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白鴉城、設定街区

臥城(非公開)

最終更新:2021年09月03日 23:46

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だれでも歓迎! 編集

流れ鴉の噂(邂逅済)

臥城が鴉に所属していた退屈な日々の中で、収穫と呼べるものがあったとするならば、その一つはたしかにあの噂を聞いたことであろう。
「流れ鴉」そう呼ばれる強大な大鴉が存在し、白鴉城の各地を流浪しては強者を屠るのだ、と。結局、臥城は流れ鴉を見つけることは出来なかった。噂は噂なのかもしれないし、もはや鴉に所属している意味も無いが、あの噂だけは、どこか心に引っかかりを残してやまないのだ。

流れ鴉からの指令

「まずはこの白鴉城の勢力関係を把握して貰おうか。鴉以外に蠢く組織があるし、鴉だって一枚岩じゃない。白鴉クラスになろうもんなら、皆んなが主様に忠誠を誓ってるなんて訳はないさね。敵だろうが仇だろうが懐まで飛び込んでいって探ってきな。私には出来ない大切な仕事さ。」
「それから、そうだ。旧街区と上層、この2箇所には立ち入れるようになっておきな。といってもまあ、あんたならすぐに出来るだろうさ。」

臥城の過去SS

臥城 過去


十年前、早春。

まだ冬の空が残る下で、周囲の現代家屋から取り残されたような古めかしい道場で稽古が行われていた。
木刀を青眼に構えて立ちはだかる巌のような巨漢の前に、荒い息を吐きながら膝をつく少年の姿があった。
「さっさと立たんか、颯太。」
「……はい、師範。」
颯太少年は地鳴りのような低い声に応えようと、木刀を杖代わりに立ち上がろうとするが、すぐさま木刀を払われ無様に床板に這いつくばった。
「たわけ、そのような所作が忍びの領域で許されるわけがなかろう!」
上から降ってくる一喝に反応することすらままならない少年の様を見ると、師範と呼ばれた男は深いため息をつくと踵を返した。
「今日はこれまでとする、片付けをしておけ。」
少年へ深い失望の意を隠そうともせずに巨漢は言葉を吐き捨て、道場には少年だけが残された。

鞍馬神流が一つ、無我専心流の在原家次期当主。在原颯太。
それが床板に這いつくばる少年の肩書であった。


道場の片付けを終え、簡単な朝食を摂りながら颯太は学校へと向かう。
朝稽古で師範──父である黄蓮から受けたしごきで全身が悲鳴を上げているが、どだい学校での生活に問題はさしてない。
鞍馬の末席を汚すものである以上、忍びとしての身体能力を彼は備えている。たとえ落ちこぼれであっても。
颯太が物心ついた頃にはすでに母はなく、無骨で厳格な父のもとで鍛錬ばかりの十五年を送り続けていた。
だが、父の求めるような成果は未だ出せたことはなく、そして悲しいかな颯太には父の言う『強さを勝ち得よ』という教えが腑に落ちてはいなかった。
何に勝てと言うのか、闇雲に他者を下すことに意味があるのか。
得心のいかない教えを押し付けられることは苦痛でしかない。だが、それを跳ね除けられるものでもない。
そんな鬱屈を抱えながら、隠れ蓑としての学園生活を過ごす。
住む世界が違う者たちと交流をするつもりもなく、忍びとして誰の記憶にもの残らぬよう凡庸な人物を演じるだけのひと時。

だが、放課後、旧校舎の一室でのみそれは違うものとなる。

「今日もきたのか、少年。」
扉の上、外れかかった札に書かれた”文芸研究会”のかすれた文字がぶら下がる一室で、今日も彼女はそこにいた。
窓枠に寄りかかるようにして黒髪を風に揺らし、片手の文庫本に目を走らせたまま、言葉を颯太へ向ける。それだけならば実に絵になる様だ。
「また煙草ですか。いい加減バレますよ朝子さん。」
そう、彼女は煙草を燻らせながら読書に興じている。

風波朝子。
三年の上級生で、ひっそりと活動する文芸研究会会長にして唯一の会員。
校内で噂になるような振る舞いはしていない様子だが、見ての通りの非行少女だ。

担任から旧校舎への資料運びを颯太が押し付けられた時、うっかり文学研究会の部室に迷い込んだのをきっかけに放課後になると足繁くここに通うようになっていた。
朝子も朝子で別段来るものを拒まず、時たま雑談したりはするものの、付かず離れずの不思議な空間はかれこれ半年ほど続いていた。

もう毎度のことだが、颯太が部屋へと近づいてくる床板のきしみを聞いてもなお一切悪びれない彼女の様は、豪胆というより若干の白痴を疑うべきなのだろうかと颯太が思案していると、煙草を灰皿がわりの硯に押し付け朝子が颯太のほうへと歩み寄ってきた。

「君もずいぶんな物好きだな。じきに飽きて来なくなると踏んでいたが、そんなにここが気に入ったなら『入会させてください』の一言も言わんのか?」
煙の中にほのかな甘いバニラの香りを漂わせながら、呆れたような声を上げる。

「いえ、お構いなく。確かに気に入りはしましたが、この場所にはそこまでの思い入れはないですし、朝子さんの喫煙の共犯を被りたくはないので。」
だが、颯太は怯むことなくサバサバと言葉を返す。
「お前な、叩き出すぞ。」
「それなら、その足で職員室なり火災報知器に寄ることにします。」
「………。好きにしろ。」
謎めいた先輩女子は舌戦に長けているものだが、その才は彼女にはなかったようだ。朝子はすごすごと定位置の窓際に戻り、新しい煙草を取り出す。
それを認めると、颯太も文庫本を取り出し部屋にはページをめくる音と幽かに燃え落ちる灰の音だけが残る。

──後になってこの時のことを思い返したなら、颯太にとってここでの一時は、かけがえのない居場所だったのだと少年は気付いただろう。
家にも、学校にも居場所を見出せない、孤独な彼にとっての拠り所だったのだと。

「なぁ、少年。名前はなんと言ったか」
沈黙を破ったのは朝子だった。
「在原颯太ですけど、それが何か?」
「いや……」
咥えていた煙草を右手に預けると、深く紫煙を窓の外へと吐き出す。
「ただ、聞いてみただけだ。」
朝子は窓へ顔を向けたままそれ以上口を開くことはなく、これが文学研究会で交わされた最後の会話になった。



翌朝、まだ夜も明けきらぬ頃。
日課である朝稽古へ颯太が道場へ向かうと、扉の前で異変に気付く。
──血の匂い。
とっさに扉を開くと、そこは血の海と化していた。
薄暗く地平から昇り出した朝日に照らされ、赤黒く染まった板張りに倒れ伏す影と、それを見下ろす影が颯太の目に入る。
薄暗く、顔までは見えないが華奢なその影は、明らかに父の人影ではない──。
そう判断するが早いか颯太は手にしていた木刀を影へと振り下ろしていた。
影はこともなげに木刀の一撃を躱し、勢いそのままに颯太を蹴り飛ばす。
受け身もままならぬまま颯太は壁へと叩きつけられ、一瞬息が止まる。衝撃で木刀はどこかに吹き飛んでしまった。
その一撃で、相手との実力の差を痛感する。もとより、父も下された今勝機は蜘蛛の糸ほどもない。
だが、相手が強かろうともその胸は『死にたくない』という生存への渇望で埋め尽くされていた。
よろめきながら立ち上がろうとすると、手に触れるものがある。
それは、物言わぬ骸と化した父の手からこぼれた家宝、”九字切り実光”がそこにはあった。

刻々と朝日が夜を侵食してゆく。
実光抜きはなち青眼に構える颯太、対峙する影は暗がりで前傾姿勢をとる。
睨み合った時間は3秒にも満たず、だがその僅かな数瞬によって勝敗はこの一合で決することとなる。
影が仕掛けた瞬間、地平より顔を出した日光は颯太の構えた刀身を足がかりにその目を焼いた。
狙いは外れ、颯太の頭蓋を突き刺すはずであった影の繰り出した爪は右目を引っ掛けるにとどまり、そこに生じた隙に颯太が刃を突き入れたのは、もはや必然の成り行きであった。

そして、その勝敗を焼けた一筋の光は、影の正体をも暴き出していた。

「朝子……さん……。なん、で。」
暖かな鮮血が颯太の両手を濡らす。深々と突き刺さった刃は風波朝子の胸の中心を貫き、ゆっくりと朝子は颯太へしなだれかかっていた。
「仕事、だよ。在原の家の、家宝を奪ってこいって」
血の泡をこぼしながら朝子は声を絞り出す。
「苗字同じなだけで、君んとこじゃなけりゃいいなって、思ってたけど、やっぱり当たってたか、はは。」
力なく笑みをこぼすも、その顔はもう白くなっていた。
「君のことは、嫌いじゃなかったから、さ。余計に、ね。」
そこから先は、朝子の言葉はあまりにか細く、颯太はもう聞き取ることができなった。

裏庭に二人の骸を埋めると、颯太は九字切り実光を携え姿を消した。
「自分が朝子よりも強ければ、殺さずに止められた。」
そう言った意味では、父の『強さを勝ち得よ』という教えは正しかったのだろうと。今更のように理解をしながら。
そして、強者との死線を自らの力でくぐり抜けた時に感じた、えも言われぬ快感を彼は追い始める。

名も捨て、技も捨て、自分というものが築きあげたもので、果たしてどこまで強さを証明できるのか。
その答えを探し求めて。


不思議と、涙は溢れなかった。
この瞬間も、そしてこの先にも。


──十年後。

繁華街近くの大通りを一本入った裏路地。
薄暗く人通りもないこの道で青年が三人の男に囲まれていた。
二、三気色ばんだ言葉が交わされたのち乱闘が、いや、蹂躙が展開された。

「名うての喧嘩屋、と聞いてたんだが。蓋を開けてみりゃ仲間頼りの腰抜けたァな。」
気絶して動かない巨漢に腰掛け、青年は煙草に火をつける。
ほう、と青年が一服していると暗がりから乾いた拍手を響かせながら男が一人近づいてゆく。
「いや、お兄さん。通りがかりに見物させてもらったけど強いっスねぇ!」
あけすけに調子のいい物言いに、青年は警戒心をあらわにする。
「なんだ貴様。」
「別に怪しいもんじゃないっスよ、ただの商人。流れ者っスけど」
男は涼しい顔で青年が発する殺気を受け流す。
「あそこまでささーっと畳んじゃってるのを見るとね、この辺の連中じゃ相手にならないだろうし、そもそもお兄さんが強いやつのいるとこを探してるんじゃないかと。」
「なんだ、商人は商人でも情報屋か?」
「うちはなんでも揃うっスよ。」
少し間があって青年は目を細めながら口を開いた。
「どの道、そろそろ情報を買いに行こうとは思っていた。買おう、どこだそれは」
「白鴉城、ってのは聞いたことありますかね?──」

五分ほどで「商談」は終わり、別れ際商人は背を向ける青年へ一つ問いを投げかけた。
「お兄さん、名前を聞かせてもらってもいいっスかね?」

青年は振り返りながら、答える。

──なぁ、少年。詩集は読まないか?私はこの詩人が好きなんだが──

「臥城。字名だ。」

そして、颯太だったものは混沌渦巻く白鴉城へと足を踏み入れることとなる。

修羅の芽吹きを胸に秘めたまま。

蒼穹の下


帰る場所。そこに誰も居なくとも、在原は羇旅の途に着く。
支度を終え、外へと向かう。

夕暮に一つ挨拶をと思ったが、ついぞ見つからなかった。
そもそも会うはずのなかったお互い、呪いが解かれいずこかへ消えたのか、どこかへ潜んだのか。
また、縁が会えば会えるのだろうか。

今更気がついたことだが、白鴉城に足を踏み入れてから今日まで『外に出る』という選択肢が思考の外に消えて居た。
逆神の支配によるものであろうが、その途方のなさに思わずため息が出る。
懐からハイライトを取り出し、ラムの甘い香りを楽しむ。
お待ちしてたッスよ。と喜色満面に店主が取り出してきたこいつは中々にうまい。
随分、律儀なことだ。

出口が近づいてくる。
踏みしめるものがギシギシときしむ板床から、乾いた赤土の地面に。
板塀の隙間から漏れる光に顔をしかめていると、板にもたれて和服をまとった少女がこちらへ近づいてきた。
「お兄さん、外に行くの?」
「あぁ、もう用は済んだから帰るんだ。」
「へぇ、外の人だったんだね。私初めて見るかも」
少女は鈴を転がすような声でころころ笑う。
「ね、私も外に行きたいんだけどさ。ついてってもいい?」
唐突な申し出に少し面食らう。待ち人かと思えば、彼女は道連れを探して居たらしい。
「ついてくるだけならかまやしないけど、いいのかい?おいそれとは戻ってこられないと思うけど」
少女はキョトンとした顔をしたかと思えば、途端にクスクス笑い始めた。

「大丈夫、私────」
少女は懐から鏡を取り出し、その鏡面に手を突き入れた。
「いつでも帰れるから。」
傍の水溜りから突き入れられた掌がひょいひょいと手招きをしている。
実に悍ましい光景だが、おいそれと半端者ができる芸当ではない。

「これからここもどうなるかわからないし、うちは大所帯だから場所を確保しておかないと動きようがなくてね。」
「いいとこ見つけてきなさいって、任務なのです。」
口調はめんどくさそうだったが、期待と、不安とが入り混じった顔を彼女は浮かべる。


「大所帯、ね。それなら僕は力になれるかもしれない。」
「え、本当!?」
「あぁ、まぁ少し訳ありだけどね。」
ただただ、二人が住むには広すぎた我が家を思っていると、自然とそんなことを言って居た。
興奮気味の彼女をつれ、光の先に出る。

「………綺麗。」

どこまでも広がる、青い青い空を目にした彼女の小さな呟きが耳に届いた。
天井の隙間越しでない、雲ひとつない蒼天。

「そういえば、君の名を聞いてなかったか。」
僕は彼女の背中に問いかける。

「桜。」
振り向きざまに少女の髪が風に流れる。
「九重、桜。」

なぜか、どこか懐かしいものを感じた気がした。

雲翳


在原の屋敷。

かつて道場を開いて居た地元の名士であったが、十年前夥しい血痕を残し皆姿を消した。

地元の人間はきみわるがって近づかず、打ち捨てられた家は主人を待たず朽ち果てるばかりであった。
その門戸が、ぎいぎいと音を立て今開かれる。
主人の帰還であった。

逆神を打ち倒したものの、それに全てを払い尽くしたそれには何も残って居なかった。
当て所なく、意味もなく、街をさまようばかり
その彼に、一人、また一人と影が指す。

彼にはわからぬ。それらがかつて修羅であった己が散らかしたものの結実であると。
怨嗟の声で済めばそれで良い。
報復、復讐、仇討ちの日々。
だが、その故が何一つわからぬのだ。
染み付いたものをなぞるように体は動く、だが自らの業はどこまでも、どこまでも。

ついに、賊の刃が急所を穿つ。
追っ手を払いのけ、廃屋へと転がり込む。
それが、懐かしの生家と気づくことはないけれども。

男は庭で果てているのが見つかった。
その一角は白の彼岸花が咲き誇り、流れた血で男の周囲だけ花は赤く染まって居たという。

鉛を溶かしたような、鈍色の空の下の話である。

蕭々

見出した希望も目の前で掴み損ねた。
また、いつものように




パンドラの箱、と言う西洋の逸話がある

厄災が箱から飛び出すか、それすら失うか差異はあれど最後に残ったのは希望


だが、それすらも失えば後に残るのは『無』
否、希望なぞいっそ災いに飲まれ紛れて居た方が幸せだったろう。
その期待は、人一人の心を壊すに十分すぎるほどの絶望に変わるのだから。


どこかも知らぬところに放り出されて居た。
屋根がない。白鴉でないことは確かだ。

「ははっ……、ハハハハハハ!!!」
雨が降り始める中、ぬかるみからゆらりと立ち上がり、男は哄笑を上げる。
「そうだ、朝子さんに借りてた本を返さなきゃ……。」
剥き身の刀をぶらぶらとふるいながら、独り言をつぶやく。
「あぁ………、あぁああ逆神!」
突如動きを止め叫ぶ。だが、それを認めるものはもう誰も居ない。
「そうだ、アイツが悪いんだ。実光と混ぜて時計の水かさを打ち付けないと。」
肩を震わせながら、雨の中引きつり笑いを時々発しながら支離滅裂なうわごとをあげる。

在原颯太は、ここで死んだのだ。

これは屍。希望すら吐き出した箱が、意義を持つ刃に引きずられ朽ちるまで動くだけの屍。


篠突く雨の中、やがて屍の姿はいずこかへと消えた。

狂飆

討ち損ねた
だからなんだと言うのだ

逃げるのなら追うまで

何を追うんだっけ

そうだ、ようまだ。
おいかけなきゃ
おいかけて
おいかけておいかけて

おいついたら

斬るまで
斬る
切る
キル


──────────────────────



これより先、日本の妖魔は大きく数を減らす
退魔の者共もまた同じに
妖気を纏うものは皆壊された
それが武器であれ、人であれ。区別無く

忍、只人合わせ死者幾千
生き残りはただ二人
白鴉城から始まったそれは帯をなぞるように屍山血河が築かれた。

鏖殺の嵐の中、倒れ伏した獲物にトドメを刺さんとした刹那。
突如羅刹は自らに刃を振るい、果てたという。




生き残りの片割れの名は、朝子といった。

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概要

  • 白鴉の城、黒闇の果て
  • 闇と闇背負い

エリア設定

  • 白鴉城
  • 階段街区
  • 居住街区
  • 上層
  • 観測塔
  • 外郭
  • 裏街区
  • 中空庭
  • [白鴉の社]
  • 旧街区
  • 実験区画
  • 最下層
  • 孔の底

アクセス権

  • アクセス権

組織・人物設定

  • 鴉
  • 斜歯車
  • 流れ鴉
  • 鍍金の大鴉
  • 私立白亜学院
  • 第十三校舎管理委員会-天文部
  • 紫香楽女学院
  • 黒夜教
  • かつての絡繰羽(公開用)
  • 夜御使、白夜
  • その他NPC(公開用)

イベント設定

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  • 刻封獄事件
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