※虐待描写は、ほとんどありません




ヒマを持て余していた私は、大きな荷物を背負って山を縦走していた。
頂上までの行程の途中、ある谷に差し掛かった。
そのとき、谷の小川から声が聞こえてきたのだ。

「おいしそーなかいだぜ!ゆっくりつかまえるぜ!」
「ゆっくりきをつけて、みずにおちないでね!」

ゆっくりの家族が、水辺の貝を捕まえているようだ。

私は、谷が見下ろせる場所にテントを張った。
きょうは、ここで一泊することにしよう。
しばらく谷のゆっくり達の群れを観察して分かったことは、
川の近くに巣を構えて貝や水草を食べる家族の他に、
山の斜面に巣を作り木の実や山菜を食べて暮らす家族もいるということだ。


私はまず、川辺へと向かった。

貝を採っているまりさに近づき、お決まりの挨拶を交わす。
「ゆっくりしていってね!」
「-- ゆっくりしていってね!!--」

「ちょっと聞きたいんだが、山に住んでるゆっくり達とお前たちは、別の種類なのか?」
「ここにすんでるゆっくりは、みんなゆっくりだよ?ばかなの?」

なるほど、谷のゆっくりはみんな仲良く暮らしているようだ。

「でも、食べてる物が違うだろ?
まりさは貝を食べてるけど、山のゆっくり達は何を食べてる?」

「きのみや、むしだよ!」
「じゃあ聞くけど、パサパサした木の実と貝、どっちが新鮮で美味しいと思う?」
「もちろん、かいだよ!そんなこともわからないの?」
「じゃあ、まりさは、山のゆっくりよりも美味しい物を食べてゆっくりできてるんだね。」
「そうだよ!まりさはやまのゆっくりよりも、ゆっくりしたゆっくりだよ!」

ようやく、山のゆっくりと自分との違いを理解したようだ。

「川に住んでる他のゆっくりにも、自分がゆっくりできてるって教えてあげたら喜ぶんじゃないかな?」
「ゆっくりりかいしたよ!」


次に私は、山の斜面へと向かった。
お決まりの挨拶を交わす。
「ゆっくりしていってね!」
「-- ゆっくりしていってね!!--」

「ちょっと聞きたいんだが、川に住んでるゆっくり達とお前たちは、別の種類なのか?」
「ここにすんでるゆっくりは、みんなゆっくりだよ?ばかなの?」
「ゴメンゴメン、この谷に住んでるゆっくりに区別なんか無いよね。悪かった。」
「そうだよ!へんなこというじじいは、さっさときえてね!」

私は、何も言わないことにした。
言葉に従って、テントに帰ろう。

川辺を見ると、さっきのまりさが他のゆっくり達に何かを話している。
それを聞いたゆっくり達は、
「ゆっくり!ゆっくり!」と気勢を上げて飛び跳ねている。
単純な奴らだ。

私はテントに入り、寝袋にくるまった。
谷の方から言い争う声が聞こえてきたが、気にせずに寝た。
明日には頂上へ到達したいので、たっぷり寝て体力を回復しておこう。


        • 翌朝-----


朝起きると私はまず、山の斜面へと向かった。
お決まりの挨拶を交わす。
「ゆっくりしていってね!」
「-- ゆっくりしていってね!!--」

「ちょっと聞きたいんだが、川に住んでるゆっくり達とお前たちは、別の種類なのか?」

「そうだよ!かわにすんでるゆっくりは、ゆっくりできないゆっくりだよ!」

「でも昨日は、同じゆっくりだって言ってたじゃないか。」

「やまのゆっくりをばかにするなんて、べつのゆっくりにきまってるよ!ばかなの?」

「でも、見た目は同じじゃないか」

「かわより、やまのほうがゆっくりできるんだよ!」
「かいをたべるなんて、やばんじんのすることだわ!」
「もう、かわにはちかづかないよ!」

もう私にはコントロールできないところまで壁が出来ている。
お互いに行き来することも無くなったようだ。
私はテントに帰り、お菓子を持って川辺へと向かった。

「おーい!川に住んでるゆっくりは集まれ!」

「どうしたんだぜ、おにいさん?」

「みんながゆっくりしてる姿に感動したから、お礼にお菓子を持ってきたんだ。」
そして、両手に持ってあるお菓子を見せる。

川にいたゆっくりが、私の方に群がってくる。
そのとき、
「あまあま、れいむにもちょうだいね!」

一匹の薄汚いれいむが私の方に向かってきた。
定期的に水しぶきを浴びる川のゆっくりと違い、体が土でよごれている。
明らかに、山のゆっくりだ。

私は、川のゆっくり達に話し掛けた。
「なんで俺が、川のゆっくりにお菓子を持ってきたか分かるかい?」

「-- わたしたちが、ゆっくりしてるからだよ! --」
「そう。川のゆっくりが、特にゆっくりできてるからってのは分かってるよなぁ?」
「-- ゆっくり りかいしてるよ!!--」

「じゃあ何でここに、ゆっくりしてない汚いゆっくりが居るんだ?」
「この山ゆっくりにもお菓子をあげちゃうと、その分みんなの貰えるお菓子が減るってことだぞ。」

川のゆっくり達が、一斉にれいむを凝視する。

「やまのゆっくりには、おかしはあげないよ!」
「さっさとあっちへいってね!」
「いなかものは、さっさとやまへかえりなさい!」

「どぉしてそんなこというのぉぉぉ!!?」
罵声と体当たりを浴びたれいむは、ボロボロになって山の斜面へと逃げていった。

私は、川のゆっくり達にお菓子をばらまく。
山の斜面からは、いくつもの眼が羨ましそうにこちらを見ている。
そんな事はお構い無しに、川のゆっくり達にお菓子を配っていく。

「むーしゃむーしゃ、しあわせー!」

山の斜面からは、いくつものギラギラ光る眼がこちらを見ていた。
私は荷物をまとめて頂上へと出発した。


        • 数日後 ----



私が頂上を制覇して谷へと戻ってくると、
なにやら川が黒く染まっている。
川辺と山の斜面には餡子と皮のようなものが飛び散って、
一帯には甘い匂いが立ち込めていた。

何匹かのゆっくりは、まだ生きているようだ。
瀕死の状態で、「しね・・・しね・・・・」と繰り返している。

「馬鹿だなぁ、お前らどう見ても同じ餡子の固まりだよ」

そう言って、瀕死のゆっくり達に手を突っ込み、餡子を取り出した。
私が頭に手を突っ込んで餡子をほじっているあいだも、
ゆっくりは「しね・・」を繰り返しているだけだった。

憎しみと苦しみに満ちた餡子は、極上の甘さだった。
ゆっくり達にくれてやったお菓子とは、とても比べ物にならない。
こうして腹ごしらえを済ませた私は、下山を続けた。

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最終更新:2022年05月18日 22:35