【吐き気を催すような醜悪な手記の形をした紙片】








「…」

何事か呟いて男は土をかける、一列に並んだ3つの穴は深く
その全てに腹部を大きく膨らませた成体のゆっくりが頭を下に埋められている。
時折、苦しげなうめきを漏らす者もあるが
それらの声を出す機能を破壊されていない比較的マシな固体ですら
僅かに身体を動かす事すら出来ない。

男は何もしていない、ゆっくりたちをここまで苦しめているのは
彼女(?)らの胎の中に巣食う〝何か"だ。

「ヰ…a,/……、……、!」

自らの〝崇高な行為"に興奮した男は、歓喜の祈りを今だ遠き彼方の地にて或る自らの主に捧げる
大振りの肉に包丁を叩きつけるような、湿った音を立てて端から土を被せて行く

ゆっくり達は、麻痺した底部に冷たい土の感覚を感じて
あげることすら出来ない絶叫を上げ、のたうつ事も許されない我が身の悲哀を嘆き、恐怖する

嗚呼、なんという事だろう、鈍重極まる餡子の詰まった皮袋でしかない彼らにすら
自らの運命が、そして末路がはっきりと理解できる――否、出来てしまう。
〝自分たちは生きたまま、このおぞましい男に埋葬されるのだ"

そして土が被さり光が/世界が、閉ざされ暗闇とその淵が這い上がってくる

すでにかれらにはみえていないのでこれはよだんになるのだ
がかれらにつちをかけるおとこのてはあおくゆびのあい
だにはみずかきのようなものがありそのくちはみ
みもとまでさけてくちからもれだすかんきの
ことばはひとならざるかれらのみ
みにすらただしくとどくこ
とはなくただかんきの
ままにああこえが
ねむりなのだ
ねむりと
しんこ
うだ

「ヰア、××××××××××××××××××××××××××××××××××××!!」




  *   *   *



いたいよ、くるしい、くるしいよ
どうしてれいむたちがこんなめにあわなきゃいけないの?
おいしいおやさいさんをたべたかったのに

なんだかびりびりする、つちさんのなかにうめられて
ぜんぜんゆっくりできないよ!

でもこのびりびりは、まりさのもってきた
ゆっくりできないきのこさんのときとおなじかんじだから
きっとじかんがたてばまたゆっくりうごけるようになるにちがいないよ!

そうだ、まりさ、あのばかなまりさ!!こんなにかわいいれいむを
くらくてつめたいつちのなかでゆっくりできなくしたげんきょうのあのばかなまりさ!!!

ゆぷぷ、いいきみだよ!れいむとちがって、おとなしくしてにんげんさんをだますこともできない
あばれるだけがのうのあんこのうのまりさ、それにきもちわるいいなかれいぱーのありす!!
あのにひきはにんげんさんにさからったからかざりもうみさんにすてられて
したやめもぬかれていいきみだよ!!

あのおいしいぷちぷちさんを、たくさんたべさせてもらってたのはうらやましいけど

そうだ、あのぷちぷちさんはとってもゆっくりできるたべものだったよ!
あんなにあまくておいしいものははじめてだったし
たべたら「にんっしん」するなんてふしぎなたべものだよね!!

とくべつなあかちゃんだってにんげんさんもいってたから、ゆっくりそだててあげなさいって
そしたられいむをゆるしてくれるっていってたね!!

れいむはまだだれともすっきりしたことがないから
うまれてくるこはこっとみんなれいむによくにたあかちゃんだよね!!!

たのしみだなぁ、このあなからでて、きっとゆっくりさせてあげなくちゃ!!!

そのためにもいまはねむって、すこしでもげんきをとりもどさなきゃ―――


  *   *   *


いたい

ばかなにんげんさんを/いたい、うごかないで/やっつけて
かわいいれいむた/やめでぐだざい/ちがゆっくり/いたいいいたいいたい/するために

でもももぎぎぎぎぎぎががが/ぐじゅり/いたいですうごかないでそこはまむまむぢゃなぐで
わばぶいのばにぶげんざんのおぎゃざじぎぎぎぎg/ばじゅりぃがいいだしつじゃあきあう/


あああああああああああああああああやべででいぶのながでうごぎばわだだいでぐだざい
ぶでにがえじでぐだざい、おうぢにがえじでぐださい/じゅぶかあはうあび


ぎかかかききききききききききあ゛がぢゃ゛ん゛や゛べ゛で゛、だべないで




  *   *   *






ごぽり、と海の音と匂いが広がる。






  *   *   *


「ゆっくちしていってね!!」


生まれてから今の体系に成長するまで何度と無く
人間や同種のゲスによって生死の境をさまようような眼にあってきた経験を持つ
れいむにとっても、夢想だにしない、味わった事の無いような
地獄の一夜から、既に五日が経過している。

痛みで失神したれいむが眼を覚ましたとき、
総身に今までに感じたことの無いような活力がみなぎっていた
すさまじく強くなったような、誰にも負けないようなそんな確信があった。

痺れの取れた身体で、土を掘り進み、進み、進んだ。

途中でまりさとありすをみつけたが、うごかないようなので
その餡子を平らげた。

「(すごく、ゆっくりしたあじだった。)」

この寄り道先での思わぬご馳走に、更なる活力をえて
れいむは今度こそ上を目指した。

脱出し、森を目指す。

幸い人間の姿は無く、また跳ねる速度も段違いに速くなっていたので
あっというまに群に戻って美味しいあまあまを思う存分食べつくすことが出来た。

見知った顔のゆっくりたちが、とても美味しかったのには
驚きと、それに倍する喜びがあり
それらを食べるたびにれいむの力はますます高まった。


「さぁ、もうでてきてもいいよ!!」

群のゆっくりを全て食いつくし、長のねぐらだった洞窟に陣取って
れいむは胎内の赤ちゃんたちに話しかけた。


ぎちり、と音を立てて滝のような破水

鼻を腐らせるようなおぞましい臭気をたてる水溜りの中に
排泄する様に生れ落ちる赤れいむの数はおよそ200

サイズは一cmにも満たない堕とし仔が
生誕直後にあげるはずの「ゆっくりしていってね!」すら口にせずに
生れ落ちた姉妹ゆっくり達に喰い付き、喰い付かれて蝕みあう。

その様子を、れいむはみている。
その表情は慈母そのもの、今尚胎内からぎちゅりとおぞましい音を立てて
堕とし仔をひり出しながら、一匹も見逃さず
生れ落ちた仔らの喰らい合う姿をを見守っている

最初に生まれたれいむは

「ピギィィィィィィィ」

三方向から妹たちに喰いつかれ、引きちぎられて餡子と粘液をブチ撒いて

「ヂィ?」

のこった引きちぎれた一部分になっても、そのうち一匹を齧り殺し

140番目のれいむはとても元気がよく、水溜りの中を泳ぐように滑りながら
何匹もの姉妹を姉妹を、姉妹を姉妹を、しまいをしまいをしまいを食い尽くして

そうしてビチビチと元気良くはねてすっかり大きくなった35番目の姉妹に踏み潰されて
目玉だけに目玉だけにのこりはなかよく姉妹のお腹の中に!

コリコリして美味しそう!!

その神聖な儀式の中には、憎しみなんて一つも無い
とてもみんな、笑顔で、喜んでおなかいっぱいでごちそうさまです


やがて、残り五匹になったころには
生まれた赤れいむたちは子れいむ程度の体格に成長し、ニコニコと満面の笑みを浮かべたまま
母であるれいむの方を向いて何かを待つように

にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ!!!

あかぢゃんだぢがげんぎにそだづでどでぼうでしいですでもこれからでイブには一つしかゆるされていませんことがありまして
それがデイ部のデイ部でデイ部にデイ部が阿賀嗚呼ちゃんのだ紅に似位やらやらなければばばばばばいげななないごどどどd
いやだ/こでからあぎゃじゃんだじは還って返って孵って却ってカエッテ帰っていくのでいか無ければなりません
字にだ愚な維持にだぐないいじにだくないしにだくないしにたくないしにたくない/赤ちゃんのぢにくとなるのです!!
とても名誉な事。/いやだ/いやだ/ゆっくちしたかった?/ゆっくし?/ゆっくしってなんぢゃ?/なに?
あぎぃぃぃぃぃ?/いあ/しんで/しんで/かえる/あかちゃんのごはん/かんびな/ねむりと
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****!!!!!!!!!!!!!!!!
で゛い゛ぶに゛ゆる゛さ゛れ゛た゛
!!



「さa!!お だ べ な ざ い!!!!!!!」


  *   *   *


完全に成長しきり大規模に増殖するのを未然に防ぐ事ができたのは
奇跡に近い偶然だったと言えるだろう。

彼らの生態を考えれば、その性質は奉仕種族のそれと非常に似通っている。
なればこそ、彼らと相性の悪い水棲の者が元凶と生る今回の一件は
ある種大量発生後に発見される場合よりも重い意味を持つのかもしれない。

最早「彼女ら」は何処にでも潜み、繁殖する。
草木の合間に、川辺の岩陰に、人里の軒下に、都心の片隅に。

あらゆる物を喰らい、身の内で血肉と等しい暗黒物質を生成する。
その物質は甘く、されど正しい手段で検分されたとき
俗に言う「餡」とは異なる物質である事は
既に幼子から老人までが知る常識となっている。

彼らを滅ぼすことは出来ない。

過去何度と無く、その殲滅は試みられている。
貧困から、飢餓から、個人の嗜好から、組織の動向から、人の無意識から、数万の信仰から。

相して人の手で滅んだ奉仕種族は多く、意外なほど多数の例において
外なる者の跳梁は未然に防がれてきた。

であるが「彼女ら」はその例に当たらない。

まるでかの忌々しき猟犬の如く、或いは口にするのもおぞましき無貌の者の如く
滅しても滅しても、その屍から滲み出るが如く
その数を減らす事をしないのだ!

私は警告する、「彼女ら」の増殖を許してはいけない。

彼女らの内、堕とし仔を孕む穢れが一固体でも有れば
それは鼠の如く、或いはそれが運ぶ黒死の病よりも早く

そして何よりわれわれに近い所で、外なる者の跳梁を許……


【手記は個々で絶筆している】






by古本屋

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最終更新:2022年05月06日 23:20