二匹のゆっくりが、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。
「このやまはゆっくりできないね。ちょうちょもありさんも、ぜんぜんいないね。」
「はやくつかまえてゆっくりしたいね。ゆっくりしようね。」
 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鴉天狗も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。

「ゆっくり寒くなってきたね。」
「ゆぅ、ゆっくりもどろうね。」
 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「お゙な゙がずい゙だよ゙ぉぉ。な゙に゙がだべだい゙よ゙ぉ。」
「れいむ、やまを下りたらお花をいっぱい食べようね。」
「あ゙る゙ぎだぐな゙い゙よ゙。何がだべだい゙よ゙ぉ。」
「ゆぅ、まりさも何か食べたいんだよ」
 二匹のゆっくりは、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。
 そして玄関には

RESTAURANT
西洋料理店
SLOWLY HOUSE
低速亭

という札がでていました。
「れいむ、おうちだよ」
「れいむたちが見つけたんだかられいむたちのおうちだよ」
「ゆ!いいにおいがするよ」
「たべもののにおいだよ、ゆっくりしようね!!!」
 二匹は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。
 そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」

 二匹は字が読めないので中に入りました。

「あたたかいね、ゆっくりできるよ」
「うん、あたたかいね。もっと奥があるよ」
「いってみよう」
 そこには扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
 扉には赤い字で、

「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください。」

 と書いてありました。

「ゆ、れいむがむこうにもいるよ」
「それはカガミっていうんだよ。とかいはのゆっくりアリスがもってたよ」
 二匹は字が読めないので、そのまま扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。
 早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、ゆっくりできなくなってしまうと、二匹とも思ったのでした。
 扉の内側に、また変なことが書いてありました。

「鉄砲と弾丸をここへ置いてください。」

 見るとすぐ横に黒い台がありました。
「ゆ、また扉があるよ」
「ゆっくり開けてね」
 二匹は字が読めないので中に入ると、また黒い扉がありました。

「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」

 しかし二匹は字が読めないので気にせず中に入りました。
 扉の裏側には、

「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、
 ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」

と書いてあり。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。が。
 二匹は気づかずにそのまま飛び跳ねていきました。

「おっきなおうちだね」
「これだけおっきいといっぱいゆっくりできるね」

 すこし行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺(つぼ)が一つありました。扉にはこう書いてありました。

「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」

 みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
 「うっめ、これめっちゃうっめ」
 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」
 それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、

「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」

と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。
「ゆー、おいしくてゆっくりできるね!!!」
「きっと、おくにはもっとゆっくりできるものがあるよ!!!」
 するとすぐその前に次の戸がありました。

「料理はもうすぐできます。
 十五分とお待たせはいたしません。
 すぐたべられます。
 早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」

 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。
 ところがその香水は、どうも酢のような匂いがするのでした。
「すっぺ、これめっちゃすっぺ」
「すっぱいけどおいしい!!ふしぎ!!」
 二人は扉をあけて中にはいりました。
 扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。

「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
 もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん
 よくもみ込んでください。」

 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが。
「おしおはたべれないね」
「のどがかわいてゆっくりできなくなるね」

 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、

「いや、わざわざご苦労です。大へん結構にできました。さあさあおなかにおはいりください。」

 と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。
 二人は扉をあけて中にはいりました。

 ばたん

 ゆっくりたちの入ってきた扉が勢いよく閉まり、ゆっくりたちが何をしても開きません。
 ゆっくりたちの目の前に、胸の平らなメイド服の女の人が立っていました。

 「おねえさん、ここはまりさたちのおうちだよ!!!」
 「ゆっくりできないならでていってね!!!」
 女の人はゆっくりたちを掴むと、さらに奥の部屋へと進んでいきました
 「「いたいよ!!やめてよ!!ゆっくり放してね!!!」」

 女の人は部屋の中にゆっくりを投げ入れると、外から鍵を閉めました。
 「いたいよ!!ゆっくりやめてね!!」
 「まりさ、ここはゆっくりできそうだよ!!」
 部屋にはふかふかなベッドを始め、高級そうな調度品が並んでいました。
 二匹はベッドに飛び乗り、ポンポン飛び跳ねます。
 「ゆっくりできるね♪おねえさんはゆっくりおいしいものをもってきてね♪」
 「ここがまりさたちの新しいおうちだよ♪ゆっくりしていってね♪」
 「うっう~♪」

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最終更新:2022年04月14日 23:00