「これで送信完了かな」
警備部室の端末を操作して昨日の面々にいわゆる“ボランティア”の詳細を記したメールを送信した。
「部長、昨日の案件の“作業”の詳細のメールを送りました」
そう言うと、部長がこちらを見て聞いてきた。
「おう。それで実習生の子の承諾は取ったんだよな?」
ちなみに今日の昼食はカレーうどんらしい。
わざわざ紙ナプキンをつけている。
「ええ、昨日のうちに頼んで先ほど受ける旨のメールが来ました」
断るかなとも思ったけどやはり校外研修の単位になるのは大きかったのだろうか。
「そうか、なら良いんだが。いつもなら教育指導の先生に頼むんだが、今出払っててな」
そういうとどんぶりを横によけて書類を取り出し見ている部長。
「あぁ、あったあった。外部遺跡研修の下見だな。
ここから数日掛かるから戻ってくるにはまだ掛かりそうだな…」
最後の方は独り言らしい。
「外部遺跡研修なんてやるんですか?私いた頃にはそういうの無かったですよ」
高校に併設してある遺跡の研修ならあった。
あそこの奥はともかく、入り口周辺なら解析も大体済んでいたので研修に使われていたのだけど。
「あーほら、ちょっと前に西部大森林で遺跡見つかったんだよ、小さい奴が」
部長がそう言うと見ていた書類から一枚を抜き出してこっちに“飛ばして”きた。
受け取ってみると地図らしい。
「あれ、ここって・・・」
そこは師匠と私で見つけた遺跡だった。
「そうだ、お前とあいつが見つけた遺跡だよ。
お前達が調査済みってことは目ぼしいものはないだろうしちょうどいい。」
確かにあそこは小さい遺跡で遺物も殆ど無かったし書籍も数冊あるくらいだった。
「それでも何に使われてたかまでは分からなかったですし、安全なんですか?」
基本的に遺跡が何に使われていたかまでは私達にも分からないことが多い。
そこにあるものの解析は得意だが建造物や施設に関してまでは手が回らない。
「そこなんだよ。教育指導の先生、そっちが専門でな。そっちの意味も兼ねての下見だそうだ。
確かに校内の遺跡は安全な場所ははっきり分かってんだが奥のほうはまだ何とも言えないし、かといって入り口付近は見飽きた奴も多いだろ。
そこで新しい遺跡を探してた時にお前達が見つけたのがさほど遠くなく、安全な立地だったから白羽の矢が立ったらしいぞ」
確かにあの内部遺跡の入り口とその脇の部屋辺りを見るのと実地で遺跡を見るのでは大違いだった。
あの遺跡なら最近見つけた奴だから実地という意味ではぴったりだろう。
「あぁ、そうだ。それでもしそっちの研修が本決まりになったら野外研修になるからお前も来い。
というか発見者で卒業生なんだからぜひ来て欲しいらしいぞ。」
何か・・・気恥ずかしいものがある。別にたいした遺跡ではなかったのに。
あの程度の遺跡なら大森林の中には探せばごまんとあるはずだ。
「別にあの程度のことで発見者といわれても・・・」
そう言うとあっさり部長は翻した。
「まぁ、本音を言うと野外活動の経験者がうちの学校には少ないから、そっちのノウハウ持ってる奴の協力が欲しいって所だろうが。
あの辺りは比較的安全とはいえ、狼やらの獣が居ないわけじゃないしな。
警備部からも人員を提供の打診があったんだが、野外行動の訓練はあまりしないから有事の際の対応に自信が有るわけじゃない。
そういうわけで私からもお前が行ってくれると助かる。
とりあえずマニュアルを作らせているから出来たら目を通して改善点合ったら教えてくれ」
部長、普段はサボってばかりだが意外と仕事は手早い。
「わかりました。そういうことなら協力させていただきます。どうせここ一ヶ月は大学休学ですし・・・」
それを聞くと部長がくつくつと笑う。
「お前もとんだ師匠についたもんだなぁ。あいつ、腕は確かだがしょっちゅうどこか出かけるからな」
「ええ、本当に・・・」
まったくだ。何度心配したことか。
「私に連絡来たのも二年ぶりだったんだぞ。それでいきなりお前の売込みされたからな。
まぁ、おかげで良い人材手に入ったんで不満は無いんだが。」
そうだったのか・・・。
「面と向かって言われると恥ずかしいです・・・」
それを聞くとさらに笑う。
「まぁ、このまま就職しても構わんぞ?」
と、部長がリップサービスでも嬉しいことを言ってくれたときだった。
部屋のドアを開けてすごい勢いで警備部員が入ってきた。
「部長!大変です!講堂で乱闘です!」
どうやら昼休みは返上らしい。
「何!規模と詳細は?」
勢い立つ部長。
「100人規模です。『朝食はご飯部』の集会が行われていたんですが、そこでパンを食べたご飯部員への制裁が行われているとの垂れ込みを聞いた『パン愛好会』の有志達が救出及びパンを食べた部員の抱き込みに向かわんと講堂に突撃したところ、便乗した『新党お粥派』がお粥爆弾によるテロ攻撃をかけた結果、現場は混沌の極みです。」
警備部室の端末を操作して昨日の面々にいわゆる“ボランティア”の詳細を記したメールを送信した。
「部長、昨日の案件の“作業”の詳細のメールを送りました」
そう言うと、部長がこちらを見て聞いてきた。
「おう。それで実習生の子の承諾は取ったんだよな?」
ちなみに今日の昼食はカレーうどんらしい。
わざわざ紙ナプキンをつけている。
「ええ、昨日のうちに頼んで先ほど受ける旨のメールが来ました」
断るかなとも思ったけどやはり校外研修の単位になるのは大きかったのだろうか。
「そうか、なら良いんだが。いつもなら教育指導の先生に頼むんだが、今出払っててな」
そういうとどんぶりを横によけて書類を取り出し見ている部長。
「あぁ、あったあった。外部遺跡研修の下見だな。
ここから数日掛かるから戻ってくるにはまだ掛かりそうだな…」
最後の方は独り言らしい。
「外部遺跡研修なんてやるんですか?私いた頃にはそういうの無かったですよ」
高校に併設してある遺跡の研修ならあった。
あそこの奥はともかく、入り口周辺なら解析も大体済んでいたので研修に使われていたのだけど。
「あーほら、ちょっと前に西部大森林で遺跡見つかったんだよ、小さい奴が」
部長がそう言うと見ていた書類から一枚を抜き出してこっちに“飛ばして”きた。
受け取ってみると地図らしい。
「あれ、ここって・・・」
そこは師匠と私で見つけた遺跡だった。
「そうだ、お前とあいつが見つけた遺跡だよ。
お前達が調査済みってことは目ぼしいものはないだろうしちょうどいい。」
確かにあそこは小さい遺跡で遺物も殆ど無かったし書籍も数冊あるくらいだった。
「それでも何に使われてたかまでは分からなかったですし、安全なんですか?」
基本的に遺跡が何に使われていたかまでは私達にも分からないことが多い。
そこにあるものの解析は得意だが建造物や施設に関してまでは手が回らない。
「そこなんだよ。教育指導の先生、そっちが専門でな。そっちの意味も兼ねての下見だそうだ。
確かに校内の遺跡は安全な場所ははっきり分かってんだが奥のほうはまだ何とも言えないし、かといって入り口付近は見飽きた奴も多いだろ。
そこで新しい遺跡を探してた時にお前達が見つけたのがさほど遠くなく、安全な立地だったから白羽の矢が立ったらしいぞ」
確かにあの内部遺跡の入り口とその脇の部屋辺りを見るのと実地で遺跡を見るのでは大違いだった。
あの遺跡なら最近見つけた奴だから実地という意味ではぴったりだろう。
「あぁ、そうだ。それでもしそっちの研修が本決まりになったら野外研修になるからお前も来い。
というか発見者で卒業生なんだからぜひ来て欲しいらしいぞ。」
何か・・・気恥ずかしいものがある。別にたいした遺跡ではなかったのに。
あの程度の遺跡なら大森林の中には探せばごまんとあるはずだ。
「別にあの程度のことで発見者といわれても・・・」
そう言うとあっさり部長は翻した。
「まぁ、本音を言うと野外活動の経験者がうちの学校には少ないから、そっちのノウハウ持ってる奴の協力が欲しいって所だろうが。
あの辺りは比較的安全とはいえ、狼やらの獣が居ないわけじゃないしな。
警備部からも人員を提供の打診があったんだが、野外行動の訓練はあまりしないから有事の際の対応に自信が有るわけじゃない。
そういうわけで私からもお前が行ってくれると助かる。
とりあえずマニュアルを作らせているから出来たら目を通して改善点合ったら教えてくれ」
部長、普段はサボってばかりだが意外と仕事は手早い。
「わかりました。そういうことなら協力させていただきます。どうせここ一ヶ月は大学休学ですし・・・」
それを聞くと部長がくつくつと笑う。
「お前もとんだ師匠についたもんだなぁ。あいつ、腕は確かだがしょっちゅうどこか出かけるからな」
「ええ、本当に・・・」
まったくだ。何度心配したことか。
「私に連絡来たのも二年ぶりだったんだぞ。それでいきなりお前の売込みされたからな。
まぁ、おかげで良い人材手に入ったんで不満は無いんだが。」
そうだったのか・・・。
「面と向かって言われると恥ずかしいです・・・」
それを聞くとさらに笑う。
「まぁ、このまま就職しても構わんぞ?」
と、部長がリップサービスでも嬉しいことを言ってくれたときだった。
部屋のドアを開けてすごい勢いで警備部員が入ってきた。
「部長!大変です!講堂で乱闘です!」
どうやら昼休みは返上らしい。
「何!規模と詳細は?」
勢い立つ部長。
「100人規模です。『朝食はご飯部』の集会が行われていたんですが、そこでパンを食べたご飯部員への制裁が行われているとの垂れ込みを聞いた『パン愛好会』の有志達が救出及びパンを食べた部員の抱き込みに向かわんと講堂に突撃したところ、便乗した『新党お粥派』がお粥爆弾によるテロ攻撃をかけた結果、現場は混沌の極みです。」
説明しておくと『朝食はご飯部』はいわゆる部活に当たり、残りの二つは同好会という位置づけだ。
実際にご飯部が部員が多く、次いでパン愛好会、少数ながら過激な行動が多いお粥派が続く。
ご飯部とパン愛好会の活動は活発でよくポスターによる掲示活動なども行っている。
お粥派は過激な行動が多く、前述のポスターにお粥をぶちまけるなどの行動が問題とされ、私達警備部の取締対象として指名手配されている。
説明終わり。
実際にご飯部が部員が多く、次いでパン愛好会、少数ながら過激な行動が多いお粥派が続く。
ご飯部とパン愛好会の活動は活発でよくポスターによる掲示活動なども行っている。
お粥派は過激な行動が多く、前述のポスターにお粥をぶちまけるなどの行動が問題とされ、私達警備部の取締対象として指名手配されている。
説明終わり。
「相変わらずバカやってるな、どれもうまいのに」
部長は無党派らしい。
「それでどうしましょう?」
来た部員さんは現場にいたらしく服の袖にお粥がこびりついている。
「そうだな、全警備部員に緊急招集。講堂全入り口の封鎖及び当事者の確保に当たる。
多数の負傷者が予想される為、保健部に連絡を入れておくように」
椅子にかけていた警備部の制服の上着を纏って部長はやる気満々だった。
「よし。ヒサカ、行くぞ。お粥に恨みはないが、お粥派のバカどもだけは断固捕まえてとっちめてやらんといかん」
もちろん私も話を聞きながら支度をしていた。
「はい。行きましょう。ですが部長、紙ナプキンつけたままです」
一応突っ込んでおく。このまま行ったら格好がつかない。
「おお、忘れてた。すまんな。」
部長が紙ナプキンをはずしているうちに端末を操作して警備部緊急招集の発令を送信しておく。
部員さんも保健部に連絡を入れるため再び駆けていった。
「部長、招集かけました」
「おし、それじゃ一頑張りだ。遅れるなよ」
そういって部長は駆け出した。私も続いていく。
部長は無党派らしい。
「それでどうしましょう?」
来た部員さんは現場にいたらしく服の袖にお粥がこびりついている。
「そうだな、全警備部員に緊急招集。講堂全入り口の封鎖及び当事者の確保に当たる。
多数の負傷者が予想される為、保健部に連絡を入れておくように」
椅子にかけていた警備部の制服の上着を纏って部長はやる気満々だった。
「よし。ヒサカ、行くぞ。お粥に恨みはないが、お粥派のバカどもだけは断固捕まえてとっちめてやらんといかん」
もちろん私も話を聞きながら支度をしていた。
「はい。行きましょう。ですが部長、紙ナプキンつけたままです」
一応突っ込んでおく。このまま行ったら格好がつかない。
「おお、忘れてた。すまんな。」
部長が紙ナプキンをはずしているうちに端末を操作して警備部緊急招集の発令を送信しておく。
部員さんも保健部に連絡を入れるため再び駆けていった。
「部長、招集かけました」
「おし、それじゃ一頑張りだ。遅れるなよ」
そういって部長は駆け出した。私も続いていく。
いつもこんな感じで警備部員は働いている。
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