直接の虐待表現がないど~☆
東方キャラが鬼のようにでてくるど~☆
おぜうさまのかりすま設定があるかもだど~☆



ある妖精メイドは頭を悩ませていた。
彼女の仕事は主に紅魔館内部の雑巾がけだ。
雑巾がけというと地面に四つん這いになり雑巾で床をダッシュして磨いていく姿を想像される方が多いだろう。
しかし流石に巨大な洋館ともなるとその床面積も尋常じゃない広さである。
そんな雑巾がけでは作業効率が悪い上におそらく2日で腰を壊して立てなくなる。
そこで紅魔館では、普段モップの先に雑巾を挟んでそれで雑巾がけを行っている。
ただし作業自体は決して楽ではない。
彼女達の頭の中にはいかに作業を効率よく進めるか、ということを念頭に仕事をしている。
勿論やり残しは許されない。
今まで掛けて来た場所に汚れが残るようではすぐにメイド長に暇を出されてしまう。
汚れがあればすぐさまそこに駆けつけてすぐにでも仕事を片付け、そして持ち場に戻る。
その行ったり来たりも彼女の疲労を加速させる大きな要因になっている。
おそらくその場でゆっくり雑巾がけができるのなんて精々10分、長くて20分。
一時間のうちおそらく20分は移動時間として使っているだろう。
この仕事をしているのは勿論彼女だけではないがそれでも限度というものがある。
そう、これこそが今の彼女の悩みの種である。
彼女だけではない。掃除に携わる大抵の妖精メイドが悩んでいるはずである。
その元凶は……

「うっうー☆」
今まさに出窓から中に進入しようと窓を弄っているれみりゃである。
物音に気づいて振り向いた妖精メイドは、大きくため息をついた。
またあそこは掛けなおしか……
彼女はじゃぶじゃぶと桶の中で雑巾の汚れを落とすと、ペダルを踏んでローラーで雑巾をはさんで水を切った。
れみりゃは無事に窓を開け(窓は肉汁だらけになってしまったが)、とろとろと中に入ってきた。
と同時に、出窓に飾ってあった花瓶がれみりゃの足に引っかかり、バランスを崩した。
あっ、あぶない……!
雑巾モップをその場に放り出して花瓶を押さえにかかる。
しかしその努力は報われず、花瓶は無常にも床にたたきつけられ、ド派手な音を立てて砕け散った。
受け止めようと前屈みになったせいで、自分もバランスを崩し危うく破片の海にダイブしそうになる。
壁に手をつき体をひねり、なんとか体中刺し傷だらけという事態は逃れたが、そのまま転んで飛び散った破片で腕を大きく切ってしまった。
「うー?」
と、れみりゃが不思議そうな顔で自分の顔を覗き込んでいた。
「うー!おぜうさまはづよいがらぼでぃがーどはひづようないんだどー☆
 れみりゃはこーまかんのかりすまおぜうさまなんだどー☆」
どうやらこの肉まんは妖精メイドが自分をかばいに飛び込んできたと思ったらしい。
だからといって礼の言葉を言うわけでもなく、むしろ自分の強さを誇示して満足そうに踊る。花の上で。
思わず後ろから花瓶の破片を投げつけそうになったが寸でのところで理性で押さえ込んだ。
ここでそんな事をしてみろ。きっと咲夜が飛んできて烈火のごとく怒られるだろう。
これがもっとも厄介なところで、こうなってしまうとそれを訴えられる場所が無いのだ。
ぐっとこぶしを握りしめ立ち上がると、簡単に破片を片付け、桶を取りれみりゃの後を追う。
綺麗汚いの分別のないれみりゃはそこらじゅうに泥で汚れた靴でスタンプを押して回る。
急いで綺麗にしないと。もしこのタイミングでレミリアお嬢様がいらしたら……どうしましょう。
だが焦るとロクなことが無い。焦ったあまりに部屋の外に出されていた椅子に桶を引っ掛けてしまった。
あっと思ったときにはもう遅い。
床に盛大に汚水をぶちまけながら自分も前方につんのめりそのままうつぶせに床に倒れこむ。
あぁ、なんていう事!見つかる前に片付けようと立ち上がろうとした。
そんな彼女の前には不運なことにもたまたま通りかかったレミリアが立っていた。

「これはどういうこと?」
もうだめだ、自分は首だ!
余りの出来事に妖精メイドは立ち上がることができず、とうとう堰を切ったようにぽろぽろ泣き出してしまった。
「あら、何も泣く事ないじゃない……」
困ったようにレミリアが漏らした。ふと妖精メイドが怪我しているのに気づく。
とりあえず咲夜を呼び手当てをするために医務室に連れて行かせた。
レミリアは汚れた床をよそに日の余り当たらない廊下をつつと進んでいく。
途中で窓から花瓶がなくなっているのを見つけた。
たしかここに生けてあったのは美鈴が庭で育てていた花。
「またあのゆっくりの仕業ね、全く頭が痛くなりそうよ……」
咲夜が溺愛しているというだけで紅魔館に入り浸っているれみりゃ。
一匹だけなら我慢ができてももうすでに20匹弱ほどこの紅魔館周辺をたむろしているのだ。
しかしみんななんだかんだ言って咲夜には頭が上がらないのだ。
その為ほぼ黙認状態でれみりゃが好き勝手紅魔館で遊びまわっている。
虎の威を借る狐とはまさにこのことである。
何かいい撃退方法を考えなくては。
イライラと頭を廻らせながら廊下の突き当たりにある木製の階段を下りていく。
何かいいアイディアを捻り出すときにはレミリアは必ずといって良いほどこの階段から地下に入る。
この先にいる動く大図書館、パチュリーに知恵を借りるためである。

数日後、レミリアの部屋にはパチュリーと咲夜の姿があった。
「そう。だからあのゆっくりの数を減らしてほしいって言ってるのよ。分かるかしら」
「しかしお嬢様、なにも罪も無いれみりゃ様をそんな……」
ペットに対しても様付けとはなんたる忠誠心かしらね、とレミリアはため息をついた。
流石に怪我人が出たとなってはこの状況を放って置く訳には行かないと重い腰を上げたのだ。
予想だにしていなかった提案に咲夜はただうろたえるばかりだった。
「かわいそうじゃないですか!もしも野放しにして死んでしまったらなんて思うと……」
それ楽しそうじゃないと危うく言いかけてレミリアは口をつぐんだ。
別にこいつが生き残ろうが生き残るまいが自分の知ったことではない。
とりあえず迷惑な「穀潰し」が消えればなんでもいいのだ。
一方の咲夜は目に入れても痛くない程のれみりゃ達が自分の行動範囲外に行ってしまうことがとてつもなく不安らしい。
どうにかしてレミリアに認めてもらおうとあれこれと説得しようと試みていた。
不意に沈黙を守っていたパチュリーが口を開いた。
「そういうと思って、貴方の為に1つ面白い方法を用意してみたわ」
パチュリーは黒い表紙の教科書ほどの厚さの本を小脇に抱えて前に進み出る。
「貴方もこの方法なら納得してくれるんじゃないかしら?」
本を咲夜の前で広げるとペラペラと中身を見せ付けるようにめくった。
中身は真っ白だ。咲夜ははてなと首をかしげた。


翌日、紅魔館の庭には総勢19匹のれみりゃが終結していた。
みな口々に「おうた」を歌い、太った体をくねくねと動かしながら踊ったりしている。
その様子をレミリアとパチュリーは庭の端に置かれた日傘の刺さっている白いテーブルで紅茶を飲みながら眺めていた。
「異様な光景ね。後でメイドに庭を掃除させないと」
「仕方が無いでしょ。あの方法をとるには広い場所が必要なんだから。
 それよりも咲夜は一体どこに行ってしまったのかしら?」
「なんでもあのゆっくり共にプリンを作ってあげるとか言ってたわね。
 全く、あんなやつ等にどうしてあそこまで惹かれるのかしら?」
新しい紅茶をお持ちしました、と腕に包帯をまいた妖精メイドがテーブルにポットを置いた。
「自分の主に似ているからじゃないかしら。
 その上本物の主と違って素直に甘えてくるから……とか。ねぇレミィ」
「いっつも言ってるでしょう、あんなのと私を一緒にしないでって。
 あぁそういえば。貴方もう怪我は大丈夫なの?」
お気遣いありがとうございます、もう大丈夫ですと笑い妖精メイドは館に戻っていった。
心なしか彼女の表情はいつもに増して生き生きとしていた。
「あぁ、あの子がこの提案の引き金になったのね」
「そうよ。身内にけが人を出してまで穀潰しを構うなんて私が許さないわ」
紅茶を一口すするとレミリアはため息をついた。
広場ではいつの間にか咲夜がれみりゃ達にプリンを配っていた。
うーうー☆とれみりゃのうれしそうな声が大きくなる。
ぷっでぃーん、ぷっでぃーんと手づかみでプリンを平らげるれみりゃ。
「汚い食べ方ねぇ……」
レミリアは冷たくゆっくりの集団をにらみつけた。
「そうですよ全く、もっと味わって食べろって言うんですよ」
もふもふとスプーンを口にくわえ、片手にプリンの乗った皿を持った門番がいつの間にかそばに立っていた。
「あら、いつの間に」
「あぁいえ、さっき休憩時間に入ったんで。
 そしたらたまたま咲夜さんに出くわしまして。あまったからどうってプリンを貰ったんです」
そういって一口プリンを口に運ぶ美鈴。パァーッとそこだけ春が来た。
「おっ、おいひいいぃぃぃ!」
「そんな泣くほど美味しいかしら?」
「咲夜のプリンは私も好きだわ」
「あっ、一口なら食べても良いですよ」
「いや、遠慮しとくわ」
だってそれれみりゃの餌でしょ?と言いたかったが美鈴が本気で傷つきそうなのでよしておくことにした。

「さて、お別れも済んだようだし……始めましょうか」
パチュリーはゆっくりと立ち上がると館の中に戻っていった。
「お嬢様。一体やつらをどうやって処分するつもりなんです?」
優雅に紅茶を頂いているレミリアにいまだプリンを半分も食べ終えてない美鈴がもふもふと口を動かしながら聞いた。
「ものを食べながらしゃべるのは下品よ。
 貴方は勿論咲夜がれみりゃを溺愛していることは知ってるわよね」
「ええ勿論です。私に注がれるべき愛を全て奪って行ったんですよやつ等は」
「……あえて突っ込まないでおくわ。
 そう、そんな咲夜がれみりゃの数を減らすなんていって聞き入れるわけが無いでしょ?
 だからね、私達はこう提案したのよ。れみりゃを圧縮してくれないか、ってね」
「れみりゃを圧縮、ですか?小さくなるだけで数は変わらないじゃないですか。
 むしろ某リグ○みたいにカサカサ動いてむしろ気持ち悪くなりそうですけど」
「貴方が意味する圧縮と私が言いたい圧縮はちょっと違うわ。
 貴方が言っているのは単なる体積的な問題。
 私が言っているのは"全体の濃度としての"圧縮よ」
「んー、よくわかりませんね」
「要するに19匹を1匹に凝縮したらどうかって提案したわけ。」
「あー、なるほど」
「いろんな固体の記憶や精神に圧縮を掛けて一つにまとめて1体の中に押し込む。
 そうすれば肉体は減るけど精神は死んでないって言う"救い"がある。
 それに精神が圧縮されればもっとお利口になれるって言ってあるわ」
「でも記憶は兎も角、精神や魂に関する術式は難しいってよく聞きますが。
 そんな高度なものを高々ゆっくりごときに使って良いんですか?」
プリン上部のカラメルを器用にスプーンで全体に広げる美鈴。
「勿体無いわ。そんな物使うわけ無いでしょ」
「……え?」
「私達は提案しただけよ。
 誰もこの方法で減らすなんて一言も言ってないわ。
 ただ方法を提案して、その後で減らすことに同意を貰ったのよ」
「そうなんですかぁ。あれ?じゃあ術はやらないんですよね?
 でもさっきパチュリー様が図書館に……」
「ええ。別の術式を使うわ。
 ま、これも一種の圧縮を使った術式よ。まあ後は使ってからのお楽しみにしておきなさい」
パチュリーが小悪魔と共に戻ってきたのでレミリアは席を立った。
「悪いけど美鈴、今日は貴方が日傘をもって頂戴」
「あ、はい。ちょっとまって下さいいまこのプリン片付けちゃいますから」
そういうと美鈴は口の中に残り1/4のプリンを急いでかきこんだ。
むせた。


「********************――」
パチュリーと子悪魔がものすごい勢いで何かを詠唱していた。
影縫いで動けないれみりゃたちの周りを大きな魔方陣が取り囲み、まばゆい光を放っていた。
「お嬢様……本当に大丈夫なんでしょうか……」
「ええ、大丈夫よ咲夜。パチュリーに任せておけばね」
不意に魔方陣の6点が強く光り、全てのれみりゃを飲み込んだ。
一気にがらんとした庭。
後に残ったのは地面に投げ出されたプリンを載せていた皿と、昨日パチュリーが持っていた黒い本だけである。
多くのメイド達が歓声を上げる中、メイド長咲夜だけは絶句しその場に立ち尽くしていた。
「あ……あぁ……」
それはそうだ。愛しいペットたちが一瞬にして消え去ってしまったのだから。
「大丈夫よ、咲夜」
そういうとパチュリーは庭の真ん中へ進み出ると黒い本を手に取った。
「この術式はとっても時間がかかるわ。
 ゆっくりゆっくりと圧縮を進めていくのよ。そう……」
この本の中でね、とパチュリーはほんの表紙を指でトントンと叩いた。
「あと半日もすればこの本の中かられみりゃが召還できるようになるわ。
 暫くの間のお別れだけど、我慢してちょうだい、咲夜」
「咲夜、今日はショックだったでしょうし、もう休んで良いわ。
 あとは美鈴にやってもらうから」
レミリアはそういい残すと満足そうに館のほうへと戻ってゆく。
さあ、咲夜も行きましょうとパチュリーと子悪魔が咲夜の手を引いていく。
妖精メイド達も生気の抜けてしまったメイド長を心配しつつもぞろぞろと持ち場に帰っていった。

夜遅く、レミリアはパチュリーに呼ばれて図書館へと向かった。
部屋ではパチュリーと小悪魔がテーブルに置かれた日中の「黒い本」を眺めていた。
「それじゃあパチュリー、昼間のことを詳しく教えてもらおうかしら」
部屋に入るなりレミリアは口を開いた。
「あれを咲夜に見せたのは余りよくなかったわ……
 あんなに落ち込んでしまうなんて……」
パチュリーは少々意気消沈気味である。
「そんな、パチュリー様のせいじゃありませんよ!」
「えぇそうね。悪いのはあのゆっくり共よ」
そうかしら、と暫く黙っていたが、やがてパチュリーは今日の術について話し始めた。
「今日使った術は確かに圧縮術よ。
 ただし、咲夜に説明した"精神圧縮"ではなくただ単に"体積圧縮"なのだけれども。
 あの術はその場にある有機物質を極限にまで圧縮して体積0、質量∞の物質に圧縮するものなの。
 その後質量∞の物質がどこに行くのかは知らないけど、まあ気にしても仕方が無いわ。
 あと、この術には少し細工がしてあって、ある特定の防御を施した物だけはこの術が無効になるようになってるの。
 術式開始前にランダムで3匹に防御魔法を掛けてその3匹だけは特別保護してあるわ」
「別空間ってまさかこの紅魔館の中じゃないわよね?」
急にレミリアの顔が険しくなる。
きっと人一倍敏感な咲夜の事だ。どこかでれみりゃの気配がすればすぐに感ずかれてしまうだろう。
「安心して。その3匹を飛ばした場所って言うのは……この中よ」
パチュリーは黒い本を手に取るとレミリアの前に差し出した。
レミリアは本を受け取ると中をぱらぱらとめくった。
あら、と何か違和感を感じた。確かこれ、昼間見たときには真っ白の本だったのに。
先ほどと打って変わって中にはびっしりと文字が刻み込まれていた。
「この本の中はあのときつかったのとまた違う方法の2種類圧縮魔法が組み込まれているの。
 一つは空間圧縮、もう一つは精神圧縮よ」
ここで一区切りつけるとパチュリーは小悪魔が入れてくれた紅茶を口に含んだ。
レミリアは興味深げに黒い本を捲っていた。
「さっきの3匹はその中に圧縮されてる空間に入ってるわ。
 そして精神圧縮を掛けることによって中にいるゆっくり達の神経を極限にまで高めているの。
 精神圧縮を掛けられたものの精神はその圧縮率に比例して敏感になる。
 すなわち体感時間が通常よりも長くなるらしいわ。
 だからそれを利用してやるべきことを全部半日で片つけようって事よ。
 かなり高い精神圧縮をかけているはずだから私たちの体感時間の20倍はくだらない筈よ」
「そう……でもパチェ、貴方なんで3匹も残したの?残すのは1匹だけよ」
レミリアが不満そうに文句をつけた。
「そうよ。1匹だけ。でもこれをやるには一応保険を掛けておく必要があったの。
 ほら、咲夜にこの術を使えばれみりゃがお利口になるから回りに迷惑を掛けなくなるって言ってあるでしょ。
 言ってしまった以上はそれを実現させなければならないわ。
 だからこの3匹を調教してなんとかやっていいこと悪いことの分別をつけさせないと。
 どうも文献を見るとゆっくりは体で物を覚えさせるのが一番みたいだし……」
「その調教は誰に任せるつもり?」
「もうすでに頼んであるわ。もう仕事に取り掛かってからずいぶんたつんじゃないかしら?
 2人いるけど……そうね、どちらの人も貴方がよく知っている人で、貴方のことをよく知っている人よ。
 だからきっとできあがってくるれみりゃはきっと貴方好みのゆっくりれみりゃになるんじゃないかしら?」
「ふぅん、そう。分かったわ。
 とりあえず答えは明日の楽しみに取っておこうかしら。
 さて、私は咲夜の様子を見に行ってくるわ。おやすみ、パチェ」
そういうとレミリアは部屋を出た。その足取りは幾許かいつもより軽いように見えた。


翌日の夕方、紅魔館の庭には一匹のれみりゃと楽しそうに戯れる咲夜の姿があった。
その姿を静かに部屋から見守っていたレミリアはふと独り言をこぼした。
「……そうね。あのがんばった貴方達には何かご褒美をあげなくちゃかしら」
部屋の中にはレミリア以外にあと2つの人影だあった。
「私はお外に出たいわ、お姉さま」
「とりあえず少し疲れたので休みがほしいですねぇ。あんなに文字を教え込むのに苦労するとは……」
レミリアは二人に向き直ると口元を緩めた。
「どうもご苦労様。いいわ。
 フランには外出許可を、美鈴には4日間の休日を与えましょう」
「よかったわね、美鈴!」
「妹様も、頑張った甲斐がありましたね!」
手をとり喜びあう二人。
術式の後、あの圧縮空間に送られたのはこの2人だったのだ。
二人の功績により無事咲夜の元に躾されたれみりゃがもどり、同時に紅魔館にも平和が戻ったのである。
2人が部屋を出て行った後、レミリアは二人が入っていたという黒い本を手に取り眺めていた。
術が終わった後にもかかわらずページは真っ白には戻らず、所々に記述がぽろぽろと残っていた。
「そうそう、お姉さま」
いつの間にかフランドールが目の前に戻ってきていた。
「実はね、その本の中にはまだ1匹れみりゃが残ってるのよ」
「……あのゆっくりが?」
レミリアは顔をしかめた。
「そう。1匹はすぐに死んじゃったんだけど、もう1匹は戻ってくる前に向こうで気を失っちゃってそれっきり起きてこないの。
 一応つれて帰ってきたけど動かないし、つまらないからさっき私壊しちゃった」
そういうフランドールの手にはれみりゃ特有の帽子が握られていた。
ところどころ肉汁で染みがついてしまっている。
「まぁいいわ。とりあえずもう地下に戻っていなさい。
 明日咲夜を迎えに行かせるからそれまでおとなしくしているのよ」
「分かったわお姉さま。それじゃあまた明日」
フランドールは再びスキップで部屋の外に出て行った。

レミリアは何か悪寒のようなものを感じて自分の手元にある黒い本を眺めた。
……起きてこないって事はまだこっちに戻ってきたときには生きていたという事だろう。
フランは向こうで気絶してそれっきりと言っていたが、ゆっくり、とくにれみりゃであればすぐに回復して泣き喚いたりするはずだ。
だがれみりゃは起きてこなかった。その後フランの遊び道具として扱われて肉体は壊れてしまった。肉体は……
そういえば美鈴がゆっくりに字を教えたとか言っていた気がするな、とぼんやりと考えながらなんとなくほんの中身をもう一度確認してみる。
すると、最後のほうのページに、びっしりと文字が残っているページがあることに気がついた。
とても汚い字だが、どうやら同じ記述の繰り返しのようだ。
そしてレミリアがその記述を読み取ったとき、思わず反射的にその本を床に投げ捨てて部屋を飛び出した。


そこにはこう書かれていた。


ゆるしてくださいだしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいたすけてください
ゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてくださいゆるしてください
ゆるしてくださいゆるしてください
がんばりますがんばりますがんばりますがんばりますがんばりますいいこにしますいいこにしますがんばりますいいこにします
いいこにしますいいこにしますいいこにしますだしてくださいだしてくださいだしてくださいだしてくださいゆるしてくださいゆるしてください
ゆるしてくださいくるしいくるしいだしてくださいだしてくださいがんばりますがんばりますがんばりますいいこにしますいいこにします
いいこにしますいいこいいこにいいこにしますいいこがんばりますがんばるがんばるゆるしてくださいゆるしてくださいだしてだして
いいこにするだしてゆるしてがんばりますじおぼえますいうことききますききますいうこということたすけてくださいだしてゆること
いいこにしますゆるしてくださいだしてだしてだしてさくやさくやだしてさくやいいこにしますゆるしてゆるしてがんばりますおぼえます
だしてだしてだしてだしてだしてだしてだしてだしてせまいせまいだしてせまいだしてさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくや
さくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくや
さくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくや
さくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくやさくや
さくや さ   くや さくやさくやさ  くやさくや さ く や  さ   く や さ く や さく や  さ く や さ く     や  さ くや 
 さ く         や        さくや        さく             や       さく    や さ  く  や






紅魔館地下大図書館には、今でも文字の増え続けると言う変わった魔術書があるという。




あとがき

う~☆ざぐやにだっごしでほしいんだど~☆
さくやにさぐやに さ く や    に

訳(稚拙な文章で申し訳ありません。精進いたします)

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最終更新:2022年04月15日 23:04