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圭羽 - (2007/11/19 (月) 00:45:25) のソース

 

 圭羽
 

 夜の帳が下り始めてくる頃。 
 涼しげな音と風の取り巻く古手神社の境内にひとりの少女がいた。紫雲のような髪がふ
わりと浮いては 頭に見える角を見え隠れさせる。 
 少女は竹箒を手に持って空を見上げたまま、じっと静止していた。 
 上腕部分を露出した奇妙な装いの巫女服ではあったけれど、神社を背景にしたその少女の姿はいかにもといった感じで神聖な雰囲気を醸し出している。柔和な微笑みがそれを助
長して近寄りがたくも見蕩れる姿と なってそこにあった。 
 ふと少女の顔が赤くなって、同時に竹箒を胸に抱え込むようにした。 
(あぅあぅ……困るのです困るのです……) 
 かすかに色を残す夕陽に当てられたわけでもあるまいに、少女の頬は遠めからでも分か
るほど上気していた。 
 そして躊躇いがちに周囲を見渡すと、そそくさと神社の裏へと向かった。 


 穏やかに流れる時間を太陽の沈む軌跡に重ね合わせながら、ゆったりとした散歩を楽し
む少年がいた。途切れ途切れに歩を進める様がそれをよく表していて、気になるものを見
つけては何度も立ち止まっている。 
 真っ赤なノースリーブのシャツとこげ茶色のハーフズボンは、少年らしく明るさと活発
さを強調して見えるが、どうにも風格のある歩き方が少し違和感を生み出しているようだ
った。もっとも当の少年はそれを欠 片も気にしていないようではあったが。 
(たまにはこういうのも悪くないな) 
 夕焼けに滲む空を見上げながら長く長く伸びた影を伴って進んでいく。 
(そうだ、あの景色を見にいこう) 
 散歩にありがちな気まぐれさを指針として少年は目的地を決めた。 
 遠く目を細めた先にひっそりと佇む古手神社。 


(困るのです困るのです……) 
 雑草の生い茂る神社の裏。 
 少女は、そこに数個積まれていた金ダライの上に腰掛けている。竹箒を相変わらず硬く
抱きしめながら、心底困惑している顔を浮かべていた。 
 何か溢れ出しそうなものをこらえて、身体をぎゅっと丸める。恥ずかしさと、かすかな
怯えとが入り混じって非常に頼りない表情になっている。関係はないのだろうが、帳の下
りた裏山に蠢く木々たちを恐れているようにも見えた。 
 数分、どこを眺めるまでもなくぶるぶると身体を震わせていた少女は、やがてうっすら
と涙の浮かぶ瞳を開いた。すると、はぁぁ……と恐る恐るといった様子で吐いた息に、わ
ずかに出した舌先を絡 ませてそこからぽたりと一つ唾液を落とす。 
 火照った顔は、打って変わって、たがが緩んだように妖艶な微笑をかたどっていく。 
 少女は竹箒を股の間に挟みこんでこすり付けていた。 
  

(ん? 今何か……) 
 境内へと続く階段を上り終わり、雛見沢が一望できる場所に向かおうとした少年は、ひ
ぐらしの鳴き声ではない音を耳に捉えた気がして立ち止まった。 
(気のせいか……) 
 と思った矢先、また聞こえた。 
 もう陽の落ちそうな時間、寄り道をしていては目的である景色を見ることはできない。 
 それでも気になった少年は、何を思うでもなく神社の裏へと足を向けた。 


「あぅっ……はぁぅ……あぁぅっ」 
 股間を弄る手法を竹箒から自分の手に変えた少女は、声を隠そうともせず、その行為に
没頭していた。少女にとっては性器から得られる刺激が限りなく大きくて、声などさほど
問題にしていないのだろう。口の端から涎を垂らして時折舐めとる、その間も絶やさない
笑顔からも、快感に身を溺れさせているのがありありと分かる。 
 熱い感情がじわじわ上り詰めていくにつれて、袴を通り越し、じかに性器をいじりたい
と思い始める。袴の紐を雑に緩めて手を滑り込ませた。篭った熱気が指の付け根を軽く刺
激して、鳥肌が立った。 
「はっ、あぁ……! ぅんぅ……っ」 
 顔を横向けて、最初のあまりにも過敏な反応に備えて目を閉じる。その反応が過ぎ去る
と、一瞬満足そうな笑顔を浮かべて脱力する。軽く達したのか、両膝を突きあわせたまま
宙に浮いた脚がびくっと何度か跳ねた。 
 それでも少女の手は止まることなくさらに奥へと導かれていく。 
 何故か竹箒は脇の下に挟んだまま手放そうとしていなかった。



「誰かいるのかー……」 
「あぅ!?」 
「ん? 羽入? って……」 
「け、圭一……」 
 果たして、少年と少女は出くわした。 
「…………」 
「…………」 
 押し黙る圭一と呼ばれる少年と羽入と呼ばれた少女。 
 沈黙がやぶ蚊のように二人の間を飛び交っていた。 
「あ……」 
 先に口を開いたのは羽入だった。 
「あぅあぅ……」 
 が、これは文字通り口を開いただけだった。状況の進展になっていない。 
 恥じらい戸惑う羽入の姿は、実は最初はそうと分かっていなかった状況を圭一に的確に 
判断させるものとなった。顔が赤くなる。 
「じゃ、邪魔したみたいだな……」 
 混乱の中、咄嗟に口を突いた言葉は逃げるための言い訳だった。 
 きまりが悪いのは間違いなく圭一で、その居た堪れなさから導き出した次の行動。 
「そ、それじゃ」 
「あ、まっ……け、圭一っ」 
「うわっ!?」 
 何となく逃げられては困ると判断した羽入が圭一のシャツを掴み、引き倒した。 
 袴が不自然にずれた羽入が、別段そんな意図はなかったようだが圭一の上に乗ってしま
う。もう言い訳などできない格好だった。 
 どうせ見られたのだ。 
 このまま帰すと明日から気まずくなりそうだし、何より羽入は圭一の邪魔によりまだ達
していない。最近身体が疼くので行っていた自慰だがそろそろ回数を増やすだけでは満足
できなくなってきたというのもある。 
 これは責任をとってもらうべきだ、と羽入は決断した。 
 これから圭一に協力を求めるに当たって自己本位の欲望が多数を占める言い訳だった。 
 目下、男、という存在があるせいで自慰の名残以上に蕩けた頭でそう考えた羽入は、勿
論それに気づいていない。 
 戸惑いによる瞳の揺らぎは完全になくなり、座っている。 
 そんな羽入の思惑などつゆも知らず、圭一は今とられているマウントポジションをどう
にかして解こうとする。 
「あぁうぅ……」 
「…………」  
 圭一がじたばた暴れたせいで羽入の敏感な身体に刺激が与えられる。 
 色っぽい吐息を聞いて思わず硬直する圭一だった。 
「あぅあぅ……圭一ぃ……」 
 羽入が圭一の手を取り、胸を掴ませる。 
「な――っ!?」 
「あぅっ……」   
 反射的に引っ込められた圭一の手を身体に折り重なるように追いかけて舐める。手首か
ら上に向かって、分かりやすい目標である手相を舌でなぞっていき、指の付け根、腹、指
先と口に含んだ。 
「んちゅ…んむ……っくしゅんっ!」 
「…………」 
「あぅあぅ、ここが外だってことを忘れていたのです。圭一、神社の中に入るのです」 
「…………」 
「……しょうがないのです……。こういう経験は初めてだったのですね。大丈夫なのです
よ、ボクがちゃんと教えてあげますですから……あぅあぅ♪」 
 うきうきと言って呆然自失する圭一を引きずっていった。 



「はっ? ここはっ? ……ってなんじゃこりゃー!」 
 圭一が目を覚ました(気絶していたらしい)場所は、普段、村の寄合という名の飲み会
が開かれる古手神社の大広間だった。雛見沢分校の教室ほどもある畳敷きの部屋の中央、
ぽつんと敷かれた布団の中にいた。 
「おいおい……っうぅっ!?」 
 男としてなかなか様になる怪訝な表情が一瞬で掻き消えて、情けない声を出す。 
「んむ。圭一、起きたのですか? というかあれくらいで失神するなんて先が思いやられ
るのですよ。もっと頑張ってくださいのです。あぅあぅんちゅ」 
「うあ!? は、羽入か……! 何してやがるっ……」 
 圭一は全裸だった。衣服は枕元に丁寧に畳まれており(ちゃっかり枕が二つある)、下
半身だけを隠した掛け布団が一人分盛り上がっている。
 そこに羽入が入っているのだった。 
 圭一の質問への答えは性器をしごく速度を上げることでそれとする。 
「んぁむ、ちゅぱっ ぁむんっ」 
「くっ、うぁっ!」 
 状況ではなく快感に頭がついていっている圭一は羽入の行為を拒めない。 
 びくつく腰が掛け布団を跳ね除けていく。 
 熱心に頭を動かす羽入は、圭一のように裸ではなく巫女服のままだった。 
「あぅー…びくびくしているのです~。圭一。今は起きてるのですから射精そうになった
らちゃんと言ってくださいなのですよ~……ぺろ」 
 うっとりとした表情で尿道付近を嘗め回しながら上目遣いで圭一を見つめる。 
「い、今ってなんだよっ!」 
 当然のごとくその問いは無視して行為に没頭する。 
 右手で陰嚢を弄びながら左手の親指で裏筋を押し上げるようにして刺激を与えていく。
亀頭はカリ部分にちょうど唇が当たるようにして口に含んでいた。口内では小さな舌が忙
しなく動き回って射精を促そうとする。 
「で、射精るっ――!」 
 それを聞いて、羽入は喉奥まで性器をくわえ込む。 
 勢いよく発射された精液が咽喉を打つ。その刺激で嘔吐感が込み上げてくるが、しゃく
りあげることでそれを抑えた。必然的に精飲行為をしなければならなかった。勿論羽入に
とってはそれが目的であったわけだけれども。 
「くあっ……う……あ」 
 随分長い射精時間だった。 
 一人でするときとは出る量が違う。搾り取られるような感覚に何もかもがどうでもよく
なってくる。何か既視感のようなものがあったことにわずかに疑問を持つがそれすらも… 
「ぷはっ。二回目なのに凄い量なのです。あぅあぅ」 
「二回目なのかよ!?」 
 どうでもよくならなかった。寝ている間に一度抜かれていたようだ。 
「あぅあぅ、美味しいのですよ」 
 羽入が圭一の上に跨る。 
「……なんでこんなことに?」 
「気にしたら負けなのですよ」 
「何に?」 
「ボクに」 
 どういう理屈だろうか、と羽入を見上げつつ思う圭一。そこでいつの間にかこの状況に
慣れてしまっている自分に気づいた。突っ込み所は色々あるに違いなかったが、まぁいい
か、という気持ちの方が大きくて今更何をどうしようという気も起きない。こういうこと
は初めてで、恥ずかしさと緊張から何もできなくなるほど混乱するものだと考えていたの
だが、羽入のあけっぴろげな雰囲気に圭一も少なからず影響を受けたようである。 
「さ、ボクに勝ってくださいなのです」 
 巫女服の上着を脱いで乳房を露出させる。 
「知らないことはボクが教えてあげるのです。ただ男女の性交において、極論挿入だけを
覚えていれば問題はないのです。それ以外えっちに普遍性はなく……ボクが圭一に教えて
あげられるのはボクが感じる場所だけなのです。できれば、それを見つけていってほしい
と願うのですが……、無理は言わないのです……あぅっ?」 
 圭一が羽入の胸に触れる。 
 くすぐったそうにして圭一を見咎めるが、表情は悦んでいた。 
「あぅあぅ……でも、圭一が欲望そのままにボクを犯してくれれば……自然と分かります
です。そういうものなのです」 
「えらく経験ありそうな物言いじゃねぇか」 
「あるのですよ」 
 さすがに予想していなかった答えのようで、圭一は動作を止めた。驚愕に顔を作ったま
ま。そして聞いてしまった。 
「だ、誰と……?」 
「……そういうことを聞くからみんなにデリカシーがないって言われるのです」 
「いや、その…すまん。まさか、と思って」 
「女の子には色々あるのですよ。あぅあぅ」 
「勝てる気がしないんだが……」 
 女性遍歴としては中学生らしくゼロに近く、性交も知識としてしか知らない行為。それ
をどう見ても自分より年下である羽入が経験していたことに、殊にこの状況下ではどうし
ようもない差を感じたからだった。 
「あぅ? 圭一にしては珍しく弱気なのです? いつもの部活みたいに欲望むき出し、下
種丸出しであればいいのですよ?」 
「あー凹んだ萎えた、泣いたよこのやろー。というかお前そんなキャラだったっけー?」 
「もう。しょうがないのですね、あぅあぅ。ボクが勝手にやってしまうのです。でも圭一
にもたくさん触ってほしいのですよ?」 
「あーもう! わかったよっ」 
 羽入と体勢を入れ替える。 
 改めて認める、胸をはだけた羽入。袴の赤が目に痛いのに対して羽入の肌は真っ白で。
髪の毛はどこか見るものを落ち着かせるような紫の色。先ほど触って感じた掌に収まる柔
らかさを再び手にする。ふよふよとして中心の突起がつぼ押しみたいになって気持ちがい
い。 
「あっ、あっ、あぁぅ」 
 なぜ俺を裸にしておいて自分は服を着たままなのか、少し気になったが脱がすことに醍
醐味を感じる圭一(と言っても妄想の中でだけだったが)としては、悪くなかった。 
 まさかそこまで考えていたのだろうか、という圭一の思いつきもどこ吹く風、羽入は胸
を揉まれる感触に酔いしれているようだった。 
 そのうち羽入が愛撫だけでは物足りなそうな表情で圭一を見つめていたので、恐る恐る
も自分の粘膜をきめ細やかな肌に馴染ませていく。乳房を掌で弾ませながら、それの描く
ラインを目で追う。遅れて舌先が綺麗な円形を辿っていく。 
「あぅ……んぅっ……はっ、あっ……」 
 羽入の喘ぎ声を耳に心地よく聞く。 
 二度射精した圭一の性器もだんだんと回復し、膨張していった。 
「圭一……、下も……」 
「あ、ああ」 
 と応えても袴をどう脱がせばいいのか分からなかった。 
 それに気づいてか羽入が自分で袴を下ろしていく。その間圭一は成り行きを見守ってい
たが、羽入は快感の並みが途切れたことがもどかしかったのか圭一に抱きついてキスをし
た。 
「ふぁぅん……むぅ…あむ……ちゅ……」 
「んんんっ」 
 唇を奪いつつ袴を脱ぎすてて再び圭一の上に乗る格好になる。 
 圭一は、絶え間なく口内を満たそうとする羽入の小さな舌、吐息、唾液に狂おしいまで
の興奮を覚えた。羽入もそうである様子がキスを通して伝わってくる。あまりに深く底の
ない性欲に恐怖と同時、どこまででもというその場の快感のみを求める青春期特有の感情
が湧き上がった。 
 唾液の糸が、今本能的に危なっかしい二人の様子を象徴しているように、刹那の煌きを
持って互いをつなぐ。 
 視覚が目の前の相手以外の全てを除くことで羽入に、圭一に集中され、心身を焦がすよ
うな瞳でもって二人は次の行為への意思確認をする。 
 圭一は全裸だったが、羽入は足袋だけを未だ脱がずにいた。
 脱ぐ気もないようだった。 
 羽入は蕩けるような表情で圭一の性器を見つめていたがすぐに挿入させることはなかっ
た。股を圭一の方に向けるようにして手で身体を支える。そそり立つ性器に擦り合わせる
と、キスよりも淫靡な音が広い部屋に木霊していく。圭一はその響きように少し恥ずかし
さを覚えたようだったが、羽入は気にしていなかった。 
「あぅ……あぅ……あぅっ、き、もちいい…のですぅっ」 
「お、俺も気持ちいい、ぞ……くっ」 
 羽入が腰を上に動かすたび、亀頭が陰核に引っかかり一際鋭い刺激となった。 
 乳首、陰核の控えめな自己主張の割りにはそのうちにとんでもない欲を隠している。 
 とりあえず羽入を通して見た世間一般の女の子のイメージが圭一の中でそう固まった。 
(男だけじゃないんだな……) 
 そう思う間に、羽入の、ひくひくと開きかけた陰唇から大量の愛液が流れ出ていた。そ
れが潤滑油となったのは言うまでもなく、同様に羽入の腰の上下運動が激しくなったのも
言うまでもない。そして快感も。 
 全てが連鎖反応。 
 終わるには、そろそろ堪えきれなくなってきた絶頂の瞬間を迎えるしかないのだが。 
 真正面、髪の毛を振り乱し悦楽に酔いしれる羽入にはまだ余裕がありそうだったので、
もう少し我慢するしかなかった。 
「あっ、はぁんっ、け、いいちぃ……、我慢し、なくてっあっ、いいのっですよ……? 
あぅっ」 
 圭一の心中はこんなときでも羽入に感づかれるらしい。 
 そのことに驚きはなく、むしろその言葉によってますます自分が先に達するわけにはい
かなかった。もはや意地だけで耐えている様子だった。 
「はっ、言ってろっ……。羽入、こそっそろそろやばいんじゃねぇのかっ?」 
 腰の動きは止めず、羽入は圭一を妖艶な表情でもって見る。その中に、何かを探るよう
な顔色が浮かび、やがてそれは何かが満ち足りた微笑になった。 
 普段とのギャップを感じさせるその顔に心を奪われそうになった圭一は、危うく射精し
てしまいそうになった。どうにか堪えて今まで以上に気を張った。そこでようやく、吐息
や水音から漂ってくる羽入という女の匂いを感じ取った。 
 胸を掻き毟られるような思いが頭に昇っていく。 
「んっ、んっ、んぅっ……。そんなこと言っていいのですか……圭一?」 
 そう言って羽入が腰を休めたので、耐えられた。 
「あぅあぅ……こんなにびくびくして苦しそうなのに、まだイかないなんて……なかなか
なのです……。よっぽどボクの中で果てたいのですね、あぅあぅ。挿入なしでもう一度イ
ってもらおうと思っていたのですが……」 
 圭一の性器を左手で掴み、右手で自分の秘唇を押し広げる。 
 ぬちゃ……と艶かしく垂れた羽入の愛液が先端から圭一のものを濡らしていく。 
 羽入はそれを見ず、圭一だけに視線を送る。吸い込まれそうだと圭一が思ったのは、こ
の状況下では的外れではなかった。 
 そしてそう思った時点で。 
「すぐにイっちゃっても知らないのですよ……?」 
 来る快楽に心身全てを持っていかれるのは当然だった。 
「ぐっ!? あぁああああっ!?」 
「あぅっぁあうぅぅっ!」 
 躊躇なく羽入の膣へとその存在を埋められた圭一の性器は、四方八方を羽入の締まりに 
よって激しく責められ、自然逃げ場もなく、先が奥に到達したと同時に精を吐き出した。 
 何度か痙攣しながら絶頂を味わう。 
 羽入も圭一ほどではないが身体を震わせていた。
 結合部分からあふれ出してくる白濁液の量が半端でなかった。 
「はぁぅ……圭一、すごいのです……。すごい量と勢いなのです……。図らずもボクも軽
く達してしまったのですよ、あぅ……」 
 恍惚とした表情に大量の汗が光る。 
「あぅっ、まだ出る……のです……はぁ」 
 夢うつつといった瞳で圭一を見つめる。 
「はっ、はっ、はあっ」 
 ようやく射精の収まった圭一が一気に脱力して呼吸を整え始める。 
「だから言ったのですよ、あぅあぅ」 
 と、能力をわきまえず、人の忠告も聞かず背伸びをした子どもに現実を見せることでし 
か考え違いを直せなかった自分を心苦しく思いつつ、 
「大丈夫ですか……圭一?」 
 最後は優しく窘めるように語り掛ける羽入だった。 
 たとえでもなんでもなく子どもはまるっきり圭一だった。それに気づいて、今更ながら 
羽入の男女関係における優位性を実感として得た。完全に負けた気分だった。 
「あぁ……、まさかあんなにどうしようもなく気持ちいいものだとは……」 
 だから、自分を抑えることのできなかった感情を恥じることなく圭一は口にする。 
「あぅあぅ。そう言ってもらえると嬉しいのです」 
 羽入は照れた笑顔を浮かべて応えた。 
 それを見て、ふっと疲れを滲ませて笑う圭一だった。 
 が、ここで何かがおかしいことに気づいた。 
 羽入が一向にどこうとしないのだ。圭一の性器は羽入の膣内に挿入されたままである。
射精したのは三回目だし、量もとんでもなかった。すっかり硬さを失っている。羽入もそ
れは理解しているはずだった。 
「羽入。終わったならどいてくれ」 
「はいなのです」 
「…………」 
「あぅあぅ?」 
 面に満ち満ちる笑いの感情。 
「羽入……?」 
 しかし圭一はそれをそのままの意味にとれなかった。 
「まだ終わってないからどかないのです。あぅあぅ♪」 
「…………」 
 ――もう一度元気にさせないといけないのです。あ、舐めた感じだと圭一は五回は問題
なくいけると思うのです。だから安心するのです。あぅあぅ――。 
 楽しそうに解説する羽入の声を靄がかかったように頭の中で聞きながら、圭一はなぜ今
日散歩に出てしまったんだと自分の行動を後悔していた。 



 大広間へと続く襖が僅かに隙間を作っていた。 
「随分と楽しそうなことしてるじゃない……。羽入……圭一……くすくす」 
 暗闇に真っ黒な髪を溶け込ませている一人の少女。 
 邪悪に笑って誰にでもなく語りかける。無理に作っているようでもあった笑顔だった。 
 見ると、襖から漏れた明かりに床がてらてらと光っている。 
 少女の股間から垂れ落ちる滴が小さな泉に波紋を作った。 
「はっ!? こここれは違うのよっ。べ、別に羽入と圭一のエッチ見て興奮したわけじゃ
ないんだからねっ。お、お漏らしでもないわっ。これは、そ、そう! 涎よ涎! きき、
聞いてるのーっ!?」 
 真っ赤な顔をして一人騒ぐ少女であった。 
 無論声は潜めていたのだが。 



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