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真なるクー 07 - (2006/09/02 (土) 17:52:23) の最新版との変更点
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*真なるクー異聞 ~モクー=ソトースの招喚~
ありとあらゆる時空間に身を接する窮極の存在モクー=ソトース。
私はその知識を手に入れ、未来の栄達を求めてかの神性を招喚することにした。
禁断の『ネクロノミコン』完全版におけるモクー=ソトース招喚の法――第九の詩その他――を参照し、裏山に築き上げた環状列石内部において所定の儀式を執り行うことにしたが、儀式の詳細は割愛する。もしこの手記を読み、私に続かんとする者がいるのなら、やめておくべきだ。それは不幸しかもたらさず、永劫の苦痛を呼び覚ますだけだ。
儀式はつつがなく終了した。壮烈な気配が列石上空に満ち満ちて、夜空の虚空が震え、爽やかな山の大気が揺らぐ。
それは空に出現した。丸い。球体だ。見るたびに色の変わる、名状しがたき球体の集積だ。
ゆっくりと降りてくる。重力を無視した鬼火のように降りてくる。世界が歪んでいく。
いや、歪んでいるのは世界ではなく、私の視界か。恐ろしい。呼び出すのではなかった。
私よりも遥かに優れた技倆と深き智慧を持ち、クー・リトル・リトルの招喚に成功した同輩の警告を受け容れておくべきであった。
これは彼の述べる通り、私の――人間の扱い、御し得る限界を超えた存在だ。
来た。私の眼前に降り立ったそれは、しばしの時を大地の上を蠢きのた打って過ごし、やがて――何ということか――それは慄然たる不快な波動を発しながら収縮を繰り返し、いつしかその異形の実体を人型のそれへと変じた。
見ているだけで卒倒してしまいそうなまでに美しく、恐ろしく、おぞましい。
それは二十代と思しき長髪の日本人女性の姿へと姿を変じ、じっと私を見ている。
顔には全てを見通す者ならではの酷薄な笑みすら浮かんでいる。
最も恐ろしく、そして不可解なのが、その者が纏う衣装である。
女性としてこれ以上を望むべくもない完璧な肉体は、白いガウンの無垢な布によってのみ秘められていた。半ば肌蹴た合わせ目から深遠な谷間を覗かせ、挙動に合わせて波打つようにして揺れる、量感溢れる乳房が魔性の妖艶さを象徴していた。
「……何か……用……?」
美貌と恐怖に魅入られたようになっていた私は、そのか細い音が眼前の存在の発した言葉であるということに気づくのに、非常に長い時間をかけてしまった。
私はようやくにして言葉を絞り出し、門にして鍵であるモクー=ソトースに応えた。
「貴方様の持つ、時空に跨る知識をお借りしたいのです」
「わかった……君……その歳で……童貞……皮……被ってる……」
「そ、それは……い、一体何を……」
モクー=ソトースは全てを見ている。何もかもを知っている。
だが、それがなぜ私の過去を暴き立てるが如きを行うのか。
「初恋……小学校の頃……手紙……出した……けど……教室内で……朗読される……酷い……失恋……」
やめてくれ。お願いだ。やめてくれ。もう嫌だ。
モクー=ソトースのか細い声による忘却の深淵に葬り去った記憶への言及は続いた。
その中でモクー=ソトースはその中で、ようやくにして家に連れ込むことに成功した女に包茎であることを知られ、侮蔑の言葉と共に去られた記憶や魔術に傾倒したことによって「キモオタ」と罵られ、社会から阻害されてきた記憶、インターネット上では煽られ、叩かれ、何をなそうとも粘着されて潰されてきた記憶、その他諸々の深き傷跡を抉り返すが如き悪夢の言及を続けた。
とても全てを書き留める気にはなれない延々数時間に及ぶその言及が現在の私に追いついた頃には、私は啜り泣き、意味を成さない嗚咽を漏らして大地に平伏していた。
私は一心不乱に祈っていた。この悪夢の終息を。送還呪文の詠唱などは考えられなかった。そのような気力など、残ってはいなかった。
「……大丈夫……」
モクー=ソトースの手が、涙と涎と鼻水に汚れた私の頬を撫でた。
名状しがたき悪寒と共に法外な悦楽が私の身体を貫いた。
「これから……永劫……私と戯れるの……私……君の……全て……知ってる……
生まれる……前から……今日……君が死ぬまで……見ていた……君が私の……
ものになる……今を……何度も……体験……君が……私の近く……にいる……時間を……
何度……も経験……そのたび……歓喜に身を……震わせ、永劫の円環……に在って……
ただ……その時だけ……待ち構えて……繰り返してきた……」
優しげな手つきで何度も私の頬を撫でるモクー=ソトースの言葉は人の身には難解であり、或いはクー・リトル・リトルに仕えし同輩ならば理解できるかもしれないが、私の理解の埒外にあった。
ただ一つ理解できることは、私には恐るべきモクー=ソトースの従者となる以外の道が一切合財閉ざされてしまったということだけだ。
ああ、モクー=ソトースが淡い笑みを浮かべて私に圧し掛かってくる。
肌蹴たガウンが脱ぎ捨てられ、一糸纏わぬ、生まれ出でたるままの姿となったモクー=ソトースが、柔らかく滑らかな肉体を私に押し付け、おぞましくも美しい大蛇の如く身を絡ませてきた。
ああ、ああ、ああ、正常な思考が保てない。何だこの快楽は。人間が得てよいものではない。
ああ凄いおぞましい狂おしい身の毛がよだつ心が壊れて直されて時空を超越して世界が歪む意識が曲がっていく助けて誰か気持ちいいもう駄目だ嫌だやめて助けて……
***written by 適当 ◆iQ7ROqrUTo
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*[[真なるクー 06]]
//*[[真なるクー 06]] | [[真なるクー 08]]
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*真なるクー ~せいそうするもの~
事の起こりはそう、ワタクシが屋敷を訪れたことから始まりました。
玄関をはじめ、ロビー、廊下、応接室、食堂など、いたるところに放置されたゴミ。 壁際には塵埃がうっすらと積もっている。
ワタクシが移動する度に足元をふわふわと綿埃が舞い踊り、まるで廃墟にでも訪れたのかとすら錯覚させるには充分すぎるロケーション。
あまりの出来事に言葉を失っていたものの、こちらを見つめる視線にふと気が付いた。
クー・トゥルーとその主が料理を手にし、インスマスが皿をテーブルに置こうとしている体勢のまま、時間が止まっているかのようにワタクシを見ていました。
「これは一体どういうことですの!?」
食堂でのんきに朝食を口に運んでいたクー・トゥルーを厳しく問い詰める。
それをこの色ボケ邪神ときたら、ワタクシを冷ややかに一瞥すると何事もなかったように人間にまとわり付き始めた。
「主よ、これは精がつく。 さぁ、遠慮せずに食べよ」
「そんなのばかり俺に食べさせてどうするつもりだ。 精がつくならクーが食べればいいだろ」
「我が食べても力は戻らぬ。 ……そうか、主は激しく求められるのが好みであったか。 ククク、今日は一日楽しく過ごせそうだ」
「前言撤回! これ以上激しいのはお願いだから勘弁して──」
「ワタクシを無視するなんていい度胸ですわね! 少しは話を聞こうという気に──」
「インスマス。 ツントゥグアが満足するまで食事を与えよ」
クー・トゥルーが冷徹な視線をこちらに向けたところでワタクシの意識は途切れました。
「それで、何の用件があって我の邪魔をするのか聞かせて貰おう」
ワタクシは、前に積み上がった皿の向こう側から聞こえる声に我を取り戻しました。
しかし、ここは努めて冷静にナプキンで口元を拭うことで、何をしにきたのかと記憶の反芻を試みる。
「ワタクシに食事を用意すれば何でも許されると思ったら間違いですわよ」
「別にそこまでは考えてはいない。 ただ我の営みを邪魔をされるのが嫌いなだけだ」
クー・トゥルーは その主の頭を胸に抱きいれ、肩をぺちぺち叩かれている。
「ともかく、この屋敷の荒廃ぶりを説明して頂きたいですわね」
呆れたような目を一度こちらに向け、クー・トゥルーは胸元の主に問いかけました。
「何か問題があるのか? 主よ」
「う~ん。 ちょっと埃っぽいかなぁ」
そして、その横で頷くインスマスを見たときワタクシの視界が暗転しました。
「ちょっとではないですわ! こんな廃墟同然の屋敷にいて気にならないんですのっ!?」
「我は主がいれば何も気にならぬ」
「ゴミに埋もれて生活してるなんて、気でも違っているのではなくて!?」
「我にそんな趣味はない。 ゴミはちゃんと片付けてあるではないか」
クー・トゥルーはそう言ってあごで壁際を指し示す。
そこには壁を覆わんばかりにうずたかく積まれたゴミの山があった。
……そう、落ち着かなければ。
問題だらけであっても、問題ない。
ここでワタクシが生活してるわけでもないですし、実際に住んでいる者たちがゴミにまみれて生きていこうともワタクシが近づかなければいいこと。
実際にワタクシがこの屋敷に用事があるとすれば食事の……
食事? ここは食堂ですわよね? ここにこれだけのゴミがあるということは……
【思考キャンセル猛ダッシュ】
ワタクシがここまで本気を出したのは、ここ数千年で初めてのことでした。
「ク~~・トゥル~~~~」
地の属旧支配者として相応しい、深淵から響く怨嗟の如き声をのどから発し、ワタクシは彼女を睨みつける。
それに対して、邪魔をするなと言いたげな訝しむ視線がワタクシを貫く。
「貴様も暇ではなかろう。 食事が終わったならば疾く去るがよい」
「貴女、何故あんな状態の厨房で食事を作らせているの! 正気!?」
「興味がない。 我が主にも特に問題がないのであれば一向に構わぬ」
「もう我慢できませんわ! ワタクシが片付けますっ、深きものども借りますわよ!」
返事を聞くつもりもないので、風を切るようにして食堂を後にする。
道すがら見かけた者たちに声をかけ、庭に集合するように言い渡す。
数分後、屋敷の前には数十人の深きものども、インスマスが集まっていた。
「よく集まりました。 これより屋敷の大掃除を致します。 徹底的に行うつもりですので心してかかりなさい」
ワタクシの宣言とともに湧き上がる不満の声。
「そう…… 今日の昼食は活け造りと踊り食いに決まりですわね」
その瞬間、だらけていた者たちが口をしっかりとつぐみ、直立不動を取る。
「では、屋敷に溜め込んだゴミを運び出しなさい。 それが終わったら換気を充分に取り、天井から床まで積もっている埃を綺麗に取り除きなさい!」
腕を大きく振って号令をかけた瞬間、整然と隊列を組み屋敷へと歩を進める者たち。
大雑把な作業しかできない者たちに任せるのは心配なので、ワタクシも掃除しましょう。
屋敷の中は混乱を極めていた。
埃が舞い上がるのも気にせず積み上げられたゴミを崩す者、換気もせずにハタキを使い塵を撒き散らす者など、掃除をしているようには思えない光景が広がっていた。
そして、その中を主を引きずりながら悠然と歩いているクー・トゥルー。
「クー・トゥルー! 掃除をする気がないなら邪魔になるところにいないで頂戴!」
「……安心するがいい。 我はこれから寝室に戻る。 気の済むまで清掃に励むがよい」
無表情に気のない返事を返すクー・トゥルーに文句のひとつも言おうと口を開いた瞬間、深きものが屋敷の端にある部屋の扉を突き破り転がり出てきた。
「なっ…… なんてことしてくれるのよっ! 扉を壊したら……」
扉を突き破った深きものに駆け寄ったワタクシの目に映る数人の人影。
部屋の中には黄衣を身にまとったハスツゥンが憮然とした態度でこちらを睨んでいた。
「なぜアンタがここにいるのよ。 ここはあの忌々しいクー・トゥルーの住処じゃないの?」
胸の前で腕を組み、胸を張るような格好でこちらを見詰めてくる。そんな両腕を使って寄せて上げても、大して変わらないバストサイズだというのに……
それにその下品な格好。チラリズムすら理解できないお子様らしいですわね……
「……今アタシのこと馬鹿にしたでしょ! おっぱいが大きいからって偉そうにしないでよね!」
「そんなことにこだわってるから子供扱いされるのがわからないのかしら」
物凄い目付きでワタクシの胸を凝視してくるハスツゥンを、着替え中だったらしい半裸の女がなだめるように声をかける。
「ハスツゥン。 君の胸は愛らしくていいとわたしは思うぞ」
「うぅ、主がそう言うなら…… でも別に我が主がロリコンだからアンタを許してあげるわけじゃないんだからねっ!」
腰に手を当てたハスツゥンがこちらを力いっぱい指差してくる。
その後から人間とは思えない禍々しい気をまとって女主が武具を構えた。
「やっ! それはアカンて! 口が滑ったのは謝るから堪忍したってや~っ!」
背後からの殺気だけでハスツゥンが頭を抱えて座り込む。
「なんだ。騒々しいと思えば、ハスツゥンがいるではないか」
そこには、今まで主以外に興味を示さなかったクー・トゥルーが立っていた。
「あ、君は──」
「出たわね! クー・トゥルーっ! 無防備にアタシの前に現れたこと、後悔しなさい!」
女主の台詞に被せるようにハスツゥンが叫ぶ。
「あれ? あなたは弁護士さ──」
それまで引きずっていた主をワタクシの胸に押し付けてクー・トゥルーが一歩前に進む。
「な、ななななんてことするんですのっ! 人間の分際でワタクシの胸に顔を埋めるなんて!」
クー・トゥルーは興を殺がれたといった風情で振り向き、哀れみを含んだ冷静な眼差しをこちらに向け口を開く。
「ツントゥグア…… 安心するがいい、貴様の胸では我が主は欲情できない」
「なんですってーっ! ワタクシの豊かな胸が貴女程度の胸に劣ると言いたいんですの!?」
「ちょ、ちょっと~、アタシの話を──」
「胸は大きさだけではない。 張り、弾力、更には肌の質感をも考慮に入れるべきもの。 ただ脂肪が詰まってさえいれば満足するというものではない」
「ワタクシの胸が脂肪でぶよぶよだとでも言いたいのかしら!?」
怒りに身を振るわせるワタクシの胸を鷲掴みにすると、クー・トゥルーはかすかに表情を緩め、勝ち誇ったそぶりを見せる。
「なっ、なんですの! その可哀想なものでも見るような顔は!」
「すまぬ、主よ。 不快であったろう。 後で存分に我が胸を堪能するがよい」
「く~~っ、人間! ワタクシの胸は最高ですわよね!?」
その手をつかみ、ワタクシの胸に押し付ける。
クー・トゥルーも対抗するかのようにもう片方の手を自分の胸に導き揉みしだかせる。
「遠慮せずに言うがよい。 我の胸に勝るものはないとな」
人間如きにワタクシの胸を触らせるのも癪ではあるものの、この胸が劣ると言われては引き下がる事はできない。
人間の手を覆うように掌を被せ、胸の感触を確かめさせる。
「えっと、あの~。 この状況は……」
人間は真っ赤になって周りを見回し口ごもる。
「そこの二人! アタシを無視して何やってんのよっ!」
ワタクシのプライドがかかった崇高なる戦いを邪魔するように口を挟むハスツゥン。
「貴女には関係ないことですわ。 消えなさい」
そう言ってハスツゥン一行がいる部屋の床を消し去る。
「え? きゃあ────っ!」
床が突然斜面になったことで半数が闇に消え去る。
「あ、主~~! よ、よくも主を──っ!」
「今ならまだ主とやらを追えますが如何しますか? 今すぐこの道を閉じても良くてよ」
屈辱に打ち震えながらこちらを睨み付けてくる。
「バイヤヒート、主を追うわよ! 二人とも覚えておきなさいよーっ!」
ハスツゥンは捨て台詞を残して地の底を目指して去ってゆく。
ワタクシは人間に振り向くと優しく微笑みかける。
「さぁ答えなさい。 どちらの胸が素晴らしいのかを」
「二人とも──」
「主よ、どちらがいいのかはっきりさせてもらおう」
「……クーは至高の胸。ツントゥグアは究極の胸です……」
何が言いたいのかわからなかったものの、その言葉に気分を良くしたワタクシは掃除を再開した。
寝室から聞こえてくるうめき声すら心地よい音楽にしか聞こえない充実した日でした。
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自サイトである RetroWorld の 30,000 Hit 記念も兼ねて Flash を利用したブロック崩しゲームを用意しました。
今回の話の後日談にゲームが付いたような感じです。
何回でも挑戦可能なので気楽に遊んで下さい。
また、Flash を切っている環境などの場合は、携帯ページの方でも後日談とイラストは
ご利用頂けますが、イラストサイズは小さめ、枚数は若干少なめとなります。
ご了承下さい。
[[後日談&ゲームはこちらになります。>http://mirrorshade.at-ninja.jp/]]
解像度 800x600 にも対応したモードを用意しました。
[[後日談&イラスト(携帯版)はこちらになります。>真なるクー 07-2]]
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***written by elc ◆ForcepOuXA
*elc ◆ForcepOuXA 氏の 素直クール小説掲載サイト [[RetroWorld>http://retroworld.web.fc2.com/]]
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