタル@ソードアート・オンライン、基本支給品一式 [ポイント]:200ポイント/0kill(+1) [思考・状況] 基本:みんなの為にも戦い、そしてデスゲームを止める。 0:今はフォルテと戦う。 1:ユイのことを……絶対に守る。 2:ハセヲやロータスと共にオーヴァンと戦う。 [備考] ※参戦時期は、《アンダーワールド》で目覚める直前です。 ※使用アバターに応じてスキル・アビリティ等の使用が制限されています。使用するためには該当アバターへ変更してください。 SAOアバター>ソードスキル(無属性)及びユニークスキル《二刀流》が使用可能。 ALOアバター>ソードスキル(有属性)及び魔法スキル、妖精の翅による飛行能力が使用可能。 GGOアバター>《着弾予測円(バレット・サークル)》及び《弾道予測線(バレット・ライン)》が視認可能。 ※MPはALOアバターの時のみ表示されます(装備による上昇分を除く)。またMPの消費及び回復効果も、表示されている状態でのみ有効です。 【ユイ@ソードアート・オンライン】 [ステータス]:HP100%、MP60/70、『痛み』に対する恐怖、『死』の処理に対する葛藤/通常アバター、サチ/ヘレンに対する複雑な想い、オーヴァンやフォルテへの憎しみ/ピクシー、キリトの胸ポケットの中 [装備]:空気撃ち/三の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:セグメント3@.hack//、第二相の碑文@.hack//G.U.、桜の特製弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式 [ポイント]:0ポイント/0kill [思考] 基本:パパとママ(キリトとアスナ)の元へ帰る。 0:目の前のフォルテに警戒。 1:ゲームをクリアする。 2:『痛み』は怖いけど、逃げたくない。 3:また“握手”をしてみたい。 4:『死』の処理は…… 5:危険人物を警戒する。 6:私にも、碑文は使えるだろうか……。 7:サチ/ヘレンさんの行いは許せないけど、憎まない。 8:オーヴァンやフォルテのことは絶対に許さない。 [備考] ※参戦時期は原作十巻以降。 ※《ナビゲーション・ピクシー》のアバターになる場合、半径五メートル以内に他の参加者がいる必要があります。 ※リーファを殺害したのはラニ=Ⅷであるかもしれないことを知りました。 ※サチ/ヘレンとキリトの間に起こったことを知りましたが、それを憎むつもりはありません。 【フォルテGX・レボリューション@ロックマンエグゼ3(?)】 [ステータス]:HP???%、MP???%(HP及びMP閲覧不可)、PP100%、激しい憤怒、心意覚醒、憑神覚醒 [AIDA]<Gospel>(第七相の碑文を完全に取り込んでいます) [装備]:ジ・インフィニティ@アクセル・ワールド、{ゆらめきの虹鱗鎧、ゆらめきの虹鱗}@.hack//G.U.、空気撃ち/二の太刀@Fate/EXTRA [アイテム]:{ダッシュコンドル、フルカスタム}@ロックマンエグゼ3、完治の水×2@.hack//、黄泉返りの薬×2@.hack//G.U、SG550(残弾24/30)@ソードアート・オンライン、{マガジン×4、ロープ}@現実、不明支給品0~4個(内0~2個が武器以外)、[[参加者名簿]]、基本支給品一式×2 [ポイント]:1120ポイント/7kill(+2) [思考・状況] 基本:全てを破壊する。生身の人間がいるならそちらを優先して破壊する。 0:キリトたちとの決着をつける。 1:仲間との絆を力とするキリトを倒し、今度こそ己が力を証明する。 2:すべてをデリートする。 3:このデスゲームで新たな“力”を手に入れる。 4:ゲームに勝ち残り、最後にはオーヴァンや榊たちを破壊する。 5:オラクルが警告した“災い”とやらも破壊する。 6:ネットスラムに辿り着いたら、一応はユイの身柄も確保する。 [備考] ※参戦時期はプロトに取り込まれる前。 ※『第七相の碑文』の覚醒及び『進化の可能性』の影響により、フォルテGXへと変革しました。  またそれに伴い獲得アビリティが統合・最適化され、以下の変化が発生しました。 〇『進化の可能性』の影響を受け、『救世主の力』をベースに心意技を習得しました。  心意技として使用可能な攻撃はエグゼ4以降のフォルテを参考にしています。 〇AIDA<????>がAIDA<Gospel>へと進化しました。ただし、元となったAIDAの自我及び意識は残っていません。  また第七相の碑文はAIDA<Gospel>に完全に吸収されています。 〇碑文の覚醒に伴いデータドレインを習得し、さらにゲットアビリティプログラムと統合されました。  これによりフォルテのデータドレインは、通常のデータドレインと比べ強力なものとなっています。 〇オーラや未来予測など、その他のアビリティがどう変化したかは、後の書き手にお任せします。 ※オラクルを吸収し、預言の力を獲得しました。未来予測にどんな影響を与えるかは後の書き手にお任せします。 ※オラクルが警告した“災い”の姿を予言しましたが、現段階では断片のみしか見えていません。今後、どうなるかは後の書き手にお任せします。 ※オーヴァンから『忘刻の都 マク・アヌ』にて得た"情報"を聞きましたが、それほど重要視していません。 【オーヴァン@.hack//G.U.】 [ステータス]:HP100%、SP60%、PP60% [装備]:魔剣・マクスウェル@.hack//G.U. [アイテム]:{銃剣・白浪、DG-Y(8/8発)}@.hack//G.U.、{スパークブレイド、妖精のオーブ×2、ウイルスコア(T)}@.hack//、基本支給品一式 [ポイント]:1500ポイント/5kill(+0) [思考] 基本:“真実”を知る。 0:ユイの身柄を確保する。 1:利用できるものは全て利用する。 2:トワイスと<Glunwald>の反旗、そしてフォルテを警戒。 3:リコリスの調査はGM側からの信用を得てから。 4:ゲームを進めるが、必要以上にリスクを背負うつもりはない。 5:いずれコサック博士とフォルテの"真実"も知る。 6:ユイを確保したら、GMの隙を見て対主催生徒会と交渉するための鍵にする。 [備考] ※Vol.3にて、ハセヲとの決戦(2回目)直前からの参戦です。 ※サチからSAOに関する情報を得ました。 ※ウイルスの存在そのものを疑っています。 ※榊の語る“真実”――ゲーム崩壊の可能性について知りました。 ※このデスゲームにクビアが関わっているのではないかと考えていますが、確信はありません。 ※GM達は一枚岩でなく、それぞれの目的を持って行動していると考えています。 ※[[スケィス]]以外の『八相』及びAIDAがモンスターエリアにも潜んでいるかもしれないと推測しています。 ※榊からコサック博士とフォルテの過去、及び[[ロックマン]]の現状について聞きました。ただしコサック博士の話に関しては虚偽が混じっていると考えています。 ※榊からこのデスゲームの黒幕がモルガナであることと、その目的を聞きました。  しかし、それが本当に“真実”の全てであるか疑問を抱いています。 |139:[[GoGo☆プチグソレース]]|投下順に読む|141:[[TRIALS of AI(1)]]| ||時系列順に読む|~| |139:[[GoGo☆プチグソレース]]|ブラック・ロータス|~| |~|キリト|~| |~|ユイ|~| |~|ジロー|~| |138:[[Secret of Ai]]|フォルテGX|~| |~|オーヴァン|~| ----

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