※虐めないでゆっくりが自滅していきます
 この大根はルナティック仕様です



大根の本気



「だれもいないよ、ゆっくりするならいまのうちだよ!!」

わらわらと沸いて出るゆっくり達。
お目当ては畑一杯に広がる大根、一面の銀世界に映える緑が眩しいくらいに美しい。
その寒さにも負けない瑞々しく肥えた体は、人間から見ても実に旨そうである。

「これでおなかいっぱいだね!」
「これだけあればおちびちゃんたちもはるまでぐっすりできるね!」

大根を前に小躍りをするゆっくり達、体全身を使って喜びを表しているようだ。
そうしてひとしきり喜んで一匹のまりさが大根に向かう。久方ぶりのご馳走に辛抱堪らんといった具合だ。

「いっただきまーす♪」

あー・・・ガキョン

「ふびゃあああああああ!!!??まひはのはばあああああああ!!!!!」
「まりさ!?どうしたの!!?」

食いついたまりさの口から砕けた歯がボロボロと零れ落ちる。夜間の冷え込みで凍りついた大根は恐ろしく硬いのだ。
どんくらい硬いかと言うと、釘が打てるどころか釘が潰れるくらいである。人間だって食べられたものじゃない。

「ふっびいいいいぃぃぃぃ!!!ひゃいぎょんのぐべにいいいぃぃぃ!!!!!」

ここで止めておけば良かったものの、すっかりトサカに来たまりさは只ガムシャラに大根にむしゃぶりつく。
もっとも噛み付く歯はとうに無いので、まるで大きな飴にするように舐りついているわけなのだが。
だがそんなことをしたって腹に溜まるはずもなく、まりさは一旦離れようとした。だがその時異変は起こった。

「・・・んぶべ!!?ふっふいへほへはいいいいぃぃぃぃ!!!!」
「・・・まりさ、さっきからなにしてるの?ばかなの?しぬの?」
「ほんはほほいっへはいへ、ははふはふへへほおおおおぉぉぉぉ!!!」

まりさは口が凍り付いて離れなくなってしまった。この行動には周りのゆっくり達も失笑せざるをえない。
しばし呆れ眼で見つめていたものの、まりさの尋常でない叫びに促されてようやく救出ははじまった。
まりさの後ろ髪を咥えてゆーゆーとひっぱる。その度にまりさの顔は不細工に歪み、大根との接着面はミチミチと嫌な音を立てる。

「ふぼぼぼぼぼぼぼ!!!??ひびべばうううぅぅぅぅ!!!」
「「「ゆっくりがまんしてね!!」」」

まりさの静止の声を無視して引き続けるゆっくり達、そして

「「「ゆーえす!ゆー 『ボゴォッ「ふべんばあぁっ!!!??」』 えす!」」」

音を立て剥がれるまりさ、宙を舞う大根、そして口々に騒ぐゆっくり。

「ゆふん!もうまりさはばかなことしないでね!わかったられいむにありがとうをいって『ザボン』

れいむはそこまで言って言葉を飲み込んだ、その口からは大きな大根が威風堂々と生えていた。

「は・・・は・・・はんらああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
「「「れ、れいむー!!!!!」」」

抜けた大根が直撃したれいむは、まるで杭打ちのように地面に縫い縛られた。
何が起こったか解らないゆっくり達に混乱が広がっていく、そんな中ある一匹がこう叫んだ。

「・・・ま、まりさだ!まりさがばかなことするからこんなことになったんだよ!!」
「そ、そうだよ!!まりさがわるいんだよ!!ばかなまりさははやくあやまってね!!」

未だ突っ伏して動かないまりさに詰め寄るゆっくり達、ところが幾ら呼びかけてもうんともすんとも応えない。

「だまってないでなんとかいってね!!れいむたちがこまってるんだよ!?」

痺れを切らし髪を咥えて正面を向かせる。そうして現れたその顔には・・・口が無かった。

「・・・・・ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!」
「「「ゆっびゃあああああああああああ!!!!!???」」」
「どうなっでるのおおおぉぉぉぉ!!?」
「ぐろい!!おもにかおがぐろいいいぃぃぃぃ!!」
「いやあああぁぁぁぁ!!こっちむかないでええぇぇぇぇ!!」

取り乱す群れにまりさは言葉を搾り出す。

「やめへっへいっはほへ・・・いはひっへいっはほへ・・・えぇ・・・えぇ・・・ええええぇぇぇぇぇ!!!!!」
「「「ぼびいいいぃぃぃぃぃぃぎぎぎぎぎぎぎ!!!!!」」」

顔の穴から呪詛を吐き出すまりさ、その形相には悪鬼羅刹も尻込みしそうだ。

「べっばい・・・べっばいゆぶばばびいいぃぃぃぃぃ!!!!!ぶばばばばばば!!!??」

それだけ言うとまりさは餡子を撒き散らし力尽きる。あまりの出来事に餡子脳が凍りつく一同。

「れ、れいむはやめようっていったのに!!」
「なにいってるの!?れいむもうるさいよっていってたじゃない!!」
「ちがうよ!!むりやりひっぱったまりさがわるいんでしょ!!?」

こうして始まる擦り付け合い、だがそれも長くは続かない。
この騒ぎを止めたのは縫い付けられているれいむの一声だった。

「ゆっくじじないでだずげでぇ・・・」
「れ、れいむ!いまたすけるからね!!」

言い争いをしている場合ではない。慌ててれいむに刺さった大根を咥えて引き始める。

「いだいいだいいだいいいいいぃぃぃぃぃ!!!??」

だが引くたびにれいむが痛がり作業は進まない。
無理矢理引き抜こうかとも考えたが先程のまりさの二の足を踏むわけにも行かず、ついには膠着状態に入り込んだ。
そうしてニッチもサッチも行かなくなったところで状況は更なる悪化をはじめる。

「ゆぅ・・・なんだかとってもさむいよ・・・」

「ゆが・・・なんだかからだのなかがじゃりじゃりするよ・・・」

「あが!?あがががががががががが!!!??」
「れいむ!!しっかりしてね!?しっかりしてね!?」

涙も乾くころ、れいむの体に変化が現れ始めた。
はじめはれいむの言っていることが解らなかった周りのゆっくりにも、今ではそれがはっきりわかる。
なにやられいむの体がパキパキと音を立てて膨らんで来ていたのだ。とはいえ打つ手の無いゆっくり達はただただ見守るだけである。

「んぎ!!?んぎぎぎぎっぎぎいっぎぎいぎぎっぎええええええええ!!!!!!」

一声叫んだ次の瞬間、ゆっくりとれいむの表面に亀裂が走る。
ミチリメチリと音をたて裂けていく皮膚、そしてその奥から覗く餡子はなにやらウネウネと蠢いている。
マスクメロンのように網目が全身を覆った頃、なんと餡子が競り出してきたではないか。

ギチ・・・ギチ・・・
「あぼっ・・・・・がどっ・・・・・」
「う、う、うぼええええええぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇ!!!!」

餡子は傷口にたかる蛆の如く、にちょりにちょりとゆっくり這い回る。
そのあまりのおぞましさに群れは嘔吐の嵐、ゲロがゲロを呼ぶ貰いゲロ祭りの開催である。

そうしてひとしきり肌を覆ったところで、餡子は天に向かってそびえ始めた。
先を尖らせながら我先にと空を目指すその光景は、おぞましさの中に何やら神秘的な美しさを秘めていた。
この一連の大騒動の正体は霜柱であった。本来なら餡子が凍るようなことなどそうないのだが、冷凍大根により内から冷えついたこと。
また、餌の不足により飢えをしのぐために雪を食べて体内の水分が増えていたことも災いした。
この自然の芸術も明け方にはフィナーレを向かえ、仕上げに両目からツララが逆立ちしたところで「もっとゆっくりしたかった」
の〆の言葉を残して、れいむは静かに息絶えた。結局れいむを救えず、群れは涙に包まれた。


「で、お前らは何で俺の畑で泣いてるわけよ。」
「ゆわああああああああ!!ごべんなざいいいぃぃぃぃ!!!」
「「「ごべんなざいいいいいぃぃぃぃぃ!!!」」」

朝一に畑で男が目にしたものは、何やら巨大なウニの周りでゆっくりが泣き叫んでいるという珍妙な光景であった。
取りあえず事情を聞くと、どうやら餌が尽きて畑に来たが何やら上手くいかなかったらしい。
泣きじゃくりながら話すもので良くは解らなかったが、とりあえず大根が欲しいようなので10本ばかりくれてやることにした。

「よくわからんがコレが欲しいのか? まぁ売りもんじゃないし、ちと汚いのでよければやるけど・・・」
「ゆゆ!!?いいの!!!??」
「その変わりに無闇に畑を荒らすなよ。あともう泣き止めよ。」
「おにいざん!!ありがどうございまずうううぅぅぅぅ!!!」
「「「ございまずうううぅぅぅぅ!!!」」」

そうしてゆっくりを見送った男は朝食様に数本の大根を手に家へと帰った。


「「「ゆっくりかえってきたよ!!」」」
「「「おきゃえりなしゃい!!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」

大根を咥えての凱旋に子ゆっくり達が応える。
失ったものは多かったが、それに見合うだけの収穫はあった。
大根を見て大はしゃぎする子供達をなだめながら大根を広げていく。
そうして

「「「いっただっきまーす!!」」」
「「「いっちゃりゃっきまーしゅ!!!」」」




「あー、キタキタキタキタキタ!! くうぅぅぅ・・・ こいつは効くぜぇ!!」

そう言いながら、男は顔を真っ赤にして大根おろしをかき込んで行く。
男の育てていた大根は『おろし大根』、あまりの辛さに市場に出回らないため自前で育てている一品である。

「はぁぁぁ・・・、やっぱ冬はこれだな。目も覚めて体もポカポカだぜ!!」

そうして男の1日が始まりを告げる。
同時にゆっくりの群れが終わりを告げた。



終わり
作者・ムクドリ(´ω`)の人



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最終更新:2022年04月15日 23:11