妖怪の山の秋も深まる頃。
あの……何とかいうオリキャラ達によって季節の恵みがもたらされ、
美しく彩られた木々の茂りは、山肌を赤や黄色の暖色に染め上げていた。
その中をゆっくりと跳ねていく、なぜか山に棲みついているゆっくり一家。

「ゆゆ~ん! おやまさんがすごくゆっくりしてるよ!!」

舞い落ちる紅葉を眺めて感嘆の唸りを上げるのは、大きな親まりさ。
その横で親れいむは、周囲の落ち葉を拾っては口に収めていく。

「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」

涙を流して天を仰ぐれいむ。
人間や妖怪にとっては見て楽しむものである紅葉も、ゆっくりにとっては美味しいごはんらしい。
ぴょこぴょことついて来た沢山の小さな子ゆっくり達も、紅葉の先端をかじったり、
二匹で引っ張り合って千切ったりして食べている。

「ちあわちぇ~!」
「おかーしゃん、このはっぱしゃんとってもゆっくちしてゆね!」
「ゆっくちきれいだよ!!」
「ゆ!これはね、もみじさんっていうんだよ! とってもゆっくりできるはっぱだよ!!」
「もみじしゃん? れいみゅたちみたいにかわいいおにゃまえだね!」
「もみじしゃん、まりしゃたちをゆっくちさしぇてくれてありがちょう!!」

ちなみにこの山に同名の某妖怪がいるが、もしも彼女が任務中であり、その機嫌が良くなかったなら、
なんかムカつく一家の存在を嗅ぎ付けて直ちに殲滅していた可能性は否めない。今はこの幸運に感謝すべきだろう。
ともあれ、紅葉がとっても気に入った子ゆっくり達は、辺りを埋め尽くす落ち葉の海に飛び込んで、
思うさま食んだり、包まって遊んだりし、存分に紅葉狩りを楽しんでいた。

「ゆゆっ! このあかいろ、れいみゅのおりぼんみたいできれいだね♪」
「とっちぇもゆっくちできゆよ! いっぱいあちゅめようね!」
「まりしゃのもみじしゃんがいちばんきれいだよ!!」

特に、赤色の強く出ている紅葉が気に入ったようだ。子ゆっくり達は競うように、より赤い紅葉を探して辺りを駆け回る。
秋の景観の中で楽しそうに遊ぶ子供達を、親まりさと親れいむは満足げに見つめている。

「ゆゆ~ん、とってもゆっくりしてるね・・・」
「もうすぐふゆだから、いまのうちにおそとでたくさんゆっくりしようね!」
「ゆ! そうだね、ふゆごもりのごはんをいっぱいあつめようね!」
「こどもたちにまけないようにしないとね!」

そして両親もまた、周囲の落ち葉を集めては頬に貯め始めた。
今日は冬篭りのための食糧を確保しに、文字通りの「紅葉狩り」へとやって来ていた。
木の実やキノコなど、他の食べ物は一通り集めて巣に貯蔵済みである。
余裕の出来た両親は、冬篭りの準備の仕上げとして、観賞を兼ねて紅葉を集めることにしたのだ。
子供達の小さな遊び場に干渉しないよう、なるべく離れた所から紅葉を拾っていくまりさとれいむ。
日が暮れる頃には、一家が遊んでいた一帯は土色の山肌が露出し、まりさとれいむの頬はパンパンに膨れていた。

「おちびちゃんたち! そろそろさむくなってくるからゆっくりかえるよ!」
「あつめたもみじさんはもてるだけもってかえってね!」
「「「「「ゆっくちわかっちゃよ!!」」」」」

子ゆっくり達は特に赤味の強い数十枚を厳選し、れいむ種は小さな頬の中にぎゅうと収め、
まりさ種はそれに加えて帽子の中に仕舞いこんだ。帽子からはみ出した紅葉が素敵だと親に褒められ、頬をも紅葉のように染めて喜んだ。
一家が巣へと帰り着く頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
この一家の巣は、倒れた木の幹である。枯れ果てた幹は大きな空洞となり、住むにはちょうど良かった。
周囲は深い雑草に覆われ、天敵にも見つかり辛く冬もなかなか暖かい。自慢のおうちであった。

「「「「「ゆっくちただいましちゃよ!!」」」」」
「ゆっ! それじゃあおちびちゃんたち、あつめたもみじさんをだしてね!」
「「「「「ゆっくちわかっちゃよ!」」」」」

貯め込んだ紅葉を次々に吐き出していく一家。親れいむと親まりさの吐き出したそれは、小山を形成するほどの量だった。
その脇に、一際色彩の強い子ゆっくり達の集めた紅葉が小さく盛られている。
子ゆっくり達は、それぞれ自分が取った中で一番赤い葉っぱを見せ合って、互いに自慢していた。

「ゆゆ! いままであつめたぶんとあわせて、ごはんはこれでじゅうぶんだね!」
「みんなおつかれさま! これでゆっくりふゆがこせるよ!」
「「「「「ゆゆゆ? ごはん??」」」」」

一斉に頭に疑問符を浮かべる子ゆっくり。
朝おうちを出発した時点では、親達から「ゆっくりできるたべものをあつめにいく」と説明を受けてはいた。
しかし子ゆっくり達が紅葉を集めていたのは、コレクション的な意味合いが強かったのだ。
たからものにしようと思っていた真っ赤な紅葉をごはんだと言われ、子供達は悲しくなって来てしまった。

「ゆ・・・まりしゃのもみじしゃんをたべないでね!!」
「れいみゅもみじしゃんたべちゃくないよ!! ゆえぇぇ~~~ん!!」
「ゆっくちしたたからもにょだとおもっちぇたのいぃぃぃぃ!!」
「ゆゆ!? どうしてそんなこというの!! ごはんたべないとゆっくりできないでしょおおぉぉぉぉ!!」

せっかくのおいしいごはんを泣いて食べたくないと言う子供達に、親れいむは困惑する。
この秋に産まれた子供達は冬篭りが初めてなので、冬に飢える恐ろしさを理解していないのだ。
親まりさも同様に一瞬戸惑ったものの、すぐに子供達の気持ちを理解してやる。
まりさはれいむに比べて子供っぽい所が多く残っていたので、共感出来る部分があったのだ。

「ゆっくりわかったよ! みんながあつめたもみじさんはたべなくてもいいよ!!」
「「「「「ゆゆっ! ほんちょう?」」」」」
「でもおかあさんたちがあつめたぶんはしっかりたべてね! おなかがすくとゆっくりできないよ!
 みんながごはんをたべすぎずにゆっくりしていれば、みんなのもみじさんはたべなくてもすむよ!!」
「ゆっくちりかいしちゃよ!」
「ありがちょう! おかーしゃんだいしゅき!」
「すーり、すーり♪」

紅葉を食べないことを許してくれた優しい親まりさに群がり、すりすりを始める子ゆっくり達。
子供達に囲まれてとてもゆっくりした親まりさの顔を、親れいむが少し寂しそうな笑顔で眺めていた。
れいむの表情を察したまりさは、慌ててれいむに駆け寄りすりすりをしてあげる。
子供達もそれに追従し、一家揃ってのすりすり大会が始まる。れいむもとてもゆっくりすることが出来た。

それからしばらく親同士が巣の奥でゆっくりしている間に、子供達はたからものの管理に取り掛かった。
山状に積まれた紅葉を、これはれいむの、これはまりさのとそれぞれ選り分けていく子ゆっくり達。
一箇所に集約されていた色彩が次第に床に広がっていき、まるで真っ赤な絨毯を敷いたかのようだ。

「ゆゆ~! とっちぇもきれいだよ!」
「もっちょいっぱいひりょげようよ!」
「とってもゆっくちちたおうちになゆにぇ!!」

子ゆっくり達は手分けをして、おうち中に紅葉の絨毯を敷き広げていった。
跳ねた時に起きる風で飛ばされないよう、一枚一枚しっかりと床に押さえつけていく。
自分達の集めた紅葉が足りなくなると、両親の集めた分の山から特に赤くて綺麗な物を引っ張り出してくる。
やがて床に敷き終えると、次は壁に取り掛かる。大きな子れいむが小さな子まりさの踏み台となり、
壁の高いところまで紅葉をぎゅっぎゅっと押し付ける。湾曲した壁面に美しい壁紙を張り終え、子ゆっくり達は深い満足に浸っていた。

「ゆゆ~、ゆっくちがんばっちゃよ!」
「すごくゆっきゅりしたおうちになっちゃね! これでふゆもゆっきゅりしゅごせゆよ!!」
「ゆゆ! なんじゃかこのゆかしゃん、ぽかぽかしてあっちゃかいね!」
「ゆ!? ほんちょうだ!」

晩秋の冷たい空気に満ちた巣の中で、子ゆっくり達は不意に暖かさを感じた。
色は体感温度に影響を与える。青などの寒色は涼しげに感じ、赤などの暖色は暖かに感じるのだ。
思い込みの強いゆっくり達にはその効果が特に強く働き、赤い絨毯は暖房に近い役割を果たしていた。
すごい発見をしたと、子ゆっくり達はぴょこぴょこはしゃぎまわっている。
床と壁を埋め尽くしたとなると、次に気になるのは天井だ。しかし子供達だけでは天井まで口を届かせるのは難しい。

「ゆっくちおかーしゃんたちをよびにいきょうね!」
「ゆゆっ! しょうだね! れいみゅたちのすてきなおうちをみしぇて、おかーしゃんをびっくりさしぇりゅよ!」
「きっとよりょこんでくれゆよ!」

何匹かの子ゆっくりが、ぴょこぴょこと笑顔で巣の奥に跳ねていく。
「はやくはやく!」と興奮した子供達に連れられ、なんだなんだと親れいむと親まりさが出て来る。
そして真っ赤に染められた部屋を見て、「ゆゆ~!」と揃って驚愕の声を上げた。

「みちぇみちぇ! れいみゅたちがゆっくちがんばってもみじしゃんをはっちゅけたの!」
「すごいよおちびちゃん! とってもきれいだよ!!」
「あにょねあにょね!もみじしゃんのうえにいりゅと、ぽかぽかすりゅんだよ!!」
「ゆ・・・? ほんとうだね! ぽかぽかあったかいよ!!」
「これでゆっくりふゆがこせるよ!! かしこいこどもたちをもったれいむはしあわせだよ!!」

最初に見た時は食べ物を粗末にして……と思ったれいむだが、この暖かさの代償ならば安いものだ。
子供達の素晴らしい発明に、感動の涙を流す親れいむと親まりさ。突然泣き出してしまった両親に、
「ゆっくちしちぇね?ゆっくちしちぇね?」と慌てて声をかける無垢な子供達に、親達は笑みをこぼす。

「しょれでね、てんじょうしゃんにももみじしゃんをくっちゅけたいの!」
「まりしゃたちをおかーしゃんたちのうえにゆっくちのしぇてね!」
「ゆゆ! そうだね!」

親達から見ても、絨毯と壁紙の色の映えに対し、天井の地味さは気にかかるところだった。
しかも天井には、雨漏りする穴が空いていた。あの穴はいつか塞ぎたいと思っていたところだったのだ。
子供達はお母さんの上に飛び乗り、更にその上でも肩車(?)を形成し、天井にも次々と紅葉を貼り付けていった。
そして一面が紅葉に埋め尽くされた、とてもゆっくりとした空間が完成した。

「ゆっくりかんせいしたね!!」
「ゆっくちできちゃよ!」
「ゆゆ~ん! こりぇでしゃむいひもゆっくちできゆよ!」
「あちたはおうちでゆっくちしようね!」

飛び跳ねて喜ぶゆっくり一家。しかしやがて、子ゆっくりを眠気が襲う。
夜更かしして今までしたことのないような重労働をやってのけたのだ。疲労が溜まっていたのだろう。
疲れた子ゆっくり達は次々に跳ねることをやめ、その場で眠りについていく。
そんな子供達の頑張りを祝すように、親達もそれに寄り添って目を閉じた。


翌朝。ゆっくりの目覚めは遅い。
おうちの入口から差し込む秋の日差しに、子まりさが一番に目を覚ます。

「ゆっくいしていっちぇね!!」

元気にピョーンと飛び跳ね、大きな声で朝のあいさつ。
そんな子まりさの目に飛び込んで来たのは、いつもと様子の違うおうちの内装だった。

「ゆ? ゆ?」

少し戸惑った後、夕べの突貫工事を思い出す。そうだ、まりさたちみんなでおうちをゆっくりさせたんだ。
しかし、昨晩の薄暗い中で味わったようなワクワクした感じは無い。
そう、薄暗い月明かりの中だったから色がはっきりと見えず、この異常な事態に気付かなかっただけなのだ。
朝の陽光が照り返るおうちの中を満たすのは、最早単なる「色」と化した紅葉の、毒々しいほどの赤、赤、赤。

「ゆ、ゆ・・・どうちたの・・・にゃんかへんだよ・・・」

ゆっくりの目には、人間と同じ「赤」「緑」「青」の三種の色覚がある。三原色のうち緑か青が目に入ってきた時、
それらの色は三種の色覚全てを刺激し、一つの刺激を受けすぎないようバランスを取っている。
しかし赤は別だ。赤は「赤」の色覚しか刺激せず、その偏りは脳に緊張や興奮を生み出す。
つまるところ赤とは、最もゆっくり出来ない色なのだ。
ヨーロッパの拷問方法で、人間を赤い色で埋め尽くされた部屋に閉じ込め、精神錯乱に陥らせるというものがあった。
この子まりさは、自らにその拷問を行ってしまったのだ。

「ゆ・・・・ゆえぇぇぇぇぇん!! おうちがゆっくちできにゃいよおぉぉぉぉぉ!!」

赤色から受ける恐怖に、子まりさはとうとう泣き出してしまう。
泣き声を受け、慌てて飛び起きる親まりさと親れいむ。他の子ゆっくり達も寝ぼけまなこをぱちぱちし始める。

「まりさ! いったいどうしたの!!」
「おかーしゃあぁぁぁぁん!! おうちがまっかにゃのぉぉぉぉぉ!!」
「おちついてね!それはきのうみんなでもみじさんをはりつけたからだよ!」
「ゆ、でも・・・でもまりしゃまっかっかはいやにゃにょおぉぉぉぉぉ!!」

もう紅葉など見たくないと言わんばかりにぎゅっと閉じられた子まりさの両目から、大粒の涙がぽろぽろと漏れてくる。
この子まりさは、昨晩の作業でも最も張り切っていた一匹だ。突然の心変わりに親達はおろおろとするしかない。
しかしやがておうちの中を見回す内、そこがもうゆっくり出来ない場所になっていることを知った。

「ゆゆゆゆゆゆゆゆ!?」
「なにごれ゛!! なんだかぜんぜんゆっぐりでぎないよ!!」
「めがいだいよ!! あんこがぎもぢわるぐなっできだよ!!」
「ゆびゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

苛烈に目に突き刺さる色彩の暴力に、親まりさと親れいむは紅葉がゆっくり出来ない葉っぱであることを即座に認識する。
親達の狼狽に、まだうとうととしていた他の子ゆっくり達も次第に事態を認識し始める。

「ゆぅぅぅぅぅ! なんじぇこんにゃこちょになっちぇるの!!」
「ゆっくちしにゃいでもみじしゃんをはがしょうね!」
「やめちぇね! れいみゅたちががんばってちゅくったおうちだよ!! こわしゃないでね!!」
「じゃあどうじゅればいいにょぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「紅葉を剥がせば良い」という、両親すらも今のパニック下では考えられなかった解を冷静に導いた子まりさの意見も、
せっかく貼った物を剥がすのは勿体ないという子れいむの下らない意地によって打ち砕かれる。

「ゆゆ? れいみゅのおりぼんがにゃいよ!?」

一匹の子まりさが、近くにいた子れいむを見て叫ぶ。

「ゆ? にゃにいってゆにょ? れいみゅはちゃんとおりぼんしてゆよ!」
「うしょちゅかないでね!! おりぼんちてないれいみゅはゆっくちできにゃいよ!!」
「ゆ、ほんちょうだ! ゆっくちできないれいみゅはやっちゅけりゅよ!!」

次第に周囲の何匹かの子まりさ達も子れいむににじり寄っていき、ぽいんぽいんと体当たりを始めた。
赤ちゃんの攻撃でも、同じ赤ちゃん同士ならかなりの衝撃だ。何故襲われるのか理解出来ないまま、子れいむは痛めつけられていく。
それは単に、背景の赤に溶け込んで子れいむのリボンが極めて見えにくくなっていたというだけのことなのだが。
しかし鮮やかな赤色に囲まれて興奮状態にあった子まりさ達は、注意して見ることもせずすぐに攻撃行動へと移ったのだ。
それに子れいむへの攻撃に集中している間は、赤い部屋の恐怖に怯えなくて済む気がしたのだ。

「やめちぇね! ゆっくちやめちぇね!」
「ゆ! まっちぇね! ゆっくちできにゃいゆっくちはちゅぶしゃないといけにゃいんだよ!!」
「やめちぇねぇぇぇ!! れいみゅちゅぶれたくにゃいよぉぉぉぉ!!」
「まっちぇね! にげにゃいでね!」

パニくっていた親も、ようやく子供達の間で起きていた異変に気付く。
いじめられていた子れいむは、餡子を吐きながらも必死におうちの外へと跳ねていく。それを興奮状態で追いかける子まりさ達。
一歩巣の外に出てしまえば、そこはまだ青々とした雑草の生い茂る草原だ。
しっかりリボンをつけた子れいむを見て、子まりさ達はハッと我に返る。

「ゆゆ? れいみゅどうちたの? けがしてりゅよ!」
「どこかでこりょんじゃったにょ?」
「ゆっくちあんこはいたらだめだよ! ゆっくちできにゃくなゆよ!」
「ぺろぺろしちぇあげゆね! ゆっくちうごかにゃいでね!」
「ゆぅ~・・・ゆぅ~・・・」

今まで自分達がいじめていたのは、リボンの無い、ゆっくり出来ないれいむだ。
目の前のれいむはリボンが付いている。だから今まで起きていたこととは関係ない。
子まりさ達の餡子はそう結論付け、突然現れた手負いの姉妹を全力で気遣い始めた。
しかし、そんな事情は子れいむには全く解らない。コロコロと変わる子まりさの態度に、子れいむは恐怖を覚えて震えていた。
そして一連の様子を後ろから見ていた親まりさにも、子まりさの暴力には正当性が認められなかった。
赤い部屋の効果で興奮状態にあった親まりさは、ぴょんぴょんと跳ねて姉妹をいじめる悪い子供をお仕置きしに向かった。

「ゆっ!」
「ゆぴゃっ! おかーしゃんにゃにしゅるの!!」
「まりしゃをふまにゃいでね! ゆっくちどいちぇね!」
「うるさいよ! おまえたちがいじめたせいでれいむがけがしちゃったんだよ!」
「にゃにいっちぇるの! まりしゃたちはれいみゅをいじめてにゃいよ!」
「しょうだよ! おりぼんのないゆっくちをこりゃしめようとしてただけだよ!」
「なにいっでるの!! おりぼんのないゆっぐりなんでごごにはいないでじょ!!」
「ゆっ、でみょしゃっきはたしかに・・・」
「いいわげじないでねぇぇぇぇぇ!! いもうとをいじめるこどもはゆっぐりつぶれでね!!」
「いやぢゃよぉぉぉぉぉぉ!! まりしゃちゅぶれたくにゃいいぃぃぃぃ!!」
「おかーしゃんどうちちゃったにょおぉぉぉぉ!?」

容赦なく子まりさ達を押し潰しにかかる親まりさに、子れいむの恐怖は増すばかり。
見兼ねた親れいむが親まりさの髪の毛を引っ張って押し留め、子まりさ達は何とか一命を取り留めることが出来た。
子れいむはほっと一息。しかし押し潰されていた子まりさ達は多量の餡子を口からひり出し、既に虫の息だった。

「なんであがぢゃんをづぶしぢゃうの!!」
「ゆっ、だっであのこどもたちはいもうとをいじめでだがら・・・」
「だがらっでづぶすごどないでじょ!! みんながわいいあがぢゃんなんだよ!!」
「げすなごどもにはおじおぎがひつようでじょぉぉぉぉぉ!? なんでぞんなごどもわがらないのおぉぉぉぉ!?」

いつもはとっても仲良しな両親までもが喧嘩を始めてしまい、巣の中に残っていた子ゆっくり達は大泣きしている。
しかし段々と巣の中も居辛くなってくる。目が刺激を受け続けるということもあるが、暖かすぎるのだ。
冬の気配を感じさせた昨日に比べて、今日は若干気温が高くなっている。
暖色に包まれた家の中では、体感温度が余りにも高すぎるのだ。子ゆっくり達の小さな体は、涙と汗でべちょべちょに溶け出している。

「ゆぐっ! にゃんだかべちょべちょすゆよ!!」
「じぇんじぇんゆっくちできにゃいよ!! れいみゅもおしょとでりゅ!!」
「まりしゃも!! ゆっくちとけちゃくにゃいよ!!」

結局、一家総出でゆっくり出来ないおうちから避難する形になった。
みんな疲れた表情で草むらの中を這っていき、あの拷問部屋から一歩でも離れようと必死だ。
傷付いた子まりさ達はもう自力で這うことが出来ないので、親れいむの頭に乗せられている。
汗にまみれた子ゆっくり達は、体中を土で汚しながら進んでいった。


「ゆぅ・・・・おかーしゃん、まりしゃおにゃかしゅいたよ・・・」
「れいみゅもごはんたべちゃいよ・・・」
「おかーしゃん、ゆっくちごはんちょうだいね!!」
「ゆっ・・・・じゃあたべにいこうね」

近くの餌場を回るゆっくり一家。しかし冬の備蓄の為に、ほとんどの食べ物は取り尽くされてしまっている。
僅かばかりに残された食べ物をちまちまと食べても、一家が満腹になるには程遠かった。
これから春まで過ごすのに充分な食糧が、巣の中にたんまりと貯蔵されているのだ。両親はもう狩りなどする気は無かった。
シーズンの終わりに向けて散り続ける紅葉だけがたっぷりと山道を覆っていたが、一家はそれを見たくもなかった。
もうお昼も近いのに、みんなお腹の中にろくに物を入れていない。
辺りの枯れかけた雑草をはむはむと噛みながら、子ゆっくり達は目に涙を浮かべている。

「むーちゃ、むーちゃ・・・こんなくささんをむちゃむちゃちてもゆっくちできにゃい・・・」
「おいちいごはんがたべちゃいよ・・・ちあわしぇーしちゃいよ・・・ゆっ・・・ゆっ・・・」

いつもはお母さんがキノコや果物をくれて、とてもゆっくり出来るのに。
ゆっくりさせてくれるはずだった紅葉さんに追い出されて、ごはんすらも食べられない。
餡子を吐き出しそうなストレスが涙となり、子ゆっくり達の目から零れ出した。

「ゆぅ・・・まりさ、やっぱりおうちにかえらなきゃだめだよ」
「あのおうちはもうゆっくりできないよ! まりさかえりたくないよ! あたらしいおうちをみつけようね!!」
「おうちにかえらないとおなかがへってゆっくりできなくなっちゃうよ!
 ごはんはぜんぶいまのおうちにあるんだよ! あたらしいおうちをみつけてもごはんはないんだよ!!」
「ゆ、ゆぅぅぅぅ・・・」

そうなのだ。
こうなれば四の五の言っている場合ではない。頑張った子供達には可哀想だが、紅葉を剥がす他無いのだ。
両親は空腹に泣きじゃくっている子供達に毅然と向き直った。

「みんな、ゆっくりおうちにかえろうね」
「「「「「ゆゆ!? やだよぉぉぉぉぉ!! かえりちゃくないぃぃぃぃ!!」」」」」
「ゆっくりきいてね! おめめをつぶってかえればゆっくりできるよ! まっかなおへやをみなくてすむんだよ!」
「みんなもこのままゆっくりできないのはいやだよね! もみじさんをゆっくりはがそうね!!」
「「「「「ゆゆゆ・・・ゆっくちりかいちたよ・・・・」」」」」」

子供達も考え直し、覚悟を決める。一番大事なのはゆっくりすることだ。
いくら綺麗な宝物とはいえ、そのためにゆっくり出来なくなってしまっては元も子も無いのだ。
ゆっくりさせてくれない紅葉さんは、早くどこかに捨ててしまおう。
そんな事を思いながら、再び真っ赤なおうちへと引き返していくゆっくり一家。
おうちに近付くに従い、子ゆっくり達は次々と固くまぶたを閉じていく。

「ゆっ・・・れいむ、そろそろついた?」
「ゆぅ、ゆっくりみてみるよ・・・」

全員が目を閉じていたのでは、おうちに入れたのかどうかすら解らない。
この中では比較的平静を保てていた親れいむが、おうちまでの距離と方向を確認するために薄目を開ける。
おうちである空洞の木は目の前に横たわっている。内側からわずかに覗く毒々しい赤色が、れいむの餡子を刺激する。

「あとすこしまえにすすめばおうちにはいるよ・・・ゆっ?」

と、そのうっすらとした視界の中に何か飛び込んで来るものがあった。
それは沢山のゆっくりありす達。れいむ達の一家の近くに住んでいるありすの一家だった。
親ありすが一匹に、十匹近い子ありすを連れている。親ありすはとても理知的で、山に関する色んな事を教えてくれた。
その教育が行き届いた子ありすも、親に似て賢くて優しく、子まりさや子れいむにはとても良い遊び友達になっていた。
頼りになるありすたちが来てくれて、荒んでいた親れいむの心はすっきりと癒される思いだった。

「ありすたち? ゆっくりしていってね・・・」
「はろはろ~ん! ゆっくりしていってね!! ふゆごもりのあいさつにきたわよ!!」
「まりしゃたちともちばらくあそべなくにゃりゅわね!!」
「ふゆしゃんがいなくなゆまでゆっくちちていってね!」
「「「「ゆゆっ、ありしゅたちがいりゅの!?」」」」
「「「「「ゆっくちちていっちぇね!!」」」」」」

大好きなありす達の声に元気付けられ、一斉に目を開いて飛び跳ねるまりさとれいむの一家。
赤いお部屋が少しぐらいゆっくり出来なくても今は気にならない。みんな巣の前で思い思いにすりすりを始める。
そうだ、と思いつく親まりさ。頭の良いありすなら、おうちがゆっくり出来ない理由を知ってるかもしれない。
ありすに頼ることで、少しでも自分達のパニックを収めたかった。

「ゆ! あのねありす、おうちのなかがね・・・」
「ゆゆっ! なんだかすてきなないそうになってるわね!!」

親まりさに言われるより早く、巣の中の異変に気付く親ありす。
しかしそこには、まりさ一家が味わうような恐怖や混乱の感情はない。
親ありすの声を聞いた子ありす達も、ぞろぞろと巣の中に入っていく。子まりさや子れいむはそれを心配そうに見ている。

「ゆゆ~! にゃかにゃかとかいはね!!」
「とっちぇもゆっくちちたいいおうちよ!」
「すてきなこーでぃにぇいとね!! こんどありしゅたちもまねちたいわ!!」
「これってまりさたちがやったんでしょ? すごいわ!!」
「ゆ、ゆぅ~~ん・・・」

いつも驚かされてばかりだったあのありすを驚かせ、更にすごいと褒められた。
素直に喜ぶべきなのか、まりさ一家は複雑な表情を浮かべていた。
それにしても、ありす達は真っ赤なおうちに居ても何だか平気みたいだ。やっぱりありすは特別なんだろうか。
ありす達と一緒なら、このおうちでもゆっくり出来るかも知れない。話によっては、ありす達も一緒に越冬に誘おうか……

「ゆぅ・・・にゃんだかぽかぽかしゅゆわね!」
「ひーたーをきゃんびしちぇるのにぇ! とっちぇもとかいはだわ!!」
「ゆっゆっ・・・なんだかあちゅくなってきちゃわ・・・」
「ゆゆぅ、しょれにまっかないろをみていたらどきどきしてきちゃわね・・・」

安心して眺めていたまりさ一家だが、段々と様子がおかしくなってくるありす達に不安を覚え始める。

「ゆゆゆ・・・・にゃんだかもやもやしてきちゃよ・・・」
「ま、まりさぁ・・・ありすすっきりしだぐなっでぎだわ・・・」
「ゆっ!? な、なにいってるのありす!?」

おうちの中を見回していたありす達が、巣の外にいる一家の方にゆっくりと振り返る。
その理知的だった顔立ちを醜く歪ませていたのは、真っ赤な色彩のもたらした狂気。
ありす達は全然平気などでは無かった。赤色の与える興奮が、ありす種の秘める巨大な性欲のタガを外したのだ。
まりさ一家は全員ビクリと震え、逃げ出すのに数瞬の遅れを取る。それで全ては決した。

「まままままままりさぁぁぁぁぁぁ!! このからだのほてりをしずめてぇぇぇぇぇ!!」
「ゆぅぅぅぅぅ!? ありずどうじだの゛!! ゆっぐりじでねぇぇぇぇぇ!!」
「まりしゃぁ!! いっしょにしゅっきりちようねぇぇぇぇぇ!!」
「れいみゅでもいいわよ!! とかいはのてくでちゅっきりしゃしぇてあげりゅわぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふたりいっぺんでもいいにょよ!! のっかるのがいいにょ!? のっかるのがいいにょ!?」
「ふゆのさむさにゃんて、ふたりのあいのほのおでとかちつくちちゃいまちょうねぇぇぇぇ!!」
「ちゅっきり!! ゆっくちちゅっきりゆっきゅりちゅっきりーーー!!」
「「「「「ゆゆゆゆ!? ありしゅ! やべでねぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」

豹変したありす一家は狂気のままに、しかし手際良くまりさ一家を襲っていった。
甘い匂いのする粘液を撒き散らしながら、親まりさに激しく頬をこすりつける親ありす。
空腹と疲労で動けない親まりさは、なすすべなくその柔らかい頬を犯されていく。
親れいむが涙を流しながら親ありすの髪を引っ張り、「やべでね!やべでね!」と叫ぶ。
が、親ありすは左右の頬を別々に揺さぶるという高等テクニックを繰り出し、まりさとれいむは両方同時に強姦されてしまった。

子供達も負けてはいない。餡子を通じて代々受け継がれるものなのか、皆すっきりのやり方を体で理解していた。
子まりさも子れいむも、すっきりなんて知らない。「すっきりー!」というのは水浴びをして綺麗になった時に言うものだ。
しかし今、親友である子ありすからされている「すっきり」は、見た事もない体液を塗りたくられる全くすっきり出来ないものだ。

「やべでね! ゆっぐぢやべでねぇ! いちゅものありしゅにもどっちぇよぉぉぉぉぉ!!」
「んほおおぉぉぉぉぉぉ!! しょんなぷれいもありにゃのね!! まりしゃしゅてきぃぃぃぃ!!」

きめ細やかでしっとりとしていて、一緒にすりすりすると凄く気持ちよかった子ありすのほっぺた。
それが今は粘液に覆われ、「きもちいい、ぎもぢいい」と言って擦り付けられても子まりさは気持ち悪いだけだ。
みんなより一回り大きな姉ありすは、子まりさ二匹に同時に圧し掛かり、小さくかわいらしい帽子を押し潰しながら身体を揺すっている。
振動さえ伝われば絶頂に至るゆっくりの交尾においては、時にこのような無法の体位も罷り通ることとなる。

「「「やだやだ!! こんにゃのやだよおぉぉぉぉぉぉ!! しゅっきりちたくにゃいぃぃぃぃぃ!!」」」
「んほほほぉ!! れいみゅたちのしまいあい、とっちぇもときゃいはだわ!!」
「ありしゅたちにもしょのぎもぢよさをわげでねぇぇぇぇぇ!!」
「こうなっちゃらみんにゃでしましょうね!! しまいどんがっしぇんよぉぉぉぉぉ!!」

子れいむをそれぞれ犯しながら、それらを一箇所に押しやっていく三匹の子ありす。
子れいむの姉妹同士がそれぞれ振動を与え合うことで、三匹分の振動が細かく加えられ、振動も三倍となる。
更にその子れいむ達に接している子ありす達に反響する振動を加算し、最終的に全員に伝わる振動は六倍。
六匹分の快感を全員で共有するという大業を、子ありす達は子供の遊び感覚でやってのけたのだった。

「まりしゃああぁぁぁ!! まりしゃのおきゅちとっちぇもあまあまよ!! いつみゃでもなめりゃれゆわぁぁぁぁ!!」
「んむううううう!! んぶ!! うぶぶぶぶぶ!!」
「うふふふふ!! ありしゅのすてきなふぁーすとちゅっちゅ、まりしゃにあげちゃったわぁぁぁぁ!! ごうふんずるぅぅぅぅぅぅ!!」

正面に向き合い、顔面をぶつけ合いながら振動を加えるタイプのすっきりを選択した子ありす。
頬を擦るような繊細な動きは出来ないものの、頑なに閉じられたまりさの唇を舌を使って巧みにこじ開け、
口の中、身体の内部から大胆に振動を加える。子まりさの餡子はぷるぷると前後左右に揺さぶられ、未知の快感を生み出していた。
いつもはごはんを食べる時も上品だった、子ありすの素敵なおくち。子まりさは度々ぼーっと見とれることもあった。
まりさのふぁーすとちゅっちゅは、いつかありすに捧げようと思っていた。その念願が果たされた結果が、今だ。
子まりさの顔をだらだらと涙が伝っていく。それが潤滑油となり、スムーズな子ありすの動きをサポートしていた。
数々の激情が絡み合い、やがて場全体のボルテージが最高潮に達する。

「あああああまりざああぁぁぁぁぁぁ!! ずっぎり!! ずっぎりずるわよぉぉぉぉぉぉ!!! づいでにれいむもねぇぇぇぇぇ!!」
「いやあああぁぁぁぁぁ!! ばりざずっぎりじだぐないのおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「やべでぇぇぇぇぇぇ!! どぼじでごんなどごずるのおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「まままままままりしゃあぁぁぁぁ!! こっちもしゅっきりししょうだよぉぉぉ!!」
「んほほほっ、おねえちゃんも!? ありちゅもちゅっきりしゅるよぉぉおおおぉぉ!!」
「こっちもしゅっぎりじぞうよ!! このれいみゅよしゅぎるのおぉぉぉぉぉぉ!!」
「やべぢぇねぇぇぇぇぇぇ!! れいみゅちゅっきりじだぐないよぉぉぉぉぉぉ!!」
「まりしゃのおぼうじべちゃべちゃにじにゃいで!! これじゃゆっぐぢでぎないぃぃぃぃぃぃ!!」
「れいみゅおねーちゃんとごんなごどじだぐないにょにいぃぃぃ!! ゆっぎゅりおざえにゃいでぇぇぇぇぇ!!」
「ありしゅやべでぇぇぇ!! しゅっぎりちたらあぶにゃいの!! あぶにゃいの゛ぉぉぉぉぉぉ!!」
「い~いぃぃぃい? おちびちゃんだぢぃぃぃぃぃぃ!! みんなでながよぐずっぎりじまじょうねえぇぇぇぇぇぇ!!」
「おかーしゃんわかっちゃよぉぉぉぉぉぉぉ!! いぐっ、ありしゅいぐよおぉぉぉぉっ!!」
「しぇ、しぇーのでいぎまじょうね!! しぇ、じぇじぇじぇじぇじぇーのおぉぉぉぉぉぉぉ・・・」
「「「「「「「「「「「すっきりー!!」」」」」」」」」」」

瞬間、訪れる静寂。ありすもれいむもまりさも、みな一様の幸福に満ちた表情で絶頂、すっきりを迎えた。
ここまではゆっくりの本能的な反応である。その後の明暗ははっきり分かれ、犯されたまりさやれいむからは蔓が伸び始める。
ただでさえ小さく、また空腹に苦しんでいた子ゆっくり達は、赤ちゃんに餡子を吸い上げられるとたちまち干からびて死んでしまった。
ポツポツと実っていく、出来損ないの赤ちゃん達。みな意識が形成されると同時に、母体と共に朽ち果てた。
親まりさと親れいむも同様。疲労困憊だった所に親ありすの激しいすっきりである。
にんっしんっに耐えられるだけの体力は最早残ってはいなかった。

「あ・・・ありずぅ・・・・どぼじで・・・・・・・」
「いっじょに・・・ゆっぐじじだがっ・・・・」


すっきりの余韻に浸りうっとりとしていたありす一家が我に返ると、目の前に広がっていたのは地獄と見紛う光景。
黒ずんだまりさ一家と、それらの頭から枯れ落ちた、小さな赤ちゃん付きの何本もの蔓の山であった。
理性が飛んでいる間の事を、ありす達は覚えていられない。理性だけがありすの自我を形成しているのだ。
その自我を成す理性が全て吹き飛んだ間の事を、その餡子の一体どこが記憶していられようか。

「ゆ? ま・・・まりしゃたち!? いっちゃいどうじだの゛ぉぉぉぉぉぉ!!」
「ゆぇぇぇぇぇん!! にゃんでこんにゃことになっちぇるのぉぉぉぉぉ!?」
「もっちょれいみゅとあしょびたかっちゃのにぃぃぃぃ!!」
「ゆぐ・・・ゆぐ・・・まりしゃぁ・・・ありしゅのふぁーすとちゅっちゅあげちゃかった・・・」
「いったいどぼじでごんなごどになったのぉ・・・まりさ・・・れいむぅ・・・」

ありす一家は深い悲しみに沈む。とても仲良しだったゆっくりの一家が、突如として非業の死を遂げたのだ。当然である。
その理由は解らないが、大人である親ありすには死体の様子を見て何となく察することは出来る。
これはゆっくりがにんっしんっに失敗した時の死体。きっと恐ろしい強姦魔に襲われたのだ。ありすは身震いした。
しかしこのような時でも感情に任せて泣いてばかりいないのが、ありす種の強さでもある。

「ゆっ・・・このままなきがらをのざらしにはしておけないわ」
「おかーしゃん、ゆっくちどうしゅるの?」
「つらいけど、たべてあげましょう・・・それがゆっくりのくようになるのよ」
「ゆぅ・・・わかっちゃよ・・・ゆっ、ゆっ・・・ゆえぇぇぇぇ・・・・」
「むーちゃ、むーちゃ・・・ちあわちぇ・・・」

その余りの甘さに、反射的に口を衝いてしまった「ちあわちぇ」。
だが子ありす達にとって、こんなに幸せでない食事は生まれてからしたことがなかった。
ありす達が黙々とまりさ一家の死体を口に収めていく様子は、まさに人間で言う葬式のそれである。
やがて全てを食べ終えたありす一家は、紅葉でコーディネイトされたまりさ一家のおうちへと入っていく。

「このとかいはのおうちも、すむゆっくりがいなくなっちゃったのね・・・」
「にゃんだかしゃびしぃよ・・・」
「しゅごくもっちゃいにゃいね・・・」
「しょうだ、このまましらにゃいだれかにこわしゃれるぐりゃいなら、ありしゅたちがすもうよ!!」
「すごくゆっくちできるおうちだよ!! まりしゃたちのぶんもゆっくちしてあげちゃいよ!!」
「ゆ、そうね・・・みんなでまりさやれいむたちのおもいをとげてあげましょう・・・」

実際、そこはかなりゆっくり出来る場所だった。暖色効果でとても暖かいし、食糧がとにかく沢山ある。
単に弔いという口実だけでなく、元の巣に戻るよりもこちらの方が越冬に有利だ、という現実的で冷酷な判断も働いたのかも知れない。
しかし、近くに正体不明の強姦魔がいるかも知れないというリスクを跳ね除けたのは、やはり友愛の情からだったろうか。
とにかく、この持ち主を失ったおうちにはゆっくりありすの一家が住むことになった。理性を飛ばすトリガーと共にだ。
ところで紅葉というものが赤さを失うにはどの程度かかるのだろうか。
巣の内側を覆い尽くす紅葉は、子ゆっくり達の頑張りによって押し葉に近い状態となり、保存は良好である。
もしも春までその彩りが保たれるのだとすれば。冬を越したゆっくり達が友達の一家に会いに来た時、
そこに待っているのはきっと不幸だ。

終わり


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最終更新:2022年05月21日 23:51