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前篇 -[[羽入と圭一の一番長い日(前篇)]] ---- #center(){&bold(){&italic(){約束を守る最上の手段は決して約束をしないことである。}}} #center(){&bold(){&italic(){『ナポレオン言行録』より}}} #center(){&bold(){&italic(){カエサル「賽を投げろ」(「賽は投げられた」の原語)}}} #center(){&bold(){&italic(){プルタルコス『ポンペイウス伝』より}}} あの後、ボクは圭一のお家から、梨花たちにバレないように神社に戻ったのです。 何もなかったように目を覚まし、登校し、そして今――放課後の部活を迎えたのです。 …今日はバレンタインデー。そして、圭一にチョコをあげようとしているのが、ボクを含めて――六人。 レナ、魅音、詩音、沙都子、梨花、そしてボクなのです。 みんな愛しの圭一に手作りのチョコをあげようとしているのは、女であれば分かってしまうことなのです。当然、ボクも。 でも、そこはボクたち部活メンバー。どんなことでも過酷な「部活」になるのです。 「じゃあ今日は、バレンタインデー特別記念の部活にしよう!そ・こ・で…圭ちゃん!今日のゲームはあんたが主役だよッ!!」 「おお、マジかよッ!!なんだってまた、今日は俺がッ!?」 魅音に名指しされて戸惑う圭一…ふっふっふ。 「今日はバレンタインデーなんだよ、だよ!みんな圭一くんにチョコを持ってきたんだから、それをあげちゃうんだよ、はぅ~!」 「をーっほっほっほ!私も含めて、みなさんそれぞれのチョコを圭一さんに差し上げてもよろしいわけですけど、全員が本め…じゃなくてじゃなくて、義理チョコじゃ面白くないですわ!」 レナと沙都子もこのゲームに乗り気のようなのです。 「なので、圭ちゃんが一つだけ選んで下さい。それが『特別なチョコ』ってことで、それを作った人に一日デート権までつけちゃいます!あ、あと私から、エンジェルモートのデザふぇ一日タダ券もあげちゃいます!」 詩音も今日は圭一のためにチョコを持ってきている…悟史はどうしたのですか? あぁ、圭一はいわゆる「キープ君」にするんですか、そうですか。 どうでもいいけどその牛みてーな乳を圭一の腕に絡めるんじゃねーよなのです。はいはい爆乳爆乳。 「というわけで、ここにみんなのチョコが並べてあるのです。圭一はサイコロを振って、その出た目のチョコをもらうのです。そしてそれを作った人と二人きりで一日『にゃーにゃー』して構わないのです、にぱ~☆」 「ふ、二人っきりで『にゃーにゃー』はちょっとマズイんじゃないかな、かなぁ!あはははははははははははは。…でも、圭一くんなら…『レナのを』当ててくれるよね… よ ね ?」 「レ、レナの目がマジだよ、おじさん怖いってばぁ~!!」 「…なるほど、そういうゲームか…よし、乗ったぜ!」 クックック… 計 画 通 り なのです。 今日はおそらく、こういうゲームになると予想していたのです。 サイコロの目で決める、一発勝負。 間違えないよう念のために、魅音にそれとなくサイコロゲームをさっき薦めたのですが――彼女は既に決めていたので安心したのです。 既に目の前にはみんなのチョコが並んでいます。 梨花が『一』、レナが『二』、魅音が『三』、沙都子が『四』、詩音が『五』、ボクが『六』の番号を割り振られています。 そして圭一が「運命の主宰者」となり、サイコロを振る。 ――このサイコロっていうのがやっかいなのです。ごまかしがなかなか効かないもの。 ですが、これで決めてしまえば、『六』の目を出してしまえば――文句無しの勝者になれる。 ――そこで、ボクと圭一は昨日、約束したのです。 「いいですか、圭一…自前のサイコロを。あなたが目を操れるサイコロ…たしか、大石にもらったはずなのです」 「ああ、あるぜ…これはどんなに振っても『六』の目しか出ないように作られた、イカサマ用のサイコロだ」 「明日、ボクはあらかじめ魅音にサイコロゲームを提案するのです。そしてボクのチョコの目は『六』にして、圭一がそれを振れば…」 「…羽入のチョコを貰える上に、さらに羽入と一日デートまで…」 「そしてそのデートの夜こそ…ボクから本当のプレゼントをあげるのです…。欲しいでしょう?ならば、圭一…イカサマするのです…ふふっ」 「くけけけ…全ては神のために…」 ――ふふふ、みんな楽しそうなのです。 ですがこれは既に、ボクの手の内に有るゲーム…みんなが負けてボクが勝つ。 文字どおり…ボクは今、『神』なのです! 「…で、提案があるんだけどさ」 圭一がポケットに手を伸ばして、サイコロを取り出したのです。 「ちょうど今日、持ってきちゃったこれがあったから、このサイコロでいいだろ?これを振るだけだしな」 それでいいのです、圭一…偶然持っていたという風を装うのです。 「…うん、いいんじゃない?おじさんは賛成」 「なんだかタイミングが良過ぎじゃございませんこと?まぁ私は構いませんわ」 「そうですね、それでいいんじゃないですか?どうせサイコロに変わりないですし」 よし、この三人は予想通り鈍感だから騙せたのです。問題は…。 「…ねぇ圭一くん。そのサイコロ、ちょっと貸してくれないかな…かな」 &italic(){「…そうね、私も見てみたいわね…」} くっ…やはりレナと梨花は疑り深いのです。 「…あぁ、いいぜ。どこも変なところは無いからな。俺を信じろよ」 圭一は気さくにそれを渡したのです。レナと梨花はしばらくそれを手に取って探っていましたが…頷いて圭一に返しました。 「…うん、大丈夫だね。…圭一くんならしないだろうから信じるけど…」 「お…俺が何をするっていうんだよ、レナ…」 「 イ カ サ マ 」 レナの目がマジなのです…これはバレたら恐ろしいことになりそうなのです。 でも気になるのは…梨花なのです。ずっとボクとサイコロを見比べています。こっち見んななのです。 &italic(){「…まぁ、どんな目が出ようと、私はそれに従うわ…くすくす」} 嫌な感じなのです。未だにベルンカステル気取りの癖が抜けないから、いつまでもナイチチなのです、バーカバーカw 圭一はボクにも了承を求めました。 「…羽入もいいよな、コレで」 「…はい、ボクは全然構わないのですよ」 「よし、じゃあ…決まりだな…くっくっく」 お互いに言わずとも分かっているのです…全てはボクの思い通りなのですから! 「さぁ、いくぞッ!!」 ――圭一がサイコロを振る構えを見せたのです。 「――全ては神の仰せの通りに」 ニンマリと笑う圭一…馬鹿…あまりこっち見んななのです…バレたらどうするのです… いや、もう勝つと分かってのことですか…それでいいのです。 それにボクも…なんだか顔が、自然とニヤけてしまうのです。 だ…駄目なのです…こらえるのです…し…しかしwww 梨花たちは未だに自分こそが勝つと思い込んでいる…サイコロが落ちる前に勝利を宣言してもマズイ… いや…サイコロが止まる寸前…『六』の目が出る寸前に勝ちを宣言するのです…! ――そして、賽は投げられたのです。 サイコロは宙を舞い、机の上でコロコロと回り…もうそろそろ回転が収まりそうな瞬間。 ボクは梨花を見て言ったのです。 ――勝利を確信した、最高の笑みで。 「梨花。…ボクの勝ちなのです」 言ってやったのです言ってやったのですッ!!!どうですか、梨花ッ!! ボクと圭一で一日『にゃーにゃー』なのです!ボクと圭一がズッコンバッコンやってる間に、 梨花は自宅でペチャパイを弄りながら一人オナってればいいのです洗濯板涙目なのですwwwwww ――ですが、梨花は動じず――むしろボクを笑い飛ばしたのです。 &italic(){「――くすくす。勝ちですって?――それはこっちのセリフだわ」} …な、なんということ…。 ボクの目の前に、『一』の目が出たサイコロがあるのです。 何故、何故、なぜッ!!おかしいのです、圭一のサイコロは必ず『六』の目が出るはずなのに…ッ!! 「な…なぜ、『一』が…」 圭一も茫然と立ち尽くしていました。 「か…神…。お、俺は仰せの通りに…」 馬鹿!だからこっちを見ながら言うんじゃないのです!みんなジロジロと怪んでいるでしょうがッ!! &italic(){「――魅音、詩音。圭一を確保しなさい」} なっ…梨花の指示で、圭一が二人に捕えられたのです。身動き出来ない圭一はただ「か、神…」とうめくばかり。 梨花はサイコロを拾って、圭一の前に見せました。 「『一』の目だから、私が圭一と一日『にゃーにゃー』なのですよ、にぱ~☆&italic(){…というつもりだったけど、イカサマした罰が先ね。羽入と組んだ代償は…そうねぇ、二人に罰ゲームってことで。それでいい、みんな?」} みんながギラリと目を光らせるのです…うぅ、イカサマがバレた時の罰ゲームなんて、格別上等にヤバイに違いないのです! でも…なぜ、なぜ…? &italic(){「――なんでバレた、って顔してるわね。いいわ、教えてあげる。…羽入。あんたが家に帰って来た時、ほっぺたにチョコレートシロップと『圭一のホワイトチョコレート』がついたまんまだったわよ」} 「――ッ!!!」 し、しまったあぁぁぁなのですうぅぅぅぅぅ!!! あの後、疲れてしまって、お風呂も入らずフラフラと自分の布団で寝てしまったのですッ! そして起きた時には綺麗に顔が『拭かれていた』…ということはッ!! &italic(){「――そう、私があらかじめタオルであんたの顔を寝ている間に拭いてやったの。そして知らぬふりで通し、羽入以外のみんなで計画を練った」} 「圭一くんと羽入ちゃんで、夜中の内に何かを画策しているんじゃないかな?ってレナは思ったの。 おそらくバレンタインデーの部活について、目的は当然、羽入ちゃんに便宜を図るため…」 「…そこで、おじさんが思い出した。『イカサマする道具を、この前大石さんからもらっていたはず。確かサイコロだった』てね」 「ならば、そのサイコロを使うゲームをするように仕向けて、みんなの前で暴けば宜しいのですわ。それが証拠になりますもの」 「…そして、さっき私が圭ちゃんの腕に絡んでいたでしょう?…ただ単に、この爆乳を押し付けていたんじゃないですよ。あの時、羽入さんにも気付かれないよう、圭ちゃんのポケットからサイコロを奪って、お姉のサイコロとすりかえたんです」 「…当然、それは普通のサイコロ。圭一はそれを知らずに意気揚々と振ったというわけなのですよ。&italic(){…まぁ、まさか上手い具合に『一』を引き当てるとは思わなかったけど。――どこかにいるかもしれない、幸運の『神』に感謝するべきかもね…くすくす」} みんながご丁寧に教えてくれたのです――ニヤニヤしながら。 さ、最初からバレていたのですか…このゲーム自体が、イカサマだったなんて…! ていうかみんな、推理力がおかしいのです!そこまで飛躍して考えて、しかも全部当たってるのは卑怯なのです! 「バーローなのですよ、にぱ~☆&italic(){…くすくす。だけど、現にここにイカサマのサイコロがあるんじゃ、言い訳出来ないわよ?」} 梨花が詩音から受け取ったサイコロは…確かに圭一のサイコロ。 それが既にイカサマ目的なら…言い逃れは出来ないのです。 こ、こうなったらッ! 「…圭一」 「か…神…」 「逃げるのですッ!!!!!」 「御意ッ!!…すまん、みんなッ!!」 圭一は二人を振払って、ボクと一緒に逃げ出したのです! ボクも教室から駆け出して、なんとか校庭で圭一と合流できたのです! 「圭一ッ!!…なんとか逃げ延びるのです、捕まったらアウトなのです、人生の終わり的な意味でッ!!」 「分かっております、神ッ!!…うおおぉぉぉ、お許しください、みんな~~~ッ!!!」 #center(){×  ×  ×} …教室に取り残された五人は、彼らが走り去った後を見て、全員がゲラゲラと笑った。 「…はぅ~☆あの二人、愛の逃避行なんだよ、だよ!」 「それにしては、焦り過ぎもいいところですけどね。――二人で逃げ出さねばならないくらいの秘密があるわけですね。おそらく『昨日の夜』の――」 「そ、それは…まさか、不潔でございますわぁッ!!!」 &italic(){「くすくす…そうとは限らないわよ?――まぁ、帰ってきた時の様子じゃ、確実だろうけど。}それは二人に直接聞いてからのお楽しみなのですよ、にぱ~☆」 「…さぁて部員諸君。今日の部活は…あの二人と、鬼ごっこだぁッ!!!あの二人を捕まえて、『昨日の夜』についてあらいざらい聞き出した人がチョコをもらえるってことでッ!!いくよッ!!よーい…スタートッ!!!」 魅音の掛け声を合図に、みんなは一斉に走り出した。 ――誰一人として、あの二人を逃すつもりはない。 ただし、それは嫉妬ではなく、むしろあの二人をとことんいじり抜いて遊びたいという気持ちで、彼らを追いかける。 ――もちろん。逃げている二人は、こんな温かい彼らの思いに気付かず、ただただ逃げることしか考えていなかったが。 ――めでたしめでたし、めでたくもなし?
前篇 -[[羽入と圭一の一番長い日(前篇)]] ---- #center(){&bold(){&italic(){約束を守る最上の手段は決して約束をしないことである。}}} #center(){&bold(){&italic(){『ナポレオン言行録』より}}} #center(){&bold(){&italic(){カエサル「賽を投げろ」(「賽は投げられた」の原語)}}} #center(){&bold(){&italic(){プルタルコス『ポンペイウス伝』より}}} あの後、ボクは圭一のお家から、梨花たちにバレないように神社に戻ったのです。 何もなかったように目を覚まし、登校し、そして今――放課後の部活を迎えたのです。 …今日はバレンタインデー。そして、圭一にチョコをあげようとしているのが、ボクを含めて――六人。 レナ、魅音、詩音、沙都子、梨花、そしてボクなのです。 みんな愛しの圭一に手作りのチョコをあげようとしているのは、女であれば分かってしまうことなのです。当然、ボクも。 でも、そこはボクたち部活メンバー。どんなことでも過酷な「部活」になるのです。 「じゃあ今日は、バレンタインデー特別記念の部活にしよう!そ・こ・で…圭ちゃん!今日のゲームはあんたが主役だよッ!!」 「おお、マジかよッ!!なんだってまた、今日は俺がッ!?」 魅音に名指しされて戸惑う圭一…ふっふっふ。 「今日はバレンタインデーなんだよ、だよ!みんな圭一くんにチョコを持ってきたんだから、それをあげちゃうんだよ、はぅ~!」 「をーっほっほっほ!私も含めて、みなさんそれぞれのチョコを圭一さんに差し上げてもよろしいわけですけど、全員が本め…じゃなくてじゃなくて、義理チョコじゃ面白くないですわ!」 レナと沙都子もこのゲームに乗り気のようなのです。 「なので、圭ちゃんが一つだけ選んで下さい。それが『特別なチョコ』ってことで、それを作った人に一日デート権までつけちゃいます!あ、あと私から、エンジェルモートのデザふぇ一日タダ券もあげちゃいます!」 詩音も今日は圭一のためにチョコを持ってきている…悟史はどうしたのですか? あぁ、圭一はいわゆる「キープ君」にするんですか、そうですか。 どうでもいいけどその牛みてーな乳を圭一の腕に絡めるんじゃねーよなのです。はいはい爆乳爆乳。 「というわけで、ここにみんなのチョコが並べてあるのです。圭一はサイコロを振って、その出た目のチョコをもらうのです。そしてそれを作った人と二人きりで一日『にゃーにゃー』して構わないのです、にぱ~☆」 「ふ、二人っきりで『にゃーにゃー』はちょっとマズイんじゃないかな、かなぁ!あはははははははははははは。…でも、圭一くんなら…『レナのを』当ててくれるよね… よ ね ?」 「レ、レナの目がマジだよ、おじさん怖いってばぁ~!!」 「…なるほど、そういうゲームか…よし、乗ったぜ!」 クックック… 計 画 通 り なのです。 今日はおそらく、こういうゲームになると予想していたのです。 サイコロの目で決める、一発勝負。 間違えないよう念のために、魅音にそれとなくサイコロゲームをさっき薦めたのですが――彼女は既に決めていたので安心したのです。 既に目の前にはみんなのチョコが並んでいます。 梨花が『一』、レナが『二』、魅音が『三』、沙都子が『四』、詩音が『五』、ボクが『六』の番号を割り振られています。 そして圭一が「運命の主宰者」となり、サイコロを振る。 ――このサイコロっていうのがやっかいなのです。ごまかしがなかなか効かないもの。 ですが、これで決めてしまえば、『六』の目を出してしまえば――文句無しの勝者になれる。 ――そこで、ボクと圭一は昨日、約束したのです。 「いいですか、圭一…自前のサイコロを。あなたが目を操れるサイコロ…たしか、大石にもらったはずなのです」 「ああ、あるぜ…これはどんなに振っても『六』の目しか出ないように作られた、イカサマ用のサイコロだ」 「明日、ボクはあらかじめ魅音にサイコロゲームを提案するのです。そしてボクのチョコの目は『六』にして、圭一がそれを振れば…」 「…羽入のチョコを貰える上に、さらに羽入と一日デートまで…」 「そしてそのデートの夜こそ…ボクから本当のプレゼントをあげるのです…。欲しいでしょう?ならば、圭一…イカサマするのです…ふふっ」 「くけけけ…全ては神のために…」 ――ふふふ、みんな楽しそうなのです。 ですがこれは既に、ボクの手の内に有るゲーム…みんなが負けてボクが勝つ。 文字どおり…ボクは今、『神』なのです! 「…で、提案があるんだけどさ」 圭一がポケットに手を伸ばして、サイコロを取り出したのです。 「ちょうど今日、持ってきちゃったこれがあったから、このサイコロでいいだろ?これを振るだけだしな」 それでいいのです、圭一…偶然持っていたという風を装うのです。 「…うん、いいんじゃない?おじさんは賛成」 「なんだかタイミングが良過ぎじゃございませんこと?まぁ私は構いませんわ」 「そうですね、それでいいんじゃないですか?どうせサイコロに変わりないですし」 よし、この三人は予想通り鈍感だから騙せたのです。問題は…。 「…ねぇ圭一くん。そのサイコロ、ちょっと貸してくれないかな…かな」 &italic(){「…そうね、私も見てみたいわね…」} くっ…やはりレナと梨花は疑り深いのです。 「…あぁ、いいぜ。どこも変なところは無いからな。俺を信じろよ」 圭一は気さくにそれを渡したのです。レナと梨花はしばらくそれを手に取って探っていましたが…頷いて圭一に返しました。 「…うん、大丈夫だね。…圭一くんならしないだろうから信じるけど…」 「お…俺が何をするっていうんだよ、レナ…」 「 イ カ サ マ 」 レナの目がマジなのです…これはバレたら恐ろしいことになりそうなのです。 でも気になるのは…梨花なのです。ずっとボクとサイコロを見比べています。こっち見んななのです。 &italic(){「…まぁ、どんな目が出ようと、私はそれに従うわ…くすくす」} 嫌な感じなのです。未だにベルンカステル気取りの癖が抜けないから、いつまでもナイチチなのです、バーカバーカw 圭一はボクにも了承を求めました。 「…羽入もいいよな、コレで」 「…はい、ボクは全然構わないのですよ」 「よし、じゃあ…決まりだな…くっくっく」 お互いに言わずとも分かっているのです…全てはボクの思い通りなのですから! 「さぁ、いくぞッ!!」 ――圭一がサイコロを振る構えを見せたのです。 「――全ては神の仰せの通りに」 ニンマリと笑う圭一…馬鹿…あまりこっち見んななのです…バレたらどうするのです… いや、もう勝つと分かってのことですか…それでいいのです。 それにボクも…なんだか顔が、自然とニヤけてしまうのです。 だ…駄目なのです…こらえるのです…し…しかしwww 梨花たちは未だに自分こそが勝つと思い込んでいる…サイコロが落ちる前に勝利を宣言してもマズイ… いや…サイコロが止まる寸前…『六』の目が出る寸前に勝ちを宣言するのです…! ――そして、賽は投げられたのです。 サイコロは宙を舞い、机の上でコロコロと回り…もうそろそろ回転が収まりそうな瞬間。 ボクは梨花を見て言ったのです。 ――勝利を確信した、最高の笑みで。 「梨花。…ボクの勝ちなのです」 言ってやったのです言ってやったのですッ!!!どうですか、梨花ッ!! ボクと圭一で一日『にゃーにゃー』なのです!ボクと圭一がズッコンバッコンやってる間に、梨花は自宅でペチャパイを弄りながら一人オナってればいいのです洗濯板涙目なのですwwwwww ――ですが、梨花は動じず――むしろボクを笑い飛ばしたのです。 &italic(){「――くすくす。勝ちですって?――それはこっちのセリフだわ」} …な、なんということ…。 ボクの目の前に、『一』の目が出たサイコロがあるのです。 何故、何故、なぜッ!!おかしいのです、圭一のサイコロは必ず『六』の目が出るはずなのに…ッ!! 「な…なぜ、『一』が…」 圭一も茫然と立ち尽くしていました。 「か…神…。お、俺は仰せの通りに…」 馬鹿!だからこっちを見ながら言うんじゃないのです!みんなジロジロと怪んでいるでしょうがッ!! &italic(){「――魅音、詩音。圭一を確保しなさい」} なっ…梨花の指示で、圭一が二人に捕えられたのです。身動き出来ない圭一はただ「か、神…」とうめくばかり。 梨花はサイコロを拾って、圭一の前に見せました。 「『一』の目だから、私が圭一と一日『にゃーにゃー』なのですよ、にぱ~☆&italic(){…というつもりだったけど、イカサマした罰が先ね。羽入と組んだ代償は…そうねぇ、二人に罰ゲームってことで。それでいい、みんな?」} みんながギラリと目を光らせるのです…うぅ、イカサマがバレた時の罰ゲームなんて、格別上等にヤバイに違いないのです! でも…なぜ、なぜ…? &italic(){「――なんでバレた、って顔してるわね。いいわ、教えてあげる。…羽入。あんたが家に帰って来た時、ほっぺたにチョコレートシロップと『圭一のホワイトチョコレート』がついたまんまだったわよ」} 「――ッ!!!」 し、しまったあぁぁぁなのですうぅぅぅぅぅ!!! あの後、疲れてしまって、お風呂も入らずフラフラと自分の布団で寝てしまったのですッ! そして起きた時には綺麗に顔が『拭かれていた』…ということはッ!! &italic(){「――そう、私があらかじめタオルであんたの顔を寝ている間に拭いてやったの。そして知らぬふりで通し、羽入以外のみんなで計画を練った」} 「圭一くんと羽入ちゃんで、夜中の内に何かを画策しているんじゃないかな?ってレナは思ったの。 おそらくバレンタインデーの部活について、目的は当然、羽入ちゃんに便宜を図るため…」 「…そこで、おじさんが思い出した。『イカサマする道具を、この前大石さんからもらっていたはず。確かサイコロだった』てね」 「ならば、そのサイコロを使うゲームをするように仕向けて、みんなの前で暴けば宜しいのですわ。それが証拠になりますもの」 「…そして、さっき私が圭ちゃんの腕に絡んでいたでしょう?…ただ単に、この爆乳を押し付けていたんじゃないですよ。あの時、羽入さんにも気付かれないよう、圭ちゃんのポケットからサイコロを奪って、お姉のサイコロとすりかえたんです」 「…当然、それは普通のサイコロ。圭一はそれを知らずに意気揚々と振ったというわけなのですよ。&italic(){…まぁ、まさか上手い具合に『一』を引き当てるとは思わなかったけど。――どこかにいるかもしれない、幸運の『神』に感謝するべきかもね…くすくす」} みんながご丁寧に教えてくれたのです――ニヤニヤしながら。 さ、最初からバレていたのですか…このゲーム自体が、イカサマだったなんて…! ていうかみんな、推理力がおかしいのです!そこまで飛躍して考えて、しかも全部当たってるのは卑怯なのです! 「バーローなのですよ、にぱ~☆&italic(){…くすくす。だけど、現にここにイカサマのサイコロがあるんじゃ、言い訳出来ないわよ?」} 梨花が詩音から受け取ったサイコロは…確かに圭一のサイコロ。 それが既にイカサマ目的なら…言い逃れは出来ないのです。 こ、こうなったらッ! 「…圭一」 「か…神…」 「逃げるのですッ!!!!!」 「御意ッ!!…すまん、みんなッ!!」 圭一は二人を振払って、ボクと一緒に逃げ出したのです! ボクも教室から駆け出して、なんとか校庭で圭一と合流できたのです! 「圭一ッ!!…なんとか逃げ延びるのです、捕まったらアウトなのです、人生の終わり的な意味でッ!!」 「分かっております、神ッ!!…うおおぉぉぉ、スマン!!みんな~~~ッ!!!」 #center(){×  ×  ×} …教室に取り残された五人は、彼らが走り去った後を見て、全員がゲラゲラと笑った。 「…はぅ~☆あの二人、愛の逃避行なんだよ、だよ!」 「それにしては、焦り過ぎもいいところですけどね。――二人で逃げ出さねばならないくらいの秘密があるわけですね。おそらく『昨日の夜』の――」 「そ、それは…まさか、不潔でございますわぁッ!!!」 &italic(){「くすくす…そうとは限らないわよ?――まぁ、帰ってきた時の様子じゃ、確実だろうけど。}それは二人に直接聞いてからのお楽しみなのですよ、にぱ~☆」 「…さぁて部員諸君。今日の部活は…あの二人と、鬼ごっこだぁッ!!!あの二人を捕まえて、『昨日の夜』についてあらいざらい聞き出した人がチョコをもらえるってことでッ!!いくよッ!!よーい…スタートッ!!!」 魅音の掛け声を合図に、みんなは一斉に走り出した。 ――誰一人として、あの二人を逃すつもりはない。 ただし、それは嫉妬ではなく、むしろあの二人をとことんいじり抜いて遊びたいという気持ちで、彼らを追いかける。 ――もちろん。逃げている二人は、こんな温かい彼らの思いに気付かず、ただただ逃げることしか考えていなかったが。 ――めでたしめでたし、めでたくもなし?

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