――いってぇな、畜生…。折れたかね、こりゃ…良くてヒビか。
ズキズキと、頭が痛む。まるで脳内を掻き回されているかのような痛み。身体の前に構えた腕からもひどい痛みが伝わってくる。
ここまでして自分がどうにかするような問題だったのか。巻き込まれるであろう災難に備えて、アレを持ってくれば良かった。ふと脳裏をよぎる自分の魔術具。無茶をしたものだ。他人事のように頭に浮かぶ。簡易であれ、術式を腕に通しておいてこれだ。そう、レーベレヒトは加速された思考の中で思う。
ここまでして自分がどうにかするような問題だったのか。巻き込まれるであろう災難に備えて、アレを持ってくれば良かった。ふと脳裏をよぎる自分の魔術具。無茶をしたものだ。他人事のように頭に浮かぶ。簡易であれ、術式を腕に通しておいてこれだ。そう、レーベレヒトは加速された思考の中で思う。
「…無茶するね、リンも、ヤスも。そっくりだなお前ら」
レーベレヒトが痛みに顔を歪めながらも背後に向けて軽口を叩く。むしろそうすることで気を紛らわせているのか。
リンに遅れること、僅か後。飛び出したリン、ヤスノリを狙う相手。それを見たレーベレヒトは咄嗟に魔術を紡いでいた。神経をエーテルで繋ぎ合わせ、伝達速度を圧倒的に高める、誰に話したことも見せたことも無い、魔術。瞬間的にその魔術を――レーベレヒトはそれを『神経接続』<コネクト>と呼称していたが――発動させ、振り下ろされる剣とリンの間に一息に割り込む。さらにその間に『強化』の術式を受け止める腕、正確には服の袖に使用する。という事をやってのけたのだった。それが無茶だったのだろう。成功率も高くない、成功してもこのひどい頭痛、併せて限界を越えた動きに、足と言わず全身の筋肉も悲鳴をあげている。衝撃が吸収しきれるような魔術でも無く、腕自体も酷く痛む。
剣はそもそも、ライリ自身が魔術を掛けていなければ切れ味などはないものであるが、それはそれとして鉄の塊である。当たり所が悪ければ万が一、と言うことは十分にありうることだった。
リンに遅れること、僅か後。飛び出したリン、ヤスノリを狙う相手。それを見たレーベレヒトは咄嗟に魔術を紡いでいた。神経をエーテルで繋ぎ合わせ、伝達速度を圧倒的に高める、誰に話したことも見せたことも無い、魔術。瞬間的にその魔術を――レーベレヒトはそれを『神経接続』<コネクト>と呼称していたが――発動させ、振り下ろされる剣とリンの間に一息に割り込む。さらにその間に『強化』の術式を受け止める腕、正確には服の袖に使用する。という事をやってのけたのだった。それが無茶だったのだろう。成功率も高くない、成功してもこのひどい頭痛、併せて限界を越えた動きに、足と言わず全身の筋肉も悲鳴をあげている。衝撃が吸収しきれるような魔術でも無く、腕自体も酷く痛む。
剣はそもそも、ライリ自身が魔術を掛けていなければ切れ味などはないものであるが、それはそれとして鉄の塊である。当たり所が悪ければ万が一、と言うことは十分にありうることだった。
背後にヤスノリ。それを庇ったリン。その前にレーベレヒト。そしてレーベレヒトの眼前に構えた腕に、ライリの剣が打ち込まれていた。困惑しているが、しかし憤りの表情のライリ。その表情のまま口を開く。
「…なんだ君達は。なんなんだ!そいつはトモカをねらっ…」
「ちがうよっ!ノリは何もしてないじゃないかっ!!
…ごめんレーベ、つい…」
「リョウ、大丈夫なのかリョウ!……良かったぁ…」
「ちがうよっ!ノリは何もしてないじゃないかっ!!
…ごめんレーベ、つい…」
「リョウ、大丈夫なのかリョウ!……良かったぁ…」
それぞれの聴力も回復してきていた。ライリが反射的に放った言葉に、リンが声をかぶせ。そこに更にヤスノリが声を重ねた。レーベレヒトの後ろではヤスノリがリョウを抱きよせて、ヨカッタヨカッタと五月蝿い。
後で殴る。そんな事を思いながらもレーベレヒトは目を細め、向かい立つライリを睨めつける。痛みに耐える部分もあり、視線は一層険しい。
後で殴る。そんな事を思いながらもレーベレヒトは目を細め、向かい立つライリを睨めつける。痛みに耐える部分もあり、視線は一層険しい。
――ああ。この人は付与術師か。それなら領域が消えたのも分かる。
痛む頭でそんな事を考えながら、レーベレヒトが口を開いた。
「………ライリよぅ。あんた、ちっと冷静になった方がいいんじゃねぇの。
一歩間違えばヤバかったぜ?わかってんだろうな」
「それは…そうだが。だが…」
「言い訳も理由も必要ない。時間がない。良いか、聞けよ。ヤスは違う。スナイパーは別のヤツだ」
「そんな戯言がっ…!だったら彼がなんでこんな所にいたんだ!」
「気持ちはわかるけどよ。信じないなら、俺が相手になるぜ?少なくともただで負ける気はないぞ。
その間に別のスナイパーが病院を狙い撃ち。それで良いのか?」
「………!」
一歩間違えばヤバかったぜ?わかってんだろうな」
「それは…そうだが。だが…」
「言い訳も理由も必要ない。時間がない。良いか、聞けよ。ヤスは違う。スナイパーは別のヤツだ」
「そんな戯言がっ…!だったら彼がなんでこんな所にいたんだ!」
「気持ちはわかるけどよ。信じないなら、俺が相手になるぜ?少なくともただで負ける気はないぞ。
その間に別のスナイパーが病院を狙い撃ち。それで良いのか?」
「………!」
はっとした表情で押し黙る。ライリが改めて、そう告げる少年――レーベレヒトの表情を見れば、付き合いは短いながらも嘘をついているようにも見えなかった。言い負かされたように剣を下ろすライリ。瞬間、たったその間でレーベレヒトは既に次の魔術を構築し、発動していた。左手がほのかに光り、周囲の雰囲気が変わる。それに合わせてライリ自身にかけられた付与魔術が強く揺らいだ気がした。
レーベレヒトは既にライリから視線を外し、周囲を警戒しながらも、続けてライリへと言葉は投げかける。
レーベレヒトは既にライリから視線を外し、周囲を警戒しながらも、続けてライリへと言葉は投げかける。
「そもそも…ハンドガンでどうやってこの山の中から狙撃すんだよ。
頭に血が上りすぎだぜ、ナイトさんよ。ま、ヤスは怪しいからな、勘違いも仕方ないか」
頭に血が上りすぎだぜ、ナイトさんよ。ま、ヤスは怪しいからな、勘違いも仕方ないか」
珍しくも妙に饒舌にレーベレヒトがしゃべる。トモカを守る騎士、とライリのことを呼んだのだろう。揶揄も混ざっている。いつの間にかその場から離れ、飛ばされたハンドガンを二人して探して拾ってきたヤスノリとリンが会話に混ざる。
「おいおい酷い事言われてんね俺。すまん、巻き込むつもりじゃなかったんだけど」
「ノリはもー、まだそんな事言って!後で覚えてお…(もごもご)」
「わっ…ちょ、リョウちょっと静かに…。五月蝿くするのはまずい」
「ノリはもー、まだそんな事言って!後で覚えてお…(もごもご)」
「わっ…ちょ、リョウちょっと静かに…。五月蝿くするのはまずい」
慌てたようにリンの口をヤスノリが塞いだ。
リョウが危なくて、そしてそれが無事で。いつもの顔を見てつい気持ちが緩んでしまったヤスノリではあった、どこから森崎が狙ってくるか、動いてくるか分からない状況は変わらない。表情を変え、ピリピリと周囲を見回す。腕の中でリンがもがいていたが、そんなヤスノリにレーベレヒトが声をかけた。
リョウが危なくて、そしてそれが無事で。いつもの顔を見てつい気持ちが緩んでしまったヤスノリではあった、どこから森崎が狙ってくるか、動いてくるか分からない状況は変わらない。表情を変え、ピリピリと周囲を見回す。腕の中でリンがもがいていたが、そんなヤスノリにレーベレヒトが声をかけた。
「会話くらいなら、大丈夫。周囲5m程、か。その境界で音を、気配を抑えてる。こっちからも向こうのことはわからなくなるが。
あー…5分。効き目は5分だ…な。それであとは、頼む…わ。俺は、もぅ…寝、る…。……ヤス…しっかり決、めろよ…?」
「?…おい、レーベ…?」
あー…5分。効き目は5分だ…な。それであとは、頼む…わ。俺は、もぅ…寝、る…。……ヤス…しっかり決、めろよ…?」
「?…おい、レーベ…?」
途中まで流暢に話していた言葉が、途切れがちに。言うだけ言うとヤスノリの問い掛ける声にも応えず、まるで電池が切れたかのように、まったくの予備動作なしにその場に倒れ込んだ。頭の位置に何も無かったのは運が良かったとしか言いようが無いだろう。ヤスノリが駆け寄って確かると、確かに寝ているだけのようで。何処か苦しげな表情ではあったが、ゆっくりと寝息を立てていた。
なんだコイツは、と思わなくも無かったが、無理をしたのかもしれない。そうも思い。友人に言われたことを為すために力を込めて立ち上がると、ヤスノリは真っ直ぐライリを見た。
なんだコイツは、と思わなくも無かったが、無理をしたのかもしれない。そうも思い。友人に言われたことを為すために力を込めて立ち上がると、ヤスノリは真っ直ぐライリを見た。
「つーわけで、ライリさん。ちょっとくらいなら説明出来そうだ」
要はアレだ。魔法少女共の登場シーンが思い浮かばなかったんだ(言い訳)