「ゆ・・・・ゆ?ここはどこなの?」
目を覚ましたまりさが周りを見回す。しかし周りは真っ暗なので何も見えない
まあ例え明るくても、自分の背中に『7』というシールが張ってあることに気づきはしないだろうが。
仕方なく適当に動こうとしたが、何か壁にぶつかって動けなかった。
「ゆっくりできないんだぜ!」
怒ってはみたが何も起こらない。仕方がないのでまた眠ることにした。



「おい、起きろ。」
「ゆ?」
何者かの声で目覚めたまりさ。すると地面に顔からぶつかった。どうやら落とされたようだ。
「だれなの! なにするの? ゆっくりできないひととはあそばないよ!」
そう言いながら起き上ったまりさ。起き上ったまりさの目に映ったのは、目の前に広がる海だった。
実際にはプールなのであるが、海など見たこともないまりさのからすれば海であった。
「うみだよ! すっごくおおきいね! おみずさんもゆっくりしてるよ! はじめてみたよ!」
ピョコンピョコンと跳ねるまりさ。それを後ろから見ていた男は
「海って単語は知ってんだな・・・森に住んでるくせに。」
そう呟くとどこかへいってしまった。
まりさは改めて周りを見渡した。正面に見えるのは水。左右と後ろは白い壁であった。壁の高さも跳ねて越せるような高さではなかった。
まりさはとりあえず、喉が渇いたので目の前の水で潤そうとした。がしかし
「ゆべ!」
まりさは何かにぶつかった。実はアクリル板で正面は塞がっているのだが知る由もない
「ゆべべ・・・」と痛がってると、上から何かが降ってきた。
カツンと落ちたそれは木の棒程度の大きさの棒で、先に水をとらえる為の丸みを帯びた面が付いている。
要はパドルみたいなものだった。
「ゆゆ! このぼうならゆっくりこげるよ! おみずさんでゆっくりできるね!」
嬉しそうにそれを加えるまりさ。するとどこからか声が聞こえてきた。


「えー、ただいまから、本日の『まりさの水上レース』を行います。
えー配布した資料と、正面モニターに映っているまりさ達の様子が判断基準になっておりますので
それを元にガンガン賭けちゃってくださいね。オッズは右のモニターに映っております。」
どこからかガヤガヤと声がしてきた。そして目の前で何かが動く音が聞こえた。

「ではこれよりレースを開始いたしまう。本日の解説は店長に来ていただきました。店長よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「それでは、スタートです!」

「ゆ?」
まりさは後ろから何か音がすることに気づいた。そして後ろを振り返ると、壁がこちらに向かってきているではないか。
「ゆゆ! かべさんゆっくりしてね! ゆっくりしてね!」
しかし壁は進み続ける。
「ゆゆ・・・ゆ! おみずのうえににげるよ!」
まりさは唯一の逃げ道に気づくと、急いで帽子を水に浮かばせた。そして落ちていたパドルを口にくわえると
帽子の真ん中に静かに乗った。そのままパドルを使い、バランスが取れてるを確認すると、こぎ始めた。
こぎ始めてまりさは初めて気づいた。自分の横にも同じまりさが居た事に。みな一生懸命にパドルを操っていた。


みなプールへこぎ出したなか、一匹だけ残っていたまりさが居た。
子まりさだった。親のまりさが死に、片親のれいむと暮らしてきた子まりさは、泳ぎ方を知らないのだ。
「ゆー! まりさはおよぎかたをおそわらなかったんだぜ! だれかたすけて!」
必死で知恵をを巡らす子まりさ。他のゆっくりの様子を見て、ようやく見よう見まねで帽子を浮かべるが時すでに遅し。
壁はまりさを突き飛ばした。
「ゆうううううううううう!!!」
顔から帽子に突っ込んだ子まりさ。目の前は真っ暗である。さらにパドルもないので顔を帽子に突っ込んだまま浮かぶ羽目になってしまった。
「くらいよ! こわいよ! もういやおうぢがえ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛」
「おおっと9番のまりさ。顔から帽子につっこんでしまいました。これはマズイ。ひじょーーーーにまずいです。」
実況の大声が響き渡る。
「だづげでえ゛え゛え゛え゛!!!!! ばりざぐらいのごわ゛い゛い゛!!!!」
助けを呼ぶ声も帽子の中で木霊するだけだった。そのままジタバタしていたまりさはついにバランスを崩す。
右側に大きく傾いてまりさはそのまま水へダイブする。
「ゆ! おみずさんはゆっくりできないよ! やべでね! おくちにおみずざんがはいぶぅ! うぶ!」
大量に水を飲んだまりさはそのまま沈んでいった。ブクブクと泡を吹き、体がバラバラになっていく。
(もっとゆっくりしたかった・・・)
そんな事を思いながら、まりさは沈んでいった。


「ああっと!9番まりさが沈みました!失格です!やはり経験の浅い子どもには無理だったのでしょうか!
っとそうこうしているうちに、他のまりさ達は第一スポットに差し掛かりました。」

「ゆゆ! ゆっくりできそうなたべものがあるよ! まりさはおなかがへってたんだよ!」
ゆっくり達の目の前に見えるのは、どこからか吊るされたチョコだった。飛べばちょうど届く高さだ。
先頭集団にいた1番と5番のまりさはそれに向かって勢いよく飛んだ。
「ゆゆ~」
見事チョコをゲットし、そのまま下に落下するまりさ。そのまま帽子へ落ちた。
そして帽子は浸水した。
「ゆ! どうじしまりさのぼうしにおみずさんがはいってきてるんだぜ! おみずさんははいってこないでね!」
勢いよく落下すればその分帽子は沈む。何のために静かに帽子に入っているのか。
「だづげて! ぞごのばりざだづけでね゛! あんよがぬれるがらだづげで!」
1番のまりさが隣を通り過ぎた2番のまりさに助けを求めた。しかし、2番のまりさからは
「ふつうにかんがえればわかるんだぜ。こんなこともわからないばかなまりさはゆっくりしんでとうぜんなんだぜ!」
そういって華麗なパドル捌きでスィーと通りすぎた。
「どうじでばりざぶげぇ! おみずざんがぶ・・・・」

「第一スポットでリタイアしたのは1番と5番のまりさだァ!!!!
他のゆっくりは順調に通り過ぎてますね。解説の店長。」
「ええ、流石にあれに引っかかるのは馬鹿でしょう。よく今まで生きてこれましたね。」
「さあ店長の辛辣なコメントを聞いてる間に、次のスポットに差し掛かったァ!」


「ゆ! おみずさんがゆっくりしてないよ! ゆっくりしていってね!」
先頭にいたまりさが波の動きに気づいた。
「このスポットは人工的に波と渦を起こしています。果たしてここを超えられるか!
このレース屈指の難易度を誇るスポットです!」

屈指のな難易度と言う実況の言葉に間違いはなかった。
ここで数多くのまりさが沈んでいった。
「だれがだづげでえ! ぶげ! おみずさんがぐぢに!」
荒れた波に対応できないまりさは沈んでいった。そして波を超えたとしてもその先の渦に飲み込まれていった。
3番のまりさも例に漏れず、渦に沈んでいった。
「ぎぼちわるいよ! ぐるぐるまわらないでね! ゆっくりしてね!」
渦にのまれていく3番まりさ。ぐるぐると回り、渦の中心に来たまりさはそのまま沈んでいった。
「ゆぶ! がぶ! ゆぶうう・・・」
どうしようもなく沈むまりさ。まりさには更なる恐怖が待ち受けていた。
「ぶぶ! がほ! ゆゆゆゆ!!!!」
突如何かで斬られたかのような痛み。いや斬られていた。渦を作りだしたスクリューの羽によって。
「・・・・・・・・・・!!!!」
もはや喋ることもできず切り裂かれていったまりさ。帽子も残らない最後であった。
結局ここを超えられたのは2番・7番・8番の三匹のまりさだけだった。


7番まりさは必死に漕いでいた。疲れては居たが休むわけにもいかなかった。
なんでこんなところに居るかわからないが、とにかく進むしかない。愛するれいむの為にも

「ゆゆ! ゆゆ! ゆゆ!」
一心不乱に漕ぐまりさ。そこへ並走していた2番まりさが話しかけてきた。
「ゆゆ! もうちょっとゆっくりするべきなんだぜ!」
「ゆっくりできるわけないでしょ? ばかなの? しぬの?」
「ゆゆ! まりさはしらないからそんなことがいえるんだぜ。
このレースはいちばんいがいは、おうちにかえれないんだぜ!」

「ゆゆ?どういうことなの! ゆっくりしないでせつめいしてね!」
「まりさもいっかいこのレースにでたんだぜ! でもにばんめだからまたレースにでるはめになったんだぜ!
だからまりさはここでゆっくりしぬんだぜ!」
「ゆ?」
そこで7番まりさはやっと気づいた。何故まりさは近づいてきたのか。
2番まりさはパドルを帽子に叩きつけた。それにより叩きつけられた場所が水に沈み、浸水した。
「ゆ! やめてね! まりさにひどいことしないでね!」
こちらもパドルで応戦するが、その前に離脱した2番まりさ。
「そのままゆっくりしてね!」
何食わぬ顔で去っていった。

「ゆ! おみずさんをそとにだすよ!」
まりさは急いで水を口に含み、外に吹き出す。幸い量は少なかったのでなんとかなりそうだった。
「ゆうううう・・・・ゆべ! ゆうううううう・・・・ゆべ!」
(もうすこしでおみずさんがぜんぶぬけるよ。はやくしないゆげぇ!)
突然まりさの体が浮いた。そして空高く舞い上がった
「ゆ~おそらをとんでるみたい~♪・・・ってどうじでれみりゃがいるのおおおおおおおおおお!!!!!」
まりさが空高く浮いたのは胴なしれみりゃがまりさを掴んだせいであった。
「うー!うー!」
れみりゃは嬉しそうにまりさを掴むと、そのまま高台に着地した。そして今日の夕飯を食べ始めた。
「いじゃい! やべでれみりゃ! おねがいじまずぎゃい! がみのげをびっばらないでええええ!!!」
長い金髪を牙で引っ張り抜くれみりゃ。そしてそのまま頭に牙を突きたてた。
「うー!」
「あんごずわないでええええええ!!!!」
体の中の餡子がドンドンと吸われていくのがわかった。身が軽くなると同時に意識も消えていった。

「ゆがぁ・・・・からだがざぶいよ・・・れいむ・・・もっとゆっくりしたかっ・・・」
餡子を全て吸われたまりさは、マスクの様に皮だけになり、そのまま捨てられた。


「ああっとここで7番がれみりゃに捕まってしまいましたね~」
「そうですね。今のは2番のファインプレイでしたね。あの2番は前回出場してますから、経験が生きたのでしょう。」
「さて第三スポットを無事通過したのは2名!勝つのは2番か8番か!ゴールは目の前です!」

2番まりさはこれでやっとゆっくりできると思っていた。現在自分はトップだ。後ろのまりさには追いつかれないだろう。
後は目の前の台に飛び乗るだけでいい。そう思っていた。
事実まりさはトップでゴールの台に飛び乗った。
「ゆゆ! まりさが一位だよ! にんげんさんはとっととまりさをおうちにかえしてね!」
高らかに叫ぶまりさ。すると少し遅れて8番まりさがやってきた。
「おお、おそいおそい。 のろまなまりさは、とっとともういっかいレースをしてねぎゃ!」
2番まりさは最後までセリフを言えなかった。8番まりさに水の中へ突き飛ばされたからだ。
「ゆぎゃ! なにするんだぜ! さっさどぎゃ!」
追い討ちをかけるようにパドルで2番まりさの頭を叩く8番まりさ。容赦なく叩いてくるそれにより2番まりさは
何も言えずに沈んでいった。


「ゆ! だれもいなくなったよ! まりさがゆうしょうだね!」
大声で叫ぶ8番まりさ。実況はと言うと
「えーーー。ただいま事故により、2番がリタイアしてしまったので。繰り上げで8番まりさが一位になりました。
まあよくあることですね。優勝は8番まりさ! オッズは1.4倍です。」
くっそー!だのいよっしゃー!だの人々の落胆と喜びが混じった声が会場を包んだ。



8番まりさは森まで車で送られた。
「また優勝か。おめでと。」
実況の男がまりさにそう言った。
「ゆ! あんなよわいまりさあいてなららくしょうだよ! じゃーねおにーさん! またレースがあったらよんでね!」
「おお。今度は四日後だな。日が四回登ったらまた来るよ。」
「ゆゆ~。」
まりさはピョコンピョコンと跳ねていった。
男はその後ろ姿を眺めながら
「流石に7回も出てるだけあるな。しかしまあ・・・いつもは拉致るのに自分から出してくれっていうのは初めてだな
まあ確かに腕はいいんだが。最後の突き飛ばしがなんでか人気あるし。」


「ゆゆ~ただいまはにー!」
「ゆゆ! おかえりなさいだーりん! ゆっくりしていってね!!!」
「「「おとーしゃんおかえりなちゃい!」」」
「おとーさんのぼうしからとかいはなにおいがするわ!」
まりさは帽子を取ると、中から大量のお菓子を取り出した。
「ゆー! とかいはのでぃなーよ! いもうとたちからさきにたべていいわよ!」
「ゆー! ゆっきゅりたべるよ! みゅーちゃ!みゅーちゃ!ちあわちぇー!」
子供たちが食べているのを見ながら、親ありすはまりさにスリスリしてきた。
「きょうもたいへんだったわねだーりん」
「あんなまりさたちなららくしょうだよ! おひさまがよんかいのぼったら、またいってくるよ!」
「がんばってねだーりん!」
「おきゃーしゃんたちもたべよー!」
子ありすの声を聞いて二人もオヤツを食べ始めた。


【あとがき】
とある絵を見て思いついた。続きはしばらく後になりそうです
あと微妙に名前間違えてました。正しくは『バスケ』のひとです
細かくてスイマセン。

byバスケの人
過去作
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2
悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3
お兄さんとドスれいむ
鬼意屋敷殺人事件
どすの加工所
幻想樹の迷宮
幻想樹の迷宮Ⅱ
徹夜でゆっくりしようぜ!
徹夜でゆっくりしようぜ!2
地震
ゆーうーかい
ゆーうーかい 解決編
ゆーうーかい番外編 ~ゆっくりプレイス~
ゆっくりパニック
れみりゃをむーしゃむしゃー
帽子のないれみりゃ
ゆっくりプレイスを求めて





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最終更新:2022年05月18日 23:14