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A-5.AIPSによる処理(5) 位相の較正 - (2007/10/04 (木) 11:17:00) の編集履歴(バックアップ)


AIPSによる処理(5) 位相の較正


位相の較正には二つの目的があります。第一に、ビジビリティの位相は電波源の位置を反映するものなので、正しい天体の位置や構造を推定するためには、正しいビジビリティ位相が必要です。第二に、ビジビリティをコヒーレントに積分するためには位相が揃っている必要があります。
第二のポイントに着目してみましょう。ビジビリティの積分は信号雑音比を向上させるために必要ですし、ビジビリティをフーリエ変換して電波像にする操作だって積分です(フーリエ変換は別名フーリエ積分とも呼び、式からも分かるようにビジビリティのコヒーレントな積分です)。
位相が揃っていない状態でビジビリティを積分すると、コヒーレンス損失を起こして、ビジビリティ振幅が低下しています。コヒーレンス損失の概念については、こちらのアニメーションをご覧下さい。
ビジビリティ位相が真の値からφだけずれていたとき、有効なビジビリティの値は真のビジビリティへの投影成分、つまりV cos φになります。位相φが標準偏差σでばらついているとき、ビジビリティ振幅は
で与えられます。ここで、位相の確率密度分布p(φ)を正規分布だと仮定しました。例えばσ=1 radの標準偏差で位相がばらついていると、振幅は約40%も低下してしまうわけですね。これを防ぐために、位相の較正をきちっとおこない、位相を揃えた状態で積分することが肝要です。

位相の標準偏差とコヒーレンスとの関係。σ=1 radのときコヒーレンスは約0.6で、約40%の損失が発生する。

1. フリンジフィット (FRING)

1.1 フリンジフィットはなぜ必要か

フリンジフィットとは、遅延時間残差や遅延変化率残差の補正を行って位相を揃え、ビジビリティをコヒーレントに積分できるようにする操作です。AIPSでは FRING という task を用いて遅延時間残差や遅延変化率残差の値を SN extension table に記録し、CLCAL によって CL extansion tableに適用します。
遅延時間残差とは、相関処理の際に追尾し切れなかった遅延のことです。観測局の時計オフセットや局位置の誤差, 天体位置の誤差, 大気の光路長などが原因で、相関器での遅延追尾はパーフェクトではありません。遅延残差をΔτ とすると、位相のズレは周波数νの関数で、
となります。
遅延残差が時々刻々変化していくとき、その変化率を遅延変化率残差といいます。
となりますね。ビジビリティをベクトルで、位相をベクトル矢印の向きで表すとすると、下図の左のような具合です。
左のように、遅延残差や遅延変化率残差によってビジビリティ位相が(時間-周波数)空間で揃っていない状態だと、積分したときにコヒーレンス損失が起こります。ビジビリティ振幅が低下してしまうわけですね。ではどうやって遅延残差や遅延変化率残差を補正したらいいでしょうか。それには、
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の空間においてビジビリティを積分し、その振幅が最大になるような
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を探すのです。いわば
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の絨毯爆撃。この操作をフリンジサーチといいます。