「これでよし…と。」
婚約者との通信を終わらせる。
顔を真赤にして怒ってるかと思うと自然に表情が緩む。
顔を真赤にして怒ってるかと思うと自然に表情が緩む。
さて…次はあの人に通信しないと…
メモリーから相手を探していると、突然着信が入る。
おやおや…コチラから通信するつもりだったのに。
メモリーから相手を探していると、突然着信が入る。
おやおや…コチラから通信するつもりだったのに。
通信開始のボタンを押す。少し焦った声で男が話しだす。
『私だ。少しマズい事になった。例の条件をのむ。助けてくれ。』
『分かりました。』
『…頼んだぞ。』
『分かりました。』
『…頼んだぞ。』
そのまま通信が切れる。忙しい人だ。
マズい事といっても、僕の計画通りなんだけどね。
マズい事といっても、僕の計画通りなんだけどね。
とりあえず…助っ人の方々には道中で連絡するとして…
「社長もこんな山奥に家立てなくてもいいのに…」
路肩にとめていたマイマイジェットをしぶしぶ発進させた。
「父上!!」
部屋の戸を開ける。
父上はソファーの上で横になりつつTV鑑賞をしているところだった。
父上はソファーの上で横になりつつTV鑑賞をしているところだった。
「おー…珍しいな。ティオの方から家にくるなんて。」
声が微妙に震えている。
立ち上がった父上の腰にはチャンピオンベルトのようなものが…
立ち上がった父上の腰にはチャンピオンベルトのようなものが…
「なんて格好をしてるんですか!」
「これはすごいんだぞ~巻くだけで腹の周りの筋肉が鍛えられるという。」
「これはすごいんだぞ~巻くだけで腹の周りの筋肉が鍛えられるという。」
おぅおぅ…といいながらコチラに向かってくる。
くんな!キモぃ!
くんな!キモぃ!
「また通販でくだらないものを買ったんですね…」
「ジオメトリック社の最新テクノロジーをこのベルトに集約させた
すばらしいエクササイズ機器なんだぞ。…うぉっ!うぉおおっ!!」
「ジオメトリック社の最新テクノロジーをこのベルトに集約させた
すばらしいエクササイズ機器なんだぞ。…うぉっ!うぉおおっ!!」
父上がソファーにつまづいてベルトのスイッチに触れたらしい。
なにやら悶絶し始めた。
なにやら悶絶し始めた。
その声を聞きつけて、母上が飛び出てくる。
「あなたどうしたのー?」
…母上もか…腰に父上とおそろいのベルトを巻いている。
あと…謎の形をした包丁を手にしている。
あと…謎の形をした包丁を手にしている。
「母上、お久しぶりです。で…なんて格好をしているんです。」
「パパがね2個セットだとお得だからってママの分も買ってくれたの。」
「手にしているのは…」
「コレ?あっ!聞いて聞いてコレねすごいのよー何でも切れる包丁なのー
でねーコレとセットのまな板もすごくってー絶対切れないまな板なのー」
「パパがね2個セットだとお得だからってママの分も買ってくれたの。」
「手にしているのは…」
「コレ?あっ!聞いて聞いてコレねすごいのよー何でも切れる包丁なのー
でねーコレとセットのまな板もすごくってー絶対切れないまな板なのー」
…それ…いや何でもない…
「は…はぁ…はぁ…で…なにか…用なのかい…」
「父上にお聞きしたいことがあります。ベルト…外して聞いていただけますか。」
「父上にお聞きしたいことがあります。ベルト…外して聞いていただけますか。」
ベルトをしぶしぶ外し、ローテーブルに置いた瞬間。
頭の悪くなりそうな音楽とともに甲高いおっさんの声がテレビから流れる。
頭の悪くなりそうな音楽とともに甲高いおっさんの声がテレビから流れる。
『本日の目玉商品!
私どもコスモネットもりたでもたいへんご好評いただいております、
健康食品。ニュウトウキングのご紹介です。』
私どもコスモネットもりたでもたいへんご好評いただいております、
健康食品。ニュウトウキングのご紹介です。』
「おぉおおおお!!!」
ブチ。
テレビの電源を切る。
「おぉう…」
「だめよーパパーティオちゃんのお話ちゃんときかなきゃー」
「だが…ニュウトウキングはいつも品切れに…」
「父上!!」
「だめよーパパーティオちゃんのお話ちゃんときかなきゃー」
「だが…ニュウトウキングはいつも品切れに…」
「父上!!」
我が親ながら情けない…飼い主に怒られた犬の様な顔になっている。
「もー…私が注文しておくからー」
そう言って母上は奥の部屋へ下がっていった。
「む…むぅ…で…聞きたい事ってなんだい。」
やっと話ができる…
「父上が勝手に決めた婚約者、ヤマダのことです。あれは信用できる男なのですか!」
「仕事上では問題ないと思うがね。」
「最近ジオ社と不審な動きをしているようですが。」
「あぁ…あれは容認している。なんだ会社の心配をしてくれていたのか?ティオは。」
「…別に…ただアイツーが無くなるのは個人的に困るだけです。」
「しかしアイツーも変に成長してしまっている。このままではMMIのイメージにまで関わってくる。
そこでヤマダ君がうまく動いてくれているわけだ。」
「ヤマダがうまくやった場合、見返りは…」
「次期社長の地位が妥当だろう。ティオと結婚もするし。」
「私は…あの男と結婚する気はないのですが…」
「仕事上では問題ないと思うがね。」
「最近ジオ社と不審な動きをしているようですが。」
「あぁ…あれは容認している。なんだ会社の心配をしてくれていたのか?ティオは。」
「…別に…ただアイツーが無くなるのは個人的に困るだけです。」
「しかしアイツーも変に成長してしまっている。このままではMMIのイメージにまで関わってくる。
そこでヤマダ君がうまく動いてくれているわけだ。」
「ヤマダがうまくやった場合、見返りは…」
「次期社長の地位が妥当だろう。ティオと結婚もするし。」
「私は…あの男と結婚する気はないのですが…」
するとそれまで真顔だった父上が豹変する…
「えーきめちゃったのにー…あんなにいい男いないよー?イケメンだしー頭いいしー気が利くしー」
「わ…私の意思は尊重されないんですか!」
「じゃあティオ…他に好きな男いるのか?」
「い…いません。」
「じゃあいいじゃん!」
「っていうか!私まだ学生ですし!!」
「関係ないよーパパはママと学生結婚したしー」
「それは相思相愛だったからいいじゃないですか!!」
「えーティオ、ヤマダ君のこと嫌いなのー?」
「嫌いです!手は早いし!!」
「ん…?手だしてきたのかーヤマダ君やるなぁ!!」
「わ…私の意思は尊重されないんですか!」
「じゃあティオ…他に好きな男いるのか?」
「い…いません。」
「じゃあいいじゃん!」
「っていうか!私まだ学生ですし!!」
「関係ないよーパパはママと学生結婚したしー」
「それは相思相愛だったからいいじゃないですか!!」
「えーティオ、ヤマダ君のこと嫌いなのー?」
「嫌いです!手は早いし!!」
「ん…?手だしてきたのかーヤマダ君やるなぁ!!」
何を関心してるんだこの父親は!娘の貞操とか心配しないのかー!!!
「う…うぅうううう!!!!(ブチッ」
ローテーブルに置かれたベルトを父上に投げつける。
「ちょ!」
「私はヤマダが嫌いです!!結婚もしません!!!」
「私はヤマダが嫌いです!!結婚もしません!!!」
次はテレビのリモコンを投げつける。
が…コントロールが定まらず父上の方でなくテレビのほうに飛んでいく。
が…コントロールが定まらず父上の方でなくテレビのほうに飛んでいく。
ガシャーン!
テレビの液晶が割れる。
「わー!!!!ティオなにをするんだーッ!!」
娘の意思を尊重しないばか父上はくたばれ!爆発しろ!!
「まだローンがのこってるのにっ!!」
知るか!っていうかお金持ってる癖になんでローン組んでるんだ!
あたりを見回して投げるものを探す。
むっ!
壁に立てかけてある棒に手をかける。
あたりを見回して投げるものを探す。
むっ!
壁に立てかけてある棒に手をかける。
「わー!!!!それはママの高枝切りバサミ!!!」
よく見ると先に…何これハサミか?
どう見ても棒の先に蟹のマスコットが付いてるようにしか見えないのだが…
まぁいい…このおっさんを懲らしめねばならん。
父上に向かって振りおろす。
すると、蟹のマスコットからビームサーベルの様な刃が現れる。
どう見ても棒の先に蟹のマスコットが付いてるようにしか見えないのだが…
まぁいい…このおっさんを懲らしめねばならん。
父上に向かって振りおろす。
すると、蟹のマスコットからビームサーベルの様な刃が現れる。
「わー!!!!ちょっとまてーーー!!」
ズバーーーン!
ソファーが真っ二つになる。
「ちょ…それもローンがーーーーー!!」
社長なら一括で買え!!
ズバーン!!
今度はローテーブルが真っ二つに。
「ハァ…ハァ…」
「テ…ティオ落ち着け!!話せばわかる!!!」
「テ…ティオ落ち着け!!話せばわかる!!!」
話しても無駄だったろうがーーー!
くたばれぇええええええ!!
くたばれぇええええええ!!
ピンポーン。
突然、インターフォンのチャイムが鳴る。
「はいはーい。あらっ。」
「夜分遅くすみません。社長に直接あって報告することありまして…」
「いいのよ~。相変わらずイケメンねっ。フフフッ」
「夜分遅くすみません。社長に直接あって報告することありまして…」
「いいのよ~。相変わらずイケメンねっ。フフフッ」
客がきたらしい。
パタパタと足音が近づく。
パタパタと足音が近づく。
しばらくして現れたのは…件のヤマダだった。
「え…?」
「まぁ…」
「まぁ…」
真っ二つにされた家具があちらこちらに転がり、
半裸の上司が半ケツで壁に張り付いてる。
そして、その娘がファンシーな凶器を振りかざしている。
半裸の上司が半ケツで壁に張り付いてる。
そして、その娘がファンシーな凶器を振りかざしている。
この状況で言葉を失うのも無理はない。
「貴様…何のために現れた!!」
「ヤマダ君助けてぇ…」
「ヤマダ君助けてぇ…」
半裸の上司はコソコソとヤマダの方へ移動する。
「ティオがヤマダ君と結婚したくないっていうんだ。」
「そうなんですか。」
「そうなんですか。」
ヤマダはいたって冷静だ。
「僕はティオちゃんと結婚したいんだけどなぁ…」
「次期社長が目当ての癖に!」
「否定はしないよ。僕は努力しているし、それに対しての地位も欲しいからね。
…でも、ティオちゃんが僕の好みっていうのは嬉しい誤算っていうか…」
「わ…私は貴方が嫌いだわ…」
「好きになってもらえるように努力するよ。」
「で…でもっ!」
「次期社長が目当ての癖に!」
「否定はしないよ。僕は努力しているし、それに対しての地位も欲しいからね。
…でも、ティオちゃんが僕の好みっていうのは嬉しい誤算っていうか…」
「わ…私は貴方が嫌いだわ…」
「好きになってもらえるように努力するよ。」
「で…でもっ!」
ま…まただわ…こいつのペースにのせられちゃ…
すると、父上がポンと手を打つ。
「うん。決めた。ティオ。ヤマダ君と来月結婚しなさい。」
耳を疑う。今父上…なんて言った。
「いや、社長…」
「ヤマダ君は黙ってなさい。ティオ来月だからな。」
「ヤマダ君は黙ってなさい。ティオ来月だからな。」
どうしてこうなるの!!
「いやぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」
一方ベルガー。
『…大大大人気のニュートーキングの次はコチラも大大大好評いただいております。
ワイヤレスカラオケ、ワンマンショーのご紹介です。』
ワイヤレスカラオケ、ワンマンショーのご紹介です。』
暇つぶしに見ていた通販番組でカラオケマイクの紹介が始まった。
このコスモネットもりたの通販番組だけは他の通販番組と違って
主に商品紹介をする社長の語りがうまいのでついつい観てしまう。
このコスモネットもりたの通販番組だけは他の通販番組と違って
主に商品紹介をする社長の語りがうまいのでついつい観てしまう。
『なんと今回収録曲数がどんと増えて69696969曲収録!!
そして新しいお色もご用意いたしました!従来のブラックに加え、
ゴールドとシルバー。3色からお選びいただきます!』
そして新しいお色もご用意いたしました!従来のブラックに加え、
ゴールドとシルバー。3色からお選びいただきます!』
すごいな…69696969曲って。
カラオケに行くよりこのマイクの方が曲数多いんじゃないだろうか…
しかもこの色。メッキとはいえ安物っぽくない高級感がある。
カラオケに行くよりこのマイクの方が曲数多いんじゃないだろうか…
しかもこの色。メッキとはいえ安物っぽくない高級感がある。
『お手持ちの画面につなぐだけ!どこでもいつでもカラオケがお楽しみいただけます!』
いつでもどこでもかー…
『このメモリーをセットすると、レコーダーにもなるんですね!これは標準でお付けいたします!』
レコーダーにもなってしまうのかー…
『お値段は20周年大感謝祭価格。
通常コスモネット価格12000円のところ大感謝祭ですからね
ぐんとお値引きいたしまして…』
通常コスモネット価格12000円のところ大感謝祭ですからね
ぐんとお値引きいたしまして…』
ババン!
『6980円!6980円でのご提供でございます!1万きりました!!』
「安い!!!」
ピコピコ…
「もしもし…放送みたんですけど…ええ今やってた…ゴールド1つ…はい…はいはい…分割で…」
注文してしまった!
カラオケしないけど!
今日バイト代はいったし…いいよね!
カラオケしないけど!
今日バイト代はいったし…いいよね!