『空間エーテル』とは、科学進歩の発達によって発見された、『α質エーテル』と、『β質エーテル』を使った、論理的に矛盾した『非定着型 3.5次元空間』の事である。
■アリサの失敗 ~ルイス博士の発見~
ルイス・カール博士の発見はまさに革命的であった。ルイスは研究熱心な博士であったが、余りに研究熱心であったためにいつも朝食をとらない生活をしていた。しかし、不摂生が祟ってある日突然病気になって床につくことになる。
診断の結果は非流行性のライオット型インフルエンザだった。博士の研究は大幅に遅れ、結局は、研究に専念するためにはちゃんと朝食は食べるべきだという結論に至ったという。急がば回れ。研究にはまず身体が資本という事だ。
しかし、朝食に時間をとらせるわけにはいかない。博士は通常の食事よりもすばやくエネルギーを摂取する方法として、ミキサーに材料を全て投げ入れてドリンクにして飲み干すという方法をとっていた。その日の朝も助手のアリサに朝食の手配としてミキサーを使うように指示していた。
最初の一週間は何事もなかった。しかし間違いは8日目にして起きたのだった。連日のハードな研究スケジュールによって心身ともに朦朧としていたアリサは、間違って朝食の材料の中に研究材料である『エーテル圧縮ビン』を投げ入れてしまったのだ。それ以外は普通の材料。生卵、パセリ、にんじん、キュウリ、ナス、ニラ、トマト…である。
しかし、アリサはそのまま気がつかずに研究に戻ってしまい、ミキサーはそのまま2時間もキッチンで回り続けていたのだ。
異変に気がついたのはルイス博士だった。昼頃になってようやく今日はまだ朝食をとっていないことに気がつく。これいはいけないと助手と共に急いでキッチンへ向かう。しかし、そこで二人が見たものは、ミキサーの中に生まれた『小さな宇宙(コスモ)』だったのだ…。
■エーテル空間 ~小さな宇宙(コスモ)~
失敗は成功の友という言葉があるが、今回の発見はまさにそれだった。何故宇宙が生まれたのか。それは、そのままでは何の意味もないα質エーテルが、他の物質と一緒に混ぜ、回転し続ける事でエーテルの理論としての構造が崩壊し、別の元素とのランダム定着を起こすことで、結果として新しい次元を作り出すという事だった。
この新たな次元は、三次元や四次元などの、『定着し発展する』理論世界とは違い、ミキサーの回転を止める事で反応を止め、理論再構築され正常化することで崩壊、元の三次元へと還元される『非定着型』ものだった。この非定着型の次元空間を、博士は便宜的にこのエーテル空間を『3.5 次元空間』と呼ぶ事にした。
■3.5次元の質量 ~空間圧縮~
これだけでは何の意味も使い道のない3.5次元空間だったが、研究の末、この3.5次元空間の内部は我々の住む次元と比べ、8倍ものα質エーテル密度があることがわかった。空間が3.5次元から元の三次元へと還元されるときに、理論的に矛盾した分の質量変化をし、膨張するからだ。ちなみに8倍という数字は、度重なる研究の末、何度やっても最後にはミキサーが膨張して大爆発し、中のタマゴやトマトやニラなどが飛び散ってしまう事実と、そのナスやパセリやキュウリの破片の飛距離の最大距離がミキサーから約8mであった事から計算された。
まとめると、『空間エーテル理論』とは、野菜などをエーテルとミキサーすることによって生まれる『空間の理論的圧縮』と、それが崩壊する時に生まれる『理論的な膨張』の運動の事である。
一章 =空間エーテル理論=