万能お兄さんは、ある閉鎖的な村で生まれた。その村は、マツタケがたくさん取れることで非常に有名だった。だが、そのおかげで
マツタケの利益を独占したいために、よそとの交流を非常に限定し、かなり閉鎖的な村であったことも有名だった。なにからなにまで閉鎖的で、
外界とのかかわりを一切取ろうとしない所だったが、彼と家族は幸せな生活を送っていた。

父はマツタケ取りの名人で、村の皆も知らない秘密の場所でマツタケを採ってきて、おかげで村一番の金持ちだった。
だが、マツタケを独り占めすることなく、村の皆にきちんと分けていた。
マツタケを売った金のおかげで金持ちだったが、それを一切鼻にかけず、村人が苦しいときは助ける優しい父だった。
妹はとても明るくて、亡くなった母に似て優しい妹だった。母は妹を産んですぐに他界した。

村の近くにはゆっくりがいて、村を襲うこともたびたびあった。おかげで村人達はゆっくりが大嫌いである。
だが妹はゆっくりをかわいいと言った。妹は、悪いことをするゆっくりは許せないが、そうでない良いゆっくりは大好きだった。
たまに、二人で山へ遊びに行き、ゆっくりたちと遊んだりした。無論村人達には秘密である。
ある日妹が彼に尋ねた
「お兄ちゃん、いいゆっくりってさ、人と一緒に生活できるよね?」
「んー、いいゆっくりだったらね。ちゃんと決まりごとを守れるようなやつだったら大丈夫だと思うよ」
「じゃあさ、じゃあさ。私ゆっくりと一緒に生活してみたい!家の畑作業とか、人と一緒にがんばるの!」
「へぇ、おもしろそうだね。手足がないからできることが限定されると思うけど」
「でもいいの!でね、家でゆっくりたちとすごすんじゃなくて、村全体でゆっくりと一緒に協力して過ごしたいの!」
「村全体かぁ、この村はゆっくりが大嫌いだからなぁ。この村だと無理だと思うよ。別の村に移り住んだらできると思うよ」
「嫌!この村がいいの!お兄ちゃんとお父さんと一緒に住んでいるこの村がいいの!なんだったら、お兄ちゃんがそんちょうになればいいの!」
「ははっ、いつかその願いが叶うといいね」
「むぅーっ、じゃあお兄ちゃんにお願いするの。この村を、いいゆっくりたちと一緒に協力して住む楽しい村にしてね!」
「ああ、がんばるよ」

幸せな日々だったが、ある日突然、父が村の運営資金の横領の嫌疑をかけられ、村八分者とされた。住んでいた家も財産も奪われ、粗末な
あばら小屋に強制的に移された。その日から続いた、地獄の毎日。いつ終わるかわからぬ苦しみ、父の自殺、妹とともにいじめられる日々。
でも、彼は周りの村人に蔑まれながらも耐えた。ちょうどその頃、妹は重い風邪で寝込んでいた。元気な妹がいきなり倒れたことは悲しかったが、
彼はがんばっていた。村で村長の次に偉いあんちゃんと、診療所の優しい先生に支えられて、彼はまだがんばることができた。


彼は真夜中、ひそかに山へと向かった。マツタケ取りの名人の父が、彼と妹にのみ教えたマツタケが取れる場所である。
父が教えた場所に行き、マツタケを取ろうと思ったが、そこには一本も生えていなかった。

彼は何度も探したが、結局一本も手に入らなかった。
なぜだろう?父は僕と妹にしか教えていない。だから誰かが取るということもないし、ゆっくりたちにも知られていない場所だった。

失意で胸を一杯にし、とぼとぼと歩いていると、村長の家の部屋の一室が光っていた。もう真夜中で、村人達は寝静まっており、いつもなら村長
も寝ているはずである。
その部屋からは、なにやら聞き覚えのある声と、良いにおいがしていた。それは、焼けたマツタケのにおいだ。
まさかと思い、彼は外から窓の近くへと忍び寄り、聞き耳を立てた。そこには村のトップとも言える3人たちの、村長と、診療所の先生、そして
自分達兄妹といつも仲良くしてくれたあんちゃんの密談だった。



あんちゃんがほろ酔いになりながら話す。
「村八分者を作ることによって、村の結束はより強く固められる。体のいい話だ、気に入らないあいつを消せたんだからな」
「そうですとも。あいつは山のマツタケを独り占めしていた。教えてくれてもいいものを、話さないものですからねぇ」
それに答えるのは先生だった。
「そうじゃ。村は協力していかねばならぬ。それをあいつは独り占めしおって…、忌々しい。素直に話せばよかったものを」
村長が忌々しげに話す。彼の父は相当嫌われているようだ。

「へっへっへ、でっち上げの盗みの罪を被せ、村八分になりたくなかったらマツタケの場所を教えろといったら教えてくれました
からねぇ。ほんと、ボロい話でしたよ。おかげで俺たち3人は豊かになった」
「その時のお兄さんは約束をしたけど、それはお兄さんの約束であって、村長の約束ではなかったですからねぇ」
「ああ、ぼろいものだったぜ。まさかあそこまでうまくいくとは。だが先生も悪いでしょうよ、あいつの娘が病弱なのを
利用して、薬をやる代わりにマツタケの場所を教えろなんて。おかげで俺に話していない場所も全て聞き出せた」
「いやいや、お兄さんほどではありませんよ…。クックック、それにしてもマツタケのうまいことうまいこと」
「何にせよ、お前達2人の働きのおかげじゃ。そのおかげでわしらはこうして、うまいマツタケを食えるというものじゃ」
「しかし、一番悪いのは村長かもしれませんねぇ。あいつの資産を村長の名の下に全部没収できたのですから」
「わっはっは、もう細かいことはいいっこなしじゃ!たんと食おうぞ!!」




父は利用された。それだけでなく、妹も利用された。ただ、マツタケを独り占めしているという理由で。
下らない、実に下らない。たったそれだけの理由で僕達は路頭に迷った。
この3人の身勝手な欲望により、こんなに苦しい目にあっていると思うと、殺意が沸いてきた。その時、手に得物を持っていたならば、
彼はすぐにその3人を殺していただろう。
こいつらを殺すのは簡単だ。だが、殺すと妹が不憫になる。そう考えると我慢するしかなかった。



その密談を聞いた夜。妹を背負い、村を出ようと考えた。彼なりの考えだった。

そう考えた2週間後、風邪で寝込む妹を起こして、背中に背負い。彼はあばら小屋をでた。妹が尋ねる
「お兄ちゃん…、村を出るの?」
「ああ…」
「どうして?」
「…僕達はある人たちの欲望のためにこんな目にあっている。もうこの村に居る必要はない」
「でも、あの村はお父さんが住んでいたんだよ…?私…離れたくない」
彼女はギュッと肩を握る。彼はそれに答えた。
「お前の気持ちもわかるけど、今は生きることを考えよう。あそこでは生きることはできないし、それにあの村は…滅ぶ」
「滅ぶ…?なんで…?」
「お父さんが教えてくれた秘密のマツタケの場所にあったマツタケは全て取られていた。あの村はマツタケで成り立っているようなものだから、
それがなくなれば…滅ぶしかない」
それだけではなく、他の主要なマツタケが取れるポイントも、彼がダメにしたのである。2週間かけて行った、彼ができる唯一の復讐だった。
すぐに効果が現れるわけではないが、3年経ったらでるだろう。

「あの村が消えるのはいや…」
「大丈夫、いつか必ず僕があの村を復興させるよ」
「本当?」
「ああ、お前の願いをかなえるためさ」
「うれしい…ありがとうおにいちゃん」
妹は静かに寝息を立て始めた。

ある日突然村八分にされ、父が死に、優しくしてくれたあんちゃんと先生はグルだったことを思い知らされたあの夜。
彼は妹を背負いながら泣いた。行く当てもなく歩き、村のすぐそばの山を越えた。その後は、病気で苦しむ妹を背負いながら、
ただただただただ歩き続けた。

朝日が昇っても、彼は歩き続けた。あの村にしか住んだことがないので、外の世界が怖かった。
閉鎖的なおかげで、外の情報はかなり限定されており、まったくわからない。おまけに、四方を山に囲まれている。
だがあの村で生き地獄を会うよりかは、はるかにマシだった。


2日経ったところで、気づいたら山の中を歩き続けていた。自然は厳しくもあり、優しくもあった。
川の水でのどの渇きを癒し、虫を食べ、命を繋いでいった。
その山で食べるものを探していたとき、一匹のゆっくりを見つけた、れいむ種だったそいつは
「ゆっくりしていってね!!」
とお決まりの挨拶をしてきたので、彼も挨拶を返した。
「ああ、ゆっくり…していってね」
元気なく挨拶を返す。無理もない、ここ最近食べ物をほとんど食べていないからだ。あの村では量がかなり少なかったが、今の食べているものより
比較的マシなものだったといえる。だからといって、あの村に戻る気はしないが。
元気のない挨拶をしたせいか、れいむは
「ゆっ!おにいさん、げんきがないよ?ばかなの?しぬの?」
と生意気に言って来た。外れてはいないが、腹が立ったので無視する。すると
「むししないでね!!ばかなおにいさんはわたしのはなしをきいてね!!」
「そういや、おなかがすいたよ!!ばかなおにいさんはわたしにさっさとごはんをもってきてね!!」
「きこえないの?さっきかられいむがいっているでしょ?ばかなの?しぬの?」
と、容赦のない言葉を彼に当てる。そのれいむが言っているのが、あの村人達が言っている罵倒と重なり
「ばかなおにいさんはわたしのけらいなんだよ!!さっさとごはゆぎぃっ!!」
「黙れ」
れいむを殴る。飛んでいったれいむは、逃げようともせず
「なにするの!!れいむに手を出していいとおもっているの!?あんたなんかおじんはなかまがたおしてくれるんだからね!!」
そのれいむを拾い上げ、平手打ちをする。
「ゆ゛っ!!」
「うるさい」
「ばかなことをしてないで、さっさとゆ゛がっ!!」
「黙れよ」
「ゆ゛っ!!」
「お前らさえ居なければ、僕らは、僕らは…、こんな目に会わなかったんだぁぁぁあああああ!!!」
悲鳴にも似た雄たけびを上げ、ゆっくりを左右に力いっぱい引きちぎった。あの村の連中の顔を思い浮かべながら。


ゆっくりの中身である餡子のにおいを嗅ぎ、空腹で苦しんでいた彼は我慢ができなくなり、その死んだゆっくりを食べた。
彼は初めてゆっくりを殺して、初めて食べた。
初めて食べるゆっくりは、とてもあまくて美味しかった。妹にも食べさせたが、優しい妹は餡子の正体がゆっくりだとわかると
「これ以上殺さないで」
と彼に頼んだ。彼はこの山で唯一安全に食べれるものを見つけたと妹を説得したが、妹は何度も彼に頼んだ。
結局、そのゆっくりを食べた後は彼は、いいゆっくりは殺さないと決めた。だが、悪いゆっくりについては彼は殺すと言った。


だが、そのゆっくりを殺したせいで、山の群れのゆっくりの反感を買い。彼らは山を追われた。
健康であれば、ゆっくりごときに負けはしない。だが彼らは弱っていた上に、妹を守らねばならないので、彼はがむしゃらに逃げた。

うしろから嘲りながら追いかけるゆっくりたちが村の連中に思えてきたときは、妹の存在を無視してまで殺そうと思った。
だが妹が弱っていたので、彼は耐えた。知らず知らずのうちに涙が出てきた。

ゆっくりたちがついて来なくなった時は、気がついたら知らないところに来ていた。山は2つほど越えたと思う。
だが体力の限界に近づいていたので、彼はそこで倒れた。最後まで妹を気にかけながら、死はあっけないなと感じながら目を閉じた…。






目が覚めると、見知らぬ天井が見えた。横を見ると、妹が穏やかに寝息を立てていた。
「気がついたか」
強面のおじさんが、話しかけてきた。どうやら、猟師である彼に助けられたようだ。
「これでも食え」
と暖かい食事を出してくれた。久しぶりに食べるその食事はとても暖かく美味しいものだった。食べているうちに涙があふれ出た。
「何があったか、ゆっくりおしえてくれ」
食べ終えた後におじさんは優しく尋ねた。強面だが、いい人のようだ。彼は一部始終を話した。

幸せだった生活が、ある者達によって引き裂かれたこと。
村八分にされ、生きながらの地獄。
もう村に居られなくなり、村を出て、そして行き倒れたこと。
彼は静かに話し、おじさんは黙って聞いていた。

「申し訳ありませんが、私達兄妹は村八分にされました者です。いかに謀略があったとはいえ、村八分にされたのは紛れもない事実。
お世話になりました、このままではご迷惑をかけるので僕は今から出て行きます。外から来た者が図々しいとは思いますが、
妹を幸せにしてくれるようお願いできませんか?どうかこの通りです。」

彼は土下座した。自分はいいから妹だけは幸せになってほしいと思い、心を込めて土下座した。
おじさんは黙っていた。しばらく考えた後に、静かに口を開いた。
「お前の言い分はわかった、だがお前の妹だけを置くわけにはいかん」
「そう…ですか」
残念に思ったが、村八分とされた者とは誰もかかわりたくないだろう。彼はあきらめ立ち去ろうとした。
が、おじさんの返答は意外なものだった


「お前の妹だけを置くのは不公平だ、お前も残らないとな」










おじさんの答えがしばらく理解できなかった。
「今、なんと…?」
「もう一度言う。お前達二人は残っていい、ついでに言うならわしの養子になれ」
「ほ、本当に…、いいん…ですか?」
「お前達は自分達の村では村八分にされたが、不当な理由だ。この村では村八分となったことになる理由にならん」
「で、でも…」
「安心しろ、お前達の村は悪名高いのはここいらでは知られている。この村はその村のように閉鎖的ではないし、
お前達の生い立ちを話せば、村八分ではないことをちゃんと理解してくれる。」
「…」
「明日、お前達を村の皆に紹介してやる。みんないいやつらだ。お前達はここで生まれ変われ」
「あ…あ…」
涙がとめどなく溢れる。
こんなにうれしい気持ちは初めてだった。うれしさのあまり、言葉が出ない。彼はその場で大泣きした。

その日から、兄妹は猟師のおじさんの養子となり、村の皆に紹介された。
村の皆は
「向こうで村八分にされたといっても、こっちでは関係ないからね」
「辛かったでしょ?この村でがんばってね!」
「皆で協力し合おうね!」
と快く受け入れてくれた。彼と妹は新たに生まれ変わり、幸せな生活を送っていた。


妹は体は弱いが、家事を手伝い。兄である彼は、養父となったおじさんの手伝いをしたいといったが、養父から
「お前は勉強しろ、そして町へ行け」
と言われた。彼も妹ほどではないが、体が弱いから養父の手伝いをしたくてもできなかった。
養父はそのことを理解していたので勉強を教えた。彼が家で養父を説得したあの言葉を聞いたとき、養父はこいつは予想以上の大物になると睨んでいた。
彼はがむしゃらに勉強した。それが養父への恩返しだから。養父の期待を裏切るどころか、それ以上の頭脳を獲得した。
おかげで3年後に、15歳でありながら村の会計を務める役を手に入れた。養父はとてもよろこんでくれた。
その後は幸せだった。なにも問題は起こらない…はずだった。


ある日、妹と養父が風邪を引いて寝込んだ。その時、彼は養父から町へ行って勉強しろと言われ、町に住んでいたので知らなかった。
この村には医者は居なかったので、町の病院へ連れて行こうとしたが、偶然にも町からある村へ戻ろうとしている医者が
この村で泊まっていたので、彼に頼むことにした。

その医者は、自分達を陥れた一人の、診療所の先生だった。
先生は驚愕した。村から消え、死んだと思っていた妹がいたのだから。
先生は妹しか居ないのを確認すると安堵した。このとき彼が町に居ることは、彼は知らない。
だが、あの事が発覚するのと、復讐を恐れた先生は念には念を入れ。
風邪薬と偽り、養父と妹に遅効性の毒を盛った。




症状が発症したのは、1週間後だった。養父も妹もある日突然倒れた。
養父は村一番の猟師だったため、村は大騒ぎとなり、総出で町へと二人を運んだ。

町はかなり設備が整っており、もう安心だと町の医者は村人に言い聞かせた。
村人が帰路についた後、村長と彼は町医者に呼び出された。
その時になって、彼は二人が風邪を引いたことと急に倒れたこと、そしてその時の医者があの医者だと知った


「誠に言いにくいのですが、二人の体には毒がまわっています」


検査によりわかったことだった。この毒はかなり厄介なもので、時間が経つに連れて体が蝕まれていき、年を取ったものほど
毒が速く回る特殊なものだった。閉鎖的な村では、するべきことができなくなった老人などが、家族に迷惑をかけない様に
自殺するために飲むものだった。
妹はまだ若いので毒の回りは遅いが、養父は手遅れになっていた。
彼は村長と養父に必死になって謝った。自分のせいだ、とても悔しくて涙を流した、なぜ疫病神はつきまとう、
あいつらはまだ僕達を苦しめるのか。
だが、村長と養父は責めなかった。
「お前は何も悪いことはしていない。」
と優しく諭してくれた。

養父は町の病院で、兄妹を養子とできたことに感謝し、静かに息を引き取った。

村総出で、葬式が行われた。彼は涙を流さなかった。

妹は解毒剤が打たれたため、これ以上毒は回る心配はなくなった。が、解毒剤を打つのが遅かったために昏睡状態になってしまった。

死んだように眠る妹。それを治す方法もわからない。ただ、自分で起き上がる可能性はあるがかなり低いという。
幸い、事情を知っている村長が入院費を捻出してくれたので助かった。
だが、いつまでも村長の世話になるわけにはいかず、妹を目覚めさせるために、彼は猛勉強した傍ら、必死で金を稼いだ。

だが彼は体が弱いため、少しでも長く働けるように、村に住む虐殺お兄さんに鍛えてもらった。
虐殺お兄さんは、彼が村に来たときから一緒に遊んでくれたりした幼馴染でもあり、彼の頼みを聞いてくれた。
血反吐がでるほど虐殺お兄さんのしごきはきつかったが、今ではそれなりの体力ができ、おかげで更に働けた。


村長は町で働けと言った。万能お兄さんは、独学で勉強したおかげで、どこに行っても働けるほどの頭脳を持っていた。
だが、ここは養父と妹の家であり、村長と村人に世話になった恩を返すために彼は頑として聞かなかった。
それに、家族を引き裂いたのみならず毒を盛ったあの3人に復讐をするために、ここを離れるわけには行かなかった。逃げたくなかった。



それから5年後。
万能お兄さんは自分の部屋で読書をしていた、いづれも学術系の本ばかりである。
それらに共通しているのは、ゆっくりについてと医学系の本であること。
とくに、月の賢者の「ゆっくり研究レポート」と題名された本を熱心に読んでいた。
ちなみに、このときはまだ家にゆっくりたちを飼っては居ない。
最近になって、ゆっくりが村に現れ始めたので、少なからず被害を被ったために彼は対策をかねて研究していた。

この本は発刊部数が非常に限定されており、今では非常に入手が困難な本である。主に大学などの学術、研究機関にしか出回っていない。
彼は研究機関の友人に頼んだ所、快く貸してもらった。これもひとえに人徳のなせる技であろうか。

彼が熱心に読んでいる部分は、ゆっくりのドスについての部分である。
ドススパークやゆっくりオーラ、ドスキノコについて等等が細かく分析されており、非常に勉強になる。
だが、彼はドスの餡子について調べていた。
成熟した餡子は特別な物とされており、味も格別だとか。だがドスの場合、中枢餡子で極々稀に特殊な成分を含んだ「ドス餡子」なるものが
生成されるらしい。

そのドス餡子は、餡子というよりも薬のような役割を持っており、成分を調べたところ、不治の病とされている病気の半分ほどが治せるかも
しれないといわれているらしい。餡子ではなく特効薬のようなものだった。
誰もがほしがる夢のような代物。だが、生成条件が不明で、研究機関などでも扱っているところが数えられる程度しかないほど数が非常に少ない。
おまけに複製も無理と来た。今では非常に注目されているが、入手方法もわからないためお手上げ状態らしい。
彼は天啓を得た気分だった。これほど興奮したことはない。今まで、死んだように眠る妹を治す薬はないといわれてきたが、もしかしたらこれで
目覚めるのかもしれない。藁をも掴む思いだった。
それからというもの、彼は今まで以上にゆっくりに関わる事になった。

ちょうどその頃、ゆっくりを加工所に売れば金になることを知り、最近村にひっこしてきた虐待お兄さんに虐待の手ほどきを受け、
ゆっくりを虐待し、味を良くしてうりさばいた。だが、ゆっくりはいつも居るわけではなく、安定した収入が得られるわけではなかった。

安定した収入を得るにはどうすればいいかを考えているとき、ゆっくりをペットとして飼っている愛でお兄さんが引っ越してきた。
彼にいつも虐待しているゆっくりについて話を聞き、そのなかで
「ゆっくりは、きちんとしつければ人間に代わって働くことができる」
という愛でお兄さんの話を聞いて、天啓を得た。ゆっくりを独自に研究して独自の判別方法を編み出し、いいゆっくりを改造して、働かせること
を覚えさせ、「ゆっくりが作った野菜」と宣伝して市場に売ったら野菜は飛ぶように売れた。おかげで、収入が軌道に乗った。
できた金で村長に妹の入院費を返し、あとは金をがんばってためつつ、妹が目覚めるのを待つ傍ら治す薬を手に入れる方法を探しつつ、
復讐を計画した。


それから今に至るまで、虐待お兄さんと共同研究や虐待をしたり、虐殺お兄さんと一緒にゆっくりを駆除したり、愛でお兄さんに誘われてゆっくり
ブリーダーとなったりして、家に住むゆっくり達と共に充実した日々を過ごしていた。


それから、彼は「万能お兄さん」と呼ばれるようになった。









昔を思い出して、余韻に浸っていたところで彼は目覚めた。どうやら寝てしまったらしい。
「ゆっくり昔を思い出した結果、寝てしまったよ」
と一人呟きながら、家の倉庫へと足を運んだ。

「「ゆっくちしていっちぇね!!」」
倉庫の中で話しかけてきたのは子れいむ2匹だった。
少し前に、家の畑を襲ってきた群れの生き残りである。
きめぇ丸の判別方法にも耐えたこの2匹に、彼はあることをさせていた。
「よーし、元気がいいようだね。んじゃ、君達がやることはわかっているね?」
「ゆっ!!おにいさんが教えてくれた人に「私を食べてね!」って言うんだよね!!」
「ああそうとも、そうすれば今以上にゆっくりできるよ。食べてね、っていってもその人はそれが合言葉だってわかっているから大丈夫だよ」
「「ゆっくりわかったよ!!」」
「よしよし、覚えているようだね。安心したよ」
そういうと、エサのクズ野菜を柵の中に入れた。子れいむ達はそれにむしゃぶりつく。
元気なところを確認すると、彼は家の中へと入っていった。

躾もそこそこにしていて、ご主人様と呼ばせていないのは、この2匹は捨て駒だからだ。




万能お兄さんは家に入ると、連絡帳を取り出した。そしてその中から一つの場所に電話をかけ始めた。

「はい、こちらはゆっくりを虐待したり、殺すことに生きがいを見つける協会。ゆっくりデストロイファミリーです。
あなたのお名前をどうぞ」
「お久しぶりです、僕は万能お兄さんと言うものですが、会長はいますか?」
「あっ!万能お兄さんでしたか!!失礼しました、今すぐ会長につなげます!!」
受付嬢があわてて、会長へと取り次ぎ始めた。彼は有名らしい。

「おお、万能お兄さんか。久しぶりだのう」
「お久しぶりですね、会長」
「前、君が教えてくれたっゆっくりの群れだが、本当に助かったぞ。おかげで、多くの同志達が虐待ができない禁断症状から解放された」
「喜んでいただいたようで、なによりです。わたしも情報を提供した甲斐があるというものですよ」
「うむ、今は君はこのファミリーにはなくてはならぬ存在だ。だが、どうしても副会長にはついてくれないのかね?」
「私はそこまで虐待を極めていない中途半端な存在ですよ。そのような役職は恐れ多いです」
「だがなぁ、役員会議でも君が副会長になることについては満場一致なんだがなぁ。それでも受けてくれんのか?」
「はい、申し訳ありませんがね、私はやらねばならぬことがあるのです。それをやり遂げたら謹んでお受けしますよ」
「そうかぁ、わかった。ところで話がそれてしまってすまんかったが、今日はなんの用かね?」

「今度、僕の住んでいる村にゆっくりの群れが来るんですよ。そのことについてです」
「はぁ…、何度も何度も君には世話になりっぱなしだのう。なんとお礼を言ったらいいのやら」
「礼など無用です。ただ、僕はそのドスを捕まえて売り飛ばしたいんです。ドスにさえ手を出してくれなければいいですよ」
「わかった。ほかならぬ君の頼みだ、そのことについては他の会員に厳しく言っておくよ」
「私の願いを聞いてくださって、誠に感謝します」
「うむ、君が願いを言うなど数えるほどしかないからな。で、その群れはいつ来るんだ?」
「もう晩秋で、冬がきますね。だから3,4ヵ月後の春になったらこっちに来ますよ。数は1000は超えているでしょう、その時はお願いします」
「ほう、1000も超えているとはな。それくらいの数だと、我々でも少々厳しいかな?」
「なにをおっしゃいますか、まだまだ現役でしょう?「ゆっくりあるところに我はあり」が会長のスローガンだったじゃないですか」
「はっはっは、うれしいことを言ってくれるな。とりあえず、こちらも活きのいい同志を集めておくよ」
「ありがとうございます、よろしくお願いしますね」
「ああ、今度はカフェ「ゴミクズ」でゆっくり話をしよう。では失礼する」
そういうと、電話を切った。

「人材は確保…、と。フンフフーン♪」

そして、連絡帳のページをめくり、今度は別の場所に連絡を取る。
「はい、こちらは生鮮野菜卸売りセンターです」
「私は万能お兄さんと申すものですが、社長をお願いできますか?」
「あ、万能お兄さんでしたか。少々お待ちください」
どうやら、かなりの人脈を要しているようだ。トップと簡単に話せるところが、彼の手腕が物語っている。

「おお!万能お兄さんか、久方ぶりだなぁ!!」
「お元気なようで、なによりですよ社長」
「うむ、君が作ってくれたゆっくり無農薬野菜は、今じゃこの市場ではかなりの目玉商品だからな。こちらも儲かっておるよ。
君がこれをもってきてくれたおかげで、多くの職員が助かった。感謝しつくしてもまだ足りんなぁ」
「どうもありがとうございます。ところで今日は折り入って頼みがあるんですが」
「ほかならぬ君の頼みだ、聞こう」

「だいぶ前に、ブート・ジョロキアを取り寄せてくれましたけど、またお願いできますか?今度はジョロキアだけじゃなく、ハバネロや、
他のトウガラシも。ゆっくり対策用にまた大量に使いたいんです」
「おう、そのことか。ちょうど今、入荷したところだが、買い手はほとんど居ないから値段はそれほど高くなっていない、
わしが取っておいてやろう。あと、商品にならないジョロキアや、他のトウガラシ。つまり廃棄品だが、君がまたほしくなるだろうと思って
取っておいたぞ。無論、廃棄品だから金はいらん、タダでやろう」
「本当ですか!?ありがとうございます!!このお礼は必ずします!」
「はっはっは、礼など無用だ。いつも君には贔屓にさせてもらっているからな。君がいつもどおり、あのゆっくり野菜を
こちらに仕入れてくれるだけで十分だ。」
「わかりました、お世話になります」
「うむ、今後とも頼むぞ」
礼を述べ、電話を切る。

「対策用の材料ゲットだぜ!!イヤッホウ♪」

と小躍りした。次は、協会に属していない個人の友人達に電話をする。




それから3日後。



万能お兄さん達が住んでいる村から、北に山二つ超えたところにある寒村。

もうこの村は、かつての栄光の面影はない。7年前には順調に取れていたマツタケが急にダメになり、一本も取れなくなったからだ。
ゆっくりの仕業とは考えづらく、かといって人がやったとしても、思い当たる人物は居ない。

村長の家では、死んだ村長に代わって、かつてあんちゃんと呼ばれていた青年が村長となっていた。
新たな村長の隣には先生が座っている。
二人とも、かなりやせ細っている。いや、二人のみならず、この村の全ての住人は冬を越せるギリギリの量の食料しかもっていない。
それもすべて、収入をマツタケのみに頼っていたからだ。
そのツケが今回ってきているのである。

村長は喋った。
「もうこの村もおしまいだな、こんなに人が出て行ったのならこの村はいずれ滅ぶだろう」
「ええ…、悔しいですが事実ですね」
先生もうなずく。
「これから俺達はどうなるのだろうか…。前の村長が死んだときに、頼りにしていた連中が全て村を去った。
今では、この村には老人と俺達くらいしか居ない」
「それに、食料もギリギリですからね…。このまま冬を越せるかどうか…」

事実上、村のナンバーワンとナンバーツーである二人は悩んでいた。
食料もなく、人手もなく、他の村に助けを呼ぼうにも昔から閉鎖的な村だったのが仇となった。
こんな村を相手にしてくれるところなど、どこにもいない。
ただただ、静かに滅ぶのを待つだけだった。

「あと何年持つかな…」
村長である彼が呟いた、だが彼の予想は外れることとなる。

机の湯飲みが、カタカタと揺れ始めた。最初はなんとも思わなかったが、次第に揺れは大きくなり、湯飲みが倒れてしまった。
何事かと思い、外を見ると、100を超えるゆっくり達が村へと殺到してきた。

「ゆ、ゆっくりのむれ…だと」

ここ数年見なかった、大規模な群れだ。この村にゆっくりが襲ってきても、せいぜい5匹くらいだった。今回はそれの約20倍である。
あの数ではとても、今の村長たちを含めた10人の村人達では対処しきれない。

村長と先生は、静かに、この村は滅ぶと悟った。





「人間は無視して、食料を奪うんだよ!!!」

ドスの号令のもと、多くのゆっくりが村の民家へと襲い始めた。
民家では、冬用の食料は倉庫へと入れてある。通常のゆっくりなら、倉庫ではなく家へと向かうものだが、このゆっくり達は
真っ先にそれぞれの民家の倉庫を目指した。
「うわぁぁぁぁあああ!!!来るな!!来るなあぁぁぁぁあああ!!!」
村人が抵抗するも、腹をすかした老人が適うはずもなく、大量の木の枝や竹を口にくわえて武装したゆっくりたちに飲まれていった。
「な、なんでこいつら俺達の食料の場所がわかっているんだぁぁぁああ!?」
村人が悲鳴を上げながら、ゆっくりの波に飲まれる。


この群れが武装しているのも、食料の場所がわかっているのも、ひとえにきめぇ丸が助言したからである。
もっと言うなら、きめぇ丸から群れへと伝えるようにした黒幕。
つまり万能お兄さんが、この群れに教えたといっても、過言ではなかった。


ゆっくり達は、ゆっくりらしからぬスピードで村を襲い、迅速に食料を奪い、颯爽と山へと逃げていった。
10~20のゆっくりの死骸がそこら中に散らばっている。
だが、撃退したのではなかった。彼らは十分な食料を奪っていったから逃げたのだ。
村人達にとっては、命ともいえる食料を奪われた。


あまりに衝撃的だった。
村人達は、ただそこに立ち尽くしていた。
この襲撃により、死んだ村人は居ない。だがゆっくりの波に飲まれたのと、敵が武装していたことにより、多くの村人が怪我を負った。
そして、これからのことを考えると、冬を越す食料がないので死が近づいているのは明白だった。
もはや、この村は死んだも同然となった。

「あ…嗚呼…」
村人達はただ嘆いた。今起こった悲劇と、自分達の行く末を考えて嘆くしかなかった。





村がゆっくりの群れに襲われた翌日。
村人達は荷物をまとめ、一人残らず村を出て行くことを決めた。行く当てもなく、どこに行くのかも決まってはいなかったが
この村に居れば、このまま死ぬことはわかっていたからだ。少しでも生きる為に、必要なものだけを持ち、どこか住める場所へと歩いていった。
この日、誰にも知られることなく、この寒村は消滅した。
世間に、この村が消滅したとわかるのは2ヶ月経った後だった。だが、ニュースとして取り上げられても、
よそとの交流を断った寒村など、3日も経たぬうちに人々の記憶から消え去った。


村が消滅した日。10人の村人達は、どこに行くのかも決めていなかったが、一人が西に行き始めた。
すると、それについていくように、8人が西へと歩き始めた。
その先に何があるかも知らなかったが、何かあると信じて…。

村人達が西へと行くとき、村長と先生は村人達に混じらず、南へと行き始めた。
理由は、南の山を二つ越えたところに村があり、先生が7年前に一度そこに立ち寄ったことがあるからだ。
その村ならば、なんとかなる。私達を受け入れてくれて、ゆっくりに襲われた村を復興できるかもしれない。
そう踏んだ二人は、なけなしの食料を背負い、南へと移動した。



「ご主人様、村人達が移動を始めました」
村の様子を一部始終見ていたきめぇ丸Bが報告する。
「頃合だな…」
呟くお兄さん。倉庫の中にいて、子れいむ2匹の様子を見ていた。
「よし、ではプランBだ。2匹とも頼んだよ」
「「了解しました」」
すると、きめぇ丸A、Bはそれぞれ子れいむ2匹をもち村のほうへと飛んでいった。
「ゆーっおそらをとんでいるみたいー」
2匹の子れいむはこれからどうなるかもわからずに、ただのんきにはしゃいでいるだけだった。

きめぇ丸達が飛んでいったのを見送ったお兄さんは
「今日はあの2人の命日だな」
と呟いた。
その両手には、それぞれ注射器と茶色のビンを持っている。
茶色のビンのラベルには、髑髏マークが大きく写っていた。



北の寒村と、お兄さんの村の間には山が二つあり、山道どおりに進んでもかなりの時間を要する。
幸い、山道は山の傾斜が緩いところに設けられているため移動しやすい。
だが健康な男でも、村から村へは半日はかかるといわれるくらいだった。
それに、北の寒村が閉鎖的だったせいで、長年使われていない山道は酷く荒れており、道なりどおりに進むことは非常に難しい。
一部のものしか知らないほど荒れていた。
先生は7年前に通ったことがあるので、思い出しながら順調に進んでいた。
比較的順調に山越えができると、二人は思っていたが、その二人の背中に強烈な衝撃が襲った。
「ぐわっ!!」
思わぬ衝撃に倒れる二人、起き上がろうとしても、昨日ゆっくりに食料をほとんど奪われたせいで何も食べておらず、腹が減って力が入らなかった。
その二人を、さらに追い討ちをかけるようにして、衝撃が走る。
「がはっ!!」
息ができなくなり、その場に倒れたまま、しばらく動けなくなる。幸い意識はまだあるようだ。
だが、体が動かない。すると、急に背中がわずかだが軽くなった。
二人はよろよろと立ち上がると、目の前には2匹のきめぇ丸が居た。2匹の手には、村長と先生にとって、命とも言える携帯食料が握られていた。
2匹は山道脇の雑木林へと飛んでいった。それを見た二人は瞬時に状況を理解した。


「か、かかかかか、かえせぇぇぇぇえぇぇぇぇえええええええええええ!!!!!!!!!」
「俺たちの食料をかえせえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
「「おお、こわいこわい」」
半狂乱になって追いかけてくる2人を見ながら、きめぇ丸達は雑木林の合間を飛んでいく。
2人がちゃんと視認できるように、スピードをゆっくり押さえながら飛んでいた。

30分経ったところで、2匹はスピードを上げ、2人の視界から消え去った。
腹が減り、息も絶え絶えになり、2人はその場にへたれこんだ。そして、気づいた
「おい、先生。ここは…どこだ?」
「え。さ、さぁ…」
夢中になってきめぇ丸を追いかけていたせいで、2人は自分達がどこに居るのかもわからなくなった。
山道に戻ればなんとかなるが、我を見失い血眼になってあの2匹を追いかけていたせいで、山道がどこなのかも、ここがどこなのかもわからない。
ただ一つわかることは、二人には絶望が襲い掛かっていたことだった。
「あ、あぁぁぁ…どこだよ…ここ」
「どうしてこんなことに…」
2人はそれぞれ嘆いた。これからどこへ行けばいいのか、どうすればいいのかもわからない。山の中で遭難してしまったのだ。
それぞれ放心した状態で、その場に座っていたがその放心状態を覚ますような声が聞こえた


「「ゆっくちしていってね!!!」」


2人は振り向くと、2匹の子れいむが現れた。
最初わけがわからなかったが、目を凝らすとたしかに居る。
すると2匹は突然

「「おじしゃんたち、わたしをたべてね!!!」」

耳を疑うようなことを言って来た。私を食べてとは。
今までゆっくりを見たことはあったが、こんなことをいうやつは見たことも聞いたこともなかった。
だが、その言葉を聞いたとき、急に腹が減ってきた。
2人ともゆっくりが食べられるということは知っている。それに、食料が一つもない状況では、目の前に食べられるものがあるのに
我慢できるはずもなかった。
雄たけびをあげ、2人はゆっくりをむしゃぶりつくように食べ始めた。

「ゆ゛ぎっ!!い゛だい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛い゛いいいいいい!!!!!!!」
「どぼじでええ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」
「おに゛い゛ざんはだべな゛い゛っでいっだどに゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛いいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」」

食べられた最中泣き始めたが、全部食べられてしまい。後は胃の中で何か聞こえる程度になった。

「はぁはぁ、う、うめぇ…」
「甘いものなんて、久しぶりに食べましたよ…ヒヒッ」
「あぁ、まったくだぜ…。ハッ、ハハハハッ」
「ヒッヒッヒーッヒヒヒヒヒ!!!」
「ハッハッハーハハハハ!!!!」

久しぶりのご馳走なのか、寒村ではここ7年ほど食べていなかった甘いご馳走に、思わず笑う二人。
だが、村長の様子がおかしくなった
「ハハハハハ!!!…ハッハ…なんだか、く、苦しい」
「わ、わたしも…」
「なんだ、この痛みは…。む、胸が…ガハッ!!」
急に口から血反吐を吐く村長。
「そ、村長!?大丈夫で…おぶゥッ!!!」
先生も口から血反吐を吐く。
2人は突っ伏したように、倒れ。そのまま動かなくなった。
二人の頭の周りの地面には、赤い小さな水溜りができていた。


様子を見ていた2匹のきめぇ丸が、2人の脈を計る。2人とも脈がないことを確認して
「「プランBは成功ですね」」
お互いそういった後、我が家へと帰っていった。




その日の万能お兄さんの家の夕食は豪華なものだった。家のゆっくりは皆、彼の計略が成功したことを褒め称えた。
ゆっくり達寝静まったあと、万能お兄さんは自分の部屋で酒を飲んでいた

あの死体は山の中で見つかることはないし、見つかったとしても風化が進んで誰なのかもわからない。
仮に誰なのかわかったとしても、あの毒は自然に体内で消えていく特殊な物だ。誰が殺したのかもわからない。
なにもかもが思い通りだった、そして復讐を見事はたしたのだ。自分達を陥れたあいつらに。

   「計画通り」

しばらくして、彼は狂ったように笑い始めた。


それから1週間後。
本格的な雪が降り、それぞれ冬篭りをはじめた。




つづく



あとがき

長い作品を読んでくださって、誠に有難うございます。人様のネタをリスペクトさせて、使わせてもらっています。
思ったより長くなってしまいましたが、終わらせるようにがんばります。
つづきもがんばりますんで、よろしくおねがいします。


書いた人:ロベルト

書いた物
万能お兄さん1~3
虐殺お兄さんの弱点


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最終更新:2021年11月08日 18:35