竹取り男とゆっくり 4

(fuku4299・fuku4374・fuku4529の続きです)



 深更…。
 フクロウの鳴き声ひびく山上の自宅に帰りついた男は、荷車を納めると、れいむとぱちゅりーの入ったケースを抱え上げた。
 2匹とも狭いケースにギュウギュウ詰めのままぐっすりと眠っている。
 あの店主の話では、ゆっくりを強制的にゆっくりと眠らせる特殊加工が施されているらしい。
 昨日と同じようにテーブルの上にケースを置くと、男はしげしげとゆっくりたちに見入っていた。

『ゆっくり……たけをかっていってね!』

 …………あの言葉。
 あの時れいむが何を思ったのか知らないが、根はそんなに悪いヤツじゃないんだろう。
 初日と同様デカイ口をあんぐりと開けて、喉の奥をこれでもかと見せつけながらイビキをかくれいむを見ながら、そんなことを思った。
 対照的に、可愛い口をリスのように結んでスヤスヤ眠るぱちゅりー。
 寝顔から判断するに、こいつとも何となくうまくやっていけそうな気がする。
 少なくともあのまりさ種のような性格の悪さだけは勘弁してほしい。
「さて、と」
 竹取りを生業とする山男の朝は早い。
 すでに午前様になっており一刻も早く寝なければいけないのだが……
 男は好奇心を抑えられず、ケースの横のテープを引っ張って、まずはれいむを底に落とした。

 デンッ!

 「…………くそっ、この鈍感饅頭が」
 今回もれいむは目覚めなかった。
 それならばと、男は途中まで抜いた厚さ1センチほどの床板を、徐々に押し戻していった。

「い、いひゃいよ! ………ゆゆゆっ!?」

 心地よい眠りを妨げられたれいむは最初こそ顔をしかめていたが、男と目が合うなり口を開けて震え出した。

「よぉれいむ。これから一緒に素敵な餡子ライフを送ろうな!」

 てっきり、元いた甘味屋に返品されたと思っていたれいむ。
 再び男の姿を目の当たりにして、恐怖のあまり固まってしまっている。
 男がさらに板を押し込むと、やわらかいれいむの頬に床板がめり込んでいく。

「ゆひゅうぅぅ……ゆっくいやめひぇね! ゆっくいやめひぇね!」

 れいむは反対側に逃げようとするが、狭いケースにそんなスペースはない。

 ぶにゅぅぅ…

「ゆびいぃぃぃぃっ! ゆっぐいやべでぇ!!」

 そのまま顔の中心まで板をめりこませてから、男は許してやった。
 あんまり強くめりこまされたものだから、れいむの体は"く"の字に曲がってしまった。
 頬にもくっきりと横線がついて、一部は薄く切れて中の餡子が覗いている。

「ゆ゙っ…ゆ゙っ…ゆ゙っ…」

 涙目になって震えているれいむ。中身も甘さを増したことだろう…。
 …次は紫色のぱちゅりーだ。
 男はテープを引っ張って、床を完全に抜き取った。

 ポテ…

 そう、そんな感じ。
 やわらかくて軽いものが落っこちた感じ。

「むきゅ……むきゅうん……」

 衝撃が軽かったのでまだ寝ぼけているらしく、ぱちゅりーは小さな口でむきゅむきゅ言いながら目を開けようとしない。
 それならばと、男はれいむと同じように、抜いた床をケースに押し込んで、ぱちゅりーの体を挟んでやろうとした。
 そのとき…

「ゆっくりしていってねっ!! ゆっくりしていってねっ!!」

 まだ形の戻りきっていないれいむが、常にも増してけたたましくお決まりの挨拶を叫んだ。
 あまりの大声に、密着していたぱちゅりーはびっくりして飛び起きた。

「むっきゅう! なにごとなの! きんきゅうじたいはっせい!?」

 ぱちゅりーはあたりを見回そうとするが、ケースに阻まれて動けないことに気づいた。

「むきゅ? うごけないわ」
「ぱちゅりー!! ゆっくりしていってね!!」
「れいむ? ゆっくりしていってね。 …もうちょっとしずかにはなしてね」

 男はぱちゅりーが目を覚ましたので、抜き取った床板を脇にやった。
 どうやられいむは自分と同じ目に合わされそうなぱちゅりーの身を案じて、大声を出して起こしたようだ。
 初対面の同族を助けようとするあたり、それなりに思いやりがある。

「むきゅ?」

 ぱちゅりーがケース越しに男に気づいた。

「おにいさんはだれ?」

 おっ! おじさんじゃなく、おにいさんときたか。
 せっかくだからお互いの信頼を深めるために会話を楽しんでみようと、男はぱちゅりーをケースから出してテーブルの上に置いた。
 ケースに残されたれいむは自分も出して欲しそうな顔をしていたが、あっさり放置してやった。

「おにいさん、れいむもここからゆっくりだしてね!」
「俺か? 俺は、今日甘味屋でお前を買ってきたお前の飼い主だよ」
「かいぬし? …むきゅ! ぱちぇはおにいさんなんかにかわれてないわよ」

 一人称は"ぱちぇ"…と。
 なにやら反論してくるが、そこはスルー。
 ついでにれいむもスルー。

「ゆゆ、ぱちゅりーもれいむをだしてくれるように、おにいさんにたのんでね!」
「へぇ…やっぱり"ゆゆ!"とか言わないんだな。"おいしい食べ物をゆっくり持ってきてね!"とかも言わないし…」
「むっきゅ! せんれんされたぱちぇは、むいみなことをいったりたべものをねだったりしないわよ」

 じゃあ「むきゅ」には意味があるのか…?

「おにいさん! ぱちゅりー! れいむもゆっくりかまってね!」
「それに、目が座ってる…」
「むっきゅ〜ん! ちしきとけいけんをたくわえたぱちぇは、ものごとにどうじないのよ」

 まだ眠いだけだろ…?

「こっちむいてよぉ!」
「声もちいさいから、一緒にいてうるさくなくていいかも…」
「むきゅきゅきゅきゅ! しずかなこえでじょうひんにはなすのは、しゅくじょのたしなみね」

 ……結論、面倒くさい。
 自分の語彙の豊富さをいちいちアピールしてくるのが何ともメンドクサイ。
 そんなぱちゅりーをちょっといじってやろうと思う男だった。

「ゆえぇぇぇん! だしてよ! れいむもゆっくりさせてよぉ!」
「ところで、ぱちぇは何か欲しいものはあるか?」
「むきゅうっ! ぱちぇをぱちぇとよんでいいのは、ぱちぇとぱちぇのしんゆうだけよ」
「ゅ…………」
「そ、そうか…。それで、必要なものはあるか? なにか足りないものとか?」
「むきゅきゅ…ぱちぇはちしきよくをもてあましてるから、ごほんがよみたいわ。おにいさんはごほんをもってきてね」

 食べ物はねだらなくても、本はねだってくるんだな…。

「…………」
「本か。悪いけど俺、本読まないからウチには一冊もないよ」
「むきゅうぅー!? ごほんがないなんて……ごほんをよまないなんて……」

 ものごとに動じないんじゃなかったのか…?

「…………」
「それにしてもぱちゅりーは変な帽子をかぶってるな。ちょっと見せてくれよ」
「むきゃあーーー!! ぱちぇのおぼうしとらないでぇ!! …ごほっごほっ!!」

 ぱちゅりーは帽子を取り返そうと、半狂乱になってピョンピョン飛びはねた
 あのぉ……淑女のたしなみは…?

 こうして偽りの仮面をはがされて、だんだんゆっくりらしくなっていくゆっくりぱちゅりー。
 放置プレイ中のれいむはというと、下を向いたまま無言で泣きべそをかいていた。

「むっぎゅっ…ごっほ、ごほぉ! ごぼお゙!! ごぼお゙お゙!!」

 と…単にむせたと思っていたぱちゅりーの咳が、どんどんひどくなってくる。

「おいおい、大丈夫か?」

 とりあえずトントンと優しく後頭部を叩いてやる。

「ぶえっぽ!! ぎゅぼえっぽ!!!」

 もっとひどくなった(汗)

「ごほっ、ごほぉ、ぎゅぼお゙お゙お゙ッ!!!」

 そして、ぱちゅりーはこの日最大級の咳をするなり、テーブルに白いかたまりをぶちまけて仰向けにひっくり返った。

「ちょっ!!」

 男もさすがに慌てた。
 咳こんで発作を起こすってことは、あっためたほうがいいのか!?
 男は急いで押入れから毛布を出すと、ぱちゅりーを抱きしめたまま毛布にくるまった。

「そうだ、何かあったかい飲み物!」

 男はぱちゅりーを抱いて毛布をかぶったまま、台所に行って水の入った鍋を火にかける。

「ごほっ、ごほっ、え゙ほっ」

 苦しそうに咳き込むぱちゅりーの口元と男の服には、白い飛沫が点々と飛んでいた。
 しばらく待ってから、湯が沸騰する前に茶椀に注ぐ。

「ほら、白湯だ、ゆっくり飲めよ? …ゆっくりだけにな!」

 いらん駄洒落を飛ばしながら、男は茶椀の白湯をぱちゅりーの口元に持っていく。
 そうして一口含ませては飲み込ませ、また含ませては飲み込ませ、ややあって体があったまると、ぱちゅりーの咳も少しずつ収まってきた。

「まだ飲むか?」
「むっきゅ……むっきゅ……」

 ぱちゅりーはギュッと目を閉じたまま、口を三角にして(△←こんな感じ)おとなしく飲んでいる。

「ああもう、どうなるかと思ったぜ」

 そのままコップ2杯分の白湯を飲み干したぱちゅりーは、しばらくゴホゴホやっていたが、まもなく眠ってしまった。

          *          *          *

 ぱちゅりーが目覚めたのは、太陽が中天を越えてからだった。
 発作は完全に収まっている。

「むきゅ…むきゅ…」

 腕の隙間をかいくぐり、毛布をよけて顔を出すと、目の前に男の寝顔があった。
 男はぱちゅりーと一緒に毛布にくるまって、壁に背中をあずけて座って寝ていた。

「むきゅ…」
「うぅぅ、ん?」

 毛布の中で何かがモゾモゾと動く感触に、男は目を覚ました。

「おぉ、ぱちゅりー。具合はどうだ? 咳は止まったか?」
「むっきゅん、かんぜんふっかつよ」
「よかったな。じゃ、俺も起きるか」

 抱きかかえていたぱちゅりーをテーブルの上に置く。
 すぐ側のケースの中では、れいむが泣き疲れて眠っていた。
 うんと背伸びをして、毛布を押入れにしまう男。
 だいぶ遅くなったが、竹を切りに行くために服を着替えようとした男は、胸にこびり付いていた白いかたまりに気がついた

「あれ? これって…」
「むきゅうぅ!? そ、それは…」

 たしかぱちゅりーが吐き出したものだ。
 そういえばぱちゅりーの中身は何だろう…?
 やや凝固したそれを指ですくうと、男は口に入れてみた。

「甘〜い。お前の中身って、生クリームだったんだな」
「む、むきゅうん……」

 振り向いた男の笑顔に耐えきれず、ぱちゅりーはうつむいた。
 そんなぱちゅりーを気にもせずケースに入れて蓋をすると、男は急いで服装を整えて、竹を切るべく家を出て行った。


 その日の夕刻に、男は山での仕事を終えて家に帰った。
 手早く湯を浴びて居間に入ると、ケースの中のれいむとぱちゅりーが視線を向けてきた。

「むきゅ、おかえりなさい」
「…………」

 最初はツンツンしていたぱちゅりーだったが、助けてくれたことに感謝したのか、男を信頼しているようだった。
 一方、今度はれいむがツンツンしている。
 一瞬だけ放置プレイのつもりが、ぱちゅりーの介護によって一晩中放置プレイになってしまったせいで、れいむはすっかり反社会的になっていた。
 男はちょっと心配になって、れいむを持ち上げてみた。

「ゆっ!? はなしてね! れいむのことなんか、ゆっくりほっといてね!!」

 れいむは自暴自棄になってジタバタと暴れる。

「なんだ、元気はあるんだな」

 男は安心してれいむを戻した。
 れいむは解放されてホッとしているような構ってもらえず残念そうな、ゆっくりにしては複雑な表情を浮かべていた。
 ゆっくりのくせに、ずいぶんと生意気である。
 …さて、男は台所に行くと、山で取ってきた山菜を米と一緒に炊いて、芋の煮っ転がしも作った。
 料理をテーブルに並べると、2匹と一緒に食事を囲んで食べた。

「うっめ!! これめっちゃうっめ!! へぶんじょうたい!!」

 さっきの態度はどこへやら、温かい煮物と山菜ご飯をハフハフしながら食い散らかすれいむ。
 ぱちゅりーはというと、小さな口でこぼさず上手に食べていた。

「おにいさん! れいむにもっとちょうだいね!」

 普段ならば返事の代わりにビンタでも一発くれるところだが、今日は大切な話があるので許しておく。
 男は釜から山菜ご飯を持ってきてやった。
 「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」などと悠長に食べていられないのか、茶碗に顔を突っ込んで「めっちゃうっめ!」を繰り返している。
 対照的に、ぱちゅりーは食が進んでいない。

「ぱちゅりー! ごはんたべないなら、ぜんぶれいむにちょうだいね!」
「むきゅ…あげるわ」
「ぱちゅりー、病み上がりなんだからちゃんと食べろよ」
「ぱちぇはおなかすいてないの…」
「おにいさん、ぱちゅりーはあんまりたべないんだよ! かわりにれいむがたくさんたべてあげるから、ゆっくりあんしんしてね!」
「そうなのか?」
「むきゅう…」
「おにいさん、もうなくなっちゃったよ! もっともってきてね! ゆっくりでいいよ!」

 空っぽになった茶碗を舌で指して催促すると、れいむはその舌で煮物をすくい始めた。
 男が釜ごと持ってテーブルに戻ると、れいむはすでに煮物をたいらげて皿まで舐めていた。

「ぺーろぺーろ、しあわせー!! …ゆっ! はやくそのごはんをちょうだいね!」
「おい、お前食いすぎだぞ。少しは遠慮を…」
「なにしてるの? はやくしてよ! おじさんきこえないの? ばかなの? しぬの?」

「…………このやろう!!!」

 男はれいむをわしづかみにすると、持ってきた釜の中に頭から(…といっても頭しかないが)叩き込んだ。

「ゆべッ! おべべまっぐら゙だよぅ!! いぎがでぎないよぅ!! ゆっぐぢだじでね゙ぇぇぇ!!!」
「うるせぇ! そこで思う存分ゆっくりしてろ!!」
「ゆ…ゆっぐじ!?」

 れいむはようやく気づいたようだ。
 自分が頭から(…といっても頭しかないが)炊き込みご飯の釜の中にいることに。

「ゆっ!? ゆ゙ゆ゙ゆ゙っ!? でいぶごはんにうまっでるよ!! へぶん!! でいぶへぶん!! ごはんじょうたい!!!」

 美味しいご飯に頭から埋もれて感激したれいむが、意味不明な言葉を叫びだす。
 とはいえ釜の中にすっぽり入っているため、くぐもった声にしかならず、それほどうるさくはない。
 こいつはもうダメだ…。
 そう思った男は、大切な話をぱちゅりーから話すことにした。

「なあ、ぱちゅりー。実は話がある」
「むっきゅ? なぁに?」
「このれいむと子作りしてほしい」
「いやよ」

 あっけなく玉砕してしまった。だが、男は諦めない。
 別にれいむの名誉のためではなく、ここで諦めては何のためにこいつらを買ってきたのか意味がないのだ。

「そこをなんとか」
「むきゅっ!」

 ぱちゅりーはむきゅっ! と自分で効果音をつけて、あっちを向いてしまった。
 男は両手でもう一度こっちを向かせた。

「気持ちはわかる。俺も自分がゆっくりだったら、こんな意地汚いれいむなんかと夫婦になるのは嫌だ。でもな…」

 俺は饅頭が喰いたいんだ! …なんてこと言うわけにもいかないので、

「結婚をして、子供をつくって、立派に育てあげるのが、女の幸せってもんじゃないのか?」
「むっきゅう! ぱちぇはれいむとはけっこんしたくないの!」
「れいむとは? じゃあ、お前が気にいったゆっくりとならいいよな? 俺、竹切りながら立派なゆっくりを探してきてやるから」

 てか、なんでいつの間にか、こいつのお見合い話に飛んでるんだ?
 いや、深くは考えまい。今はなんとかこいつをその気にさせて、つがいになって繁殖してもらわなければ…!
 そう決意して、男はぱちゅりーを口説き落とそうとたたみかける。

「自分のおでこから茎が伸びて、たくさんの赤ちゃんが実るのを想像してみろ。可愛いぞぉ。その赤ちゃんたちが成長してお前にこう言うんだ。
 ……ゆっくちしちぇいっちぇにぇッ!!」

 男は甘味屋で見た、赤ゆっくりたちが生まれ落ちた情景を思い出しながら、必死に口調を真似てみた。
 本音を言えば赤まりさも赤ありすも全然可愛くなかったが、ここは嘘も方便である。
 ぱちゅりーはといえば、顔を伏せて目をつむっている。きっと未来の家庭を想像しているのだろう。
 今がチャンスである。

「それでな、お前の赤ちゃんたちは、こうやってちょいちょい〜んってお前にくっついてさ、やるんだろ? あれ。あの、すーりすーりとかって」

 男は自分の拳を赤ちゃんに見立てて、ぱちゅりーの頬にくっつけてすりすりと撫でた。
 ぱちゅりーのもち肌が気持ちよかった。

「で、お前も赤ちゃんにすりすりして、最高の笑顔で迎えるんだ。ほら、言ってみろ。お前らがいつもやるあいさつをこの赤ちゃんに」

 男はぱちゅりーの前に拳を置いた。
 ぱちゅりーは今、夢想の中で家族と一緒にいる。
 ここで男の拳に「ゆっくりしていってね!」と血迷うぐらいどっぷり夢につかってれば、もう計画は達成したも同然だ。

「さあ、ぱちゅりー、言ってみろ。さあ!」

 男は再びぱちゅりーの頬をすりすりしながら、ぱちゅりーを促した。

「……ゆ」

 よぉし! 言えよ! 言っちまえよ! そして俺に饅頭を食わせろ!!

「ゆっくり…………………………………………しねぇ!!!!!」

「は?」

 ぱちゅりーは普段とは似ても似つかないような鬼気迫る表情で男に体当たりをかました。
 予想外の行動に、思わず尻餅をついてしまった男。
 ぱちゅりーもまた、ぽてっと床に落ちてきた。

「え? ……なんで?」
「むきゅう! このおばか! わからずや! ぱちぇはけっこんなんかしないの!! きゅ……むぎゅぅぅ〜! むぎゅぅぅ〜!」

 そう叫ぶなり、床に突っ伏してひたすら泣き始める。

「……そんなに嫌なのかよ」

 子供を作りたくないゆっくりがいるなんて、さすがに知らなかった。
 饅頭とはいえ一応は♀だ。繁殖を無理強いするのは気が進まない。
 あーあ、また新しいの買わなきゃ…。

「わかったよ。悪かったよ。お前がそんなに結婚嫌いだなんて知らなかったんだよ」

 ぱちゅりーの嗚咽は止まらない。

「もういいよ。もう言わないからさ。今日から自由にお前の好きなところに行って、好きに生きなよ。な?」
「むぎゅ……。ぱちぇを、そとにだすの?」
「ああ。狭いケースの中じゃなくて、外の広い世界で自由に生きろ」
「…………う…むぎゅうぅぅぅぅぅ」

 ぱちゅりーはまた泣き始めた。
 なんで…?

「むっぎゅーん!! このどんかん! にぶちん! ぼくねんじん! ぱちぇがこんなにおもってるのに、どおしてきづかないのよ!!」
「は?」
「ぱちぇは…ぱちぇは…むぎゅ…たすけてもらってうれしかったのに! ぱちぇのなまくりぃむなめて、あまいっていってくれたのに!
 むぎゅうぅぅぅぅぅぅぅ…!!」

 …いやいやいやいや。
 …まさかそう来るとは思わなかった。
 男は初めてぱちゅりーが結婚したくないと言う本当の理由を知った。

「なあ、ぱちゅりー」

 男はぱちゅりーの頬に触れ、優しく話しかけた。

「むぎゅぅ…………ぱちぇってよんで」
「じゃあ、ぱちぇ」
「むきゅ……なぁに?」
「たった一晩優しくしてもらったぐらいで、つけ上がるんじゃねぇよこのメスブタが!!」
「む……きゅ……?」

 一瞬混乱して、目を白黒させるぱちぇ。

「鈍感だと? 鈍感ななぁてめぇだこのボケがっ」
「むぎゅっ!?」
「俺の目的はな、饅頭だ饅頭! 特に餡子ぉ! れいむとお前を一緒に持ってきたのは、お前らを繁殖させて毎日美味しい饅頭を食うためだ」
「そんな……あかちゃんを……」
「そうだ。お前のクソガキだ。できれば内緒でこっそりゴチになろうと思ってたんだ。そうすりゃ俺も幸せ。子供作ってお前も幸せ。
 だけどもうそんなの関係ねぇ! さぁ、四の五の言わずにガバッチ!!」

 男は右手にぱちゅりーをつかみ、左手には茶碗にハマって動けなくなっていたれいむをつかんだ。

「ゆゆ!? おにいさん、ありが…」

 そして、ぱちゅりーを仰向け、れいむをうつ伏せにして重ねると、猛烈な勢いでこね回した。
 2匹のやわらかい体が粘土のように形を変えていく。

「ゆびっ! ゆげっ! やべで! ゆっぐじ! やべでね゙!」
「むぎゃん! いやっ! やだっ! やだぁ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「ゆぐっ! ゆふぅ! れっ、れいむ! きもち! よくなって! ……」
「むきゅきゅっ! こんなの! ぜったい…! ……っ!」

 上半身の筋肉が悲鳴を上げるまで高速マッサージを続けた男は、バッと2匹を放った。

「ゆゆぅ〜ん♪ ぱちぇ! ぱちぇ! きもちいいよぉ! れいむといっしょにすっきりしようね!!」
「むっきゅう! むぎゅうん! やめてっ! こすりつけないでぇ!」

 れいむはすっかり発情していたが、ぱちゅりーは本当に気持ち悪いらしく拒絶をうったえている。
 一生懸命れいむを振りほどこうとするぱちゅりーだが、餡子れいむと生クリームぱちゅりーとでは体重差がありすぎる。

「ゆふぅぅぅっ…ぱちぇのおはだすっべすべ! ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ」
「むぎゅっ…む……むぎ…ゅ……」

 ぱちぇはれいむに押さえつけられ、なすすべもなく頬から髪から全身を舐め回されていた。
 そして、れいむの熱い舌がぱちゅりーの口の中へ入ってくる。
 病弱で力の無いぱちゅりー…。組み敷かれてすでに体力を失い、れいむにされるがままになっている。

「んふおっ! んほおっ! すっきりしちゃうぅ!!にんっしんっさせちゃうよ!!」
「むぎゅ……む……」
「でいぶっ…ぱちぇがはじめてだよ! にんっしんさせるのもはじめてだよ!! でいぶのこどぼ! ゆっぐりうんでねぇ!!」
「…………」
「い゙ぐっ…い゙ぐよ゙お゙!? っんほおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉおぉおぉすっきりーーーーーっ!!!!!!」

 思いきりすっきりしたれいむは、もう何と形容すべきか、憎らしいほど輝いた笑顔で天を見上げた。
 れいむは生涯初の"すっきり"に感激して、滝のように涎を垂らしながらニヤニヤしている。
 ……交尾を終えたゆっくりって、みんなこんな顔しかできないのか?
 ぱちゅりーのほうは、れいむの唾液と粘液でできた海の真ん中でぐったりと横たわっている。
 すっきりもしていないようだ。
 なんだかヤリ捨てられた感MAXだ。

「ゆへ…ゆへへへ…ぱちぇ、きもちよかったよぉ。もういっかいしようねぇ」

 れいむはニヤニヤしながら再びぱちゅりーの背後から覆いかぶさると、へこへこと体を振りだした。
 ここでぱちゅりーに死なれてはたった1度の繁殖で終わってしまうので、男はれいむに手を伸ばした。
 つまみ上げられたれいむは、空中でへこへこ体を振っていた。
 振動に合わせてれいむの体の粘液が糸を引いてボタボタ落ちて、ぱちゅりーの顔にかかった。

「ゆっふ…ゆっふ…ゆふぅ…!ぱちぇ…ぱちぇ…どこいったのぉ!?」

 すっきりの直後で朦朧としているのだろう。
 れいむはぱちゅりーの体を探してすっきりしようと、激しく体を振る。

「きたね!」

 男はネチョネチョするれいむの体を放り投げた。

「ゆふぅ…れいむおそらをとんでぶゅぎゅっ!!!」

 れいむは壁に当たって、ツツーッと粘液の糸を引きながら床に落ちた。
 そしてしばらくウロウロしていたが、落ちていた茶碗を見つけると、早速体をこすりつけ始めた。

「ゆひょお!? ぱちぇにもこんなにかたいとこあったんだね!!」

 硬い物は刺激と快感が強くなるのか、れいむは茶碗をぱちゅりーだと思い込んで、一人で嬌声を上げていた。

「ぱちぇ」
「…………」

 額から茎を生やしたぱちゅりーは、どこか遠くを見ている。

「ぱちぇ」
「むきゅ…そのなまえでよばないで」

 ぱちゅりーは冷たい声で言った。
 粘液にまみれて乱れた髪。こすられて赤く腫れた体。そして涙。
 ぱちゅりーは心も体もグシャグシャだった。

「おにいさん…。ぱちぇ、おねがいがあるの」
「なんだ?」
「うまれたあかちゃんのかわりに、ぱちぇをたべて」
「……!!」
「おにいさんにたべてもらいたいの」
「…………どうして?」
「むきゅぅ…。だって、ぱちぇは…いまでも……」

 ぱちゅりーが選んだのは、赤ちゃんを助けて、なおかつ自分の想いも貫く唯一の方法だった。
 裏切られても、想いが届かなくても、ぱちゅりーは一途だった。
 男は心を打たれてしまった。
 そう、うっかりと。

「…わかったよ。お前の赤ちゃんはたべない」
「むきゅ…おにいさん、ありがとう」
「でも、お前のことも食べない」
「むむ、むきゅ!?」

 ぱちゅりーは恐れた。また裏切られるのでは…と思ったようだ。

「赤ちゃんは食べない。そしてお前も食べない。お前には長く生きてもらう」
「???」
「だってお前、ここに連れてきたばかりだからな。一日やそこらで死なれてたまるか」
「!?むっきゅ……」

 生かしておくのは単にぱちゅりーの値段が高かったから…という理由だが、ぱちゅりーはまたしても勘違いして赤くなった。
 一方、男はタカをくくっていた。
 こんな約束、どうせ物覚えの悪いゆっくりのことだ。2〜3日経てばすっかり忘れてむきゅむきゅ言い出すだろう。
 だが…

「むきゅ! おにいさん! 約束したでしょ!?」
「の゙!?」

 数日後、ぱちゅりーの茎についた子供をつまみ食いしようとしたら怒られた。
 男は知らなかったが、ぱちゅりー種は思いのほか記憶力が良かった。
 あんな約束しなきゃよかったと後悔したが、あとの祭りだった。
 男は饅頭を食いそこなった。



~あとがき~
れいむ×ぱちゅりー珍しそうなので書いてみた。
読んでくれる人、スレに感想までくれる人ありがとね。
まぢヘブン状態!!
それと、ありすはカチューシャだって教えてくれた人サンクス。
たしかにリボンじゃないね///

またね〜。

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最終更新:2022年05月21日 23:37