聖なる水の都、アトランティス。 アトランティスは、素晴らしい都市だった。 私が王となる遥かいにしえより、人々は大地の精霊と力を合わせ、自然と人が調和した、実り豊かな国を作り上げた。 そこには、質素だが無理もなく、欲もなく満ち足りた生活があった。 だが、ある時。 黒い巨大な竜が大地より生まれ、太陽を飲み込み……オレイカルコスが生まれた。 オレイカルコスは、この星が我々人類に与えた宝物。 最初は、誰しもがそう思った。 何故ならそれは、エネルギー、医療、工業製品、あらゆる物に利用できる奇跡の物質だったのだ。 私が王となる頃には、アトランティスの文明は、高度に発展を遂げていた。 しかし、気付かなかった。 私も、私の父、アイアンハートも。 静かに、ゆっくりと、人々の心が腐り始めていることに。 そうだ。安易に欲望を満たしてしまえる環境。 そこにこそ、人が拭えぬ心の闇の温床がある。 それは今の社会とよく似ている。 世界は物質であふれ、あらゆる便利さと引き換えに、人は大地と精霊の恩恵を忘れた。 人は真実を見抜く想像力と、豊かだった感情を失ったのだ。 驕った人間ほど残酷な生き物はない。 争いは絶えず、そして異変は突然訪れた。 イオレ、どうした? イオレ! ッ!? 何故だ?何故こんな事に? あぁ…! うわああぁぁーー!! っ……! 私はすべてを悟った。 オレイカルコスは、奇跡の物質などではなかったのだ。 それは人間の心の闇を増幅し、その内部に取り込んで新しい生命を生み出していた。 オレイカルコスとは、この星が、我々人間を試すために作り出した呪いの物質。 人間が自らの心の闇によって、自らを滅ぼす。 オレイカルコスとは、そういう物質だったのだよ。 もう手遅れですよ父上。 今更オレイカルコスを捨てたところで、人は元には戻れない! 父上。私は悟ったのです。 私はオレイカルコスの中に、この星の声を聞いた。 なぜ人間だけが、この地上で、これだけの優れた知恵を、想像力を与えられたのです? それは、人こそが、この星を守る存在となるためですよ。 地球はオレイカルコスで人を試した。だが結果は不合格だった。 そこで地球は私に使命を与えた。 オレイカルコスの神を降臨させ、腐敗した人間どもを滅ぼし、 新しい人間を作り上げる、という使命をね。 そして私は、そのための力を授かった。 オレイカルコスの神を降臨させるには、多くの魂がいる。 フフフフフフ…。 いにしえより伝わる精霊の儀式に従い、我らが星に、新たな神を降臨させるのだ! フフフフ…ハァッハッハッハッハ……!! 愚かにも父たちは精霊界、お前たちの言うデュエルモンスターズ界の力を借りて私に挑み、そして滅んだ。 死の間際、父は精霊界への扉を封印し、 残された精霊たちの魂は世界のあらゆる場所へと散っていった。 私は待った。1万年という長い年月を。 だが世界は再び腐敗し、人間は過ちを繰り返し続けている。 私は再び、オレイカルコスの神を降臨させ、この地上とデュエルモンスターズ界を一緒に滅ぼす、そう決めたのだ。 瀬人、名も無きファラオ。 これより我が力を、身をもって体験するが良い。 フフフフフ…ハッハッハッハッハ!!! オレイカルコス・キュトラーの特殊能力。 それはモンスターとのバトルによって発生するダメージをゼロにする力。 復活せよ!オレイカルコス・ギガース! 名も無きファラオ、瀬人。 無駄だ。お前たちに私を倒す事は出来ない。 私のターン! 私は、オレイカルコス・ギガースの効果により新たなカードをドローする事は出来ない。 しかし、手札からこのカードを発動する。 漆黒より生まれし、第二の力! オレイカルコス・デウテロス!! フフフフ…。