一匹のゆっくりを捕まえてきた。

野生で育ったそいつは、頬は泥や傷で薄汚れ
虫やら野草を食べていたであろう口元には何やら分からない食べ残しが付いている。
獣道しかない山中で 逞しく成体サイズまで生き残った底面―すなわち足は
生来の柔らかさはなく 厚みを感じるほどに固く ザラザラとした手触りをして真っ黒になっている。

ショートカットの髪には 皮脂の香りが漂い ツヤツヤにテカっており
その油髪を束ね飾っているのが赤いリボンは化学繊維というより まるで柔らかい爪を紡いだようだ。
前面には明らかに普通の動物より大きい双眸と だらしない口元から涎が吹いている。

私は分厚い手袋をしてリボンのついた―――れいむ種と呼ばれるゆっくりを自分の顔の高さまで持ち上げ目線を合わせたみた。

が、バレーボールより大きい塊を非力な自分が支え続けられるわけもなく 直ぐに膝まで下げて地面にほおった。
小さい悲鳴の後、10kg近い肉塊が天ぷらを揚げる下準備のように、ほこりと砂利を体につけて数メートル転がっていった。

捕まえてきた時より更に汚くなってしまったれいむを拾い上げ切り株に乗せる。
逃げられたり暴れて また元に戻すのも面倒なので五寸釘を懐から取り出してれいむの底面をつねり延ばしては四箇所を切り株に固定した。
伸ばすと言っても野生種の肌の硬さでは柔軟性も低いので、釘を斜めにして切り株打ちつけたような感じだ。
釘と肌のスキマからは茶色い体液が染みているが、この程度では死亡することもないだろう。




さて



『こんにちは』


「い゛た゛い゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!!!」
「も゛う゛ や゛へ゛て゛ぇ く゛た゛さ゛い゛ぃぃぃぃぃいい゛!!!」
「れ゛い゛む゛は なにも゛ わ゛るい゛ごど じでないよ゛ぉ゛お゛お゛お゛お!!!」
「ゆ゛っ゛く゛り゛し゛た゛ぃいい゛い゛い゛よ゛お゛お゛!!!!」

腰に撒いてあった粘着生のある布巻き(テープ)を 適量に伸ばして切り取り、れいむの口をぴったりとそれで塞いだ。
実は先ほどから澄み切った空に れいむの悲鳴がサイレンのように木霊していたのだが
もはや聞き慣れてしまい精神状態の混濁具合に気付く事が出来なかった。

まぁ会話はいいか

手始めに涙を流しつつ充血した眼球を触ってみる。
綺麗な手でも激痛がする筈の真っ白な白目に
さっきかられいむを弄繰り回したせいで、土汚れがびっしりついた指先を宛がう。

れいむの眼球が直ぐに小刻みに震えだし、まぶたが強く閉じられる。
瞼(まぶた)の筋肉に人間の指が負けるはずもなく、私の指先は深く眼孔と眼球の間を滑り込んで行く。
眼球は痛みと異常事態から回避しようとギョロギョロと痙攣を繰り返しているが
そもそも制限された空間内で回転運動しか出来ず、無力な反抗を続けた結果 瞼のスキマから尋常じゃない量の涙が垂れていた。
埃ならそれで対処できただろうが巨大な異物に眼孔は犯されて、ついに私の爪先は奥まで達することが出来た。
わざとゆっくりと挿入するに至って、れいむの塞がれた口からは虫の羽音の様にテープを振動させた悲鳴が鳴り止まなかった。

同様の手順で親指もすべり込ませて眼球を二本の指で囲みつまむことが出来た。
自然界ではありえない身体の異常に、釘を打ち付けた肌から大量の体液が染み出して切り株を湿らせている。
本来眼球しか格納することが出来ない空間に分厚い手袋をした指が二本も挿入され その圧力から眼球は楕円に変形してしまっている。
未だに痙攣し続けているゆで卵のような物体をそのまま手前に引いてみると 手ごたえがあり白い目玉全体を露出させる事は叶わなかった。

そうか

私は視界機能について眼球が概念的な部品ではないことを確認すると
指を差し込んだのとは反対の手で、眼孔の穴に沿うように人差し指と親指で作った輪をあてがった。
残った指でれいむ自体をしっかり支え、再び眼球の摘出を行う。
やや捻るように力を込めて引くと、何かが切断されたような手ごたえを感じた後
あっさりと眼球を手のひらに乗せることが出来た。

大量ににじみ出ていた涙のおかげで ゆで卵は多少潰れてしまっているが、複雑な線が集まった黒目と血走った白目が
もう何も見つめることはないのに私に何かを訴えかけている。
一番奥にあった部位には 細いしらたきようなスジが垂れ下がっており
私はそれを口に含んで丹念に舌で転がしてみたが 特に味がないので直ぐにしゃぶるのをやめた。

取り出した目玉をれいむに見せびらかして目と目で通じ合わせてやったが
どうもコレが自分のモノだと認識していないらしく先ほどとは違う種類の悲鳴を上げ、くぐもった振動音が口から漏れている。

『これは君の目玉なんだ。綺麗だね。でも美味しくないんだ。当たり前だよね。これはもう元に戻せないんだ。それにしても綺麗な眼だね。
 君の体は薄汚れているけど、とても澄んだ瞳をしている。きっとお仲間からも賞賛されていたんじゃないだろうか?
 優れたものをもってこの世を生きているなんて羨ましいよ。本当に良かったね』


しゃべりながら私は眼球を地面に置き、手の腹でくるくるくるくるくるくると転がした。
瞬く間に表面の湿気のせいで目玉は砂を付着させ 土団子になり水分はまとわり付いた砂に吸われいき少ししぼんでしまった。

膝を丸めて作業に没頭していた私は、立ち上がり背筋を伸ばすと 土団子を片足のつま先で少し踏んでみた。
すこし体重をかけると、眼球だった物体から健気な反抗の弾力を感じるが
とりあえず残った方の足を腿上げてして 団子を踏んだつま先に全体重を乗せてみた。

真上から踏まれたわけでもない団子は側面から来る重圧に簡単にひしゃげ
次第に上がる圧力に屈服し潰れた反対側の面が裂けると 透明な液体が地面に広がった。

本来出会う必要のない眼球内の液体と乾いた土は 無駄に混じり合わさり染みを作り始めたが
私は両手で砂を掃き集めて眼球と染みをすっぽりと覆った。
まるで小さな墓のような砂の丘をれいむは見つめていたが私が残った片方の白い瞳に目線を向け微笑むと軽く体を痙攣させた。

もはや悲鳴も上げないれいむだったが、引き抜かれた眼孔から少量の体液を涙と共に滴らせ
体の下部、顎のあたる部分から勢いよく体液が噴出した。
先ほどまでは確認できなかった豆粒のような穴が出現しており
そこから粘性の低い薄い茶色の液体が 非常に強い水圧のせいで四方飛び散らせて体外へ放出している。
30秒ほど続いた放水の最後は、細かいビクンビクンとした痙攣にあわせて少量の体液がちびり出ており
切り株の周りは、れいむの出した体液で水浸しになり たぶん暖かったのであろうか蒸発と気化を始めている。
生暖かく臭気をともなった風が私にまとわり付き始めたので、マスクをつける事にした。

失禁したれいむに再び近寄ると、私は今回用意してい鞄を開けて銀色の道具を取り出した。
それは衣服の裁断用に使うハサミで、厚く20cmほどある両刃は切るだけでもなく刺すだけでも危険なものだ。
日差しに無機質な鉄が痛く光を反射させ、それをれいむの残った眼にちらつかせて見た。


次は何をしようか?


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最終更新:2022年05月18日 21:01