「つうか…俺講義あったんだけど」
「もう単位取得済みだろが、レーベレヒト。うちのボスの講座だろ」
「もう単位取得済みだろが、レーベレヒト。うちのボスの講座だろ」
そのくらい把握してるわ、とそんなことを言う。
ボスとはもちろん、研究室の教授のことだ。緊急に、と呼び出されて来てみればこれだ。はぁ、とため息を吐いて手近な椅子に座る。もともとサボる気だったために兄の言うことももっともだが、何よりもこの年の離れた兄には、あまり家に帰らない両親に代わって面倒を見てもらっていた負い目もあり、なんというか、その…逆らいづらい。そうは言っても、と憮然とした表情を浮かべ、前に座る兄――ループレヒトの顔を見る。玩具を前にした子供のような良い笑顔をしている。…というか、まさにその通りなのだろう。
にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべたまま、こちらを見ている兄。
にやにやと気持ちの悪い笑みを浮かべたまま、こちらを見ている兄。
「それで、今日は何」
「おお!良く聞いてくれた!今日はな…」
「おお!良く聞いてくれた!今日はな…」
いつまでもはじまらない話に痺れを切らして問うと、滔々とうんちくを垂れ流しだした。まぁこの流れもいつものことだ。ごちゃごちゃと何か理屈を口上に挙げているが、専門的な話などもわかるはずもなく適当に聞き流す。一通り放置して、適当なタイミングで「またテストをしろって?」と、そう問いかけると、また良い笑顔で大きく頷いて見せた。
「今回のはすごいぞー?なんと開発元は業界一!MMIだぜ!」
「イッポンマツ?…んー……俺はあんまり好きじゃないなぁ…
山城インダストリーとかのが好きだ」
「イッポンマツ?…んー……俺はあんまり好きじゃないなぁ…
山城インダストリーとかのが好きだ」
業界最大手の名前を聞いてもあまり食指が伸びない。自分としては―
「お前はピーキーなのが好きだもんなぁ…
ま、確かにMMIのは癖がなく使いやすいのが評判だけどな。
試作具なんだからまぁ、面白いこともあるんでない?
そうはいっても今回のは、革新的な技術って言うよりは…」
ま、確かにMMIのは癖がなく使いやすいのが評判だけどな。
試作具なんだからまぁ、面白いこともあるんでない?
そうはいっても今回のは、革新的な技術って言うよりは…」
と、隙あれば学術的な話に持っていく。魔術概論ならまぁ多少はわかるし、使ってみる以上は特徴を掴んでおかないといけないのだが、兄の話はとにかく長いのが良くない。話自体は上手いが…。
というわけで話半分に聞きかじったところ、特徴としては
「業界初!チョーカータイプ!」
ってことらしい。そんなの形だけだろ、その長い説明はなんだ、と言いたい。
が、兄いわく、今までの常識では意識的にわかりやすい腕回りや首よりも上(耳輪や冠)などに装着できるものが殆どで、体幹へ身につけるモノの要望は以前からあったらしい。今回の魔術具はその辺りを改良してうんぬん、意識の誘導がなんたら。もう一度言うが、いくらわかりやすく説明されても専門用語がわからないんじゃ付いていけるはずもない。
というわけで話半分に聞きかじったところ、特徴としては
「業界初!チョーカータイプ!」
ってことらしい。そんなの形だけだろ、その長い説明はなんだ、と言いたい。
が、兄いわく、今までの常識では意識的にわかりやすい腕回りや首よりも上(耳輪や冠)などに装着できるものが殆どで、体幹へ身につけるモノの要望は以前からあったらしい。今回の魔術具はその辺りを改良してうんぬん、意識の誘導がなんたら。もう一度言うが、いくらわかりやすく説明されても専門用語がわからないんじゃ付いていけるはずもない。
「ようはその装着位置でうまく発動できるかどうか、ってことだろ?
てかそんな最大手の試作品、俺みたいなC級でいいのかよ」
てかそんな最大手の試作品、俺みたいなC級でいいのかよ」
揚々と語っていたところを遮られて多少不満そうな表情を浮かべるも、「そうそう」と頷いて
「十分。対象がそもそもそのくらいのランクの製品だしねー。
それにレーベ、お前2年でC級だろ?優秀じゃん。何人もいないんじゃないか?」
「得意なのがアレだし…規模的に大きくはなれそうにないし、
俺はこれで打ち止めだよ、これ以上は無理っぽい」
それにレーベ、お前2年でC級だろ?優秀じゃん。何人もいないんじゃないか?」
「得意なのがアレだし…規模的に大きくはなれそうにないし、
俺はこれで打ち止めだよ、これ以上は無理っぽい」
はぁ、とまた溜息を吐く。俺が得意な魔術は…というか、魔術自体が得意というわけでもない。担任の話によると並列処理が並み以上、ってことらしい。要はしょっぱい魔術をいくつか連続、あるいは同時に行使することができるがでかいのは無理、と。そんな感じだ。「今いくつまで行けるんだっけ?」そう兄が問うので「4」と数字だけで答える。
「じゃ、これで5つ目になっちまうなー…。
えぇと、スフィア社のはもう大分経ったよな?
データはどうだ?」
「言われてた分以上に取れてるよ。あとで送っとく。」
えぇと、スフィア社のはもう大分経ったよな?
データはどうだ?」
「言われてた分以上に取れてるよ。あとで送っとく。」
右手の人差し指にしていたシルバーリングを抜き、兄へ放り投げる。わたわたした様子で手を伸ばす兄を笑って、少しはすっきりした。
なぜ一つ受け取って一つ返すかといえば、一つの魔術に対して一つの魔術具。それが基本。俺みたいなタイプとしてはデュアルだとかクアドロプルとかそんな仕様の魔術具が欲しいところだが、そもそも複数ラインで魔術を使おうとする魔術師はそれほどいない。理由は簡単、それぞれが干渉してしまって扱いづらいことこの上ないため。そういうことをあまり感じたことのない俺は特殊といえばそうかもしれないが、単に扱える魔術が弱いから、というだけかもしれない。
何度かお手玉をしていた――それはそれで器用だと思うが――指輪を確保できてほっとしたのか、にこにこと笑みを浮かべながらこちらに対して一言。
なぜ一つ受け取って一つ返すかといえば、一つの魔術に対して一つの魔術具。それが基本。俺みたいなタイプとしてはデュアルだとかクアドロプルとかそんな仕様の魔術具が欲しいところだが、そもそも複数ラインで魔術を使おうとする魔術師はそれほどいない。理由は簡単、それぞれが干渉してしまって扱いづらいことこの上ないため。そういうことをあまり感じたことのない俺は特殊といえばそうかもしれないが、単に扱える魔術が弱いから、というだけかもしれない。
何度かお手玉をしていた――それはそれで器用だと思うが――指輪を確保できてほっとしたのか、にこにこと笑みを浮かべながらこちらに対して一言。
「デザインはちゃんと、レーベに合うようなのを選んでおいたからなー」
「しっかし…チョーカーってか…首輪じゃん………」
もちろんチョーカーがどんなものなのかは知っている。そこらの気取った連中がつけてたりするのを何度も見かけているし。首輪っぽいもの、ということも認識している。そして魔術具のデザインはいたってシンプル。黒のレザーベルト。単にそれだけ。まさに「首輪」といった様相である。
いやいやながらもバイト代も出るし、と仕方なく渡された魔術具を首に付けて、高校の敷地まで戻り、時計を確認。いまだ講義中の時間であり人気は少ない。座りの悪いチョーカーの位置を直しながら呟きが漏れた。
いやいやながらもバイト代も出るし、と仕方なく渡された魔術具を首に付けて、高校の敷地まで戻り、時計を確認。いまだ講義中の時間であり人気は少ない。座りの悪いチョーカーの位置を直しながら呟きが漏れた。
「さーて…どこで時間つぶすかなぁ…」
パスとか全く受け取ってませんがいいのかこれ。
それと適当に魔術免許ってことで設定つけたしました。
適当にいじってくだしい。魔術自体に関しては何も考えてませーん。
それと適当に魔術免許ってことで設定つけたしました。
適当にいじってくだしい。魔術自体に関しては何も考えてませーん。