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あるナースの襲来2 - (2007/06/22 (金) 01:41:30) の編集履歴(バックアップ)


 鷹野さんの服装は、看護服は看護服でも下はミニスカートにロングニーソックスという、男の欲望をこれでもかというほど抉りまわしてくる格好で、……しかも、スカートの丈は心なしかいつもより短く、太ももの大部分を露出している。
 このまま階段を上ったら、確実にその中身が見えてしまうだろう……。
 これでも普段の仕事着なのだから、診療所で鷹野さんの姿を初めて見た時、俺はかなり驚いた。知らない人が見たら、エンジェルモート同様入江診療所が何処ぞの風俗店と思われてもおかしくはない。
 実際、この姿のためだけに、わざわざ隣の県から診察を受けに来る患者さんもいるとかいないとか……。いや、そんなことはどうでもいいか。
 ……正直、俺が終始緊張しているのも、この普通にいるだけでも少し目のやり場に困ってしまう格好の影響が大きかった。
「どうしたの前原くん? 目眩にでもなった?」
 どうにもこうにも進めず、立ち往生をしている俺に、鷹野さんが階段の途中でこちらへ振り返って言った。
 その振り返る動作で鷹野さんのミニスカートがあらぬ方向へ揺れ、俺は思わず明後日の方向へ目線を投げる。
「……い、いや! ははは、何でもないです」
 俺は目線を逸らしたままで、必死に平静を装って言った。
「そう?」
 頭に疑問符を浮かべて、鷹野さんは再び階段を上り始める。
 数秒の思考の後、このまま階段を上らなかったら角度的に余計に”見えて”しまうということに気付き、俺も大慌てで階段を上った。
 ……しかし、上りきったところで、どうせなら少しくらい見ておけば良かったかもという考えがふと浮かび、自己嫌悪と後悔が混ざり合った複雑な感情が頭の中を支配したのだった。

「う~ん……。前原くん、いくら病気の体で辛いからといっても、掃除はちゃんとしないと駄目よ? 埃の溜まった部屋は、それだけで体の調子を悪くさせちゃうの。
 それに、換気もしっかりしないと。こんなジメジメして汚い部屋で寝ていたら、治る風邪も治らないわよ? それから……」
 俺の部屋に着くなり、鷹野さんは次々とこの部屋の不衛生さを指摘した。その指摘量の多さから、俺の家事スキルがいかに低いのかを大きく思い知らされた。
「いやぁ、ははははは……」
 俺は苦笑いをしながらそれらを誤魔化す。
「まぁ、いいわ。今週中は私たち診療所のスタッフが徹底的に部屋の環境を管理するから、前原くんはその内に早く風邪を治しちゃいましょ。」
「私たちって……。あれ? 明日は鷹野さん以外のスタッフが来るんですか?」
「そうよ。私も仕事の合間を縫って来ているに過ぎないもの。明日はまた仕事に余裕がある別のスタッフが来るわよ。……あら? もしかしてお姉さんが来るのが今日だけで、残念だった?」
 小悪魔的な笑みを浮かべて鷹野さんがからかう。
「い、いや! そういう訳じゃないですよ……!」
 むしろ、その方がありがたかった。
 健全な思春期の少年には刺激的過ぎるその格好でこれから毎日押しかけられては敵わない。余計に風邪が悪化してしまいそうだ……。


587 : ◆FBzEQW9kzY [sage] :2007/06/15(金) 22:42:10 ID:RU1zbKxJ

「さて、それじゃあ診察を始めましょうか。ん~、とりあえず前原くんはその辺りに座って頂戴」
 言われて、俺は布団が敷かれている横の畳に座りこんだ。鷹野さんは持ってきたバッグを何やら漁っている。多分、医療器具か何かを出しているんだろう。
 しばらくして、鷹野さんは聴診器とカルテを持って俺の前に正座した。
「う……」
 正座によって、またしてもスカートの中が見えそうになり、俺は気付かれないように視線を上へ上げる。
「じゃあ前原くん、まずは胸を出して」
「は、はい」
 俺は上着を脱いで、その下に来ていたシャツを捲り上げた。露出された胸に、さっき鷹野さんが換気のためにと空けた窓から風が当たり、全身に悪寒が走る。
 いつもなら、この程度の風はむしろ涼しいくらいなのだが、やはり風邪に侵された体には厳しいようだった。
「大丈夫? 悪いけど、ちょっとだけ我慢してね?」
「……いや、この程度なら全然大丈夫です」
 本当は結構キツイのだが、この程度で女性に弱音を吐きたくないという、つまらないプライドが俺を強がらせる。
「……う、つめたッ!」
 だが、それは突然の聴診器による冷たい感触の前にあっさりと崩れた。さすがの意地も、動物的な本能による反射には敵わなかったようだ。
 そんな俺に構わず、鷹野さんは二、三と聴診器を当てる場所を変える。冷たい聴診器の感触が移動するたびに、風邪の熱で火照った俺の体はブルっと震えた。
「う~ん?」
 しばらくして、鷹野さんが何かに気付いたような顔をして、体をこちらに傾けた。
「? どうしたんですか、たか……のんんっ!!?」
 言いかけて、俺は素っ頓狂な声を上げる。
 ……鷹野さんが体を傾けたことによって、今度はその豊満な胸の谷間が俺の目に飛び込んできたのだ。暑いのか、胸元のボタンを数個開けているせいで、余計にそれが強調される。
 しかも、それは鷹野さん自身の汗によって少し濡れ光っていて、普通より更に官能的なモノへとバージョンアップしていた……。
 俺はたまらず視線を鷹野さんの胸から下へ向ける。
「……!」
 しかし、そこには例によって中身を露出寸前のミニスカと、柔らかそうな太ももがある訳で……。
「…………ぅぅぅっ……。」
 上と下からのダブルパンチによって、動揺のあまり頭が爆発しそうになる。……確実に、熱が上がって風邪は悪化しているだろう。

 くっそ、クールになれ前原圭一! ……と言っても、思考を凍らせるな!
 冷静な判断を……、冷静な判断をするんだ!
 上も下も見ないで済む方向……。

 それは、こっちだあああぁっぁぁぁぁぁっぁぁあ!

 ブンッ! と一気に俺は頭を左へ回した。
 そこは、何もない空間。刺激の強すぎるモノは一切ない、正に安息の地だった。

 よっしゃあああああ!! 勝ったあぁあああああぁぁあ!!!!!!!!
 俺は心の中で大きくガッツポーズをする。

「ま、前原くん? いきなりどうしたの?」
 鷹野さんは俺の突然の行動に驚きの声を上げる。……当然だろう。診ていた患者が突然あっち向いてホイ紛いの事をし始めたのだから。
 でも、どうかわかって欲しい。これは、貴女のせいなんだと……。
「い、いや何でもないです。それより、な、何かあったんですか? いきなり体をこっちに傾けて」
 俺は目線をずらしたまま、さっきの不可解な行動の意味を聞いた。
「え? あぁ、何でもなかったわ。ちょっとした勘違いだったみたい。……それより、どんどん心拍数が上がってきているんだけど、一体どうしたの?」
「さ、さぁ、何ででしょうねぇ! ははははは!」
 もしかして、ワザとやっているのだろうか? それとも、案外天然系なのだろうか? そう心の中で疑問を浮かべながら、俺は本日何度目かの誤魔化しをするのだった。

 そして数分後、診察は何とか無事(?)に終わり、結果は普通の夏風邪だと言われた。それも、しばらく安静にしていれば、すぐに治るレベルらしい。ということは、ここまで風邪が長引いたのは、やはり環境の悪さのせいなのだろう。
 自分の掃除のいい加減さに改めて呆れると共に、監督に電話をして本当に良かったと思った。もし監督に相談しなかったら、部屋は汚いままで、いつまで経ってもこの風邪が治らなかったのかもしれないのだから。
 ……今度、改めてお礼を言いに行かないとな。

 時計の針は、長針短針共にもう少しでてっぺんを指そうとしている。頭に乗せた水タオルの冷たさが心地よい。
 俺の部屋は鷹野さんによってすっかり片づけられ、以前の汚らしい雰囲気が嘘のようだった。あちこちで舞っていた埃はすっかり姿を潜め、心なしか部屋が少し明るくなった気がする。
 そんな、まるで生まれ変わったかのような部屋の中心に、布団の中で寝ているおれの姿があった。
 被っている布団は季節はずれなくらい厚くて熱く、正直息苦しいくらいなのだが、鷹野さんが言うには、こうやって汗をたくさん流すと、風邪なんてあっという間に治ってしまうらしい。
 だから、仕方なく俺はその指示に従うことにした。まぁ、風邪を治すための試練だと思えば、このくらい何ともない。
 鷹野さんは少し前に下の台所へ昼食を作りに行った。曰く、ご両親がいなくてロクな物を食べていなかっただろうから、しっかりとした栄養のある物を食べさせてあげるわとか何とか。
 鷹野さんの料理の腕は知らないが、どんな物を食べさせてくれるのか少し楽しみだった。

 そして更に三十分後、布団の中で静かに寝ていると、誰かが階段を上がってくる音が聞こえた。足音が鳴りやみ、襖が開く。
 それは、小さな土鍋と急須、湯呑が乗っているトレーを持った、鷹野さんだった。
「大分顔色が良くなってきたわね。咳も少なくなってきたみたいだし」
「あ、どうも」
 俺は軽く会釈をする。
「さ、お姉さんが栄養たっぷりのお粥を作って来てあげたから、たくさん食べてこの調子で一気に治しましょ」
 そう言いながら、鷹野さんは俺のすぐ隣に座ってトレーを置き、土鍋の蓋を開けた。同時に、白い湯気と香ばしい匂いが周り広がる。中身はお粥で、何やら緑色の野菜らしき物が混ぜられているようだった。
「この緑色の野菜は何ですか?」
「あぁ、それはニラよ。栄養価が高くて胃腸に優しいから、昔からよく風邪の時の食事に使われているの。」
 なるほど、と納得する。そう言えば、前の学校で風邪を引いたときも、お袋がそんなことを言ってニラ粥を作ってくれた記憶がある。
 じゃあ、この急須に入っている飲み物も、何か特別な効果があるものなんだろうか。