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生者と死者 - (2016/02/04 (木) 22:17:09) のソース

    1◆ 


 瞼を開けた先に広がるのは、あまりにも異質な空間だった。
 見渡す限り、大量の数字が羅列されていた。0から9の数値が無造作に流れていく。時折、%や#などの記号も混ざっていた。
 余りにも混沌としていて、そして一切の正気が感じられない。
 何らかのデータかもしれないが、その正体を掴むことができなかった。

「な、なんだよここは……アタシ達は、ネットスラムにいたはずだよな?」

 揺光の疑問は極めて当たり前。
 自分達は、突如として現れた新たなる敵――[[スケィス]]と呼ばれた巨人――と戦っていた。しかしスケィスが仕掛けた逃亡を[[ロックマン]]が命をかけて食い止めようとして……今に至る。
 ウラインターネットでもネットスラムでもない謎のエリアに放り込まれて、モーフィアスも困惑を隠せない。

「おい、ロックマン……ロックマン! いないのかよ!?」

 一方で揺光はロックマンの名を呼ぶが、返事はない。
 それは当然だった。エリアの崩壊に巻き込まれてしまっては、ロックマンのマトリックスが無事でいられるとは思えない。光となった彼のデータは、既に一欠けらも残っていないはずだった。
 仮にまだ生存していたとしても五体満足でいる保証はない。そうなっては、この殺し合いに生き残るなど不可能だ。
 
「ロックマン! ロックマン! いるなら出てこいよ、ロックマン!」
「……揺光」
「何だよ!?」
「お前もわかっているはずだ。ロックマンは、もう……」
「そんな風に言われて、納得できる訳ないだろ!」

 モーフィアスは口にしようとした言葉は、揺光の怒号によって掻き消されてしまう。
 周囲の光景など意に介さないように、彼女は叫び続けた。

「アイツには帰りを待ってる奴らがいた! それなのにアイツは、一人で勝手なことをして消えやがった!
 ロックマンはそれでいいかもしれないけど、そうなったら…………熱斗やメイルって奴らはどうなる!?」
「……………………」
「何でだよ……何でだよ。そいつらはロックマンを大切に想ってたんじゃないのかよ」

 やがて揺光の声は弱々しくなる。そんな彼女にかける言葉が見つからなかった。
 ロックマンの代わりになる、などと言える訳がない。このマトリックスから脱出ができる保証などないし、何よりもモーフィアスには機械との戦争が待っている。
 揺光だけを気遣う事はモーフィアスにはできなかった。

「…………エリアの崩壊によるバグを確認しに来てみれば、やはりプレイヤーがこのエリアに転移されているとは」

 そんな中、足音と共に無機質な声が聞こえる。
 思わず顔を上げた先には、白衣を纏った男が姿を現した。眼鏡と合わさっているせいか、医者の単語が脳裏に浮かび上がる。
 だが、この男から放たれるのはそんな穏やかな雰囲気ではない。始まりの地で榊が放っていたそれと同じだった。

「モーフィアスに揺光……だったかな?」
「俺達の名前を知っていると言う事は、お前は榊の仲間か」
「ああ。私は本来なら、プレイヤーと巡り会うことはないはずだが……予定通りにいかないのが常か。
 尤も榊ならば、この事態もイレギュラーとして簡単に受け入れるだろうが」

 白衣の男は淡々と語る。そこに感情が込められているようには見えない。

「へぇ……じゃあ、アンタをぶん殴ればこんな殺し合いを終わらせられるの?」

 一方で揺光は問いかけてくる。その声色には怒りが滲み出ていた。
 彼女は両手で獲物を握り締めながら、男を睨みつけている。しかし男はそんな揺光の視線など気にかけず、言葉を続けた。

「それは無理だ。仮に君達が私を倒したとしても、私が消えるだけで殺し合いには何の支障もない」
「ハッ。そんなの、やってみなけりゃ……!」
「待て、揺光!」

 揺光が飛び掛かる直前、モーフィアスはそれを制止する。

「何だよ、モーフィアス! こいつはクラインやロックマンの……みんなの仇だろ!」
「そうだ。だが、この男の言っている事も間違っていないはずだ。
 俺達がここで奴を倒したとしても、榊はこのエリアごと俺達を切り捨てる。それ以前に、奴は榊の仲間だ…………何らかの強力な武器だって持っているだろう。あるいは、俺達に仕組まれたウイルスを発動する権限だって持っているはずだ。
 今、俺達が戦っても犬死になるだけだ」
「じゃあ、何もしないまま負けろって言うのかよ!?」
「違う。俺もお前と同じ気持ちだ……だが、突っ込んでもロックマン達の仇を取る事はできない」

 榊の仲間を倒す……揺光の言い分は望ましいが、その為の手段がこちらにはなかった。
 白衣の男は隙だらけにも見えるが、何の準備も無しに現れるとは思えない。自分達の見えない所で無数の武装が構えられているかもしれないし、ここから前に踏み出しただけでも蜂の巣にされてしまうだろう。
 もしくは、外見からは想像できない程の戦闘能力を白衣の男が誇っている可能性だってある。自分達を一瞬で屠る事など造作もないはずだった。
 また、男を撃破したとしてもこの空間から脱出する方法がわからない。マトリックスを崩壊するイレギュラーを起こす力を自分達は持たないのだから、このまま閉じ込められてしまう危険もある。
 八方塞がり、という言葉が的確な状況だった。




「…………そう心配しなくてもいい。ここで君達が脱落するのは、榊としても不本意なはずだ。
 私が、私の権限で君達をゲームの舞台に復帰させよう」

 しかし、モーフィアスの不安を見抜いたかのように、白衣の男は語る。
 その内容に、思わず面を食らった。

「エリアが崩壊する事態も想定していたとはいえ、流石にここまでの規模は予想外だ。
 それにプレイヤーが巻き込まれてしまったのはスケィスだけではなく、備えていなかった我々にも非はあるだろう……
 だから我々には、君達を殺し合いのフィールドに帰還させる義務がある」
「そんな心がけがあるのなら、俺達をすぐにでも現実に帰還させてもらいたいのだがな」
「残念ながらそれは私には不可能だ。君達がゲームを進めない限り、終わりを迎えないだろう」

 男の言葉は尤もだ。
 彼らにとって自分達はゲームを進める為の駒に過ぎない。そんな相手に温情などかける訳がなかった。
 駒がいくら死んだとしても、また代わりを見つければいいだけ。その為の手段をいくらでも持っているはずだった。
 無論、そんなことをさせるつもりはないが、こちらには阻止する為の手段がなかった。

「それと、あと二つ…………こちらからのお詫びを与えよう。
 一つは情報。君達の他にも、私達に接触したプレイヤーが存在する……我々と結託した彼は、今もどこかで暗躍しているだろう。
 もしかしたら、今にでも君達の仲間に牙を向けているかもしれないな」
「……そんな話を信じられるとでも思うのか? 仮にお前達の手先が存在したとしても、それを馬鹿正直に話すメリットがどこにある」
「強いて言うなら、ゲームを盛り上げに一役買うことだ。これは榊の受け売りだがね」
「ふざけんなっ!」

 男は淡々としているが、相変わらず身勝手極まりない言い分だ。
 揺光が怒号を上げるのも無理はない。モーフィアスも表情こそは動かさないが、腸が煮えくり返っている。
 トリニティやロックマンの『死』……それすらも、ゲームを盛り上げる為のイベントに過ぎなかったのか?
 数多の『死』を前にしても、揺光とロックマンは互いに誓った。決して悲しみに溺れないで、遺された者達に想いを告げると。
 高潔で、そして暖かい一時だった。だが、奴らにとっては『ゲームの盛り上げ』でしかない。
 …………やはり、榊とこの白衣の男は人類を餌とする機械達と同じだった。始めから人間味を期待する事が間違っていたが。


 白衣の男を睨みつけるが、当の本人は微動だにしない。
 ただ、こちらを見据えているだけだ。

「そしてもう一つは、これだ」

 そう言いながら取り出したのは、一枚のコインだった。
 男は親指で勢いよくコインを弾いて、キャッチする。それから、ゆっくりと掌を開いた。

「表、か……なら、モーフィアスにするべきか」

 その行為の意図が掴めないまま、男の口からは意味のわからない言葉が漏れる。
 呼ばれたモーフィアスも、理解ができる訳がなかった。

「表なら俺だと? どういう意味だ」
「まあ、これもゲームの一環と考えてほしい……これは二つ目のお詫びだ。
 私はこれより、君達二人をあるエリアへと送る。その先にはモーフィアスが求める彼がいるはずだ」
「彼、だと? まさか……」
「そして最後にもう一つだけ……この世界は徐々に崩れ落ちている。故に、君達は最期の一人にならざるを得なくなるのだよ。
 時間は残されていないことを忘れないでくれ」
「待て! まだ話は……」
「では、健闘を祈る」

 その言葉を最後に、モーフィアスの視界は数字で埋め尽くされていく。白衣の男は大量の0と1によって見えなくなった。
 やがて足元が消える感覚を抱くと同時に、その意識もまた数字によって飲み込まれてしまった。




    2◆◆ 



「闇の殺し屋、ダークマンだと?」
「私の目の前に現れたアバターはそう名乗りました。私のデータを取ると言って、そのまま去って行きましたが……」
「それ以外に何もされていないのか」
「はい。『しなかった』のではなく『できなかった』……自分には権限がないと言っていました」

 ミーナから告げられた言葉に、ネオは困惑の表情を浮かべる。
 それは一度目のメールが送られた頃の話だ。ミーナは誰とも会えず、アメリカエリアで単独行動を続けている最中……謎のアバターと遭遇したらしい。
 ダークマン。ミーナ曰く、運営側のアバターである可能性が高いようだ。

「ガッツマンさん。もしかしたらあなたのお知り合い……ではありませんよね?」
「う~ん、そんなネットナビは知らないでガッツ。おれの友達にそんな危ないヤツはいないでガスよ」
「そう、ですよね……」

 名前から考えて、ガッツマンと何らかの関係があると考えたのだろう。だが、ガッツマンが危険人物と接点があるとは思えない。
 話を聞く限り、その特徴はマトリックスを守護するエージェント達に等しい存在と思えた。
 人類とネットナビが手を取り合っている裏で、その平穏を脅かそうとしている何者かがいる……そして、この殺し合いに加担しているのだろう。

「だが、いいのか? そんな話を俺達にしても」
「構いません。いつかは話さないと誰にも知られないまま、私が殺されてしまうかもしれませんでしたから…………
 もう、本当に大変でしたです! あなた達が来てくれるまで、もう誰とも会えませんでしたから!」
「それは……大変だったな」

 何でも、ミーナはここまでダークマン以外に誰とも会えなかったらしい。
 遠目では妖精の少女と危険なネットナビ――恐らく、ありすを追った少女と例の黒いネットナビのことだろう――を見かけたようだが、接触は出来ていない。
 だが、あのネットナビに関しては接触できなくて正解だろう。何の力も持たない彼女では、一方的に嬲り殺しにされるだけだ。
 ……ここで彼女を見つけられてよかった。もしもこのまま出会えなかったら、自分達の知らない所で犠牲者になるはずだから。

「あと君は、榊が見知らぬ男達と話をしている所を見たと言っていたな」
「内容は聞き取れませんでしたが、あそこにいたのは確かに榊でした。
 ……やっぱり、この殺し合いに関係する話をしていたのではないでしょうか?」
「それ以外に考えられないな」

 そしてもう一つ……ミーナはこの会場ではバグが起きているとも語っている。
 そのバグに触れた途端、彼女は榊が奇妙な二人の男と話している場面を見てしまったようだ。
 バグ自体はすぐに消えたようだが、それは大きな情報になる。ほんの僅かとはいえバグが発生したと言うことは、この殺し合いを打ち破る鍵になるはずだった。

「しかし、それなら何故ダークマンは君を見逃したんだ? 権限が与えられないなど、絶対におかしい」
「わかりません。榊達にとって私は、運営の隙を見つけた危険人物……
 尚更、優先的に狙わなければいけないはずです」
「君一人では脅威にならないと考えているのか、あるいはまた違う目的があったのか……駄目だ。今のままでは答えを見つけられない」

 一体どういう意図があってミーナが見逃されてしまったのか? 答えどころか、推測するキーワードすらもわからない現状だ。
 それだけではない。彼女がこうして運営を打倒するきっかけとなる情報を話しているのに、自分達に対して何かアクションを仕掛けてくる訳でもなかった。
 …………まさか、仮に情報が漏れたとしても何の影響も与えないのか。
 それはないはずだ。例えどんなに高性能なプログラムだろうと、欠点は必ず存在する。故に、彼女が手に入れたこの殺し合いを打破するきっかけとなり得るはずだった。

「あっ! ネオにお姉さん! あれを見るでガッツ!
 あそこに人が倒れているでガスよ!」

 考案の最中、それを遮るかのようにガッツマンは叫ぶ。
 言われるままに顔を上げた先には、一人の女性が草むらに倒れているのが見えた。

「大変! すぐに行かないと!」
「ああ!」

 ネオ達はすぐに駆け寄る。
 そこに倒れている女性は見た所、派手な外傷はない。だがこの世界では外見の様子と実際の体調は一致しなかった。
 例え見た目では健康に見えても、プレイヤーにされてしまった者達はHP(ヒットポイント)という謎の数値が余命となっている。それが0になった途端、この肉体は消滅してしまうのだ。

「おい、しっかりしろ! しっかりするんだ!!」

 それを阻止する為にもネオは呼びかけるが、女性は目を開けなかった。

「どうしましょう……ガッツマンさん、何か回復アイテムを持っていませんか?」
「ごめんガス……俺もネオも、持っていないでガスよ。お姉さんは?」
「……ないです」

 回復アイテムがない……その事実にネオの心は痛む。
 もしもそれがあったのなら、トリニティだって救えたはずだった。それにアッシュだって、死なずに済んだかもしれない。
 苦い記憶が蘇り、悲劇を繰り返してはならないと想いを寄せる。
 彼女の身体はまだ温かい。だけどこのままでは、また失ってしまうかもしれなかった…………



「そこにいるのは……ネオなのか!」

 …………そんな時だった。助け舟となる声が聞こえたのは。
 ネオはそれをよく知っている。救世主としての自分を鍛えてくれた恩師であり、長らく共に戦ってくれた戦友の声だ。
 振り向くと、やはり彼がいた。ダークスーツを身に纏い、サングラスが特徴的な黒人男性……モーフィアスだった。

「モーフィアス!」
「やはりネオのようだな。
 だが、どうやら再会を喜んでいる場合ではなさそうだ……一体、何があった?」
「わからない……俺達もここに辿り着いたばかりで、彼女がこうして倒れていたんだ」
「そうか」

 頷きながら、モーフィアスは辺りを見渡す。その傍らにいる少女も、彼の視線を追った。
 倒れている女性に気を取られていたが、よく見ると辺りは焼け焦げていた。所々にマトリックスの崩壊も起きていて、ここで戦いが起こっていたのが一目でわかる。
 そして何故、ここで彼女は一人で倒れていたのか? また、これまで人の気配はなかったのに、モーフィアス達が突然姿を現したことも妙だった。
 見晴らしのいい場所で来訪者に気付かないほど、ネオは呆けていない。それでは救世主として戦うことなどできなかった。

「……モーフィアス。どうして、いきなりここに現れたんだ?」
「それに関しては話せば長くなる。それ以外にも、お互いに話さなければならないことは山ほどあるだろう」
「わかった」



     † 



「ロールちゃんのことを伝えて欲しい…………ロックマンが、そうを言っていたでガッツか?」
「ああ。アイツはそう言って、アタシ達を守るために突っ込みやがった」
「……そうでガスか」
「アイツのおかげで、アタシ達は生きている……それなのに、アタシはロックマンのことを……見殺しにしたようなもんだ。
 ごめんな……ガッツマン」

 見知らぬ草原。恐らく、ファンタジーエリアの一角と思われるエリアに転送されてから、モーフィアスはネオ達と再会することができた。
 そしてネオはガッツマンというネットナビと同行している。先の戦いで散ったロックマンのライバルであり、親友でもあるネットナビだった。
 それを知ってから、揺光がロックマンのことを話していた……ロックマンから託された最期の願いを、そして互いに誓った約束を。

「……………………」

 何も言わないが、ガッツマンはやはり悲しげな表情を浮かべていた。
 当然だろう。昨日までは共に過ごしていた友が死んだと聞かされて、平静でいられる訳がない。人間もネットナビも同じだ。
 ましてやロックマンは心優しく、どこまでも真っ直ぐなネットナビだった。そんな彼の友であるガッツマンもまた、ロックマンに負けないほどの強さと優しさを持っているだろう。

「……まったく。ロックマンの奴はしょうがないでガスね」

 数秒の沈黙が過ぎた後、ガッツマンの口から出てきたのはそんな言葉だった。

「カッコウ付けてるつもりで、得意になって…………それでおれ達にはさよならも言わないなんて。
 それで、揺光やモーフィアスを困らせてるなんて、本当にしょうがないでガスよ!」
「ガッツマン、何を……!」
「でも、ロックマンがそう言っていたなら、おれがロックマンの代わりに頑張らないといけなくなったでガスよ!
 熱斗やメイルちゃんにデカオに……ロックマンとロールちゃんのことを伝える! その役目は、確かにおれが引き受けるでガス!」

 胸を張りながら、大声で宣言する。しかしそれは涙声になっていく。
 ガッツマンの瞳からは涙が流れていた。力強さはそのままだが、彼は泣いている。友の死に涙を流していた。

「ガッツマン……」
「みんなと一緒に帰って、いなくなったロックマンやロールちゃん達のことを伝える……ロックマンはその為にがんばったのなら、おれも頑張らないといけないでガス!
 揺光! おれはロックマンじゃないでガスし、あいつみたいにはやれないかもしれないでガス……
 でも、この男気だけはロックマンにも負けない! だから、ロックマンの分までおれは戦うでガス!」
「……アタシもよ! アイツは最期の最期まで、勇気を出して戦ってた! そんなロックマンの頑張りを無駄になんて、絶対にさせたりしないからね!」

「ロックマンは頑張っていたのに、おれが頑張らなかったら……ロックマンとロールちゃんは怒るでガス!
 だから今は悲しまないでガスよ! おれが悲しんでいたら、辛い思いをする人がもっと増えるでガスから!」
「そうだ! なら、そのデカい拳でこんな殺し合いを開いた奴らをぶん殴ろう! その時は、アタシも手伝うからな!」
「わかったでガスよ! 涙を思いっきり流すのは、その後でガス!」

 ガッツマンと揺光は互いに拳を握り締めている。その力強さは、スケィスに立ち向かったロックマンを見ているようだった。
 そんな彼らを見て、モーフィアスは安堵する。揺光にとって心の支えとなっていたであろう、ロックマンの死…………それによって受けた傷は計り知れない。
 モーフィアスは戦闘における指揮能力や体術に優れているが、メンタルケアに関しては専門家ではなかった。
 やはり、仲間がいてくれてよかったと、モーフィアスは改めて実感した。

「……ごめん。なんだか心配かけちゃって」
「おれの方こそ、ごめんでガス。もしも揺光がロックマンのことを伝えてくれなかったら、きっと後で……ネオやミーナお姉さんに迷惑をかけていたでガスよ」
「いいや、アンタの勇気があれば……そんな心配はないよ」

 揺光とガッツマンは寂しげに笑う。
 死は決して覆らない。だからこそ人間は自分自身の力で生きていかなくてはいけなかった。
 機械に頼りきらず、知恵と勇気で困難を乗り越える……それを繰り返したからこそ、人類はこれまで発展してきたのだから。

「勇気、か」
「モーフィアス……俺達人類に必要なのは、それだったのかもしれない」
「ああ。機械を悪にさせてしまったのは、他ならぬ俺達自身…………」

 ネオからその事実を突き付けられた途端、モーフィアスはこれまで信じてきたものを壊されたような気分になった。
 機械は悪。人類全てを餌としてきた機械達を殲滅しようと、ザイオンにいる皆は躍起になった。そうしなければ人類はこれからも蹂躙されてしまうのだから。
 だけど、そもそもの発端は驕りきった人類にある。技術と文明を発達させたはいいものの、肝心の人類がどこかで道を踏み外してしまった。
 愚かしい存在に成り下がった人類に、意志を持つ機械が従う道理などない。機械が人類に牙を剥くのも当然だ。


 現にここにいる揺光は、ロックマンやガッツマンと心を通わせている。ロックマン達も同じ。
 三人の生きる『現実』では機械と人類は共存していた。人類は機械の力に溺れて堕落せず、また機械もそんな人類を信頼して身を任せている。
 予言や救世主の存在がなくとも、互いは平和な世界を作り上げていた。


「…………それはわかる気がします」

 話に割り込んできたのは、このエリアで倒れていた女性だった。
 彼女の名前はカオル。現実の世界では寺岡薫という名で、揺光やミーナと同じ東洋系の人種だ。

「文明を発達させるのは大切です。
 私もかつて、ある人の命を助ける為に研究を重ねて……たくさんの物を発明しました。
 「いつかみんなを救ってくれる」と信じて、あきらめることを否定しました。
 でも、それは驕りだったのです。私の過ちのせいで、多くの人が悲しむことになってしまいました……」

 そう語る彼女は悲しそうな表情を浮かべている。
 聞く所によると、彼女は科学者として数多くの発明を生み出してきたらしい。サイボーグ技術や新エネルギーの誕生など、計り知れない。
 その新エネルギーは確かに凄まじく、地球規模のエネルギー革命が起こる程だ。しかし、それが原因で旧来のエネルギーの価値が暴落して世界経済は混乱に混乱が起こり、挙句の果てに独占を企んだオオガミやジャジメントという財閥同士が戦争を起こしたらしい。
 それによる犠牲者もまた、計り知れなかった。
 エネルギーの独占を狙った愚か者たちが悪い……それは間違っていないが、元を辿ればカオルが生み出したことにある。

「……何よりも恐ろしいのは人間の驕りか。
 機械も始めは俺達の力になっていたはずだ。だが、何もかもを機械に任せられるという過信こそが……全ての元凶か」
「モーフィアス……」
「ネオ。お前はその事実に至って、何を思った?」
「……どうしようもない程の空しさに襲われた。俺達が敵と思っていたものを生み出したのは、他ならぬ俺達自身だからだ」
「だろうな……俺も戸惑った。これまで信じてきた常識を否定された。俺達の間違いこそが悪だった。
 しかし、それを他の奴らに伝えても……俺達の戦争が終わるとも限らない」

 人類の邪念と堕落が種となり、それを餌とした機械が魔物となった。
 しかしそれをザイオンに宣言したとしても、彼らは納得などする訳ない。家族や友を機械に奪われた者達が、憎むべき相手が被害者だと思えないはずだ。
 人の感情は時として凄まじいものを生み出す。カオルの発明や、機械に反旗を翻す人類の力など……これこそ星の数ほどあるだろう。
 尤も、それによって戦争が起きているのは余りにも皮肉だが。

「……それでも、俺は諦めたくない。
 救世主である俺が諦めたり、挫けたりしたら……戦っている彼らはどうなる」
「ネオ……」
「それにトリニティだって、最期まで俺のことを信じてくれた。
 俺は一度は諦めそうになった……だけど、ガッツマン達が俺を支えてくれた。だから俺は止まる訳にはいかない」

 ここにいる者達は分かり合うことが出来た。ネオや揺光だって、心があるネットナビと絆を育みあっている。
 だからこそ、争い以外の方法で平和を掴み取れると確信したのだろう。
 犠牲者を出すことなく、争いを終わらせられたらどれだけいいか。この技術を戦争以外に役立てたらどれだけいいのか……モーフィアス自身も理解している。
 だが。

「……お前の中に生まれた理想は確かに素晴らしい。そうあってくれれば、どれだけいいことか
 だが、理想論ばかりで終わらせられるほど戦争は甘くない……それはお前自身が一番知っているはずだ」
「そうだ。この理想だけで殺し合いを止められる……それは夢物語に過ぎないことを、俺だって理解してる。
 だけど、諦めたりしない。カオルが言うように、諦めることを否定するつもりだ。
 理想を失ったまま、戦いに勝ったとしても……俺達に未来はない。例え人類が機械に勝利しても、いつかまた同じことを繰り返すはずだ」
「同じことを繰り返す……確かにそうかもな」

 ネオの言葉を否定しない。
 もしもこの事実を認識しないまま、このマトリックスから脱出して戦争に勝利しても……記憶は風化して、遠くない未来でまた機械を奴隷として扱うだろう。
 そうして意思を持つ機械は人類を憎み、戦争が起こって平和は崩れてしまう。

「どうやら、俺達は罪を認めなければいけないようだ。そして、過ちを繰り返さないように知恵を振り絞る……
 こんな当然のことを忘れていたのかもな」
「だったらこれから、それを忘れないようにすればいいんじゃない?」

 そう言って、揺光は肩を叩いてくれた。

「アタシはモーフィアスやネオみたいなプロじゃないし、そういう世界で生きてきたこともない。
 だから上手く言えないけど……間違いに気付けたのって、いい事じゃないのか?」
「失敗は成功の元、か……」
「悪い、こんなことしか言えなくて……」
「いいや。お前の言うことは尤もだ。こんな所で俺が絶望しては、ここにいる皆に迷惑をかけてしまう。
 それにザイオンにいるあいつらも導けない。俺は司令官だからな」

 これから兵士として導くはずだった揺光に支えられるとは。
 成程。ロックマン達もこうだったのかもしれない。本来なら、司令官である自分自身がこうでなければいけなかったはずだ。
 理想を裏切られたことは、これまで何度もあったはずだ。ネオだって絶望から立ち直ったのだから、彼を鍛え上げてきた自分が感傷に浸ったりなどしない。

「……そういえばカオル。トリニティを殺したという少女だが……確かありすという少女だったな」
「私は現場に居合わせていませんが、アスナさんはそう言っていました。
 でも、ありすちゃんとユウキさんは……多分、もう……」
「……そうか」

 そこから先、何を言おうとしていたのかをモーフィアスは問わない。
 カオル達は死神のようなネットナビに襲われたようだ。その際にカオルは気を失ってしまい、他の三人の生死を把握できていない。
 だが、周囲の被害を考えると、ユウキとありすが生存している可能性は0に等しかった。
 そして特徴を聞く限り、その死神は恐らくネオ達を襲った黒いネットナビと同一人物である可能性が高い。

「……考えなければいけないことは山ほどあるな。
 まずは危険人物の対策。現状で把握している限りは黒いネットナビ、スケィスという巨人、そして俺達が接触したラニというプレイヤー……早急に止めなければ被害は拡大するだろう。
 そしてミーナが見たと言う白衣の男……こいつは俺と揺光の前に姿を現している」
「ええっ!? それってどういうことなのですか!?」
「俺達はスケィスとの戦いの果てに、謎のマトリックスに流れ着いた。
 そこの詳細は不明だが、恐らくこの殺し合いにとって根幹となる場所のはずだ。奴の反応から考えて、通常ではどうあっても辿り着けないエリアだろう。
 尤も、すぐにこうして送り返されてしまったが」
「……でも、それっておかしくありませんか? どうしてモーフィアスさんと揺光さんをわざわざ私達の前に送り返したのでしょう」
「ゲームを盛り上げる為、だそうだ」
「……えっ?」

 ミーナは怪訝な表情を浮かべる。ネオやガッツマン、それにカオルも同じだった。
 しかしその一方で揺光は顔を顰めていた。思い出すだけでも胸糞が悪くなっているのだろう。モーフィアスも同じだった。
 だけど、それを話さないわけにはいかない。

「奴らが俺達をこうして帰したのも、またバグに触れたミーナを殺さなかったのも……殺し合いを盛り上げる為に必要だから、らしい。
 だとすると、俺達がこのマトリックスの謎を解き明かそうとしている姿も、奴らからすれば祭りの一つにすぎないだろうな」
「ふざけるなでガス! それじゃあ、ロールちゃんやロックマンがいなくなったのも……あいつらにとって、遊びだったでガスか!?」
「落ち付け、ガッツマン。
 気持ちはわかるが、ここで怒りに囚われてはロックマン達の仇は取れない……それを忘れるな」
「むっ……」

 頭に血が上ったガッツマンを諭すようにモーフィアスは語る。
 ガッツマンは落ち着くも、怒りが完全に消えた訳ではない。だが、それは来たるべき時にぶつけさせるつもりだ。

「もしかしたら、奴らには何か武器があるのかもしれない。秘密を暴かれたとしても、それに対する対抗策を用意しているはずだ。
 だが、例えそうだったとしても、俺達が反抗する為の手段はあるはずだ」

 慢心なのか、あるいは確信のどちらかはわからない。しかしどちらにしても、このまま泣き寝入りするつもりなどない。
 それはネオ達も同じだろう。

「だが、もう悠長に構えていられない。
 俺達に仕掛けられているウイルスが牙を剝くまで、既に12時間を切っている。
 それだけではない。あの白衣の男が語った、会場に解き放たれた刺客や『この世界が崩れ落ちている』という言葉も気がかりだ。
 奴の言葉が真実ならば……」
「……まさか、この仮想空間のデータが壊れ始めているのでしょうか?」

 そこから、カオルは己の述べた説を口に出した。

「皆さんの話を聞いて考えたのです。
 ミーナさんがバグに触れたり、モーフィアスさん達が使用外のエリアに転送されるような自体は本来ならあってはならないでしょう。
 でも、実際に起きてしまいました。その理由は、本来なら噛み合うはずのないデータを無理に組み合わせたから、だと思います。
 それがバグの原因になっているのではないでしょうか」
「データを無理矢理組み合わせただと? 何故、そんなことをする必要がある」
「う~ん。情報が少ないので、私にも推測が出来ません。
 ただ……もしかしたら、このバグは偶発的にではなく意図的に仕組まれているのではないでしょうか?」
「意図的にだと? まさか、ミーナが触れたバグや俺達が巻き込まれたマトリックスの崩壊も……榊達が言うイベントの一種、なのか?」

 カオルとモーフィアスは互いに考察を述べる。
 だが、現状では憶測の域をでなかった。ミーナの触れたバグと、謎のマトリックスで出会った男の言葉……手がかりはそれらだけだった。
 それ以前に、白衣の男が真実を言っている保障はない。それに縋るのはあまりにも危険だった。



 現状の戦力を見直す。
 戦力となれるのは6人中4人。他の二人は非戦闘員だ。
 ミーナは護身術に長けているようだが、それはスケィスやラニのような超人を前にしては意味を成さない。
 揺光は実力そのものはあるが、まだ発展途上だ。無理をさせては揺光を失ってしまうことになる。
 ガッツマンはどのような能力を持っていて、またどんな戦闘スタイルを持っているのか……モーフィアスは何一つ知らない。
 カオルは科学者だ。マトリックスやウイルスの謎を解き明かす鍵となるだろうから、絶対に死なせてはならなかった。
 故に、完全に信用できるのは……この手で鍛え上げてきたネオだけだろう。


 パラメーターを見直す。
 自分を含めて、揺光やカオルですらHPは20%を切っている。生きていることが奇跡だと思うべきだ。
 一応、揺光が回復アイテムを三つ持っているが……それらを使用しても、万全の状態に回復できない。
 しかし戦場では傷を負うなど当たり前。命があるなら、どんな手段を使ってでも再び戦えるようにしなければならなかった。



 話を戻す。
 この空間の謎を解き明かすには一箇所に留まるべきではない。別行動も必要だが、この状況では望ましいとも思えなかった。
 何故なら、スケィスやラニのような危険人物が存在している。現状、戦力を分散させるのは危険だろう。
 だが、アメリカエリアやウラインターネットなど、探索するべき場所は大量に残っている。空間の謎を突き止めるには一つでも多くの情報が必要だ。
 


「あ、あれは何でガスか!?」

 思案を巡らせている最中、ガッツマンの叫びが聞こえて、視線をそちらに向ける。
 見ると、太陽の光に照らされている草原の一部が歪んでいた。焼け跡ではなく、そこを構成するであろうデータがむき出しとなっている。
 ここで発生したのは新たなるバグ……この場でそれに気付かない者は、誰一人としていなかった。





[D-7/ファンタジーエリア・草原/1日目・午後]


【備考】
※エリアに新たなるバグが出現しました。 


【ネオ(トーマス・A・アンダーソン)@マトリックスシリーズ】 
[ステータス]:健康、迷い 
[装備]:エリュシデータ@ソードアートオンライン 
[アイテム]:基本支給品一式、ナイト・ロッカー@アクセル・ワールド、不明支給品0~2個(武器ではない) 
[思考・状況] 
基本:本当の救世主として、この殺し合いを止める。 
0:これからどうするか?
1:ガッツマン、ミーナと共に行動する。 
2:トリニティを殺害した者を見つけ出し、この手で…… 
3:ウラインターネットをはじめとする気になるエリアには、その後に向かう。 
4:…………あのネットナビ(フォルテ)やありすを追いかけて、止めてみせる 
[備考] 
※参戦時期はリローデッド終了後 
※エグゼ世界及びアクセルワールド世界についての情報を得ました。 
※機械が倒すべき悪だという認識を捨て、共に歩む道もあるのではないかと考えています。 
※このバトルロワイアルには、異なる世界の者達が呼ばれているのではないかと推測しています。 
※この会場は、加速世界の一種に設置されているのではないかと考えています。 
※フォルテやありすを止めようと考えていますが、その後にどうするのかをまだ決めていません。 



【ガッツマン@ロックマンエグゼ3】 
[ステータス]:健康、ナビ(フォルテ)への怒り 
[装備]:PGMへカートⅡ(7/7)@ソードアートオンライン 
[アイテム]:基本支給品一式、転移結晶@ソードアートオンライン、12.7mm弾×100@現実、不明支給品1(本人確認済み) 
[思考] 
基本:殺し合いを止める為、出来る事をする。 
0:あれは何でガス!?
1:ネオやお姉さんと共に行動する。 
2:トリニティを殺害した者を見つけ出し、この手で倒す。 
3:転移結晶を使うタイミングについては、とりあえず保留。 
4:アッシュ…… 
[備考] 
※参戦時期は、WWW本拠地でのデザートマン戦からです。 
※この殺し合いを開いたのはWWWなのか、それとも別の何かなのか、疑問に思っています。 
※マトリックス世界及びアクセルワールド世界についての情報を得ました。 
※このバトルロワイアルには、異なる世界の者達が呼ばれているのではないかという情報を得ました。 
※この会場は、加速世界の一種に設置されているのではないかと考えています。 
※ロックマンの死を知りました。



【ミーナ@パワプロクンポケット12】 
[ステータス]:健康、困惑 
[装備]:なし 
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~1(本人確認済み)、快速のタリスマン×3@.hack、拡声器 
[思考] 
基本:ジャーナリストのやり方で殺し合いを打破する 。 
1:殺し合いの打破に使える情報を集める。 
2:ある程度集まったら拡声器で情報を発信する。 
3:榊と会話していた拘束具の男(オーヴァン)、白衣の男(トワイス)、ローブを纏った男(フォルテ)を警戒。 
4:ダークマンは一体? 
5:他の参加者にバグについて教えたいが、そのタイミングは慎重に考える。 
[備考] 
※エンディング後からの参加です。 
※この仮想空間には、オカルトテクノロジーで生身の人間が入れられたと考えています。 
※現実世界の姿になりました。 
※ダークマンに何らかのプログラムを埋め込まれたかもしれないと考えています。 
※もしかしたら、この仮想空間には危険人物しかいないのではないかと考えています。 



【カオル@パワプロクンポケット12】 
[ステータス]:HP20%以下、悲しみ
[装備]:ゲイル・スラスター@アクセル・ワールド 
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2 
[ポイント]:0ポイント/0kill 
[思考] 
基本:何とかしてウイルスを駆除し、生きて(?)帰る。 
1:???
2:どこかで体内のウイルスを解析し、ワクチンを作る。 
3:デンノーズのみなさんに会いたい。 生きていてほしい。 
4:サチさんを見つけたら、バグを解析してワクチンを作る。 
5:ユウキさん……ありすちゃん……
[備考] 
※生前の記憶を取り戻した直後、デウエスと会う直前からの参加です。 
※【C-7/遺跡】のエリアデータを解析しました。 
※ユウキとありすが生きている可能性は低いと考えています。


【モーフィアス@マトリックスシリーズ】 
[ステータス]:HP20%以下 
[装備]:あの日の思い出@.hack// 
[アイテム]:不明支給品0~2、基本支給品一式 エリアワード『選ばれし』 
[思考] 
基本:この空間が何であるかを突き止める 
0:このバグは……?
1:現状の方針を考える。
2:セラフを探す 
3:ネオがいるのなら絶対に脱出させる 
[備考] 
※参戦時期はレヴォリューションズ、メロビンジアンのアジトに殴り込みを掛けた直後 
※.hack//世界の概要を知りました。 
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。 
※トワイスの話は半信半疑です。


【揺光@.hack//G.U.】 
[ステータス]:HP20%以下 
[装備]:最後の裏切り@.hack// 
[アイテム]:不明支給品0~3、平癒の水@.hack//G.U.×3、ホールメテオ@ロックマンエグゼ3、基本支給品一式 エリアワード『選ばれし』 
[思考] 
基本:この殺し合いから脱出する 
1:何だこれ?
2:やばい、マジもんの呂布を見ちゃった…… 
[備考] 
※Vol.3にて、未帰還者状態から覚醒し、ハセヲのメールを確認した直後からの参戦です 
※クラインと互いの情報を交換しました。時代、世界観の決定的なズレを認識しました。 
※ハセヲが参加していることに気付いていません 
※ロックマンエグゼの世界観を知りました。 
※マトリックスの世界観を知りました。 
※バーサーカーの真名を看破しました。 



    3◆◆◆ 



 数字と記号が羅列された空間で、トワイス・H・ピースマンは歩む。
 モーフィアスと揺光に説明したように、本来ならば正規の手段では辿り着けない空間だった。ロックマンとスケィスゼロの力が反作用を起こしたからこそ、成し遂げられた奇跡。
 しかし入り口はデータの歪みによって一瞬で崩れてしまっている。一応、扉はもう一つだけ存在しているものの、それを開ける為の鍵を彼らは持たなかった。
 このまま放置してはモーフィアスと揺光は元の世界に戻れない。仮にこのエリアの"謎"を解き明かせても、閉じ込められたままウイルスに殺される結末しかなかった。
 それではゲームの進行が滞ってしまう。故に、このエリアの管理も任されているトワイスが向かうことになった。



 この空間は、D-4エリアの洞窟の地下に存在するプロテクトエリアだった。
 プレイヤーの一人である[[岸波白野]]が使役するサーヴァントが一人・キャスターは、樹の地下に死人の気配を感じ取っている。
 その推測の通り、ここは殺し合いでデリートされたプレイヤー達のデータが流れ着くエリアだった。また、その他にもマク・アヌやネットスラムを始めとした、戦いにより破壊されたエリアのデータの残骸も混じっている。
 それらを死者と呼ぶのはあながち間違っていなかった。
 思えば、彼女はトワイスと共に戦っていた頃から思慮深く、時に鋭い発言をした覚えがある。例え言動が変わろうとも、本質的な部分まではそのままということか。



 だが、このプロテクトエリアに存在するのはそれだけではない。
 死者達のデータの羅列を切り抜けた先には更なるイリーガルエリアが存在する。もしもプレイヤーがその"謎"に触れるようなことがあれば、何を思うのか。そして何を成し遂げようとするのか。
 過去に想いを寄せるのか。あるいは未来に進む為の糧とするのか。



 その謎を解き明かされる時間も遠くない。
 現状、脱出手段を持たないという理由でモーフィアスと揺光を送り返したものの、何らかのきっかけがあればまた辿り着ける可能性も0ではなかった。
 スケィスゼロによって引き起こされたゲートハッキングと、ロックマンが最期に起動した【プレスプログラム】 ……あれらと同等のイリーガルが起きれば、イリーガルエリアに繋がる扉が生まれるかもしれない。
 あるいは認知外迷宮に繋がることすらもあり得た。何故なら、度重なるハッキングの影響によって会場には『歪み』やバグが生じ始めている。
 事実、モーフィアス達の元には新たなるバグが生まれていた。



 そしてこことはまた別のエリアに転移したスケィスゼロは今、眠りについている。先の戦いによる疲労を癒しているのだろう。
 エリアのハッキングを行い、別のエリアに転移したスケィスゼロならば、自力での脱出は不可能ではない。長時間、イリーガルエリアに留まり続けるならばモーフィアス達のように表側に戻さなければならないが、現時点ではGMからの介入を必要としない。
 目覚めた時、スケィスゼロに何が起きるのか。そして、スケィスゼロは何を仕掛けようとするのか。
 興味を馳せながら、トワイスは大量のデータに紛れ込むように姿を消した。
 


【???/???/1日目・午後】 

【トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA】 
[状態]健康 



[全体の備考] 
※モーフィアスと揺光が辿り着いたのは【D-4/洞窟 死世所・エルディ・ルー】の地下に存在するプロテクトエリアです。 
※またその奥にはイリーガルエリアに繋がる扉が存在します。
※そのイリーガルエリアの詳細は不明です。



|107:[[Be somewhere]]|投下順に読む|109:[[対峙する自己]]|
|106:[[agreement;協定]]|時系列順に読む|109:[[対峙する自己]]|
|102:[[異空間より絆をこめて]]|ネオ(トーマス・A・アンダーソン)|112:[[Deus-Es]]|
|~|ガッツマン|~|
|~|ミーナ|~|
|093:[[EXS.extream crossing sky“クレィドゥ・ザ・スカイ”]]|カオル|~|
|107:[[Be somewhere]]|モーフィアス|~|
|~|揺光|~|
|090:[[convert vol.2 to vol.3]]|トワイス|115:[[三番目のアリス]]|
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