『ご家庭で出来る☆れーばてぃん』
湖の傍らに佇む巨大な洋館。
吸血鬼が率いるその館を、幻想郷の人々はは紅魔館と呼んだ。
しかし、少し前まで畏怖の象徴だったその館の中からは、
最近では場違いな幼女を思わせる声が響くのが、日常となっていた。
そして、今日も館の一角にある部屋の中では、
2匹のゆっくりによる"歪んだ"レクリエーションが行われていた。
「どーん☆」
「だっどぉぉぉーーっ!!」
ゆっくりフランの拳を、顔の真ん中で受けて、吹っ飛ばされるゆっくりれみりゃ。
フランの拳の勢いは凄まじく、拳が丸ごとれみりゃの顔にめり込む程だ。
「うぁぁーー! れみりゃのぷりてぃーなおかおがぁーーー!!」
「まだまだいくよ~! おねぇーたま☆」
「うっ、うあぁぁぁーーっ!」
笑顔満面で腕をグルグル回すフランと、
だぁーだぁー涙を流しながら恐怖で顔を引きつらせるれみりゃ。
紅魔館の主人そっくりの、この2匹のゆっくり。
しばらく前にメイド長の咲夜が拾ってきて以来、すっかり館にも馴染み、
紅魔館のアイドル的存在として、(館の主を除いた)住人からの寵愛を受けて暮らしていた。
しかし、そんなゆっくりできる日々の中でも、姉のれみりゃには悩みがあった。
他でも無い……何故か自分より強くて好戦的で、
しかも、かわいくてえれがんとでかりしゅまなハズの自分を虐めようとする妹、フランのことだ。
今日も今日とて、れみりゃはフランに面白いように殴られ、追われ、涙を流す。
こんな時、れみりゃが取れる行動はただ一つしかない。
故に、れみりゃは残された力をふりしぼって叫んだ。
「うぁーん! さくやぁーー!!」
ベタンと座り込み、大声で部屋を震わせる、れみりゃ。
フランは、耳を押さえた後、つまらなそうに頬を膨らませた。
「もう、おねぇーたまったら、またさくや? おねぇーたまって、ほんとよわむし☆」
フランに虐められた時、れみりゃはいつもいつも"さくや"に助けを求めた。
さくやは、れみりゃにもフランにも愛情を注いでいたが、
こういう時味方するのは、いじめられているれみりゃの方だ。
姉への"いじめ"に悪意の無いフランからしてみれば、
それは何だかとてもズルくて、ルール違反な気がしてならなかった。
一方、ジョーカーを切った姉の方、れみりゃはれみりゃで、
フランから"よわむし"と侮蔑を受けて、不満を露わにする。
どんなにいじめられようと、れみりゃには"おねぇーさま"としてのプライドがあった。
「うーうー! そんなことないどぉー! れみりゃはおつよいんだどぉー! かりしゅまなんだどぉー!」
「あら、そうなの? じゃあ、もういっぱつだね☆」
ポカン!
「ぷぅー☆」
生意気な姉の顔に、再び拳をめり込ませようとした時、フランの目に火花が見えた。
「う~~♪ しゃくやぁ~~~♪」
涙ぐみながらも、れみりゃがパタパタ飛んで近づく存在。
いつの間にか、部屋の中には件のジョーカー・咲夜が立っており、
おいたをしようとしていたフランの頭をコツンと叩いていた。
咲夜は、れみりゃを抱っこして「よしよし」とあやしながら、フランにお説教を始める。
視線をそらして、口の先を伸ばすフラン。
そんなフランに対し、咲夜のお説教は続く。
仕方なく、フランは咲夜とれみりゃとの間で約束を結ぶことになる。
「はぁーい! もう、おねぇーたまはなぐりません☆」
フランは、ふてくされて部屋を出て行く。
宝石のついた不思議な羽を使ってフワリと浮き上がり、館の廊下を往くフラン。
すれ違う妖精メイド達が手を振ったり、会釈したりしていくが、
今のフランは、それに応じる気分ではなかった。
「つまんない……」
ぜんぜんゆっくりできない。
姉との楽しい一時を禁止されたフランは、そう感じていた。
姉のふとましい体に、ぷにぷにした下ぶくれに、拳を、棒を、オモチャを、叩きつけ殴りつける。
その何と、ゆっくりできることか。
きっと、あのゾクゾクしちゃう快感を知らないから、咲夜はあんなことを言うんだ。
もやもやした気持を抱えたまま紅い絨毯の上を飛ぶフラン。
だが、その時。
フランの目に、とある道具が飛び込んできた。
それは、妖精メイドが持っていた、何でもない道具。
けれど、それを見たフランには、新たなゾクゾクを得るまでの道筋がハッキリ見えた気がした。
「ぷぁ~~~☆」
そのイメージに、フランはルビー色の瞳を輝かせるのだった。
* * *
翌日、れみりゃは部屋で一人ダンスを踊っていた。
その顔は充実した笑みで満ちており、ほんのり顔を上気させている。
「うっうー☆うぁうぁ~♪」
ダンスは、れみりゃにとって欠かせない日課だ。
人間が見るとそれほど差はわからないが、
れみりゃ種は常に新しいダンス、より"えれがんと"なダンスを生み出そうとする。
それが、自分の"えれがんとさ"や"つよさ"や"かしこさ"の証明となり、
またそれを見せることで他のゆっくりや人間にも喜んでもらえると、信じているからだ。
もちろん、単純にダンスや歌が楽しくて好きだという大前提はあるのだが。
いづれにせよ、このれみりゃもまた、自らのダンスの新境地を開こうとしていた。
「うっ! そうだどぉー、ここをこーしてぇー♪」
両手を、"とじてぇーひらいてぇー♪"と繰り返し、お尻をフリフリゆらす、れみりゃ。
やがて、両手をくるくる~と回転させて、"イェアー☆"と左右に大きく開いて固定する。
「せぷ☆てっ☆どぉ~♪」
ビシィッ。
決めポーズと決めセリフを合わせる、れみりゃ。
その新作のうさつ☆だんすの出来映えに、れみりゃは興奮した様子で喜びを爆発させた。
「うぁーうぁー☆できだどぉー♪ しゅってきだどぉー♪ はやく、みんなにみせてあげるどぉー♪」
"はやく、さくやかえってこないかなぁ~♪"
人差し指を口に当てて、れみりゃは呟いた。
この日、咲夜は"れみりゃとふらんにそっくりなおねぇーさんたち"と一緒に、どこかへお出かけだと言っていた。
お土産は何だろうなぁーと、想像を膨らませるれみりゃ。
その口元からは、たらーと一筋のヨダレが垂れ落ちる。
そんなれみりゃの夢想は、バタンと突如部屋の扉が開くまで続いた。
「う? さくやぁー?」
夢想から現実に戻ったれみりゃは、扉の方へ振り向き、間もなく表情を固まらせた。
「うーうー、おねぇーたま☆」
扉が開き、部屋の中に入ってきた者。
それは、れみりゃが待ち望んだ咲夜ではなく、ニコニコ微笑むフランだった。
「……う、うぁ? ふらん?」
昨日の今日のことで、れみりゃはフランを見て体を強張らせる。
れみりゃとて、妹であるフランは大好きだった。
けれど、今までずっと一緒だった姉妹だからこそわかることがある。
例えば、今のようにニコニコ微笑んでいる時は、だいたい何かを企んでいる時に決まっていた。
「ふ、ふらんは、もうれみりゃをなぐっちゃダメなのぉー!」
両手を後ろに回してトテトテ歩いてくるフランに対し、
れみりゃはじりじり後ろへ下がっていく。
「うん、わかってるよおねぇーたま☆」
フランの笑顔のプレッシャーに、
れみりゃは徐々に壁際へ追い詰められていく。
そして、その背中が壁の前まで来たのを確認してから、
フランは背後に持っていた"棒状の道具"をれみりゃの顔に突き付けた。
「もうなぐったりしないよ☆だからね、こうするの!」
「~~~~っ!?」
フランの突きだした"棒状の道具"が、れみりゃの顔に直撃する。
れみりゃは、何が起きたのかわからなかった。
が、突然のことに叫ぼうにも、声を発することができない。
それもそのはず、れみりゃの顔の下半分は、巨大な吸盤状の物体に吸い付かれていた。
フランの持った棒の先についた半円の吸盤状の物体が、きゅ~~とれみりゃの下ぶくれ顔をとらえて離さない。
まるで、自慢の下ぶくれ顔が、その半円の中に吸い込まれるような感覚。
それは、喩えようもなく気持ち悪く、耐え難い感触だった。
「すごぉーい☆これほんとよくすいつくねぇー、おねぇーたま♪」
フランが、持っていた"棒状の道具"……それは本来水場で用いて詰まりを解消するためのもの、
すなわち「通水カップ」と呼ばれる道具だった。
「あはは☆ひっどいかおだよおねぇーたま!」
「~~~~~~っ!!」
楽しげにれみりゃの下ぶくれ顔を引っ張る、フラン。
それに対して、口が塞がれ満足に息が出来ないれみりゃは、必死にバタバタもがく。
「ぷっはぁっ!」
暴れた甲斐あって、れみりゃの顔からスッポンと外れる通水カップ。
れみりゃは、息を荒げながら、フランに抗議する。
「うぁー、うぁー! ふらんおやくそくやぶっちゃダメぇ~~! さくやにいいつけちゃうぞぉ~~!」
「やくそくやぶってないもぉ~ん☆なぐってないもぉ~~ん☆」
「うっ!?」
最強のジョーカーたる"さくや"の名前を出したにもかかわらず、フランは余裕だった。
その態度に、れみりゃは怯み、弱腰になる。
対してフランは、そんな姉の様子を見て愉快そうに笑った。
「おしたりなぐったりがだめだから、ひっぱるんだもぉ~~ん☆」
「う、うぁ!?」
そう、確かにフランは殴っていない。
通水カップで"引っ張って"いるだけだ。
勿論、それは屁理屈でしかないが、
フランを勢いづかせ、れみりゃを怯えさせるには十分足る理屈だった。
「そぉーれ☆すっぽん☆すっぽん☆」
「うぁぁぁぁーーーっ!!」
フランはれみりゃを押し倒し、馬乗りになると、
通水カップでスッポンスッポンれみりゃの顔を吸着させていく。
「きゃは☆おねぇーたまのしもぶくれスッゴイくっつくよ!」
「やべでぇー! たぷたぷひっぱらないでぇーー!」
ベチンベチン。
れみりゃは、無我夢中で自分に乗っかかるフランの足を叩く。
「うっ☆」
思わぬ反撃に、驚くフラン。
れみりゃはその隙をついて、フランの下から脱出を図る。
「う~~~~~~っ!!」
恐怖で飛ぶのも忘れ、四つんばいで地べたを這いずって逃げる、れみりゃ。
れみりゃは、家具と家具の隙間に、強引に体をねじ込ませ、「う~~っ」と頭を抱えた。
「それでにげたつもりなんて、おねぇーたまってば、かぁ~わいい~☆」
フランは通水カップを構え、れみりゃが潜り込んでいる家具の隙間の前に立つ。
隙間からは、震えるれみりゃと、その大きなお尻がこちらを向いているのがハッキリ見える。
その気になれば、フランが隙間に入ることも可能だったし、
腕を伸ばして引きずり出すことも可能だったが、フランはそんなツマラナイことをするつもりはなかった。
「おーきくてぇー☆とーってもふとましぃーおしりがぁー☆ま・る・み・え・だよぉーー!」
フランは、通水カップを槍のように構えると、それをれみりゃの尻に思い切り突きだした。
「そぉーれ! きゅっぼーん☆」
「う、うぁーー!!?」
ズッポーン!
フランの突きだした一撃は、見事にれみりゃの尻をとらえた。
通水カップは、まるで獣の牙のように、れみりゃの尻にくっついて離れない。
「れみりゃのおじりがぁー! かわいいおじりがぁー! きゅーきゅーされちゃうー!!」
フランは、通水カップの手応えを確かめながら、
きゅっぼん!きゅっぼん!と、れみりゃの尻を押したり引いたり繰り返す。
「うびぃーっ! うびぃーーっ!」
たまらず、声にならない叫びをあげるれみりゃ。
その声を聞いた瞬間、フランは自分の選択が間違っていなかったことを確信した。
(ああ、おねぇーたまだいすき☆ゾクゾクしちゃう☆)
フランは、自らの興奮に従い、れみりゃの尻を責め続ける。
「やべでぇーー! どぉーじでぇこんなごとするんだどぉーー!?」
姉の精一杯の懇願と疑問。
それを聞いたフランは、わずかだけキョトンとした後、ニッコリ微笑んだ。
それは、れみりゃが経験則から"嫌な予感を覚えた"あの笑顔だ。
「だってぇー☆おねぇーたまかわいいんだもぉーーん♪」
その答えと同時に、フランは通水カップに今日一番の力を込める。
「う、うびぃぃぃーーーーっ!!?」
痛みとも苦しみとも悲しみともつかぬ叫びをあげる、れみりゃ。
その叫びに背筋をゾクゾク震わせながら、フランは叫んだ。
「くりゃえ~! れ~ばてぃん☆」
すっぽん。
おしまい
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れみりゃの顔にフランの拳やレーヴァティンがめり込んでるのを見て、
ああ、なんて可愛いんだと思うのは私だけでしょうか……。
なんか、ちょっとずつ書いていたら、いつのまにか出来ていたSSでした。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
by ティガれみりゃの人
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最終更新:2022年04月17日 01:06