講堂に着いた私達が見たのは戦場だった。
しかも、酷くでんぷん臭い。
お粥の雨の中、おにぎりと乾パンが飛び交うという食べ物に対する冒涜といえる状況だ。
ぱっと見た感じではもはや泥仕合と化し、とりあえず近くの敵と交戦をするだけであちこちに傷ついた学生が倒れている。
「こりゃ“作業”の内容は決まりだな・・・」
嘆息する部長。
講堂の中は見るも無残に汚れていて手の施しようが無かったのだから仕方がない。
「3チームに分かれて全員で講堂を封鎖。正入り口以外は全て締め切って逃がさず、これ以上馬鹿を増やさせないように。いいな」
指示を受け各自持ち場に移動する部員達。
私は正入り口担当なのでこのままここで待機だ。
「ライリ、お前“不活性”か“強化”の護符あるか?」
と、こちらを向いて部長が聞いてきた。
“不活性”は対象の状態をそのまま固定化する護符で、物に使うことで酸化などの物質の変化を止めることが出来る奴だ。
“強化”は物の強度や性質を高める護符だ。
「両方ありますが、使う規模はどのくらいですか?」
私の能力では規模によっては手が余るのが悲しいかな、現実だ。
「この講堂全域、時間は数分有れば良い。」
どうやら制圧に活用するらしい。
「手持ちの護符の精度だと“不活性”は5分が限度です。“強化”は組成が分からないので耐久性の方がそこまで伸びない上、もっと短いです」
“不活性”に関してはサイズがネックで、“強化”に関してはサイズもそうだが物質の構成を理解していないと使いこなせない。
その上、今使っている護符の魔力強度は普段遣いの廉価品だ。
師匠クラスだとそこそこの素材でも高性能の護符を作れるのだが、私では高性能の護符を作るには高い素材が欠かせない。
私もまだ術師としてはまだまだ未熟だ。
「そうか、なら“不活性”を合図と共に発動させろ。そして全員に通達。突入と共に講堂内では5分間魔導具が発動しなくなる。自己強化などは今のうちにかけておけ。掛け直しにはいったん外に出る必要がある。注意するように」
新たな指示を加える部長。
どうやら、この場に“不活性”の護符を発動させることで魔導具に干渉させて逃亡に魔術を使わせない作戦のようだ。
「でも部長、この作戦は魔導具なしで発動できる術師には効果がないですが・・・」
魔導具を扱う術師には効果があるが、扱わずに発動させれば魔術は使えてしまう。
「ライリ・・・、このご時世に魔導具なしで術を発動できる奴なんてろくに居ないぞ。いまや魔導具は魔術師と切っても切れない間柄だ。お前達師弟みたいな例外も居るが」
こっちをまじまじと見て嘆息する部長。
どうもこのあたりの感性がずれているらしい・・・。
「それはそうと、護符の準備は良いか?」
当然準備は出来ている。
「はい、いつでも行けます」
「よし、発動させろ。そして全員突入!」
私が護符を講堂の入り口の床に貼り付け発動させる横で、大きく息を吸い、中の生徒達に聞こえるよう叫ぶ部長。
「警備部だ!全員私闘禁止規定違反及び構内備品汚損の現行犯で拘束する!おとなしく投降すれば罰則は軽微を考慮するが反抗するようなら相応の罰を持って対処する!」
声が中一面に響き渡り、ピタッと中の喧騒が止まったかにみえたが、空を舞っていたお粥党員がこう叫び返した。
「制裁が怖くてお粥党員が勤まるか!」
そしてまた脇に抱えた水筒からお粥をぶちまけ始めた。
それに続き生徒達が闘争を再開し始めた瞬間、また部長が叫ぶ。
「その意気や良し!だが覚悟しろ!」
中に飛び込んだ部長は近場に落ちていた丸パンをひっつかんでフルスイングでそのお粥党員に投げつけた。
パンを一瞬見失った次の瞬間、党員に避ける動きすら許さずパンは顔に直撃した。
意識を失い地面に落ちる党員を人ごみを突っ切り、駆け寄って受け止める部長。
辺りはまた静寂に包まれた。
「他にこの馬鹿者と同じ末路をたどりたい奴が居たら付き合ってやるぞ?」
有無を言わせぬ凄みのある声が講堂中に響き渡った。
格の違いを見せ付けられても歯向かう無謀な生徒はいなかった。
しかも、酷くでんぷん臭い。
お粥の雨の中、おにぎりと乾パンが飛び交うという食べ物に対する冒涜といえる状況だ。
ぱっと見た感じではもはや泥仕合と化し、とりあえず近くの敵と交戦をするだけであちこちに傷ついた学生が倒れている。
「こりゃ“作業”の内容は決まりだな・・・」
嘆息する部長。
講堂の中は見るも無残に汚れていて手の施しようが無かったのだから仕方がない。
「3チームに分かれて全員で講堂を封鎖。正入り口以外は全て締め切って逃がさず、これ以上馬鹿を増やさせないように。いいな」
指示を受け各自持ち場に移動する部員達。
私は正入り口担当なのでこのままここで待機だ。
「ライリ、お前“不活性”か“強化”の護符あるか?」
と、こちらを向いて部長が聞いてきた。
“不活性”は対象の状態をそのまま固定化する護符で、物に使うことで酸化などの物質の変化を止めることが出来る奴だ。
“強化”は物の強度や性質を高める護符だ。
「両方ありますが、使う規模はどのくらいですか?」
私の能力では規模によっては手が余るのが悲しいかな、現実だ。
「この講堂全域、時間は数分有れば良い。」
どうやら制圧に活用するらしい。
「手持ちの護符の精度だと“不活性”は5分が限度です。“強化”は組成が分からないので耐久性の方がそこまで伸びない上、もっと短いです」
“不活性”に関してはサイズがネックで、“強化”に関してはサイズもそうだが物質の構成を理解していないと使いこなせない。
その上、今使っている護符の魔力強度は普段遣いの廉価品だ。
師匠クラスだとそこそこの素材でも高性能の護符を作れるのだが、私では高性能の護符を作るには高い素材が欠かせない。
私もまだ術師としてはまだまだ未熟だ。
「そうか、なら“不活性”を合図と共に発動させろ。そして全員に通達。突入と共に講堂内では5分間魔導具が発動しなくなる。自己強化などは今のうちにかけておけ。掛け直しにはいったん外に出る必要がある。注意するように」
新たな指示を加える部長。
どうやら、この場に“不活性”の護符を発動させることで魔導具に干渉させて逃亡に魔術を使わせない作戦のようだ。
「でも部長、この作戦は魔導具なしで発動できる術師には効果がないですが・・・」
魔導具を扱う術師には効果があるが、扱わずに発動させれば魔術は使えてしまう。
「ライリ・・・、このご時世に魔導具なしで術を発動できる奴なんてろくに居ないぞ。いまや魔導具は魔術師と切っても切れない間柄だ。お前達師弟みたいな例外も居るが」
こっちをまじまじと見て嘆息する部長。
どうもこのあたりの感性がずれているらしい・・・。
「それはそうと、護符の準備は良いか?」
当然準備は出来ている。
「はい、いつでも行けます」
「よし、発動させろ。そして全員突入!」
私が護符を講堂の入り口の床に貼り付け発動させる横で、大きく息を吸い、中の生徒達に聞こえるよう叫ぶ部長。
「警備部だ!全員私闘禁止規定違反及び構内備品汚損の現行犯で拘束する!おとなしく投降すれば罰則は軽微を考慮するが反抗するようなら相応の罰を持って対処する!」
声が中一面に響き渡り、ピタッと中の喧騒が止まったかにみえたが、空を舞っていたお粥党員がこう叫び返した。
「制裁が怖くてお粥党員が勤まるか!」
そしてまた脇に抱えた水筒からお粥をぶちまけ始めた。
それに続き生徒達が闘争を再開し始めた瞬間、また部長が叫ぶ。
「その意気や良し!だが覚悟しろ!」
中に飛び込んだ部長は近場に落ちていた丸パンをひっつかんでフルスイングでそのお粥党員に投げつけた。
パンを一瞬見失った次の瞬間、党員に避ける動きすら許さずパンは顔に直撃した。
意識を失い地面に落ちる党員を人ごみを突っ切り、駆け寄って受け止める部長。
辺りはまた静寂に包まれた。
「他にこの馬鹿者と同じ末路をたどりたい奴が居たら付き合ってやるぞ?」
有無を言わせぬ凄みのある声が講堂中に響き渡った。
格の違いを見せ付けられても歯向かう無謀な生徒はいなかった。
後始末がひと段落した後、私は気になることがあってまだ講堂にいた。
現場に残って関係各部との連絡をしていた部長がこちらに気づいたらしく声をかけてくる。
「ライリ、何かあったか?」
「ちょっと気になることがありまして」
「ほう、何だ。言ってみろ」
「あのお粥党員達、“不活性”が働いている空間で“浮遊”を使っていませんでしたか?魔導具なしで発動してたんでしょうか・・・」
聞くとちょっと飽きれた顔の部長。
「お前・・・まさか機械系の事もさっぱりなのか?ほら、この靴を見てみろ」
倒れたままの生徒の靴を指差す。
その靴・・・というよりは機械だった。
「な、飛行靴だろ?」
飛行靴とは、文字通り空を飛べる靴だ。
その飛行機能は使用者の意識とリンクして移動補正を行うから思うがままに空を飛べるっていうすごい代物だ。
「あ・・・ホントですね。道理でって・・・これ、すごく高く無かったですか?」
当然ハイテクの塊で値段も相当する。
高校生くらいで買える物だっただろうか・・・?
「高校生が買えるもんじゃないな」
「ですよね・・・」
「まぁ、大体察しは着くんだが・・・」
渋い顔をする部長。
「なにかあるんですか?」
「色々とな・・・この学校は誰の金で動いてると思う?」
渋い顔のまま、こちらに逆に問いをぶつけて来る部長。
「国・・・だけじゃないんですね?」
「あぁ、最近では予算の大半が企業の寄付だ。特にイッポンマツカンパニーが新規企業だが大半を占めてるな」
「そういえば・・・先日の食堂で騒ぎ起こしたの、そこのご令嬢でしたね」
「らしいな。まぁ、あの程度は不祥事に入らんから上にも報告しなかったしあちらさまからも特にクレームも無かったな」
「・・・やっぱり、そういう圧力あるんですか?」
「あぁ、しょっちゅうだな。こっちの方面はよほどのことでなければ、私が許さないがな。教師陣や事務の方は教材指定やら実習のデータの提供要求とか色々あるらしいな」
「だいぶ変わりましたね・・・ここも」
「金が無きゃ充実した教育も難しいし、今は魔術師と企業は切っても切れない間柄だからな。止むを得ない面もあるさ」
ここで言葉をいったん止めてこっちを真顔で見つめてくる。
「問題はこの先なんだが。お前のことはアイツ(師匠)の関係だから信用して話すぞ。当然他言無用だ」
黙ってうなずくと話を続ける部長。
「そういった企業の中に、生徒達に直に接触して試作品を渡す手合いが居る。校則に違反しない限り問題にはしないんだが・・・。
たまにとんでもない物を試す馬鹿共がいる。今回のも恐らくそちら関係だろうな。今回捕まえた粥党員の暴動も前々から高校生にしては資金や使ってるものに色々と不審な点が多かった。良い機会だな」
「ってことは・・・前にもあったんですか?」
「死者が出た事もある。事故という形で処理されるがな・・・」
「そんな!」
「だからこそ、今回はまたとないチャンスだ。ライリ、お前にも色々と頼むとは思うがぬかるなよ」
「はい」
部長の言葉に深くうなずく私。
そう、犠牲を必要とする科学なんて絶対に許してはならない。
「・・・あんなのはもううんざりだ」
部長も去った後、未だ喧騒覚めやらぬ講堂で私は一人呟いた。
現場に残って関係各部との連絡をしていた部長がこちらに気づいたらしく声をかけてくる。
「ライリ、何かあったか?」
「ちょっと気になることがありまして」
「ほう、何だ。言ってみろ」
「あのお粥党員達、“不活性”が働いている空間で“浮遊”を使っていませんでしたか?魔導具なしで発動してたんでしょうか・・・」
聞くとちょっと飽きれた顔の部長。
「お前・・・まさか機械系の事もさっぱりなのか?ほら、この靴を見てみろ」
倒れたままの生徒の靴を指差す。
その靴・・・というよりは機械だった。
「な、飛行靴だろ?」
飛行靴とは、文字通り空を飛べる靴だ。
その飛行機能は使用者の意識とリンクして移動補正を行うから思うがままに空を飛べるっていうすごい代物だ。
「あ・・・ホントですね。道理でって・・・これ、すごく高く無かったですか?」
当然ハイテクの塊で値段も相当する。
高校生くらいで買える物だっただろうか・・・?
「高校生が買えるもんじゃないな」
「ですよね・・・」
「まぁ、大体察しは着くんだが・・・」
渋い顔をする部長。
「なにかあるんですか?」
「色々とな・・・この学校は誰の金で動いてると思う?」
渋い顔のまま、こちらに逆に問いをぶつけて来る部長。
「国・・・だけじゃないんですね?」
「あぁ、最近では予算の大半が企業の寄付だ。特にイッポンマツカンパニーが新規企業だが大半を占めてるな」
「そういえば・・・先日の食堂で騒ぎ起こしたの、そこのご令嬢でしたね」
「らしいな。まぁ、あの程度は不祥事に入らんから上にも報告しなかったしあちらさまからも特にクレームも無かったな」
「・・・やっぱり、そういう圧力あるんですか?」
「あぁ、しょっちゅうだな。こっちの方面はよほどのことでなければ、私が許さないがな。教師陣や事務の方は教材指定やら実習のデータの提供要求とか色々あるらしいな」
「だいぶ変わりましたね・・・ここも」
「金が無きゃ充実した教育も難しいし、今は魔術師と企業は切っても切れない間柄だからな。止むを得ない面もあるさ」
ここで言葉をいったん止めてこっちを真顔で見つめてくる。
「問題はこの先なんだが。お前のことはアイツ(師匠)の関係だから信用して話すぞ。当然他言無用だ」
黙ってうなずくと話を続ける部長。
「そういった企業の中に、生徒達に直に接触して試作品を渡す手合いが居る。校則に違反しない限り問題にはしないんだが・・・。
たまにとんでもない物を試す馬鹿共がいる。今回のも恐らくそちら関係だろうな。今回捕まえた粥党員の暴動も前々から高校生にしては資金や使ってるものに色々と不審な点が多かった。良い機会だな」
「ってことは・・・前にもあったんですか?」
「死者が出た事もある。事故という形で処理されるがな・・・」
「そんな!」
「だからこそ、今回はまたとないチャンスだ。ライリ、お前にも色々と頼むとは思うがぬかるなよ」
「はい」
部長の言葉に深くうなずく私。
そう、犠牲を必要とする科学なんて絶対に許してはならない。
「・・・あんなのはもううんざりだ」
部長も去った後、未だ喧騒覚めやらぬ講堂で私は一人呟いた。
というわけでお粥騒動の話を書いてみたら書けちゃったので投稿してみた。
反省はしていない。
反省はしていない。
さらに追記。あくまで本筋には影響しない話です。
終盤露骨に力尽きてるので加筆やら修正などは予定していますん
本当は展開ちっと違うんだけど書いてたら再起動かけられて消えてorzとかしてますん・・・
終盤露骨に力尽きてるので加筆やら修正などは予定していますん
本当は展開ちっと違うんだけど書いてたら再起動かけられて消えてorzとかしてますん・・・