• 俺設定ありです。
  • 初投稿です。



幻想郷の、人里から離れた森の真中にぽつんと広がる円状の平原に、
構成する個体数が70匹ほどのゆっくりの集落があった。

平原のあちこちには盛り土が出来ており、
その中に、集落のゆっくりの家族が暮らしていた。

れいむが、まりさが、ぱちゅりーが、
ありすが、みょんが、ちぇんが、と、
めーりんやゆうかといった希少種を
除くほとんどのゆっくりの種族がこの集落にはいた。

集落の付近には熊などの凶暴な野生動物も少なく、
たまに来るありすの群れや、れみりゃやふらん以外に
危険らしい危険も無く、
食料も豊富で、みな思い思いに怠惰で、
ゆっくりとした生活を送っていた。

秋晴れした気温は寒くとも日差しが暖かい、いい日だった。
冬ごもりの準備もほとんど終わり、
この日も、親子で人間にとっては耳障りな「おうた」を
歌ったり、子供同士で遊んだり、虫を追っかけたりと
それぞれのゆっくりを満喫していた。

彼らの内、誰ひとりとして、この平和な生活が、
突如として崩れ去ってしまうなどと予想したものはいなかった。



最初にそれに気づいたのは、
平原の縁周円のあたりで中身の無い雑談をしていた
若いゆっくり達のグループの中にいた、
この群れで若衆の頭となっているゆっくりまりさだった。

「ゆっ!・・・・・・なんだかゆっくりできないにおいがするよ!」

一緒に雑談していた若ゆっくり達にざわめきが走った。

このまりさは群れの中でも特別に嗅覚が良く、
他のゆっくりには感じ取れない臭いを
いつもいち早く感じ取っていた。

また、その為なのか勘も良く、
頭も良く、警戒心が強かった。

何か良からぬ臭いを感じると今の様に
「なんだかゆっくりできないにおいがするよ」といい、
群れの皆に警戒を促すのだ。

そして、彼の危機予知の的中率は
非常に高かった。

発情したアリスの群れや、れみりゃ親子などの襲来を
事前に感じ取り、何度も群れの危機を救っていた。

それゆえに、群れの若衆からは頭として尊敬されており、
頭の良い長老ぱちゅりーを始めとする村の指導層を含む
大人ゆっくりからも一目おかれていた。

そのまりさがこの台詞を言ったのだ。
恐らく何か良くない事が起こるに違いない。

「まりさ、どんながにおいするのっ!?」
若衆頭のまりさの取り巻きのれいむが声を荒立てて聞く。

「ゆっ!まだにおいがとおいからはっきりわからないけど、
ゆっくりできないなにかがこっちにきてるのはたしかだよ」
若衆頭まりさは顔を顰めながら言う。

「ゆぅっ!とにかく「おさ」にしらせるよ!ちぇん、おさのところに
ゆっくりはやくいってきてね!」
「おさにしらせるんだねー。わかるよー。」
若衆頭まりさが取り巻きのちぇんの一人にそう指示すると、
早足のちぇんは凄まじい速さ(あくまでゆっくり基準の)で
集落の中央、村の長老ぱちゅりーの家へと向かって行った。

「ゆっ!とにかく、なにがくるか「てーさつ」にいくよっ!ゆっくりすばやくついてきてね」
「「「ゆっくりすばやくいくよ」」」

若衆頭まりさが臭いの元を探るため、森の中へと分け入っていく。
それに、彼の取り巻きのれいむ、まりさ、そしてありすの三匹が続く。

彼らは、ゆっくりにしては勇敢で、頭が良く、群れの皆を愛していた。
それ故に、群れの危機になるやもしれない存在を探るために、
自ら危機へと立ち向かって行った。
それは、たとえこの世で最も下劣で下等なナマ物であるゆっくりと言えど、
称賛されるべき勇気ある行動であった。
しかし、その勇敢な行動も、今回は何の意味も持たなかったのだが。


「むきゅぅ・・・・まりさが言うからには本当なのね。
わかったわ。群れの皆には子供を家の中に隠すように言って」
「けーかいけいほうなんだねー。わかるよー」
長のぱちゅりーはゆっくりにしては聡明だった。
話し言葉に漢字が使われていることからもそれが伺える。
長ぱちゅりーは、群れの皆に警戒を促すようにちぇんに言うと、
自分も巣から飛び出た。
何が向かってきているにしても、取り敢えず大人ゆっくりを集めて
何事にも対応できるようにしておくにこしたことはない。
まりさが偵察から戻って来たらそれを聞いて、村の大人たちで
対策を立てる。これで、群れは何度も危機を乗り越えて来た。
長ぱちゅりーは今度も、これで危機を乗り越えられると信じて疑っていなかった。


「ゆぅ・・・・まりさおそいね・・・」
「ゆっ!たしかに、すこしゆっくりしすぎだよ」
いつもならば、とっくに戻ってきてもおかしくない
ぐらいの時間が過ぎても、若衆頭まりさは帰ってきていなかった。
集落の中心部に集まった大人ゆっくり達から不満の声が溢れる。
しかし、それも勉強をサボった子どもに小言言う親のような調子で、
誰一人として若衆頭まりさに、本気で怒ったり心配している個体はいない。
この集落の個体は皆、若衆頭まりさに絶対の信頼を置いていた。
彼は嗅覚や頭脳だけでなく、肉体でも優れていた。
以前れみりゃが集落を襲撃した時も、その素早い動きでれみりゃを
翻弄し、戦いを勝利に導いたのだ。
あの凄いまりさが死ぬわけない、と村のゆっくり達は彼の能力を盲信していた。

それから、さらに時間が立った。
流石に、群れの大人ゆっくり達も、若衆頭まりさを心配し始めた。

「ゆぅ・・・・・・いくらなんでもゆっくりしすぎだよ!」
「まりさ、ゆっくりはやくもどってきてねっ!」
群れのゆっくり達は、森へと向けて大声をあげる。
しかし、森からは何の音沙汰も無かった。

「むきゅーっ・・・・・・・」
長老ぱちゅりーはかつてない焦燥感に襲われていた。
群れ最強ともいえるまりさが帰ってこない。
ひょっとすると・・・・
(ひょっとすると・・・・人間!)
人間。
長老ぱちゅりーは生まれてこのかた、実物を見た事は無いが、
それが如何にゆっくりできない存在であるかは
親から何度も聞かされたので知っていた。

曰く、その大きさは山のようであり、
一度狙われたゆっくりの村は根こそぎ殺されてしまうのだという。

(でも・・・・)
この集落は、人間の「ゆっくりプレイス」からはかなりの遠くの
所にある筈だ。そんな遠くまで人間がはたしてわざわざやって来るのだろうか。
長老ぱちゅりーは今まで無かった事態に、どうすれば良いのか判断がつかなかった。

「だいじょーぶだよー。まりさはすこしゆっくりしてるだけだよー。
かならずかえってくるよー」

長老ぱちゅりーが動揺しているのを悟ったのか、ちぇんがそんな事を言ってくる。
いけないいけない、長老である自分が動揺などしては。
「むきゅっ!そうね、まりさを信じましょうね」
長老ぱちゅりーはそう言ってちぇんにほほ笑んだ。


結論から言うと、この時点でぱちゅりーはまりさの事など放っていて、
一旦村を棄てて逃げるべきだったのだ。
そうすれば、これから訪れる厄災を被害を、少しは軽減できたであろうに。


「ゆっ・・・なんかくさいよ!」
それからさらに時間がたった時、一匹のれいむがそんな事を言い出した。
「どうしたの、れいむ」
「くさくて、ゆっくりできないにおいがするよ」
つがいのまりさの質問に、れいむがそう答える。
それを皮切りに、一斉に無い鼻をひくひく動かして
臭いを嗅ぎ出す群れの大人ゆっくり達。

「ゆっ!たしかにくさいよ」
「ゆっくりできないにおいがするよ」
だんだん臭いが強くなってくるにつれて、
騒ぐゆっくり増えていく。
そんな中、ゆっくりの中では比較的嗅覚が強いちぇんが、
青ざめた顔をしだした。
「むきゅっ・・・どうしたちぇん?」
心配したぱちゅりーの質問にちぇんは青ざめながら答えた。
「わかるよー・・・・死んだゆっくりの臭いだね・・わかるよー・・」

そう、ちぇんがそう言った時だった。
森の奥から、聞いたことも無い、恐ろしい雄たけびが聞こえて来たのは。

「JAOOOON!」
「JAOOOOOON!!」
「JAOOOOOOOOON!!!」
「JAOOOOOOOOOOOOON!!!!」

「「「「JAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」



「「「だんなのごれぇぇぇぇぇぇっっっ!」」」
「「「「ごわいよぉぉぉぉっ!ゆっぐりでぎなぃいいいいいっ!」」」」

かつてない事態に、ゆっくり達は恐慌状態に陥っていた。
徐々に強まっていく死臭、不気味な奇声。
それはありすの群れとも、れみりゃともふらんとも違っていた。
この不気味な状況に加え、彼らが頼りとする若衆頭まりさが
未だ戻ってきていないのも、混乱に拍車をかけていた。

「「「ばりざぁぁぁぁぁっ!どごぉぉぉぉぉっ!?ばやぐででぎでよぉぉぉぉぉっ!」」」
「「「ゆっぐりじないでででぎでぇぇぇぇぇっ!!」」」

「わかるよー!ちょっと見てくるんだよーっ!」
あまりの群れの混乱に、長老ぱちゅりーが止める間もなくちぇんが森の方へと駆けだした。

「ぎにゃっ!」
ちょうど、森と平原の境目にちぇんが来た時、
突如、森の中から飛来した何かが、ちぇんに衝突し、
ちぇん諸共、群れの方に転がって来た。

「いたいよーっ!わからな・・・・い・・・・」
頭をぶつけて涙目にお決まりのセリフを言おうとしたちぇん
の口が止まった。大きく眼を見開いている。
それは長老ぱちゅりーを含む群れの大人ゆっくりも同じで、
眼を限界まで見開いて、声も無く「それ」を凝視していた。

「それ」は若衆頭まりさの死体だった。


「「「「「ばりざぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」
「「「「「どぼじでばりざがじんでるのぉぉぉぉっっ!!!」」」」」
ちぇん、長老ぱちゅりーを含む群れのゆっくり全ての絶叫が平原に響き渡る。
中には、あまりのショックに餡子を吐く者までいる。

若衆頭のまりさの死体は、かろうじてまりさ本人だと識別できる、
というぐらいに破壊されていた。

両目は抉られて無く、髪も所々皮ごと千切られて無く、
歯はほとんどが抜けおち、体は所々黒ずみ、痣だらけだ。
帽子も、千切れて、かろうじて頭に引っ掛かっているという感じだった。

「「「「ばりざぁぁぁぁぁぁぁっ、おぎでよぉぉぉぉっ!じなないでぇぇぇぇぇっ!」」」」
「「「「ばりざめをあげでぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」」」」

まりさの余りに突然で、余りに壮絶な死に、
群れのゆっくりが嘆き悲しみ、極度の混乱状態にあった。

しかし、「襲撃者」にそんな都合は関係ない。
群れがまりさの死体に気をとられている間に、
彼らは、もはや致命的な位置にまで集落に接近していた。

「JAOOOOOOOOOOON!」
平原に、聞き慣れぬ雄たけびが響いた。
驚いた群れのゆっくり達は、声の方向を向く。

声の主を見て、長老ぱちゅりーは思わず気の抜けた声をだしてしまった。

「めー・・・・りん?」

そこにいたのは、都合40頭ほどのゆっくりめーりんの集団だ。
しかし、群れの目の前にいるその集団は、彼らが知るいわゆるめーりんとは
余りに違った存在だった。

彼らの知るめーりんとは、これほどまでに「ゆっくりできない」表情をした存在ではなかった。
いや、めーりん種は、もともとゆっくりできない存在だが、
それは彼らの「クズさ」(ゆっくり達の根拠の無い偏見。
めーりん種は本当はゆっくりでドスを除くと最も高い知能指数を持つ)と、
言葉が喋れない為であって、その理由は目の前の存在とは余りに違った。
その表情は、人間の言葉で表現するならば非常に「剽悍」で、
人間の感性ならば、野生動物染みたある種の気高さすら感じられた。
しかしあまりにゆっくりらしくない表情であり、
まためーりん種の持つ独特の穏やかさを感じさせるものは欠片もない。

また、彼らの髪には、れいむや、みょんのリボンや、
まりさの帽子の切れ端、ありすのカチューシャなどを
装飾品の様に着けていた。辺りに漂う死臭の源は、正にそれであった。

めーりん達がつけている装飾品。それは死んだゆっくりから剥ぎ取った物だ。
普通、ゆっくりにとって死者の飾りをつけることは最大のタブーだ。
飾りを失ったゆっくりは、ゆっくり出来ない存在として他のゆっくりに迫害を受けるが、
死者の飾りをつけたゆっくりは迫害どころかたちまちリンチされ、殺されてしまう。

故に、よほどの理由がない限り、ゆっくりは死者の飾りを身につけたりなどしない。
ゆっくり達からすれば、目の前のめーりん達の姿はあまりに異様だった。

それだけならばまだしも、中には、めーりん本来の帽子の代わりに、
明らかにまりさの黒帽子や、他のゆっくりの死体で作ったと思われる
帽子をかぶった個体までいた。それは、殺したゆっくりの皮を、何枚も
パッチワークのようにつなぎ合わせて作った帽子だった。
驚くべきことに、ピースの一つ一つが、違うゆっくりの皮になっているのだ。
このめーりんは、この帽子を作るためにはたして何匹のゆっくりを殺したのだろうか?

しかし、上記の事を差し置いて、このめーりん達には普通のめーりんと、
いや、他のゆっくり種と根本的に違う点があった。

それは、全員が、小さな台車、通称「スィー」に乗っているという点だった。

「スィー」はゆっくり用の乗り物で、乗ればかなりのスピードで走ることができる。
しかし、その使用例は非常に少なく、
謎の多いゆっくりの生態の中で、最も謎の多い物の一つでもあった。
めーりん達が乗っているスィーは普通のものよりもかなり小さく、
普通はゆっくりが大体2匹から3匹ぐらい乗れる大きさだが、
めーりん達の乗るスィーは彼らが一匹乗れば、
それで僅かな余白しか残らない大きさだった。


長老ぱちゅりーはどういう行動に移ればいいのか解らなかった。
恐らくまりさを殺したのは、このめーりん達だ。
しかし、彼女の知るめーりんとは、喋ることもできないグズのカスではなかったか?
少なくとも、目の前のこんな不気味な連中では無かった。

普通、死んだゆっくりの装飾品をつけたゆっくりを、
普通のゆっくりが見れば、まるで狂ったかのように怒り出し、
すぐに、そのゆっくりを殺そうとするものだ。

しかし、群れのゆっくりの中で、それを実行に移そうとする個体は
一匹として居なかった。
彼らにとってヒーローとも言えるまりさを、彼らに殺されたであろうにもかかわらず!

それほどまでに、目の前の集団は、ゆっくりにとって異様だった。
ひょっとすると彼らは本能的に理解していたのかもしれない。
眼の前の存在が、きめぇ丸や、捕食種の様に、姿かたちこそ似てはいても、
もはや根本的に別の生き物で、そして逆立ちしたって敵わない存在だという事を。

集落のゆっくり達が動けないでいると、めーりん達の間から、ぬっと一頭の
めーりんが群れの方に出てきた。それは、例の死体のパッチワークの帽子を付けためーりんだ。
どうやら、この集団の長の様な存在らしい。
その傍らには、何故か一匹のきめぇ丸が付き添っていた。

「JAO、JAO、JAOOOOOOOOOOON!」
パッチワークめーりんが、大地を揺るがせるような大声をあげる。
長老ぱちゅりーをはじめ、群れのゆっくりはビックリするものの、
どう反応していいかわからない。彼らにはめーりんの言葉が解らないからだ。

「どうも清く正しいきめぇ丸です。この群れの長はどなたですか?」
隣にいたきめぇ丸が、相変わらずのうざいしゃべり方で群れのゆっくりに
話しかける。

「むきゅ・・・・・わ、私だけど・・・・」
群れの全員の視線を受けて、恐る恐る長老パチュリーは
前へと進み出た。

「なるほど、ぱちゅりー、貴方でしたか。
確かに他の無能で愚鈍な糞饅頭どもよりは、
少しは賢く見えていましたが・・・と、こりゃ失敬。
口が滑りました」

きめぇ丸は完全にを見下した目つきで、
じろじろとぱちゅりー達を見る。

長老パチュリーはあまりに不愉快な視線と言葉に
身を硬くするも、きっときめぇ丸を睨む。

「さて、余計な話はさておき、
貴方がた饅頭は、余りに低能過ぎて偉大なる
閣下の言葉を理解し得ない。
故に私が通訳をさせて頂きます」

きめぇ丸は、うざい口調でそう言った。
どうやら、このめーりんが何を言ってるのかを、
このきめぇ丸が代わりに言うらしい。

「それで・・・・私達の群れに何の用・・・?」
長老パチュリーはありったけの勇気を体に
注ぎ込んで、パッチワークめーりんを
睨みながら言う。

「JAO、JAO、JAJAO、JAJAJAOOOOOOOON」
「偉大なる大王、ユッティラ=メーリン=カーンが子息、
ユラクス=メーリンが、紅の戦神に誓って言う!」

パッチワークめーりんの大音声に合わせて、きめぇ丸が
まるで歌うように言う。

「「「「?」」」」
長老ぱちゅりーを含めて、このきめぇ丸の言葉の意味を理解できた
個体はいなかった。
当然だ。ゆっくりは個体識別名称を持たない。
まりさは、全てまりさだし、れいむは全てれいむだ。
ゆっくりの驚くほどの無個性さと、世代交代の早さ故に、それで十分なのだろう。
しかし、驚くべきことに、このめーりん達は、
ゆっくりでありながら個体ごとの名前を持っているのだ。
驚くべき進化であると言えよう。


「JAO、JAO、JAO」
「大王の威光と徳を理解せぬ野蛮人の集落の長、ぱちゅりーよ、
群れのゆっくり共の命が惜しくば、
この村の食料6割を貢物として、
子ゆっくりの全てをを奴隷として献上せよっ!」

「ゆっ!なにいってるの!たべものはれいむたちががんばってあつめたんだよ!
あげるわけないでしょ、ばかなの、しぬの?」
「なにわけのわからないこといってるんだぜ、それよりもおかしをよこすんだぜ!」
「なんで、あがぢゃんあげなぐぢゃいげないのおおおおお、ばかなの、しぬの!?」


きめぇ丸のあんまりと言えばあんまりな内容の言葉に、
今まで黙っていた群れのゆっくり達が騒ぎ出す。

ただ、2匹、ぱちゅりーとちぇんだけが黙っている。
きめぇ丸の言葉がまだ終わっていないからだ。

「JAJAJAJAJAO、JAO」
「この要求をのむか否かの答えは、明日の日が昇るまでとする。
のむならそれでよし、否ならば・・・・・」

「否ならば・・・・何なのよ・・・・」

「この村のゆっくり、赤ゆっくりの一匹に至るまで皆殺しとする」

「「「「「ふざけるんじゃないぜぇぇぇぇぇぇっ!」」」」」
「「「「「「しねぇ!、ゆっくりしねぇ!」」」」」
群れのゆっくり達が激昂する。ただでさえ、ゆっくりは
沸点が低い存在なのだ。ここまでの事を言われれば
怒らないはずもなかった。

「ひとつだけ、ききたいんだよー」
そんな中、何故か冷静なちぇんが、きめぇ丸に尋ねる。

「どうしましたか、何か質問でも?」
「うん、ひとつだけききたいんよだねー。わかるよー」

「まりさをころしたのは、めーりんたちなのー?」

「ん、まりさ?もしかしてそこに転がってるゴミのことですか?」
きめぇ丸は、転がっているまりさの死体を見ながら言った。

「はい、殺しましたよ。愚かにも閣下に喧嘩を売って、
何もできずに一方的に殺されました。おお、不様不様」


「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
ちぇんは、きめぇ丸の言葉を聞くや否や、
パッチワークめーりん、「ユラグス」に襲い掛かった。

ちぇんは、最も若衆頭のまりさを慕っていたゆっくりの一匹だった。
その親しみを、そののまま憎しみに変えて、恐らくはちぇんの
生涯で最も速いであろう速度で飛びかかった。

が、

ぐちゃっ

何かが潰れるような音がした。
長老ぱちゅりーの足もとに、何かが転がって来る。

「ちぇ・・・・ん?」
ちぇんの顔面は完全に潰れていた。
餡子が漏れ出し、眼は飛び出している。
もはやピクピクと痙攣するだけのモノに
ちぇんはなり果てていた。

「ユラグス」の「スィー」には目新しい餡子の跡が付いている。
戦闘種族である「騎馬めーりん」には普通のゆっくりの速さなど
最初から問題にすらならない。

「JAOO」
「今のは・・・・」

「宣戦布告と見なす!」
きめぇ丸はそう言うや否や、高く空へと飛びあがる。
無論、これから始まる殺戮に巻き込まれないためだ。

「JAJA、JAJA、OOOOOOOOOOOOOOOON!」
「「「「「「「「「「「JAJA、JAJA、OOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!」」」」」」」」」」」

「ユラグス」が、「我らが武神、紅美鈴よ、我らを助けたまえ!」を意味する鬨の声をあげる。
それに合わせて、大音声が上がった。

40台のスィーが群れのゆっくりに殺到した。


それからは一方的な虐殺だった。
最初の攻撃で、群れのゆっくりは大半が死亡、あるいは戦意喪失状態になった。
体重の重いめーりん種の乗ったスィーの「ぶちかまし」は、それだけで
ゆっくりの体を破壊するに足る威力を持っているのだ。
その名の通り、鈍足な通常のゆっくり達は反応すらできず轢き殺された。

特に、長であったぱちゅりーの殺し方は念入りだった。

捕虜になった大人ゆっくりの生き残りと、巣から引きずり出された子ゆっくり、赤ゆっくりの目の前で、
何匹もの騎馬めーりんに何度も死なない様に加減して轢かれ、撥ねられ、
なぶり殺しにされた。

その後、生き残りの大人ゆっくり達は、残らずめーりん達の夕食になり、
赤ゆっくりはみな殺され、子ゆっくりは、奴隷として連れて行かれた。

「「「「「「ままぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」」
「「「「「「おどぉざぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」」」」」
子ゆっくり達の絶叫が響き渡る中、
群れが越冬用に蓄えた食糧は、残らずめーりん達に奪われ、
おうちは徹底的に破壊された。
日が沈み、次の夜明けが来るや否や、
「ユラグス」率いる部隊は、戦利品の食料と奴隷ゆっくりを連れて、
大王ユッティラのいる村へと出発した。

騎馬めーりん達が去った後はには、誰もいなくなったゆっくりプレイスのなれの果てと、
凄まじい数のゆっくり死体だけが残されていた。

続く?


★「騎馬民族ゆっくり」 あるいは「騎馬めーりん」

ベースはゆっくりめーりん。
迫害され続けためーりん種の一部が、自衛のために進化した結果生まれた種。
全員が若干小さめの「スィー」に乗っており、寝る時以外のほとんどの人生を
「スィー」の上で過ごす。また、枝を削った槍、帽子の中にため込んだ小石を
武器としており、その戦闘能力は発情時のありすよりも高い。
かつてのめーりん種とは異なり非常に闘争的で、他種のゆっくりの群れを襲って
略奪したり、また捕虜にしたゆっくりを奴隷ゆっくりとして売りさばいたり、
時には傭兵として雇われたりしながら生計を立てている。

騎馬民族めーりんは髪に自分で殺したゆっくりの髪飾りや帽子の切れ端を結びつける。
他種のゆっくりにとっては忌むべきこの行為も、騎馬民族めーりんにはむしろ誇りであり、
群れの中では、殺したゆっくりの飾りが多い個体ほど尊敬される。
また、殺したゆっくりの皮をはぎとって、旗や、装飾具を作って自分を飾ったりもする。

また、戦えなくなった老ゆっくりや怪我したゆっくりは、仲間の間で殺されて食べられるか、
自殺をする。騎馬民族めーりんには戦えないこと、すなわちゆっくりすることこそ恥であり、
それゆえに戦えない個体は軽蔑され、本人もそれをよしとせず、嬉々として死を選ぶ。

基本的には定住せず、春から秋にかけては、スィーに乗り、幻想郷のあちこちを駆けまわる。
ただ、雪が降る冬だけは、決まった根拠地に活動期に蓄えた食糧で冬ごもりをする。
ただ、根拠地に戻れない場合は、適当な他種のゆっくりプレイスを奪い取って、冬を越す。
(当然、村のゆっくりは皆食料にされる)

人間には比較的友好的で、雇われて村の畑を荒らすゆっくりの村を討伐したりする。

「じゃぉぉぉぉぉん」という雄たけびと、風に乗ってやってくるゆっくりの死臭に、
他種のゆっくりは恐れおののくのである。






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最終更新:2022年04月16日 00:00