~注意書き~

  • 虐待成分が少なめです。虐待シーンをこってり愉しみたい人には向かないかもしれません。
  • 罪もないゆっくりが死んでしまいます。
  • 下のほうにおまけもあるよ


『ぴくにっくの話』


 太陽がだいぶ地平線から浮いてきた朝とも昼ともつかぬ時間帯。土で汚れた小さい鎌を持った一人の少女が、山の中腹辺りで大きな石に腰を下ろしていた。
 その石はどう見ても綺麗とは言いがたいものだったが、座り心地は悪くなかった。
 また、少女は衣服は農作業用のものであり、すでにあちこちが汚れていた。だから少女も汚れることは気にしなかった。
 少女の隣には背中に背負えるようにふたつの紐がついている、大きな籠がおいてあった。中には四分くらいまで山菜が詰まっている。
 籠の中にはキノコや木の実、または花まで雑多に放り込まれていた。

 少女は座りながら山の自然の奏でる音に聞き入っていたが、不意にその中に異物が混ざるのがわかった。
 人の話す言葉……しかし、その声質は人のもののそれではない。改めてよく聞くと、それはゆっくりのものであった。しかもその声の数は一つ分だけではない。
 多数のゆっくりたちが、がやがやとかしましく騒ぎながら山を登っているのだった。
 少女はマナーを知らない登山客に思わず顔をしかめたが、しかしゆっくりは嫌いでもなかったので、何も言わず遠くからじっと眺めるだけにとどまった。

 そのゆっくりの集団の多くは家族単位で来ているようだった。大きなゆっくりと小さなゆっくりがセットで動いている。
 妙に小さな赤ん坊を自分の頭の上に乗っけて山を登る母親らしき大人のゆっくりれいむ、ジグザグに飛びながら進む子まりさを温かい目で見守っているゆっくりまりさ、
 何回も転んで泣いてしまう子れいむをその都度立たせてあげるありす、まりさ夫妻。
 見ていて心が温まるような、家族みんなでのピクニック。少女はそんなゆっくりたちを見て、自然と笑顔になった。
 少女はゆっくりにも一家団欒とかがあるんだなぁと意外に思いながら、その集団が見えなくなるまでそれを見続けていた。
 やがてその集団が行ってしまうと、

「さて、私も仕事しますかね」

 少女は籠を背負って立ち上がり、山にある食べられそうなものを鎌で切り取って収穫する作業に戻っていった。



 それから時間が経ち、太陽が空高くに浮いていて、一般的に昼下がりと呼べる時間帯。少女は以前座った石のところで休んでいた。
 手にはさらに土で汚れた鎌を持っており、隣においてある籠には山菜が満載していた。

 また少女が山の自然に聞き入っていると、先と同じようにその中に異物が混じるのがわかった。
 それはゆっくりのものであり、また山頂の方から声が聞こえてきたので、少女は眉をしかめることをしなかった。
 きっとピクニックの帰りなのだろう。少し帰るのが早い気もするが、きっと自宅を長い間留守に出来ないからなのだろう。
 あれほどの大所帯で行ったのだから、自分達の住処の守りも手薄になっているはずだ。
 しかしその短い時間の中でも、家族にとっては有意義な時間が取れたんだろうな。
 少女は和気藹々とした家族風景を思い浮かべながら、集団の方へ目をやった。少女の顔はすでに笑っていた。

「……あれ?」

 少女はその集団に違和感を覚えた。何かが、何かがおかしい。
 彼女の目に映ったのはゆっくりの群れ。だがしかし、そこには子どものゆっくりが全くいなかった。
 少女は目をこすりながら何度も見直したが、どこにも子どものゆっくりの姿は見当たらない。
 見えるのは行く時よりも大声で騒いでいる大人のゆっくりたちだけ。その表情は登りよりも心なしか頬が緩んでいた。

 少女は山菜の詰まった籠もほっぽり出して、ゆっくり集団にまで駆け寄っていた。なにがなんだかわからなかった。
 一瞬別の集団かとも思ったが、自分はあれら以外にそんなもの見ていない。
 あんな大所帯がこの山に登っていたのなら、さすがに気付くはずだ。少女は頭の中に湧いて出た可能性を打ち消した。

 少女が近付くと、ゆっくりの集団は雑談を止めて少女の方を見た。
 それらは少女が何かくれるのかと思ったのかもしれないし、それとも少女が手に持ったままだった鎌が怖かったのかもしれない。
 しかし彼女はゆっくりたちが黙った理由なぞお構いなしに、荒れた呼吸のまま一方的に質問をした。

「あ、あのっ、あなたたち、一緒に登ってた子ども達はどうしたの?」

 ゆっくりたちは少女が自分達を狩りに来たのではないとわかると、ほっと一息をつき、そして少女の質問に笑った。
 顎が外れんばかりに大口を開けて、頬は目をこれでもかと圧迫し、中には涙を流しているものもいる。
 少女はいきなり笑い出したゆっくりたちに驚いて、半歩後ずさった。
 やがて、一番早く笑い終えた、それでもまだ目に涙を浮かべているゆっくりれいむの一つが、ようやく少女の問いに答えた。

「あのこたちはね、すててきたんだよ! いまごろやまのてっぺんでれみりあにでもくわれてるんじゃない!」
「え? 捨てて……きた? なんで、仲良く登ってたじゃない」
「あんなのふりにきまってるよ! おねえさんばかだね! いらないことなかよくするはずないよ!」

 自分のやったことがそれほど嬉しいのか、ゆっくりれいむは思い出したように頬を歪ませた。
 少女は呆気にとられ、信じられないといった様子で固まっていた。
 黙る少女に、笑い終えたほかのゆっくりも混ざりそれぞれの口から饒舌に言葉を吐き出していく。

「そうだね! いつまでたってもおおきくならないみじゅくじなんてれいむのこじゃないよ!」
「まともにあるけないゆっくりなんてしんだほうがましだぜ!」
「むかしれいむとつくったこどもなんていまのまりさとのあいのすにはじゃまなのよ!」
「あいつらはいらなかったんだね! うまれてきてもめいわくしかかけないもんね!」
「ころしてせいかいだったぜ! これでまりさたちはもっとたべものがたべられるんだぜ! あいつらのせいでしょくりょうがむだにへってはらがたってたんだぜ!」

 あまりに自分勝手なゆっくりたちの言い分に、少女は目眩を思えた。
 それは貧血によるものでも、驚きによるものでもなかった。腹の底から湧きあがる憤怒の感情からだった。
 少女はぴくぴくと痙攣する眉に指を添えながら、小声で呟いた。

「死んだほうがマシなのは、どっちのほうだろうね……?」

 少女の呟きは、再び笑い出したゆっくりたちの声によってかき消された。
 彼女はぎゅっと、鎌を持つ手に力をこめた。
 そして少女は、もう何も言わずに目の前で馬鹿笑いしているゆっくりれいむに鎌を振り下ろした。

「ゆぎゃっ!」

 鉄製の鎌はゆっくりれいむの柔らかな頭皮をいともたやすく貫通し、中のあんこに突き刺さる。
 少女はそのまま鎌を手前に引き、れいむの額を二つに引き裂いた。
 れいむは脳天を晒したまま動かなくなり、他のゆっくりたちは固まった笑い顔でそれを見ていた。
 少女は事態の展開についていけないゆっくりたちめがけて、容赦なく鎌を振り下ろしていった。

「あがぇっ!」
「でいぶのびびがぁぁぁぁぁ!!! どぼじでごんなごっ!?」
「いだい、やべでねぇぇぇ!?」
「まりさをやるまえにれいむをさきに……ぶべっ」

 ゆっくりたちの悲鳴が、山の中に響き渡る。
 逃げるゆっくりを鎌で切り裂き又は踏み潰し又は蹴り飛ばしながら、うるさいなぁ、と少女は思った。
 少女はかなり、ゆっくりのことが嫌いになった。


 太陽が地平線に落ちまいと顔を真っ赤に踏ん張っていて、夕方と呼んでも差し支えない時間帯。少女は山のふもとにいた。
 山菜で満載になっている籠を背負いながら、山頂の方に向かって静かに黙祷をささげていた。
 彼女の服と手に持っている鎌は、土ではない何かで真っ黒に汚れている。
 しかし少女はそんなことに全く気にも留めず、ただただ黙祷をささげていた。
 まるでそんな汚れなど、欠片もついていないかのように。


おしまい


by味覚障害の人

久しぶりに覗いたらSSすごい増えてる!
全部は読めてないので被ってないか不安です……



  • おまけ

~都合により、子れいむのくせに漢字を使っております。あしからず~

『置いてかれた話』


 今日はお父さんとお母さんと一緒にピクニック!

 いつもお母さんは怖い顔しているのに、なんだか今日はゆっくりしてる!

 れいむが転んで泣いた時も、今日は傍に来て慰めてくれた。いつもだったら罵声を浴びせかけられるだけなのに。

 不思議だけど、嬉しいな。やさしいお母さん達と一緒にいるのは幸せだ。

 お母さんやお父さんや、他の友達と歩く山道は、とても楽しかった。

 きっとお母さんがれいむのこと許してくれたんだ。れいむが毎日お母さんに謝ってたから許してくれたんだ。

 結局なにが悪いのかわからなかったけど、許してもらえてよかった。明日からはきっと、お母さんもお父さんもれいむにやさしくしてくれる。

 ……そういえば、お母さんたち遅いなぁ。子ども達だけで遊んでらっしゃい、って言ってたけど、れいむは優しいお母さんたちと居たかったのに。

 ああ、他の子が泣いてしまった。大人たちがいつまで経っても帰ってこないから不安がってるんだ。

 本当に遅いなぁ、お母さんたち。遅すぎるよ。早く帰ってきてよ。れいむがまた悪いことしたならいくらでも謝るから。

 お母さん。早く帰ってきて。お母さん。お母さん。お母さん。

「おが……ぁん」
「うー? こいつなにかしゃべってるどー?」
「あたまかじってたらへんになっちゃったどー! おーもしろーいどー!」


~完~


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最終更新:2022年05月18日 23:12