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茉麻には日課があつた。 身體を湯に首まで浸からせてから、兩脚を前方に向かつて突き出す動作。 でつぷりと膏を蓄へた臀部を兩手で支へる事が重要だ。 沈むか沈まないかの境で、息を吐くたび脣が上下し、熱氣が呼吸器を占據する。 10分も續けてゐれば壓迫感を覺え、やがて意識は朦朧とする。 さうなつてくると、茉麻はさつと浴槽を飛び出し、脱衣所の籠に手を突つ込み、 敢へて洗はないまゝ二三日保存してゐた熊井の下著を鷲?みに、己の顏面へ叩きつける。 死の淵から生還した瞬間の、研ぎ澄まされた五感で、汗や尿のすゑたにほひを貪るのだ。 熱で支配されてゐた呼吸器に、排泄された體液の殘り香が驅け巡る。 僅かに痙攣を覺えながら、茉麻のさゝやかな愉悅は幕を下ろした。 茉麻は、我に返ると、誰か見てゐないか周圍を確認し、湯船へ戻つた。 午後11時頃、熊井が歸宅した。

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