右野side

本当に良いのだろうか。あの右京とかいうやつ。入学式から何かと私の前に現れ自らの存在を懸命に示そうとしていた。
あいつは……右京は、本当はいいやつなんじゃないか?彼には私たちとはどこか違う所がある。
いつだって彼は自分の生きる道を探っていた。例え誰にも認められなくたって………。
嗚呼、私はなんて愚かなのだろうか?
彼が早く居なくなればと思ったことだってある。この罪深き私にどうかお許しを……
彼は自らの罪を認める。そして償う。
平成のイエスキリスト、まさに彼なり。

今私にできること。……そう、彼にならって罪を認め、そして彼を助けることではないか。

右野『……あーあー!』

言葉にならない心の叫び。どうか少しでいいから、右京に届け。

右谷『……ど、どうしたんですか!』

生徒たちにこの痛みはわからないだろう。そして、知らない方が皆には幸せなのかもしれない。

右野『……いや、何でもない。それより今日は楽しもうよ!』

一瞬何かが身体の底から込み上がって、視界をぼやけさせた。このひろい草原にいる馬は小さいなあ。なんてちっぽけなのだろう。

小澤『……先生?もうみんな行っちゃったよ!』

振り返るとすでに一行は居なかった。なんだか地球にひとり取り残されたみたいだ。
小澤と私はゆっくりと歩きながらも沈黙が続いた。どちらからか覚えてないが自然と始まる会話。

小澤『あのさー、先生は捕まった……右京だっけ?どう思う?』

少しうつむき加減でしかし真っ直ぐな瞳をみせて言う。

右野『んー、はっきり喋んないし言ってること意味わかんないし、大きいしメガネだし…でもそれは彼の表面上でしかない。』

小澤『え?』

右野『本当は……もっとすごいヒト何じゃないかなーって。私だったらあそこまで自分を貫けない。でも彼は現実を受け入れ、立ち向かっている。』

小澤にわかってもらおうとは思わなかったが、誰かに聞いてもらいたかった。

小澤『……だよね………やっぱそうだよね!』

右野『……わかるのか、彼を?』

だって…と言いよどんだあと静かに口ずさんだ。

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最終更新:2012年01月29日 09:30