※現代にゆっくりがいる設定です。
 ぬるいイジメだと思います。

【登場人物】
  • ユキ
オスの白犬。子供。ヤンチャ盛り。餌を穴に埋めて保存するクセがある

  • クロ
メスの黒猫。お隣さんの飼い猫。高齢。ユキのお姉さん分で仲良し。
「おりんりんランド」と言う児童向け番組が好き。

  • ご主人様
ユキの飼い主で中学2年生の女子

「」:人間言葉
『』:動物言葉

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■町内の動物


「ユッキー!!今日もお留守番お願いね!!」
「ワン!!」

僕は家の門から元気良く駆け出して行くご主人様に大きな声で答える。

僕の名前は『ユキ』。名前をくれたのはご主人様。

「雪みたいに真っ白な犬だから貴方の名前はユキよ」

言ってる事は良く分からなかったけど、名前がユキだって事は分かった。
僕の仕事は家のお庭を守る事。お昼の間家の人は皆出てしまうからしっかり守らないといけない。
走り回るにはちょっと小さい庭だけど、散歩の時の首がオエッとなる紐が無いから僕は好きだ。
今日はポカポカ良い天気だし、ちょっとだけお昼寝しようかな。

『こらユキ、お留守番がお昼寝しちゃ駄目でしょう』

日当たりの良い芝生の上で身を丸めてウトウトしていたら、塀の上から声を掛けられた。
気がつくと黒い綺麗な毛並みが目に飛び込んで来る。

『おはよう。クロ姉さん。大丈夫だよ誰か来たらすぐ起きるから』

僕は首だけ起こして軽く答える。クロ姉さんはお隣さんの飼い猫だ。僕が小さい頃から仲良くして貰ってる。
だから僕の方が体はずっと大きいけどクロ姉さんには頭が上がらない。

『ふふ、まあそうね。私も一緒にお昼寝して良いかしら?』
『うん。一緒に寝ようよ』

僕とクロ姉さんは並んで丸くなってお昼寝する。他の猫とこんな事したら大体ケンカになるけど
クロ姉さんだけは一緒にいても全然嫌な感じがしない。ご主人様と一緒にいるみたいに安心する。
前にクロ姉さんにその事を言ったら『大人の余裕よ』と言われた。意味が分からなかったけど取り合えず納得した。

そんな調子でクロ姉さんとお昼寝を続けて、お日様が山に傾き始めた時変なヤツが門の隙間から庭に入ってきた。

「ゆっゆっ、ここをれいむたいちのゆっくりぷれいすにするよ!!ばかないぬさんはさっさとでていってね!!」
「「「でていってね!!」」」

大きな女性の首が1つと、小さな女性の首が3つ。動いて跳ねて何か言ってる。何だろうスゴイ嫌な気分になる。
僕は飛び起きて唸り声を上げる。こいつらを絶対入れちゃいけない。追い出さなきゃ。

「ウゥゥゥーーー!!!ワゥッ!!」

『クロ姉さん!こいつら何?人間の言葉を話してるけど人間じゃないよね!?すっごい気持ち悪い』
『落ち着きなさいユキ。こいつらは"ゆっくり"って言う人間の言葉をしゃべるお菓子よ。』
『何それ!?お菓子はしゃべらないよ!!』
『そう言うもんなのよ。納得なさい。丁度いいから貴方に狩の仕方を教えてあげるわ』

僕が威嚇してる横で、クロ姉さんも起き上がり体を一度伸ばしてから飛び掛る姿勢になる。

「いぬさん、きこえないの!?ばかなの?ささとでていくんだよ!!」
「ねこさんもさっさとしっぽまいてにげてね!」
「れいむたちをおこらせるとこわいんだよ!!」
「ばかなちくしょうどもはさっさとしね!!」
「「「「ゲラゲラゲラ」」」」

とても不気味な顔で笑い出す"ゆっくり"とか言うやつら。何故かイライラしてくる。
言ってる事は分からないけどスゴイ腹が立つ。

『舐めた口きいてくれるじゃない饅頭風情が。ユキ、手本を見せてあげるから良く観なさい』

僕が唸り声を上げてると、庭にズカズカ入って来た小さなゆっくりの1つにクロ姉さんが飛び掛った。
目にも止まらない速さでクロ姉さんの右前足が振り下ろされる。

『まず、弱点の目を潰す!!』
「ゆぎゃぁぁっ!!でいぶのおべべがかっ!!」

小さなゆっくりの右目が吹っ飛んだ。何だろう傷口から甘いにおいがする。
そうだ!!これは確か"餡子"って言う甘い食べ物で前に一回だけ食べた事がある。あれは美味しかった。

『次に、ひっくり返して底部を剥ぎ取る!!』
「ゆぐぅぅっ!!やべでね!!やべでね!!おがぁさぁぁんん!!でいぶをだずげでぇぇ!!」

僕が関係ない事を考えていると、クロ姉さんはゆっくりの髪の毛に噛み付き相手を引っくり返して
平らな部分に爪を研ぐみたいに引掻き傷をつけ始めた。

『最後は、頭の上に載ってるモノを取ってやれば勝手に死ぬわ』
「がえじでぇぇぇ!!!でいぶのおりぼんがえじでぇねぇぇーー!!!」

引掻くのが終わったと思ったら、ゆっくりの頭についてる布切れみたいのを剥ぎ取って
バラバラに歯で噛み千切った。あー分かるな、タオルとか噛み千切るのって楽しいよね。

「ゆぎゃばぁぁ!!!おぢびじゃぁぁん!!」
「あやばっでね!!ばがなねごさざんはでいぶだぢにざっざとあやまってね!!」
「ウッゥゥー!!ワウワウワウッ!!」

ひっくり返った小さなゆっくりが動かなくなると、残った大きいゆっくりと
小さいゆっくりは物凄い勢いで騒ぎ出した。僕も負けじと吠える。
勝手に家に入り込む悪者はこうなって当然なんだ。

『と、まあこんな感じよ。分かったかしら?』
『分かったよ!クロ姉さん。結構簡単そうだね』

一仕事終えたクロ姉さんが、得意顔になって戻ってきた
僕も悪者退治をするぞ!!・・・でも大きいのはちょっと不安だから小さいゆっくり1つに飛び掛かる。

「ガウッ!!(まずは目を齧る)」

僕はクロ姉さんみたいに足で引掻くよりも、口で噛む方が得意だから思いっきり口を空けて
騒ぐ小さなゆっくりの小さな目に狙いを定めて首を振る。

「ゆぅぅやめてぇぇ「バグンッ!!」」

口の中に甘い味が広がる。これは美味しい。思わずムシャムシャと食べてしまう。
おっとイケない悪者退治の最中だった。次はひっくり返して底の平らな部分を噛み千切るんだ

「ワウゥーーフゥウン?」

アレ?さっきまで目の前に居た小さいゆっくりがいないぞ?
辺りを見回しても門の近くにガタガタ震えてる大きなゆっくりと、小さなゆっくりが1つずついるだけだ。
僕はしくじったと思い、首をクルリと捻って後ろで座っているクロ姉さんに助けを求める。

『ど、どうしようクロ姉さん!?ゆっくりの目に噛み付いたら、ゆっくりが消えちゃったよ!!』
『落ち着きなさい、ユキ。貴方は体が大きいから一口で全部食べちゃったのよ。』
『!?どうしよう!!クロ姉さん!!それじゃ底の平らな部分を噛めないよ!!』
『まー別にいいじゃない仕留められたんだし?どうしてもってなら大きいやつを狙いなさい』
『なるほど!!じゃ、そうするよ!!』

クロ姉さんが何故か呆れながら答えつつ、僕らは門の近くの大きいゆっくりに目を向ける。

「ゆっゅゆゆ!!ゆっくりできないねこさんもいぬさんもきらいだよ!!れいむはゆっくりにげるよ!!
 こっちにこないでね!!こどもはどうなってもいいから、れいむはゆっくりみのがしてね!!」
「おがーざぁぁん!!どぼじでぞんなごというのぉぉぉぉ!!でいぶはがわいいゆっぐりだよ!!」

僕には2つのゆっくりが何言ってるんだか分からないけど
大きいほうが小さいほうを跳ね飛ばして、自分の体を門の柵にぎゅうぎゅう詰め込んで外に出ようとしてるのが見えた。
小さいほうはコロコロ転がって僕らの目の前で目を回している。

『見下げ果てた饅頭だね。自分の子供を囮にするなんて・・・』
『クロ姉さん?どういう事?あいつら何言ってるの?』
『ユキは分からなくても良いのよ。とりあえず大きい方はもうほっといて、小さい方を好きになさい』
『僕が全部食べちゃっていいの?』
『私は甘いの苦手なのよ。私が仕留めたやつと目を回してるやつ両方お食べ』
『ありがとうクロ姉さん』

僕は喜んで最初にクロ姉さんが仕留めた小さなやつをムシャムシャ食べる。美味しいな~。
さっき僕が齧ったやつより甘く感じる。ご主人様は甘い物をあまりくれないからな~。
口元を綺麗に舐めまわした後、目を回してるヤツの頭に付いてる布切れを軽く噛んで剥ぎ取る。

『ユキ?あんたそいつは食べないの?』
『今はもうお腹一杯だから埋めて後でおやつにするよ。布切れ噛み千切る遊びは僕も好きだから!!』
『ああ、そういう事』

さっきクロ姉さんが布切れを噛み千切ってるのを見て、僕もやりたくてしょうがなかったんだ。
僕が寝そべって小さな布にじゃれてる横でクロ姉さんは立ち上がり大きく体を伸ばした。

『私はそろそろ帰るけど、後は一人でも大丈夫よね?』
『ハグ・・ムグッ・・むー大丈夫・・ハグ』
『ま、ごゆっくり』

クロ姉さんは笑いながら庭先の木に駆け上がると、あっという間に塀の向こうに消えていった。
僕はまだ寝転がりながら小さな布切れと格闘中だ。

「ゆっ・・・あたまがへんだよ・・・!!!ゆっでいぶのおりぼんどご!?」

小さなゆっくりが何か騒ぎだした

「ゆぅぅ!!いぬざん!!やべでね!!でいぶのおりぼんがえじでね!!がえじでね!!
 だいじなおぢぼんなんだよ!!ゆっぐりでぎないよ!!がえぜがぜがえぜぇぇーーーー!!」

煩いなぁ。何か物凄い気持ち悪い顔で騒いでる・・・・食べる気無くなるな。

「じね!!ゆっぐりでぎないばがないぬざんはゆっぐりじないでざっざどじね─ゆぎゅぅっ!!」

小さなゆっくりがあんまり煩かったんで前足で思いっきり頭を上から叩いてやった。そしたら動かなくなった。
しばらくして布切れ遊びにも飽きたから小さなゆっくりを庭の隅に穴を掘って埋める。僕の秘密の隠し場所だ。

「ゆっ!!うべないでね!!ぜんぜんでいぶゆっぐりでぎないよ!!うべないで!!ごべんなざい!!
 がっでにおにばにはいっでごべんなざい!!あやばりばす!!あやばるがらゆるじでねぇぇぇ!!」

穴に放り込んだらまた騒ぎ出したけど、何言ってるんだか良く分からないからそのまま埋めた。
隠し終わった後、僕は自分の小さな家に入ってお気に入りの毛布に包まって考える。
アレは明日のオヤツにしよう。こんな美味しいのだったら毎日ゆっくりが家に来てくれても良いんだけどな。
そんな事を考えてウトウトしてたら、ご主人様の声が聞こえた。

「ユキー!!ただいまー!!散歩行こう~!!」
「ワウ!!」

ご主人様との楽しい散歩の時間だ。今日はどこに行くんだろう?
僕はご主人様の元へ全速力で駆けて行った。









───その後、近所の農道

山間部の夕暮れ時は陽が落ちるのが早い。
既に道は暗くなり始め、山へと続く農道には申し訳程度の街灯が辺りを照らしている。
そんな中を一心不乱にピョーンピョーンと独特の擬音で道を駆ける一匹のゆっくりれいむ。
1時間程前に我が子を見捨て逃げ出した"ゆっくりでなし"だ。

「ゆぅ~ゆぅ~あぶなかったよ。ゆっくりしないでやまにかえってこどもたちのぶんもゆっくりするよ!!」

ゆっくり特有の自己中心思考で自らを正当化し、ニヘラと笑った不愉快な表情で道を急ぐ。
そんな中れいむの進行方向、街灯が照らす薄明かりの下に一匹の黒猫が現れた。
道の真ん中に居座る猫にゆっくりれいむはプクーっとふくれ上がって傲慢に声を上げる。

「ねこさんどいてね!!いたいめみたいの!!れいむはつよいんだよ!!」
「黙りなさい。動物にも劣る愚劣饅頭が。」

予期してなかった"人間の言葉"での反論にれいむは狼狽する。
周辺に見えるのは目の前の黒猫一匹で人間はいない。

「ゆ!?だれ!?れいむをおどろかさないでね!?れいむはつかれてるんだよ!!」
「私よ。あんたの目の前の猫がしゃべってるのよ」

れいむは何が何だか分からず、辺りをキョロキョロと必死に見回す。

「だから私だって言ってるでしょ。あんたの目の前の猫がしゃべってるのよ」
「ゆっゆっ!!??れいむなんでねこさんとおはなしができるの!??」

ようやく声の主が目の前の猫だと分かった。が、何故猫の言ってる事が分かるのかが分からない。
そんなれいむに黒猫は言葉を続ける

「餡子頭に言ったて分わかりゃし無いと思うけど、私は"猫又"なんだよ」
「ねこまた!?しらない!!れいむそんなのしらないよ!!ねこさんはしゃべらないよ!!」
「・・・これだからゆっくりは嫌いなんだよ。まあいいわ、ゆっくりが増えると色々困るからね。ここで死んで貰うよ」

黒猫は立ち上がりれいむに飛び掛る構えを取る。

「ゆっ!?なにするの!!れいむはこどもをうしなったふこうなゆっくりなんだよ!!やめてね!!」
「あんたが見捨てたんでしょうが!!」

叫び声と共に電光石火の一撃。前足の横薙ぎがれいむの右目を吹き飛ばした。

「ゆぎぃぃぃゃぁぁぁあ!!!!いだいぃぃぃぃ!!」

黒猫は自分の2倍は大きいサイズのれいむの髪に噛み付き、勢いをつけて体を引っくり返すと底部に思いっきり爪を立てる。

「ゆががががぁぁあ!!やべでね!!やべでね!!でいぶのあじざんがぁっっ!!」

最後に髪飾りのリボンを剥ぎ取り、歯と爪でバラバラに引き裂く。

「ゆぅぅぅぅぅ!!でいぶのおりぼんがぁぁっっ!!ばがなの!!それがないどゆっぐりでぎないでしょ!!」

れいむは天地逆姿勢のまま涙をボロボロ流して叫ぶ。黒猫は無視して頭から助走をつけてタックルを食らわせると
勢いがついたれいむはゴロゴロ転がって道の横に流れる農業用水路に落ちた。

「ゆぶぅぅぅ!!どげる!!どげる!!でいぶのあんごがでじゃうぅぅぅ!!ねござんだずげで!!
 なんででいぶにごんなごどするのぉぉ!!だずげで!!ゆっぐりでぎないぃぃゆっぐり・・・ゆ・・っぐり・・」

用水路を覗き込む黒猫の冷たい目の下で、れいむは絶望の表情で事切れた。
最後の瞬間を見届けると黒猫は踵を返して自分の家へと猛然と駆け出す。

『いけない!!時間食っちゃった!!今日の"おりんりんランド"が始まっちゃう!!』

夕日は完全に山に隠れようとしていた。



──────あとがき─────
短くて楽しめるSSが書けるようになりたいです。
饅頭が話せても不愉快だが、動物が話せたら夢があって良いですよね。
長く生きた動物はきっと人間の言葉が分かったりするんじゃないかと。
参考文献:動物のお医者さん、流れ星銀

作:六人

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最終更新:2022年05月19日 12:04