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(落書テキスト)夏きにけらし - (2006/05/28 (日) 21:47:40) の1つ前との変更点

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*夏きにけらし  暗い闇が迫る時間に、僕はいつものように浅い憂鬱を感じるのだった。夜の女王が空にかけると同時に僕にも淡い闇のカーテンを重ねて行ってしまったかのように。僕は深い吐息を吐いて見上げる、紫紺に染まろうとする空を。かつてはあの空は輝きに満ちていたのに、今の僕には宝石が傷つきその涙で翳っているように、鈍い金属のような冷たい重い光しか届かない。  たとえば青い海の底。緑に、青にゆらめく底に僕は沈んでいる。  あるいは深い森の奥。光も届かぬ暗闇で、草の香りに朽ちていく。  ほうっという虫の声に僕は瞼を開けた。誘うような音の香りの中に、それとは違う色が混ざっている。僕は垣根の間から中を覗く、ここから聞こえる、確かに聞こえる。  月明かりにぼうっと浮き上がる縁側。まだ一二,三であろうか、それでも髪黒く目もはっきりとした、それぞれとても可愛らしい少女が五人、楽しげに話している。その後ろには彼女たちが仕えている主人がいるのであろうか、ぼんやりと光る几帳に映っているは。僕の心は熱い砂漠の中で冷たい水の流れに出会ったように、この動悸する心は、と思う。 「それにしても綺麗な夜ね」 「虫の音も澄んでいるよう」 「澄んでいるよう。それに姫様の琴も」 「ええ、姫様は本当にお琴が上手ね」 「上手ね」  五人ははしゃぐ姿はそのようであったが、ふいに静まると少し悲しそうな様子になった。 「それにしても悲しい夜だわ」 「虫の音も澄んでいる」 「澄んでいるわ。それに姫様の琴も」 「ええ、姫様は本当にお琴が上手ね」 「上手ね」  その時琴の音がやみ、僕も少女もせわしない虫の音に沈んだ。いつの間にか虫たちの声は高なり、僕の鼓動もそれに合わせて早くなっていた。なぜなら僕は聞いたのだ。何を?  几帳に映った影がゆらゆらとうごめいた。僕には忍び泣きが聞こえたような気がした。 ---- 2002年ころ書いたもの。 #right{カテゴリ: &#x5b;[[落書テキスト>(カテゴリ)落書テキスト]]&#x5d;} &html(<center><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4101315116&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4087471985&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4840219443&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></center>)
*夏きにけらし  暗い闇が迫る時間に、僕はいつものように浅い憂鬱を感じるのだった。夜の女王が空にかけると同時に僕にも淡い闇のカーテンを重ねて行ってしまったかのように。僕は深い吐息とともに見上げる、紫紺に染まろうとする空を。かつてはあの空は輝きに満ちていたのに、今の僕には宝石が傷つきその涙で翳っているように、鈍い金属のような冷たい重い光しか届かない。  たとえば青い海の底。緑に、青にゆらめく底に僕は沈んでいる。  あるいは深い森の奥。光も届かぬ暗闇で、草の香りに朽ちていく。  ほうっという虫の声に僕は瞼を開けた。誘うような音の香りの中に、それとは違う色が混ざっている。僕は垣根の間から中を覗く、ここから聞こえる、確かに聞こえる。  月明かりにぼうっと浮き上がる縁側。まだ一二,三であろうか、それでも髪黒く目もはっきりとした、それぞれとても可愛らしい少女が五人、楽しげに話している。その後ろには彼女たちが仕えている主人がいるのであろうか、ぼんやりと光る几帳に映っているは。僕の心は熱い砂漠の中で冷たい水の流れに出会ったように、この動悸する心は、と思う。 「それにしても綺麗な夜ね」 「虫の音も澄んでいるよう」 「澄んでいるよう。それに姫様の琴も」 「ええ、姫様は本当にお琴が上手ね」 「上手ね」  五人ははしゃぐ姿はそのようであったが、ふいに静まると少し悲しそうな様子になった。 「それにしても悲しい夜だわ」 「虫の音も澄んでいる」 「澄んでいるわ。それに姫様の琴も」 「ええ、姫様は本当にお琴が上手ね」 「上手ね」  その時琴の音がやみ、僕も少女もせわしない虫の音に沈んだ。いつの間にか虫たちの声は高なり、僕の鼓動もそれに合わせて早くなっていた。なぜなら僕は聞いたのだ。何を?  几帳に映った影がゆらゆらとうごめいた。僕には忍び泣きが聞こえたような気がした。 ---- 2002年ころ書いたもの。 #right{カテゴリ: &#x5b;[[落書テキスト>(カテゴリ)落書テキスト]]&#x5d;} &html(<center><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4101315116&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4087471985&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=harukaze2-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4840219443&nou=1&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000ff&bc1=000000&bg1=ffffff&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></center>)

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