「奇形ゆっくり」




雪もだいぶ解けた頃。
草原には、越冬したゆっくりの姿が現れ始める時期だ。
森の中を歩き続ける僕。
僕は、ある条件を満たすゆっくりを探している。
探しているのは、単体のゆっくりではなく、子供を連れたゆっくり一家でもなく、発情したゆっくりありす
でもなく、ゆっくりれみりゃなどの捕食種でもない。
僕が探しているのは、お互いを愛し合ったカップルのゆっくりだ。
それも、既に交尾を済ませて妊娠初期の…そう、そのタイミングが一番“いい”。

越冬後の初春になると、冬を生きて越すことができた安心感のためか、それとも家族計画を考えているのか、
多くのゆっくりが交尾を行う。
草原には結構な数のゆっくりが顔を出し始めているから、そろそろだと思うのだが…

「ゆっ!?おにーさん、ゆっくりしていってね!!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」

すれ違うゆっくりには適当に返事を返しておいて、巣のありそうなところを手当たり次第に探していると…

「ゆぅ!!ゆっくりそだっていってね!!」
「ゆっくりいいこになってね!!」

狭い入り口から中を覗くと、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのカップルがお互い寄り添っていた。
れいむの頭には3本の蔓が生えている。妊娠初期なのだろう、つぼみは固く閉じていてまだ子ゆっくりの
原型すら出来ていなかった。
ふむ…こいつらは、丁度よさそうだな。よし、こいつらにしよう。
そう決めると僕はこいつらを連れて帰るべく、ゆっくりに声をかけた。

「やぁ、ゆっくりしていってね!!」
「ゆっ!?ゆっくりしていってね!!」

本能に刻まれた言葉を僕に返す2匹のゆっくり。

「お、れいむは妊娠してるのかな?」
「そうだよ!!もうすぐのれいむのあかちゃんがうまれるよ!!」
「まりさのかわいいあかちゃんがうまれるよ!!」

どうやら、ちゃんと望まれて生まれようとしている子供のようだ。
ひとまず安心した。そうでなくてはこれからの計画も、意味がなくなるからだ。

「よし、これから赤ちゃんが生まれる二人のために、すっごくゆっくり出来るところを用意してあげたよ」
「ゆゆっ!?ゆっくりできるところ!?」
「おにーさん!!ゆっくりあんないしてね!!」

これから親になるというのに、この馬鹿っぷりはいかがなものか。
毎度のことだが、こいつらが絶滅しない納得のいく説明がほしい。

「よし!!じゃあお兄さんについてきてね!!」



息が上がらない程度のペースで、家へと続く道を走る僕。
家まではそれほど遠くない。ジョギングのペースで走って10分ほどだ。
だから僕にとっては軽い運動でしかないのだが…どうやら、2匹のゆっくりにとっては違うようだ。

「おにーさん!!もっとゆっくりしていってね!!」
「おいてかないで!!もっとゆっくりあんないしてね!!」

普通のゆっくりなら決してついてこれないペースではないのだが、妊娠しているれいむは頭に生えた蔓が折
れないように注意しながら跳ねなければならない。

「れいむ!!ゆっくりいそいでね!!」

ペースの遅いれいむに付き添うまりさも、同様である。

「そんなにゆっくりしてると、ゆっくり出来るところがなくなっちゃうぞー!!」
「ゆゆーっ!!??いやだよ!!ゆっくりしたいよ!!」
「ゆっくりいくからまっててね!!れいむ!!もっとゆっくりはやくしてね!!」

どんなに急かしても、こいつらは一定のペース以上速くはならない。
これは…何か別の方法を考える必要があるな。
ちょっとばかり考えて、思いついたのは…

「おーい、まりさ!」
「ゆっ!?」
「まりさがれいむを後ろから押して手伝ってあげれば、早くゆっくりできるぞー!」
「ゆゆ!!おにーさん、あたまいいね!!まりさゆっくりてつだうよ!!」

さっきから2匹の様子を見てわかったのだが、れいむは蔓が折れないように注意してペースを落としている
のに対し、まりさは単純にれいむに付き添っているだけ。蔓に注意を払っているわけではない。
つまり、まりさはれいむがゆっくりしている理由がわからないのだ。
ゆっくり出来るところがなくなる、という僕の言葉に焦りを感じるとともに、ペースを上げようとしない
れいむに苛立ちを感じはじめるまりさ。

だから…後ろから押して手伝ってやれ、という指示にも簡単に従う。

「れいむ!!もっとゆっくりいそいでね!!」
「ゆぎゅううう!!まりさあああああああああやめてよねええええええ゛え゛え゛え゛!!!!!」

ぐいぐいと後ろから押していくまりさ。それでもペースを上げるわけにはいかず、必死に抵抗するれいむ。
だが、身重の体ではまりさを押し返すことは出来ない。
そのまままりさの力に押し負けて、ペースを上げることになってしまった。

「やだあああああああああ!!あがぢゃんできなぐなっぢゃううううううう!!!!」
「れいむ!!はやくゆっくりできるところでゆっくりしようね!!」

まりさはれいむの悲鳴を聞いてないのだろうか?
これから生まれる赤ん坊すら気遣わないあたり、やっぱり頭の中が餡子なんだなぁ。

しばらくして、もう少しで家に着くというところに差し掛かると…

「まりざやめでよおおおおおお!!!…ゆぎゅ!?」

まりさに押されてハイペースで跳ねていたれいむが石につまづき、顔面から倒れ伏してしまった。
あ、これはヤバい、と思った。その角度と、そのスピードが。

ボキッ!!

3本の蔓のうち、一番細かった1本が折れてしまったのだ。

「ゆぎゃああああああああ!!!れいむのおおおおおお!!あがぢゃんがああああああああ!!!」

ゆっくりらしからぬ速さで起き上がって、折れた蔓のもとへ駆け寄るれいむ。
その後を、まりさがゆっくり追いかけた。

れいむは、滝のように涙を流しながら萎えた蔓を見下ろしている。
その後ろのまりさは、ばつの悪そうな顔をしていた。
最初は悲しみの震え…そして、その震えは怒りに変わった。

「ゆぐぐぐぐぐぐぐ!!!!まりざのせいだよ!!まりざがうしろからおしたからだよ!!」
「ゆぎゅ!?まりさはわるくないよ!!れいむがゆっくりしすぎたのがだめなんだよ!!」

へぇ、ゆっくりも夫婦喧嘩するんだぁ。

「あかちゃんがああああああ!!!れいむのあがぢゃんがあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
「ゆっ…れ、れいむのせいだよ!れいむがころんだから―――
「はい、そこまで!」

このまま見ていても面白そうだったのだが、殺し合いに発展する気配を感じたので仲裁に入る。

「今のはどっちも悪くないよ。たまたま、その蔓が細すぎたんだ。たぶん折れなかったとしても赤ちゃんは
 できなかったよ」
「ゆっ!?そうなの!?」
「そうだよ。だから、残りの2本を大事にすれば良いのさ」
「ゆゆ!!わかったよ!!れいむのあかちゃんだいじにするね!!」
「まりさのあかちゃんゆっくりさせてあげるね!!」

あー、⑨でよかった。
2匹の仲直りは済んだので、すぐそこの自分の家に案内する。
玄関から入っていく2匹は、終始寄り添ったまま離れようとしなかった。



2匹を専用の部屋に案内し、準備を済ませると僕も2匹と同じ部屋に向かった。
僕が抱えているのは、最近幻想入りしたという毒入りギョーザと、2リットルペットボトルに入った廃油だ。

「おーい、ゆっくりしてるかい?」
「ゆっくりしてるよ!!おにーさんもゆっくりしていってね!!」

先に与えておいたお菓子を食べつくして、2匹は文字通りゆっくりしていた。
れいむが妊娠している以上、昔のように跳び回って遊ぶことは出来ない。
2匹にとっても、今までのように跳びはねるより、寄り添いあってゆっくりしてる方が満足できるのだろう。

ギョーザとペットボトルが視界に入るやいなや、跳ね寄ってくる2匹。

「ゆゆ!?それはなに!?」
「ゆっくりできるもの?ゆっくりできるならまりさにちょうだいね!!」

おお、食いついてきた。そうでなくちゃ困る。

「これはね、栄養価の高い食べ物だよ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむに食べてもらおうと思ってね。
 これを食べれば、元気でいい子な赤ちゃんがたくさん生まれるよ!」

餡子脳にも理解できるように、説明は怠らない。
すると、期待通りれいむが食いついてきた。もう期待通り過ぎて怖いぐらいだ。

「ゆゆ!!れいむたべるよ!!さっさとそれをゆっくりちょうだいね!!」
「わかったわかった。まりさも食べるか?」
「まりさはいらないよ!!ゆっくりれいむにあげてね!!」

さっきのことを少しは反省しているのだろうか、それとも夫(?)としての自覚が芽生えてきたのか。
僕としてはれいむが食べてくれさえすればかまわないので、ギョーザを適当に床に置いて、大きい器に廃油
を移し替えた。

「むーしゃむーしゃ、しあわ…せ…?」

一口食べて、早速異変に気づいたらしいれいむ。

「おにーさん!!これすっごくまずいよ!!こんなのたべられないよ!!
 こんなものをたべさせるおにーさんとはゆっくりできないよ!!」
「わがまま言うなよ。元気な赤ちゃんが生まれなくてもいいのかい?」
「ゆぎゅ……がまんしてたべるよ…!」

赤ちゃんのため、って言っておけば大抵のことは我慢できそうだな、このれいむ。
眉間にしわを寄せて、いかにも不味そうな顔をしながら、ギョーザをちびちびとかじっている。
ダイオキシンとか、タリウムとか、メタミドホスとか、かなりヤバイ代物らしいんだが、体調には変化はな
さそうだ。
実は、毒に対してはかなり耐性があるのだろうか?

「れいむ!!ゆっくりがんばってね!!あかちゃんのためにがんばってね!!」

毒入りギョーザを栄養食か何かと勘違いしている2匹。
まりさは、不味そうにギョーザを食べているれいむを応援している。
そのあと、いろいろヤバそうなものが浮いてる廃油にもれいむは口をつけた。

「ゆぎゅ、まずい……でもあかちゃんのためにがんばってのむよ!」
「ゆゆゆ!まりさもてつだってあげるね!!」

何を思ったのか、自らも廃油を飲みだすまりさ。
お前が飲んだら意味ねーだろ(笑)
目の前の不味い飲み物がなくなればいいとでも思っているのだろうか?
さすが餡子脳。僕の予想の斜め上を常にキープしている。

そんなこんなで、3日間。
蔓には、少しずつ子ゆっくりの原型らしきものが現れ始める。
僕はすでにその異変に気づいていたのだが、2匹のゆっくりは気づかない。
出産自体初めてなのだろう、こういうものなんだ、と納得しているようだ。

そして。

いろいろヤバいものを体内に取り込んでいったれいむだったが、ついに…その時が来た。



出産のときである。
部屋の真ん中に陣取ったれいむ。
それを少し離れた所から、不安そうに見守るまりさ。

2匹の数週間の愛の結晶、そして僕の“3日間の努力”の結果が…今、目の前にその姿を現そうとしている。

小刻みに震えだしたれいむ。その時が近づいているのだろう。
最初は堪えていた声も、だんだん我慢できなくなってきたらしい。

「ゆ……ゆ…ゆゆゆゆ…!!」

プチッ!

ぽとっ

一匹目のゆっくりの誕生である。

「ま、まりさのあがちゃんがうまれたよおおおおお!!!」
「れいむのっ、れいむのがわいいあがちゃんんんんんんんんんん!!!!」

遠くから見守ると決めていたまりさも我慢できなかったらしい。
赤ちゃんが生まれた嬉しさのあまり、すぐに生まれたての赤ん坊のもとへと跳ねてきた。

その時点で、2匹は初めて“異変”に気づいた。

「ゆ゛……ゆ゛ぐり゛……ぢででね゛……!!」
「なんなの!!このごおがしいよ!!!おがしいよおおおお!!??」
「ゆぎゃあああああああああああ!!??へんだよっ!!へんながおだよおおおおお!!!!」

このゆっくりには、口と呼べるものがなかった。

正確には、口のなり損ないのような…上唇と下唇がところどころ途切れながら癒着しているのだ。
だから、言葉を発しようとしても『ゆっくりちていってね!!』とはならない。

プチッ!

ぽとっ

二匹目の誕生。れいむ種である。

今度こそまともな子供が生まれてほしい…そう願うれいむとまりさ。
しかし、そんな願いは無残にも打ち砕かれた。

「ゆっくりぃちていってにぇ……ありぇ?うごけないよ?!」

二匹目の赤ちゃんは、言葉は比較的しっかりとしていた。
しかし、この赤ちゃんには致命的な欠陥があった。
饅頭らしい弾力性が殆どなく、中身が液体のようにドロドロしているのである。
簡単に言えば…そう、やわらかすぎるのだ。
これでは、自由に弾力性を利用して跳ね回ることは出来ない
…この赤ちゃんは、一生自力では動けないだろう。

「ゆっゆっ!!ゆっくりうごいてね!!ゆっくりはねてね!!」

異常に気づいたまりさが赤ん坊を手伝おうとするが、無駄なことだった。

「ゆっ…ゆっ…うぅ、うごけないよおおおおお!!うわああああああんん!!!」
「ゆぅ!!ゆっくりしていってねええええええ!!!」

自力で動けないことに絶望する赤ちゃんゆっくり。
そんな子供を目の前にして、どうしたら良いのか分からず泣き喚くまりさ。
それを遠くから見ているれいむの顔には、疲れの色が見え始めた。

プチッ!!

ぽとっ

三匹目。

「ゆっくりちていってね!!…ゆゆっ!?くらいよ!?おかーさんどこおおおお!!??」

駆け寄ったまりさは絶望した。
その赤ちゃんゆっくりには…目がなかったのだ。

「おかーさんはここにいるよ!!ゆっくりしていってね!!」
「ゆっ!?みえないよおおおおお!!まっぎゅらだよおおおおおおおお!!
 おがーざあああああ゛あ゛ん゛ん゛ん゛!!!!ゆッぐりじゃぜでよおおおおお゛お゛お゛!!!」

大声で泣き叫ぶ赤ちゃんゆっくりを宥めようと、まりさが頬を摺り寄せるが…

「ゆぎゃ?!なに!?なにかぶつきゃったよ!?なんなの!?わがらないよおおおおお!!
 ごわいよおおおおおおおおお!!だじげでよおおおおおおおおおお!!??」
「こ、こわくないよ!!おかーさんだよ!!ゆっくりなかないでね!!!」

どんなに宥めようとしても、赤ちゃんゆっくりは泣き止まない。

そして、四匹目、五匹目…と順番に生まれていく。

生まれつき音の聞こえないもの。

硬すぎて跳ねることのできないもの。

「ぎょぎょぎょ」と気持ち悪い声を発しながら、芋虫のように這うもの。

目を覚ましても蔓から離れられず、終いには頭が破れてしまうもの。

十匹生まれれば十通りの奇形ゆっくりが生まれた。

赤ちゃんゆっくりにならずに、緑色の実のままの状態で落ちたものの方が幸運だろう。

その幸運すら、この一家にはなかった。

さっきまで、生まれてきた子ゆっくりと思う存分ゆっくりすることを思い描いていた親ゆっくり。
皆で草原をお散歩したり、水辺でゆっくりしたり、巣の中で固まって眠ったり…
畑のものを食べたらゆっくりできないよ、と教えてあげたり…
いろんなことをしたかった。いろんなゆっくりをしたかった。
でも、それができない。この一家は、できないのだ。

そして、そんな一家を見てると僕は性的興奮に似た絶頂を覚えるのだ。

「さて、と…」

僕は次の準備に取り掛かる。



奇形赤ちゃんゆっくりに囲まれ、未だ泣き止まない親2匹に声をかける。

「やあ、赤ちゃんはかわいいかい?」
「ゆぐっ…へんだよおおおおおお…がわいぐないよおおおおおお……!!」

そりゃあな、僕だって見てて気持ち悪いもん。
でも、自分の赤ちゃんを“かわいくない”なんて言うなんて、困った親だなあ。

「そうかそうか、かわいくないか。じゃあ捨てちゃおう」

そう言って、目のない赤ちゃんゆっくりをピンセットでつまみあげる。
目の見えないゆっくりにとっては、その浮遊感は恐怖にしか繋がらないらしい。

「なに!?へんだよ゛!?ういでるよおおお!!??ごわいよおおおおお゛お゛お゛お゛!!!」
「おにーさんなにするの!?あかちゃんをゆっくりはなしてね!!」

まりさが僕に体当たりしてくるが、さすがゆっくり、全然効果がない。
むしろ、その弾力が気持ちいいくらいだ。

「だってかわいくないんだろう?だったら捨てちゃおうよ!」
「やめでよおおおおおお!!!がわいぐなぐでもまりざのあがぢゃんなのおおおお゛お゛お゛!!」

“かわいくない”ってところは否定しないのかよ(笑)

「かわいくないなら捨てちゃうよ!!ポイ!!」

鼻をかんだティッシュを捨てるように、赤ちゃんゆっくりをゴミ箱に放り込んだ。
ゆうううぅぅぅ、と悲鳴を上げながらゴミ箱の底に落ちていく、盲目ゆっくり。
底に溜めてある熱湯に突っ込んだそいつは…

「ゆぎゃあああああああ、あづいよおおおおおおおお!!!!みえないよおおおおおお゛!!!!
 ゆっぐりできないよおお゛お゛お゛お゛お゛!!!あがーぢゃんだじげでええええええ!!!!」

そんな悲鳴も、十数秒すると熱湯の中へ消えた。

「さーて、次はどいつにしようかな♪」
「もうやめでよおおおおおお!!!あがぢゃんずでないでええええええ!!!」
「えー、だってかわいくないんだろー?」
「おねがいじまずううううううううううう!!!
 れいむのあがぢゃんだずげでぐださいいいいいいいいいいい!!!」

子ゆっくりを片っ端から捨てるのも楽しいが、そこまで頼まれたらしょうがない。
僕は妥協案を提示することにした。

「…わかった。じゃあこうしよう!」
「ゆっ!?」

期待に目を輝かせる、親ゆっくり。
しかし、その期待はすぐに打ち砕かれる。

「れいむとまりさが赤ちゃんを一匹だけ選んでね!!その子だけは助けてあげるよ!」
「ゆううううぎゃああああああどおじでえええええええ!!??」
「どおじでそんなごといいうのおおおおおおおおおお!!??」
「選ばないと、全員捨てちゃうよ!!ゆっくりしないで選んでね!!」
「ゆぐっ!?」

選ばないと…子供が全員殺される。
それだけは避けようと、2匹は唯一の生き残りとする赤ちゃんを選ぶべく、辺りを見回す。

「おがーちゃん!!まりしゃをえらんでね!!」
「れいむしゅてられたくないよ!!ほかのこをすててね!!」
「ちにだぐないよおおおお!!おがーぢゃあああああん!!」

喋ることのできるものは、その言葉で親の気を引こうとする。
言葉を発せないものは、その目で親に訴えかける。
精神すらまともでないものは、何が起きているかも感知していない。

「早く選ばないと、全員捨てちゃうよ!!」
「ゆゆっ!!やめてね!!すぐえらぶからね!!」

そして、2匹の親ゆっくりが選んだのは…二匹目に生まれた、動けないゆっくり子れいむだった。

「どおじでええええええ!!??」
「なんでそのごなのおおおおお!!??」
「そのごはうごげないごだよ!?うごげるれいむをえらんでね゛!!」

選ばれなかった子ゆっくりは、たまったものではないだろう。
自由に動けるものは必死に母ゆっくりにすがろうとするが…

「ごめんね!!あのよでずっとゆっくりしてね…!!」

れいむは涙ながらに駆け寄った奇形子ゆっくりを跳ね飛ばした。
うまい具合に僕の足元に転がってきたので、そのままピンセットでつまみあげる。

「ゆぎゃあああああ!!!はなじでよおおおおお!!!」
「ごめんねー。でもお母さん達が、君たちの事かわいくないって言うからさー」
「ゆゆぅ!?れいむかわいいよおおおお!!!かわいいからすてないでねええ゛え゛え゛え゛!!」

そんな叫びも、ゴミ箱の中へ吸い込まれていった。
2匹の親ゆっくりは、自分達が選んだ一匹の子れいむを挟み込んで守っている。
悲しみと絶望に震えながら、唯一生き残るであろう子れいむを、しっかりと守っている。

「はーい、じゃあ君達はゴミ箱行きでーす!恨むならお母さんたちを恨んでくださいねー!」
「いぎゃああああああああああああああああ!!!!」

ぽいぽいとゴミ箱に放りながら、全体に聞こえるように呟く。

「あーあ、お母さんが、あんな毒入りギョーザと食べちゃったから」
「ゆっ!?」
「お母さんが、あんな汚いものを飲んだから、赤ちゃん皆かわいくなくなっちゃったよ!」
「なにをいっでるのおおおおおおおおおお!?」
「お母さんのせいで、皆気持ち悪くて汚い赤ちゃんになっちゃったよ!」
「おかしいよ!!ゆっくりせつめいしてね!!」
「ギョーザと飲み物にはね、危ないものが入ってたんだよ!!本当は食べちゃダメだったんだよ!」

そこまで説明して、やっと理解したらしい。
母体であるれいむは…自ら汚染物質を体内に取り込んだ。
それは子ゆっくりにも蓄積されていき、結果として奇形ゆっくりが生まれた。
やっと。やっと理解したのだ。
親ゆっくりも…そして、子ゆっくりも理解した。
自分がこんな酷い目にあっているのは、母親であるれいむのせいであるということに。

僕は心無い言葉を子ゆっくりに浴びせながら、次々とゴミ箱に放り込んでいく。

「おがーぢゃんのせいだあああああああああ!!!!だずげでええええええ!!!」
「はーい、お母さんがあの子を選んだので、皆あの世行きでーす!」
「おがーぢゃんなんがしんじゃえええええええええ!!!」
「その前に死ぬのはお前らでーす!!あの世でゆっくりしていってね!!」
「おがーだんだじげで!!みでないでだずげでよおおおおおおおお!!!!」
「お母さんはあの子を選んだので、君は助けてもらえません!!ゆっくり死んでね!!」

母ゆっくりを罵倒しながら、ゴミ箱の中へと消えていく子ゆっくりたち。
その言葉の暴力に、れいむとまりさは震えながら耐えている。

「ごめんね!!……あのよでゆっくりしてね…!!」

そして、選ばれた子ゆっくりを除くすべての奇形ゆっくりが…ゴミ箱の中でお汁粉に変わった。
一旦ゴミ箱を片付け、再び部屋に戻ってくる。
親子3匹がいるほうを見ると、どうやら最後の生き残りである子れいむが、両親を罵倒しているらしい。

「おがーぢゃんのせいでじぇんじぇんうごけないよ!!ゆっくりあやまってねええええ゛え゛え゛!!」

本当はすぐに飛び掛って噛り付きたいのだろうが、やわらかすぎて動けないので、それもできない。
その上、2匹の親ゆっくりの返答も酷いものだった。

「お、おかーさんは悪くないよ!!おかーさんはわるいものたべてないよ!!」
「そうだよ!!かわいくうまれてこなかったれいむがわるいんだよ!!」
「ゆぎゅううううう!!?どおじでぞんなごどいうのおおおお゛お゛お゛!!??」

生後10分で親子喧嘩か。すごいもんだな、ゆっくりって。

「はーい、そこまで!」

この前と同じように仲裁に入る。

「いいことを教えてあげるよ。二人の親のどっちかが死んで子れいむの食べ物になれば、子れいむは動ける
 ようになるよ!」
「ゆぎゅ!?ほ、ほんとうなの!!?」

それは親ゆっくり2匹にとって、衝撃であろう。
どちらかが犠牲にならなければ、目の前の子は一生動けないままゆっくりしなければならない。
親2匹は…どちらが犠牲になるか、選ぶことが出来るだろうか?

「どっちが食べ物になるか、ゆっくりしないで決めてね。ゆっくりしてると、手遅れになるよ!」
「ゆぎゅ!?それじゃれいむがあかちゃんのたべものになってね!!まりさはしにたくないよ!!」

急かされたせいか、焦ったまりさが思わず本音を漏らしてしまった。
となれば、二人の“ジョーカーの押し付け合い”はもう止まらない。

「どうして!?まりさがたべものになればいいよ!!れいむはあかちゃんうんだんだよ!?」
「れいむはあかちゃんうむだけで、ぜんぜんたべものとってこなかったよ!!
 やくたたずのれいむは、ゆっくりたべものになってね!!」
「おがーぢゃん!!げんがはやめでよおおおおおおおおお!!!!」

これが人間だったら恐ろしい会話だが、ゆっくりの場合だと笑えてくるから不思議だ。
さて…そろそろフィニッシュといこうかな。

「そうか、どっちも食べ物にならないなら…赤ちゃんが死ねばいいよね!!」

そう言って拳を振り上げ…

「やめでえええええええええええええええええ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
「あがぢゃんにげでねええええええええええええ゛え゛え゛え゛!!!」

親2匹の絶叫とともに…


グシャッ!


最後の奇形ゆっくりは、ただの潰れた饅頭になった。

「どっちも食べ物になってくれないなら、赤ちゃんは死ぬしかないよね!!
 だって、動けないままゆっくり生きていけるわけないもんね!!」

2匹は震えている。

「どうしたの?助けたかったの?でも食べ物になるほうを決めなかったよね。
 助けたかったのに早く決めなかった二人が悪いんだよ!!」

それを聞いた2匹の、震えが…止まった。

そして…

「がああああああああああああ!!!???れいむのぜいだああああああああ!!!」
「まりざのぜいでじょおおおおおおお!!?まりざがたべものにならないがらああああ!!!」

2匹は、鬼のような形相で責任の押し付け合いを始めた。

「れいむのぜい!!ぜんぶれいぶがわるいの!!!ばかなれいむはゆっくりしね!!」
「ゆぎゅうううううう!!まりざがあがぢゃんだずげながったのがわるいの!!ゆっくりしんでね!!」
「ごろじでやるっ!!おおばがれいむなんがゆっぐりじね!!」
「まぬけなあほまりざは、ゆっぐりあのよであがぢゃんにあやまってね!!」

僕は外に通じるドアを開けておき、2匹を放っておいて自室に戻ることにする。

2匹の騒ぐ音がうるさいので、音楽を大音量で流してくつろぐことにした。



翌日。

2匹がいたはずの部屋を覗いてみると…

そこにはゆっくり一匹分の餡子が、部屋を中心として放射状にブチまけられていた。

原形をまったく留めておらず、毛髪や飾りも残っていないので、れいむとまりさのどちらなのかわからない。

僕としては…できれば、れいむのほうに生き残っていてほしい。

あいつがまた子供を作れば、また奇形が生まれるに違いないからだ。

できれば、そうあってほしいな。

だってその方が、ロマンティックだろう?



(終)
続く


あとがき

虐待スレ10の>>340前後を見て、勢いで書いた!

まともに読み返してないので、誤字とかあるかも!!

後悔はしてな・・・・・・いや、半分ぐらい後悔してる!

でも、自分が読みたいものが書けたからOK!

ゆっくり読んでくれてありがとう!!

作:避妊ありすの人

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最終更新:2022年04月11日 00:02