「嘆キノ森」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
嘆キノ森」を以下のとおり復元します。
私は、必死だった。 
とにかくここを抜け出そう。 
この村を抜け出そう。 
そうして……どうする? 
不意に私が立ち止まったからか、 
沙都子は驚きの表情を見せた。 

あたりはひぐらしの、近くで聞くとけたたましいほどの鳴き声で、静かとは程遠い場所に居たのに…… 
私は、いや、私たちは……静寂の真ん中に居た。 

「ここは……どこですの?」 
「どこだっていいのです」 
少しきつい言い方だったかもしれない。 
沙都子が肩がびくんとはねた。 
強い日差しがちらちらとしか突き刺さらないのは、 
深い深い森のおかげだ。 
谷河内のほうの森は、避暑にぴったりだった。 
まだ六月だというのに、真夏日のようなこの日々に、 
二人は汗をかいていた。 

もしかしたらその汗は、暑さや運動のせいだけではないのかもしれない。 
今回は……鉄平が来たのだ。 
それで、私は……沙都子を連れ出した。 
もう、あんな沙都子を見るのはごめんだった。 

「梨……梨花?」 
沙都子が、恐る恐る話しかけてきた。 
「沙都子、行きましょうです。もうちょっとで資材小屋があるのです。 
そこで、お泊りしましょうです」 
「あの……梨花、わたくし、お使いを頼まれて」 
「沙都子……ごめんなさいです。ボクのわがままを聞いてほしいです」 
私は、一呼吸置いて言った。 



「もう一度、一緒に生活しましょうです……ボクのこと、嫌いですか?」 
「……梨花、ままごとは……もう、終わりですのよ」 
ショックだった。 
ままごとだったんだ。 
今までやってたことは、全部。 
一緒にご飯を食べたこと。 
一緒にお風呂に入ったこと。 
一緒のお布団で寝たこと。 
全部、ままごとだったんだ。 

悲しいことなのに。 
私は、涙の一粒も出せないでいた。 
「終わり、じゃないのです。沙都子はボクと、いま結婚するのです。 
だから、新生活なのですよ、にぱー☆」 
「……梨花、本当に……やめてほしいんですの……」 
私は、沙都子の服のすそを、きゅっと握った。 
そして、沙都子を動けなくしてから…… 

「んむっ! あうっ! な、何しますの? 梨花ぁ!」 
「誓いのキスなのです。これでボクと沙都子は夫婦なのです」 
ごまかしだった。 
沙都子に一度二度拒絶されただけで、見捨てるわけにはいかない。 
つらい未来が待っていたとしても、沙都子は行ってしまうから。 
こんなときばかりは、悟史が憎かった。 
沙都子を守ってくれたのは悟史だけど……こういう時の悟史は、 
沙都子に無理をさせてしまうから。 



「……わたくしだって……梨花と居たいですわ……でも、つらいことから逃げてちゃ駄目ですの。 
にーにーに笑われますの……梨花、ありがとうございます。 
ままごとなんて言ってごめんなさい。 
わたくしは梨花と生活して、初めて家族というものが分かった気がしますわ。 
だから……わたくしを行かせてくださいませ……」 
「沙都子ッ!」 
「きゃっ!」 

必死だった。 
ただ、沙都子を止めるのに必死だった! 
腕をつかんで、押し倒して、 
私との体重比なら、沙都子の方が有利だったけど、 
それを不意打ちでねじ伏せた。 
「ちょ、梨っ!」 
沙都子にそれ以上喋らせない。 
喋らせてなるものか。 
私は必死に、沙都子の口に封をした。 

何十年も生きていて、人の口の中に、舌を入れるなんて初めてだった。 
こうしたら喋られないだろうと思って、必死にそれをやった。 
口の中がこそばかった。 
沙都子の鼻から、切なそうな声が漏れ出た。 
「んひゅ、みゅぅぅ、ぅんー……」 
沙都子の顔がみるみるうちに赤くなっていった。 
私は、沙都子の口内の、さっき魅音の家でご馳走になったメロン味のカキ氷シロップの味を堪能するように、 
しつこく嘗め回した。 


時々、沙都子の舌に触れるたび、私も切ない気持ちになってくる。 
なんで沙都子は分かってくれないんだろう。 
なんで沙都子は自分を第一に思ってくれないんだろう。 
私はずっと、沙都子を一番に思っていたのに。 

酸欠になった沙都子の肺が、脳が、空気を欲して口に激しい呼吸を指令する。 
「はんっ、ふっ、ンン……梨花、梨花ぁ……」 
何とか発音できた沙都子は、私の名前を呼びながらいやいやをした。 
そうだ、沙都子は私を嫌いなんだ。 
私がいやなんだ。 
沙都子をめちゃくちゃにしたい。 
私は、さらに沙都子にかぶりついた。 
このまま息ができなくなって、死んだっていい。 

私は、沙都子の胸の前で閉じた腕を、無理やり引き剥がした。 
その間、ずっと沙都子の潤んだ瞳を見てやる。 
沙都子、恥ずかしがってる。 
今までのじゃれあいとは違うことに、 
ずっと前から気がついてる顔。 
沙都子を泣かしたい。 
あの潤みを、しずくにして落としてやりたい。 
「じゅる……ちゅぅ……」 
沙都子の唾液を吸った。 
メロンの甘さでは無く、もっと感覚器の奥底に訴えるような…… 
髄までの甘さを私は感じた。 
頭がとろけてぼーっとする。 


「ひぃっぃん……ひっく……ひどい、ですわ、り、梨花ぁ……」 
沙都子が、両手のひらを顔の前に持っていき、 
自分の目を隠した。 
それでも口はがら空きだった。 
沙都子も……本当は望んでいるんだ。 
沙都子のうそつき。 
沙都子のウソツキ。 
沙都子の嘘つき。 
沙都子の嘘吐きッ! 

私は、さらに激しい攻撃を加えるため、 
背中まで手を回し、沙都子を抱きしめた。 
「沙都子、もっとして欲しいですか?」 
わざとらしく質問を投げかけた。 
「へ?」 
突然行為が途切れたことと、 
急な質問があったからか、 
沙都子は呆けた顔をしていた。 
その顔が、また可愛かった。 

「お耳が聞こえないですか?」 
私は沙都子の耳たぶを、優しくかんだ。 
「ひぅっ!」 
沙都子の体が跳ねて、顔を隠していた手のひらが空中に投げ出される。 
そのまま沙都子は、抵抗をやめて地面に手を付いた。 
「あ、り、あっ、りり、かっ、あぅ……」 
耳をかじかじ噛みながら、胸に手を這わせていると、 
沙都子の体から力が抜けていった。 
「沙都子、よく聞こえますですか? もう一度聞きます。 
もっと、して欲しいですか?」 


沙都子は息を切らせながら、草むらのベッドに沈んだり、 
浮き上がったりしている。 
「返事は?」 
「は……ぃ……」 
「沙都子、ボクと、暮らしますですか?」 
「暮らし、ます……」 
私は、沙都子の体をむさぼった。 

まだまだ桜色のつぼみを、舌で転がす。 
沙都子はもう、何も言わなかった。 
何か言って欲しいのに、何も言わなかった。 
だから、私の行動はだんだんと過激になっていく。 
私は、きっと自分でさえもしつこく触れたことの無いであろう部分に、 
手をかけた。 

「ひぇっ、梨花、そこ、そんなとこ……」 
沙都子の顔は、恐怖の色だった。 
快感なのか何なのか、分からない感情を抱いて、 
困惑していた。 

いや、沙都子の頭はしっかりと認識している。 
それでも、沙都子自信は否定していた。 
そこは不浄の場所。 
自分の中で、それほど汚いところはなかなか無いと思っていた。 
そんな場所を触られて、キモチイイと思っている自分は…… 
きっと変態だ。 


そう思っているに違いない。 
そんな顔を、愉悦の笑みを浮かべて見る私を、 
自分で最低だと思った。 
これ以上下がる場所は無いから…… 
私は、どこまでも堕ちていける。 
「あらあら、大変ですね、沙都子。 
ボクとキスしたから、子供が産まれそうですよ?」 
「ひぅ……こ、ども?」 
沙都子だって、子供が生まれるメカニズムを知っている。 
キスなんかじゃ生まれないことを知っている。 
それなのに、沙都子は分からない素振りをした。 

「バレバレですよ、沙都子。そうだ、沙都子。 
沙都子が買ってきたものの中に、ティッシュがありましたね。 
アレで綺麗にしてあげますですよ。 
だから……中に入りましょう?」 
私は、立ち上がって沙都子に手を差し伸べた。 
もはや何の思考も無く、沙都子は私の手を握る。 
私の手は冷たく、沙都子の手は暖かかった。 
まるで、私たちの性格のようだった。 
本当は……私だって沙都子のようになりたかったけど…… 
世界の仕組みは残酷だった。 

「沙都子、服を脱いでください」 
従順になった沙都子は、何も言わずに服を脱いだ。 
ぼやっとした表情のまま、 
私が事前に用意していたゴザの上に寝転がった。 
別に寝転がれと命令したわけではないけど、 
それはそれでやりやすいからいい。 
「綺麗にしてあげますよ、沙都子……」 


私は、沙都子の大事な部分を、丁寧に丁寧に拭いた。 
時折沙都子が震えて、ぴくりと体を上にさせるのが、 
たまらなくいとおしい。 
拭くのをやめると、沙都子の敏感になった部分は、 
ひくひくと蠢いていた。

-[[嘆キノ森2]]

復元してよろしいですか?