当SSは『Ten little Yukkuri』の後日談となります。

あらすじ
姉妹を次々と失い1人となった子供のゆっくり霊夢。
この世に絶望したれいむの足はゆっくり加工場へと向かっていた。
れいむは望み通りあの世で姉妹とゆっくりできるのだろうか。




れいむは実のところ加工場が何をしている所なのか分かってはいない。
ただ母ゆっくりに加工場は怖い人間達がいて、ゆっくりにとって最も恐ろしい場所だと教えられていた。
場所も同時に教えられていたので加工場へ着くのには苦労しなかった。


「おや、ゆっくり霊夢がこっちに来てるぞ」
加工場の見回りをしていた職員がこちらへ向かってくるれいむを見つけた。
珍しいことがあるものだ。周辺のゆっくり達はここが恐ろしい事を知ってるので自分から来ることはないのに。
来たとしても遠くからこっちの様子を見るとか、ここを知らないゆっくりが元気よく寄ってくるぐらいか。
「あれは自分から死ににきたゆっくりだな」
「先輩…自分からってあのゆっくりがですか?」
「たまにいるんだ。不幸の連続で死にたがるゆっくりが。そう言う意味ではここは最適だからな」
「はぁ、そういうものですか。それであのゆっくりはどうします??」
「そりゃ迎え入れてやるさ。ほら、お前が捕まえてこい」
「了解」

後輩の職員がれいむを捕まえに行く。
「ゆっ? おにいさん誰? れいむは加工場にいくからじゃましないでね」
「おにいさんは加工場の職員だよ。加工場に行くなら連れて行ってあげるよ」
「ありがとうおにいさん!」
抵抗されないことに戸惑いを覚えながらも後輩職員はれいむを加工場へと持ち帰った。


「さあ着いたぞ」
ごちゃごちゃとした部屋に入ると職員のおじさんが言った。
「先輩セットしました」
れいむを台の上で固定すると報告するのは職員のおにいさん。
「じゃあ始めるか。ナイフとスプーンを持ってこい。味見をする」
野生のゆっくりは捕らえられるとまず味見をされる。そこでランクを付け、または加工先を決定される。
れいむは鋭い痛みを頭に感じた。ナイフを脳天に突き立てられたのだ。
「い"い"い"い"い"い"!!!??? い"だっい"っよ"おおぉぉっ!!!」
そしてスプーンで中身を取り出しやすいようにナイフで頭皮を髪の毛ごと切り取る。といっても1cm四方程度なので命には関わらない。
「さて美味しいかな」
今度はスプーンで中身の餡子をすくう。
「あぎぃぃぃぃぃ!!!」
傷口に異物を突っ込まれ、中身を掻きだされる痛みに絶叫して体をガタガタ動かすれいむだったが体は固定されて動けない。
動けないまま一口、また一口と味見されていく。

「ゆ"ぐっ…ぐっ…」
今まで大した怪我をすることもなかったれいむにこの刺激は酷すぎた。味見はとっくに終わったが白眼を向いて痙攣している。
「うーん、不味いな。お前はどう思う?」
「先輩と同じ意見です。野生のくせに相当不味いですね」
「自殺しに来るぐらいだから恐怖で美味しくなってると思ったんだがなぁ」
「どうします?」
「どうせ食品加工の方は満杯なんだろ。製品の方へ回しとけ」
そしてれいむは応急処置を受ける。応急処置の途中に注射器で成長抑制剤を注入されたがれいむは気付かなかった。
ダンボールに閉じ込められてどこかへ連れていかれていく。
「く、くらいよ! ここからだして!!」
「だ、だしてよ!!」
しかし反応はなかった。


しばらくするとダンボールの上部が開く。
そこにはおばさんがいて、こっちを見つめていた。
「ゆっ、ゆっくりだしてね!!」
おばさんは無言でれいむをむんずと掴み、ダンボールかられいむを取りだした。
「ゆ"うぅ、いたいよ! ゆっくり放してね」
「うるさいゆっくりだねぇ。それじゃ望みどおり放してやるよ」
助かった。そう思ったれいむだったが次の瞬間にはぎゅうぎゅうの袋の中へ詰められていた。
「うぎゅ! な、なにするの!! もうおうちかえして!!」
れいむはいつの間にか死にたいと思わなくなっていた。本能なのだろう、れいむはゆっくりしたくなっていた。
加工所に入る前にそう思っていれば間に合ったかもしれない。もう少し長くゆっくり出来たかもしれない。
だが考えを改めたところでもう手遅れだった。

革製の袋に詰められたれいむの口に、今度は金具がセットされる。
上あごと下あごを固定するような奇妙な金具で、取り付けられると口が閉じなくなってしまった。
「ゅうぐ! うぐ!!」
(なにするの! ゆっくりはやくはずしてね!!)
と、思った通りの言葉が出ない。
今度は袋の口が閉じられる。すると口も一緒に、金具によって強制的に閉じられる。
袋の口が開く。今度は逆に口を開けさせられる。

れいむの入った袋の正体は『携帯ゆっくり』だった。
ごみ箱などの用途で使われるゆっくり製品だ。
もちろんれいむは知る由もない。
ただ身動きができず、口も自分の意志では開閉できなくてゆっくりできない程度にしか思っていない。
おばさんは再び携帯ゆっくりのガマ口を閉じる。
れいむは外の様子が見えないまま自分がどこかへ流されていることだけ理解していた。



それから二週間後、携帯ゆっくりの部品となり製品として売り出されたれいむだったがすぐに買い手が現れた。
購入したおじさんは早速携帯ゆっくりのガマ口を開ける。
そこには運動ができず、食事もほとんどない状態で痩せこけたれいむが口を大きく開けていた。

「…!!」
(みたことないおじさんだ! ゆっくりさせてもらえるかも!!)
もしかしたらと希望を持ったれいむだったが、先が赤く燃えている白い棒が近づいてくるのを見て再びれいむの心は絶望で塗り替えられた。
「がぐぐぐ!!!!」(あづいよ"!! それにけむりがくるじいぃぃ!!!)
れいむは灰皿として使われるようだ。
おじさんはタバコの先をれいむの舌にぐりぐり押しつけると、吸殻をれいむの口にぽいっと捨てて携帯ゆっくりの口を閉じた。
(あづいよ! まずいよ!! へんな味がするよ!!!)
体に自由が利く状態であれば吐き出したであろうが、口に取り付けられた金具のせいで口は開けられない。
それにお腹が減って仕方がなかったので、れいむは熱が冷めたころに不味さを我慢しながら泣く泣くたばこを飲み込み消化していく。

それからというものれいむは食事には困らなかった。おじさんはヘビースモーカーだったから。
おじさんがタバコを吸うたびに、熱い灰を口内に落とされ、タバコを舌に押し付けられる。
だがれいむにとって唯一救いだったのは嫌だった煙に慣れてきたことだった。むしろ数時間煙を吸わないと落ち着かなくなっていた。
(ゆっくりできるけむりがほしいよ…! でもあついのはいやだよ…)
そしてまた携帯ゆっくりの口が開く。れいむの食事と苦しみの時間が始まった。


結局れいむは希望通り死ぬこともできず、ゆっくりもできないまま長い時を過ごすことになる。
最後にいなくなったゆっくりの場所はおじさん以外誰にも分からない。

何年か経っておじさんがいなくなった後、れいむは革袋の中でゆっくりと腐っていった。
れいむ死ぬ瞬間まで食糧とタバコの煙を求めて苦しんでいた。







おまけ

子ゆっくり達のおうちを奪い、1人のゆっくりをいなくさせた大れいむと大まりさはその夜結ばれることとなった。

「ゆ~ゆゆゆゆゆ」
「んふ~んふっんふっ!!」
「れいむぅぅぅそろそろすっきりするよぉぉぉ」
「まりさまりさぁ! れいむも! れいむもすっきりしちゃうのぉぉぉぉ♪」
れいむとまりさはお互いに頬を激しく擦り合わせて絶頂に向けてラストスパートする。
「「んほおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♪」」
激しく上を向いた目、だらしなく涎を垂らしながら二匹はオーガズムに達した。

この二匹は一年前に湖のほとりで出会い、恋に落ちた。
今日までに危険な目にあったり喧嘩したりしたがようやくつがいとなった。
そんなときにこの広くて二匹の愛の巣に相応しいおうちを見つけたのは幸福としか言えない。
小さいゆっくりが二匹がおうちを占領しようとしていたときは焦ったが、一匹潰して一匹追い出せたので問題ない。

まりさがれいむと出会ってからの一年を思い返していると、れいむの頭から茎が生え始めた。
「ゆ! 子供が生まれるよ!!」
「あたまいたいけど…あかちゃんのためにがんばるね!」
「ゆっくりがんばってね!!」
れいむに生えた茎の先から10個の実がなる。すでに姿も出来ていてちびれいむが5匹、ちびまりさが5匹なっている。

「ゅ、ゅっくりちてぃってね!!!」
一匹のちびゆっくりがお決まりの挨拶でこの世に生を受けると、続けて他のちび達も生まれ始めた。
「ゆっくりちてってね!!」「ゆっくりしゅていってね!!」
「ゆっぐりじでいっでね!!!」「ゆっくりしていってにぇ!!」
挨拶とともに茎から離れて地面に着地するちびゆっくり達。
早速お母さんの周りをぴょんぴょんと飛び跳ねている。
全員揃ったところで再びゆっくりと挨拶する。

「「「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」

合計12匹のゆっくりが息を合わせて挨拶する。これでもうみんなは家族だ。
まりさはちび達のために予め用意しておいた野菜を取り出す。
「みんなで食べようね!!」
「わーい、おかあさんだいしゅき!!」「ゆっくりたべりゅね!!」
ちび達にとっては大きい野菜をバクバクと元気に食べる様子を見てまりさとれいむは幸せそうに頬をすり合わせた。



ちびゆっくり達が生まれてから誰ひとり欠けることなく一か月が経った。
はじめ五百円玉ぐらいの大きさだったちび達も一か月経って10~20cmぐらいの大きさまで成長した。

「にんげんのいえでしょくじしたらゆっくり出来なくなるからはいっちゃだめだよ!!」
生まれてから毎日のように母れいむによる危険物講座が開かれていた。
母まりさも母れいむも大きく育つまでに色んな危険を目のあたりにしてきた。
子供のためにと今日もやってはいけないことを子ゆっくり達に覚えさせる。
子ゆっくり達としてもゆっくりできないのは嫌なので母の話を真剣に聞いていた。

その頃母まりさは家族のために食事を取りに出かけていた。
母まりさも危険なものだとかやってはいけないことをよく知っているゆっくりなのだが、
今回は運が悪かったとしか言いようがない。
少し高い所にある木の実を取ろうと体を伸ばしていたまりさは突然網で捕らえられた。
「ゆゆ??」
「ゆっくりゲットー。なかなか大きいな」
「な、なにするの!? ゆっくり降ろしてね!!」
まりさを捕まえたのは人間だった。人間に出会わないように極力気を付けていたし、見かければその場を離れるようにしていた。
ただ、今回は木の実を取ろうと集中していて忍び寄る人間に気が付かなかっただけなのだ。
「降ろしてもいい」
「ゆっ?」
「ただし君のおうちを教えてくれたらの話だ」
「だ、だめだよ!! ゆっくりできないおじさんには教えられないよ!!!」
「いやいや、君たちをゆっくりさせてあげるためなんだ。いいだろう?」
「ゆ……やっぱりだめだよ!!」
このおじさんはゆっくりさせてくれると言ったが、そう言ってゆっくりを虐める人間を見たことがある。
やっぱりこのおじさんを家族に合わせるわけにはいかない。
「連れていくならまりさだけにしてね!!!」
「それも確かにありだな。だが君に家族がいるのは間違いなさそうだし、やはり教えてもらおうか」
おじさんはまりさの返事から家族がいることを確信するとしつこくまりさのおうちを聞いてきた。
「だめだよ!! ぜったいにおしえないよ!!! ゆっくりできないおじさんはゆっくりしね!!!」
「そうか」
おじさんはそれだけ言うとリュックから木槌を取りだすと勢いよく網の中のまりさを殴り付けた。
「ゆぶぇっ!!! いだぃよ!!!」
「おうちを言う気になったらやめてやろう」
おじさんは何度も木槌でまりさを殴り続ける。
「うべぇっ! げぇっ!! びゅいぇ!!! ぐばぁっ!!! はひゅっ!!!」

何度も殴られると体中凸凹になり、口や体のあちこちから餡子が流れ出て劇的ビフォアーアフターになっていた。
「そろそろ言う気になったか?」
「ひぐっ、ひぐっ…いいまず…いうからゆるじでぇぇ!!!」
とうとうまりさは折れた。家族は大事だが自分が死ぬのはもっと嫌だった。



まりさの案内を元におうちへと着いたおじさんだったが、おうちには誰もいなかった。
「誰もいないようだが?」
冷静な口調で話しながらまりさを再び木槌で殴る。
「そんなわげないでずぅぅぅ!!」

その様子を茂みの中から見る母れいむと子ゆっくり達。
彼女たちはちょうど外での遊びから帰ってきたところだった。
「ゅ…! おかあさんがあぶないよ!!」「ゆっくりたすけないと!!!」
「だめだよ! おかあさんはにんげんにぜったい近づいちゃだめっていってたもん!!!」
「れいむおかーさんみすてるのぉ!?」
「しっ、ゆっくりしずかにしてね! みつかっちゃうよ!!」
母れいむの言葉に子ゆっくり達はだまる。
「しんぱいしなくてもまりさはれいむがたすけにいくよ!」
「お、おかーさんだめだよ!! にんげんにちかづいたら…!」
「れいむは…おかーさんだからだいじょうぶだよ! でも、みんなはぜったいにここでかくれててね!!」
それだけ言うと母れいむは何度も殴られているまりさの元へと向かった。


「おじさんゆっくりやめてってね!! まりさをはなしてね!!」
「んー? おまえはこいつのつがいか?」
「そうだよ!! れいむのあいするまりさをいじめないてね!!!」
「れ、れいむぅ…ごめんなざいぃぃぃ!! まりざがおうちのごどをっ、おうちのばしょをっ!!!」
「まりさはあやまらないでね!! わるいのはこのおじさんだよ!!!」
「やれやれ勇ましいゆっくりだな」
「まりさを…はなせえぇぇぇぇぇ!!!」
れいむは勢い付けておじさんへ体当たりをする。否、それはもはや突進の域に達していた。
恐らく当たり所が悪ければ死ねるだろう。
だが――それは人間、それも大人相手には敵わない。
れいむが突進した先、それはおじさんの靴の裏だった。つまり蹴りでカウンターされたわけだ。
声も出ないままれいむはふっ飛び、おうちの壁へと叩きつけられた。
「う…ぐぐ…い"だい"…」
「れいむうぅぅぅ、にげてえぇぇぇ」
「まりさぁ、ぜったいに…ぜったいに助けるがるぁっ!!??」
立ち上がろうとしたれいむにおじさんが追い打ちをかけた。
単純に踏みつぶしただけだが、れいむの残り少ない体力を奪うには十分すぎる攻撃だった。
れいむはそのままうつ伏せになったまま気を失った。
「やれやれ、ゆっくりが人間に勝てるとでも思ったのかねぇ」
おじさんはもう1つ用意した籠にれいむを入れて蓋をするとその場を去って行った。


一部始終を少し離れた茂みからずっと見ていたゆっくりがいた。
母の教えを守り、助けたいのを我慢していた子ゆっくり10匹だ。
「おかあざーん」「うっうっうっ」
おかあさんが目の前で連れ去られていき、もう二度と会えないことを感じた子ゆっくり達は静かに泣いていた。





それから数日。
母ゆっくりのおかげで人間に捕まらないで済んだ子ゆっくり達は助け合いながら生きていた。
そして今日もみんなで食事を取りに出かけていた。

「「「「ゆっくり~♪ ゆっくり~♪ み~んな~で~、ゆっくり~♪」」」」
奇妙な歌を歌いながら10人のゆっくりは草原を行く。
「ゆっ! ごはん! ゆっくりたべるよ!」
一番先頭を行くまりさが行く先に見える洞窟にごはんを見つけたようだ。
真っ先に洞窟へと向かっていく。
「ゅ! ゆっくりまってね!」「わたしたちもいくよ!」「みんなでたべるよ!!」
後を続く残りの9人。
しかし先に洞窟へ着いたまりさが何かに捕まるのを見るとその足は止まった。
「うー♪ うあうあー♪」
ゆっくりれみりゃだ。昼間だが、暗い洞窟の中ではきっちり活動していたようだ。
「ゅぎゃぁぁあ!! だ、だずげでぇぇぇ!!」
さっそく餡子を吸われて絶叫して助けを請うまりさ。
だが誰も助けにいかない。行ったら同じ目に合うのは間違いないのだから。
「ごめんね!」「ゆっくりしんでね!!」
残ったゆっくり達はまりさを見捨てて足早に洞窟から離れていった。


それはどこかで繰り広げられた悲劇と同じだった。
そしてこの先もまた同じだった。


10人のゆっくりが食事に行った
1人がれみりゃに食べられ
そして9人になった

9人のゆっくりが人里でブランコしてた
1人落っこちて
そして8人になった

8人のゆっくりが人里を旅してた
1人がそこに残って
そして7人になった

7人のゆっくりが追いかけっこしてた
1人が罠にかかって
そして6人になった

6人のゆっくりが花畑で遊んでた
1人が蜂に刺されて
そして5人になった

5人のゆっくりが井戸の所にいた
1人が落っこちて
そして4人になった

4人のゆっくりが河に行った
1人が落っこちて
そして3人になった

3人のゆっくりが森の中で遊んでた
ありすが1人抱きしめ
そして2人になった

2人のゆっくりがおうちでゆっくりしてた
1人ぺちゃんこになって
そして1人になった

1人のゆっくりが寂しくしてた
加工場へと向かって
そして誰もいなくなった







終りがないのが終わり。




後書き

ゆっくりかわいいよゆっくり。
透明な箱に閉じ込めて炎天下で放置したいぐらいかぁいいよ。


最後にいなくなった1人
 後日談なのでさっくり書きました。
 それとSS『ごみ箱ゆっくり』の携帯ゆっくりを使いました。

大れいむと大まりさ
 身内には優しいんです。
 え? おまけの方が長い?
 わからない、わからないよー



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最終更新:2022年05月03日 17:02