ワイナリー訪問その33
Napa > Newton(ニュートン)


Newton Vineyard(2011年12月訪問)

 Hallの後、公園でしばし時間を潰したあと、14:30からツアーを予約していたNewton(ニュートン)へ。セントヘレナの西に位置するスプリングマウンテンにあるこのワイナリーは、ふもとの門を通過してから、敷地内のかなり急な坂道をくねくねとしばらく上っていかないと辿り着かない。そんなわけで、発見が困難というわけではないが、かなり世俗を離れた感のあるワイナリーである。

 ここはフランスを根拠地とする一大コングロマリットLVMH傘下のワイナリー。LVMHは、ルイ・ヴィトンをはじめとするファッションブランドの数々も所有しているが、酒の分野でもMoët & Chandon, Krug, Château Cheval Blanc, Château d'Yquem, Ardbeg, Glenmorangie, Hennessy...等など、そうそうたるラインナップをその傘下におさめている。ここもそういった中の1つなわけだ。


 ここのテイスティングは完全予約制で、ツアー込み、40ドル。軽食とのペアリングも楽しませてくれる。日本版「サイドウェイズ」は、原作と違って舞台がナパになり、このワイナリーが登場したんだとか・・・まだ観ていないが。

 坂道を上りつくしてワイナリーに辿り着くと、葡萄の段々畑越しに下界を見下ろす素晴らしい眺め。適当なスペースに駐車して建物に近寄ると、背の高い男の人が出迎えてくれた。名前は確かスティーブさん。この方が、ツアーとテイスティングの間、私をアテンドしてくれた。

 実にラッキーなことに、Caymusのときと同様、今回のツアーは私一人だけだった。そのおかげか、スティーブさんは、「家族の方もよかったら一緒に入って来てください」と仰ってくださった。しかし、息子達が車内で爆睡中だったので、妻は車でお留守番(そして妻も爆睡)。

 まずはテイスティングルームに入り、ぶらぶら調度品などを眺めて歩きながら会話を楽しみ、1杯目のシャルドネを頂く。

2010 Chardonnay (Red Label)

 Newtonは、最高級のブレンドワイン"The Puzzle"を筆頭に、高級ワイン"Unfiltered"シリーズと、廉価版"Red Label"シリーズを販売している。このシャルドネは廉価版の方で、フレッシュでサッパリしていた。

 次いで外に出て、自慢のお庭を散策。遠くに見える一本の樹がエチケットに描かれているんだとか、庭は3人の庭師が週5回8時間手入れをしているんだとかいったお話を伺う。何故か真っ赤な鳥居があったので理由を訊いてみたところ、「正直なところ、わからない。もしかしたら、オーナーの細君が中国人であることと関係あるのかも知れない。」とのこと。

 それから、ワイン醸造に用いられるタンクを観たり、庭と同じ高さにあるカーヴを観たりした後、庭の地下に広がるカーヴへ。葡萄を絞る場所よりも下にカーヴがあるのは伊達ではなく、重力を利用したいわゆるグラヴィティ・フロー方式でワインを造るため。無濾過のシャルドネは沈殿物が樽の下側に溜まってくるので、上澄みを取り出して別の樽に入れ、また沈殿物を沈ませる、という作業を経ているんだそう。樽内のワインに空気を取り込ませるための撹拌は人手でやっているそうだし、いやはや大変な手間がかかっているのだなあと実感。

 ひとしきり醸造設備を見学した後でテイスティングルームに戻り、いよいよ試飲。グラスは4つ用意されていて、奥の皿には4種の小さな前菜風の料理が盛られていた。

 まずは、2008 Unfiltered Shardonnay。しっかり濃い黄色だが、クリアに透き通っている。実にリッチな、まろい甘みで、キャラメルのような風味。Red Labelとは全然違うタイプだ。あまり冷やされていないのだが、これは計算なのだそうで、スティーブさん曰く「本当に良いシャルドネは、ある程度高い温度で飲んだ方が良い」とのこと。合わせた料理は、小さなレンゲのようなものに乗った"dungeness crab, filo gold apples, meyar lemon, vanilla"…要するに蟹肉と小さな角切りリンゴで、これを一口で頂く。実においしかったということ以外は忘れてしまった。

 続いて、2007 Unfiltered Merlot。合わせた料理は"tea smoked liberty farms duck, blood orange, pink peppercorn"、これもやはり一口レンゲで。スモークされた鴨肉の風味とオレンジの取り合わせだけでも素敵だったが、果実味豊かな赤ワインと合わさってなおウマい…こういった取り合わせを、レストランで思いっきり楽しんでみたいものだ。

 次は2008 Unfiltered Cabernet Sauvignon。まだ日本にいた頃にこれの2007年を飲んで美味しかった記憶があるが、2008もやはり美味しい。香りが華やかで、果実味が濃くて、上品な甘さがあって。合わせたのは"bleu d'auvergne"、ブルーチーズだ。至福。

 そして、最後に2007 The Puzzle。色々な方のブログを巡って事前に調査したところによると、この1杯は、出してくれるときとそうでないときがあるようだった。そういうわけで、期待どおりThe Puzzleが出てきたときには内心小躍りした。この日の10:00から約5時間デキャンタしてあったとのこと。エレガントな香りとフルーティな味で実に美味しい。香りがもっと強ければなお良いと思ったが、少なくとも以前家で同じものを飲んだときより美味しく感じた。やはり、きちんとデキャンティングして適切な温度でサーブされたものだからだろう。合わせたのは"flourless valrhona chocolate tart, star anise cream, spiced pomegranate"…フラッグシップワインをチョコと合わせるとは意外だったが、確かにチョコの苦味と複雑な赤ワインが良くマッチしているように思えた。

 その後、ゆっくりと4種のワインがグラスから無くなるまで頂き、ニュートンを後にした。

 40ドルという値段は、冷静に考えると決して安いものではない。しかし、テイスティングのみでなく、ツアー、料理とのペアリングも楽しめたので、実に満足のいく内容だった。



ワイナリーのWebサイトはこちら:http://www.newtonvineyard.com/splash/dspSplash.cfm

最終更新:2013年05月06日 09:56