―…と、そのような感じで、「魔術は行使者の組み立てた構成式に従ってエーテルを変換させることにより、目的の事象を生み出すもの」として定義される。エーテルと言うもの自体の考え方は魔術が形態化される以前、錬金術師によって存在が謳われていたけれど、錬金術自体が時代の流れによって形骸化していく中で後に否定。しかしその後、魔術というものが学問として広く認知され、錬金術を含めて新たに立ち上がって行った研究の中で、それ以前の化学分野における分子・原子論では理由付けの出来ない部分が広く疑われるようになった。そこで発見されたのがエーテル。まぁこれは一般の生活、化学分野でも皆馴染みのある空間エーテル理論、次元泡に関連してくるお話で、α質、β質とまぁ化学分野では定義付けがなされているけど…ここでは省いときましょ。その辺が気になる人はそっちの講義で聴いてね。
ちなみに魔術の行使においてエーテル分類の定義付けが重要視されない理由としては、こちらからの働きかけでそれぞれに関与するわけではない、ってことかな。先程も出た次元泡を例にとれば、あれは技術的にエーテル自体を制御して、α質をβ質で覆うことによって存在を安定化させているわけだけど、魔術の場合は「目的の事象」を生み出す過程においてエーテルの変異を制御しているわけではないんだよねー。魔術師が組み立てた構成式に従って、エーテルが変換されていくんだけど、そこにαだのβだのの仕切りは無いんだよ。ここはもう自動的なの。式さえきちんと構成出来れば、あとは選んで働きかけるわけではないってこと。なので魔術分野においてはまとめて「エーテル」という形で認識しておいてもらえればいい。ただ、化学分野とは別の分類があって…
それはどういうことかと言えば、エーテルとは一般に空間と空間を繋げている…っていう認識がそうだけど、もちろん人間の体にも空間が存在しているよね。つまり魔術に於いて働きかけるエーテルって言うのは内気――自分の中にあるもの、あるいは外気――そこらへんに存在しているもの、っていう二つ。魔術学ではこれを、内燃系、外燃系と分類されている。エネルギー、燃料っていう所からきている名称だね。この二つは先人の経験則からも、その後の研究からもとりあえずは別のもの、という扱いがされている。同じエーテルではあるんだけど…意識の及ぼす範疇の空間とそれ以外の空間…といったところかな?で、基本的には内燃系に働きかける方が楽なんだ、自分の中にあるものだから。構成式も、自己の中にあるもの、だから影響を与えやすい。ただ、この場合、内燃の容量ってのは個人差がかなりあって。それに使ってしまうと補充にも多少間が空くんだよね。…ん?はい、そこの彼女。
――使いすぎて体内がおかしなことにならないか、と。
基本的にエーテルを消費しても薄まりはするけれども、完全になくなることは無い、とされているね。物質…エーテルも含めてね、「安定」する方向へと流れていくんだ。だから体内、内臓系に支障が出るほどのエーテルを使用し、変化は起こそうとしても起きない。身体を構成する結びつきの方をエーテルが優先する、と考えられているね。いいかな?…はい、もう一つ質問ね?
基本的にエーテルを消費しても薄まりはするけれども、完全になくなることは無い、とされているね。物質…エーテルも含めてね、「安定」する方向へと流れていくんだ。だから体内、内臓系に支障が出るほどのエーテルを使用し、変化は起こそうとしても起きない。身体を構成する結びつきの方をエーテルが優先する、と考えられているね。いいかな?…はい、もう一つ質問ね?
――どのくらい間が空くのか…これはさっき言った、内燃系の個人差にも含まれるんだけど…そうだね、例えば湧水の泉があるとしようか。そこを桶で水をすくったとしてもその部分がポッカリと空く、なんてことは無いよね?そんな感じで水が重力に引かれて均一になるように、エーテルも部分的に欠けるってことは無い。その範囲内において――この例においては体内、ってことだけど、均等になろうとする力がかなり強い、ってこと。そして湧水、っていう表現に掛かるけれど、エーテルは「湧いて出てくる」ようなものなんだ。空間エーテル論によれば、エーテルには次元間を結ぶ側面も持っているから、こちら側で薄れたエーテルに引き寄せられて別次元からまさに湧いて出てくる、という理論がなされているね。で、ここが個人差の部分になるんだけど、この、エーテルの湧く量、速度。あとは付け加えて体内のエーテルの濃度…この辺りだね。コレが個人によってかなり違ってくるわけ。ここまでで、あと他に質問がある人は…大丈夫だね。
それじゃあ内燃系と外燃系の続きだけど、内燃系では効率的な問題やリチャージの時間の問題などがあり、それなら外気を使えばいいんじゃないか、って流れになるのは当然だと思う。昔からわずかながらも、外気を扱える魔術師はいたんだけど、それには素養もともかく手間もかかり、難度も非常に高かった。そこで誕生したのが皆さんお馴染みの魔術具。これは簡単にいえば、内気と外気をつなぐバイパスのようなものなんだ。内気を僅かに使って魔術具を触媒とし、外気へと繋ぐ道筋とする。こうすることによって、今までエーテル…内燃系魔力として10必要だったものが、内気を2使って外気を9用いる…ってことが可能になった。此処に僅かながら魔力のロスがあるのは経路をつなぐための媒介としての魔力ね。それにしたって魔術師にとって、相当な負担の軽減になった、とそんなわけ。この話からもわかるように、どうしても内気を使ってしまう以上魔術の行使に限界があるのは仕方ないんだよねー。
で、その魔術具は、今言ったように開発当初はバイパスとしての役目だけを負っていたわけだけれど、年が経つにつれて新たな機能が搭載されるようになっていった。魔術自体、構成式の構築に対する補助、あるいは指向性を与える補助…この辺の機能ももう皆さんくらいの世代の人にとっては当然だろうけれど、僕が若いころにはまだあったりなかったり、だったんだよね。こちらの機能においては、元々魔術として似たようなことをしていた付与魔術学や、符術学などが多大な影響を与えているね。ちなみに符術の護符と魔術具とは何が違うかと言えば、護符には構成式まで編み込んであり、それに術印で起動させることにより行使される。つまり作成した段階で用途が決まってしまう護符と、目的は自由に、あくまでもサポートだけを行う魔術具…といった具合かな。
ここから魔術の指向性、要素(エレメント)の話になるわけだけど、これにはメインとサブがあって、たとえば「浮遊」。上位には「飛翔」ってのがあるけれど、「浮遊」に含まれる要素は主として[反重力]。サブとしては特になし。「飛翔」にはこれに追加の要素として[動径(ベクトル)制御]、まさに文字通りの指向性を与える要素が追加される。まぁ飛翔魔術は難度が高いんで馴染みは薄いかもしれないけれど、それぞれ単独でなら使える人は多いんじゃないかな?「浮遊」は下の上、といったところだし、モノを動かすなんてのはもっと初級だよね。けれど何故「飛翔」の難度が高くなるかと言えば、[反重力]と[動径制御]があまり相性の良くない組み合わせだからなんだ。一つの構成式に組み込むには、その辺りの制御がなかなか難しいってこと。試したことある人も多いだろうけど、アレは正直B級以上推奨だねぇ。実用するとしたらさらに外気から身を守るための要素も付けたさないといけないから。…ああ、そうそう。[動径制御]…「運搬(リフト)」だけで飛ぼうとするともっと難しいから気をつけた方が良いよ。ただでさえ上下左右前方後方の制御をしなきゃいけないのに、それに合わせて対重力の制御をしなきゃいけないわけだからね。それをするくらいならやっぱり[浮遊]でその係数を打ち消しちゃった方が楽…ってわけ。相当に制御術に長けてるなら、まぁ別だけど…
…っと、こんな所でそろそろ時間だね。
というわけで、魔術解析学ってのはこんな感じで…魔術自体を要素に分類し、文字通り解析を行っていきます。次週からは要素に関しての講義をやっていきますので。基本的な、メジャーな魔術の行使にはこんな要素の解析なんかは必要ないことだけど、知っておくと便利なことも多いよ。考え方も広がるからね。魔術師に必要なものは柔軟な考え方と独特な発想、ってね。
では、お疲れ様でした。
というわけで、魔術解析学ってのはこんな感じで…魔術自体を要素に分類し、文字通り解析を行っていきます。次週からは要素に関しての講義をやっていきますので。基本的な、メジャーな魔術の行使にはこんな要素の解析なんかは必要ないことだけど、知っておくと便利なことも多いよ。考え方も広がるからね。魔術師に必要なものは柔軟な考え方と独特な発想、ってね。
では、お疲れ様でした。
ほぼ勢いで書いたので突っ込み待ち。