注意


死なないゆっくりがいます












加工場のいつもと変わらない一日













ここはゆっくり加工場、加工場といってもその業務は多種にわたる。
そんな加工場の中を今日は少しのぞいていただこうと思います。




ここは加工場内の研究施設。
この中では常にニーズに合わせたゆっくりの開発、いまだ謎の多いゆっくりの研究が日夜行われている。
その中のある一室では大量ののゆっくりがぐっすり寝ている。そこにスピーカーから大音量で


『ゆ っ く り し て い っ て ね !!』


の声が響く。ゆっくりたちはすぐさま飛び起き本能に従い


「ゆっくりしていってね!!」


と返す。
しかし、元気だったのはそこまでゆっくりたちの顔はすぐに曇る。


  カチッ・・・ウィィィィィィィィィン。


どこからかスイッチが入り、床が動き出す。するとゆっくりたちも一斉に前に向かってぽいん、ぽいんと跳ね始める。
それがここでは寝るとき以外ずっと続く。餌を食べるときもし~し~、うんうんをするときも一切止まりはしない。
もし止まれば強力な電流の流れる壁に体が触れ、反射により強制的に体が前に押し戻される。
それでも動くことができなくなってしまうと電流に身を焼かれ続け、いずれは痙攣を続ける黒焦げの饅頭になる。


この部屋ではゆっくりの運動能力が味にどういった変化を与えるのかを研究していた。
一般的に動物などはよく動く動物ほど赤みが多くなり肉が硬くなる。
逆に動物をあまり動かさず太らせれば柔らかく脂身の大い肉になる。
ではそれがゆっくりの場合どうなるのか?ここではそれを調べている。


「ゆぅぅぅぅ!!もうはしりたくないよぉぉぉぉぉ!!ゆっくりしたいぃぃぃぃ!!」


ここに居る一匹のまりさは意味が無いとわかっていても叫んでいた。まりさは生まれれから一度も心からゆっくりとしたことが無かった。
まりさは生まれてくるなりここに連れてこられ、その日からずっと走り続けている。
親とのす~り、す~りも初めてのむ~しゃ、む~しゃもなく走り続けた。
何度も電流を浴びたし、仲間が死んでいくところも何度も見た。
ご飯は毎日出てくるものの毎日同じものだし、前の餌台に置かれているものをちびちび食べるしかないので味などしないも同然だ。
唯一寝る時間は機械が止められ休むことができるが一日中走り続けてまともに遊んだりしゃべったりできるわけが無い。
機械が止まった後はひたすら次の日まで寝るしかないのだ。そして目が覚めたらまた走る。唯一の救いはたまに現れる人間だった。
その人間はそこそこの大きさになったゆっくりをどこかに運んでいく。どこに運んでいくのか?とたずねたらゆっくりできるところだ、
と人間は答えた。
以来まりさはその人間に連れて行ってもらえることを夢見ながら走り続けている。
きっと人間に連れて行ってもらえればゆっくりすることができる。生き別れのお母さんや姉妹たちとも会える。そう考えていた。
しかしここは加工場である。つまり人間に連れて行かれるということは死を意味する。
生きたまま解剖され用が済んだら家畜用飼料の粉砕機にかけられ他のゆっくりや動物の餌になるだけだ。
このまりさはきっと一生叶わぬ夢を見ながら死んでいくだろう。




そして隣の一室ではゆっくりたちが一心不乱に何かを食べ続けている。
話すことも無くただ食べ続ける。
ここでは隣の動き続けたゆっくりと比較するためにゆっくりをまったく動かさせず餌を食べ続けさせている。
寝るとき以外は餌を食べ続けさせられ、口を休めると体に電流が流れる。


「ゆぎぃぃぃぃぃ!!もうだべだぐないぃぃぃぃ!!おそとでうごきまわりたいぃぃぃぃ!!・・・ゆびっ!!」


ここで叫んだれいむは無駄だと知りつつ叫ばずに居られなかった。
れいむは生まれてから一度も動き回ったことが無い。生まれて来るなり足を焼かれ、ここに連れてこられた。
そして食べることを強要された。一日食べる分を食べないと寝ることすら許されない。
しかもそれはゆっくりの体の大きさにあわせて常にぎりぎりの量を出される。拒否すれば電流。
そうしてれいむはみるみるうちに肥え太り、見事なでぶゆっくりになった。
しかもうんうんもし~し~も食べながら垂れ流しにしなければならなかった。本来綺麗好きのゆっくりに取ってそれは耐え難いことである。
中に居た仲間も多数死んでいった。食べるのを拒否し電流で焼け焦げて死んでいくこともあればたべすぎで破裂して死んでいくゆっくりもいた。
しかしそんなれいむにも希望があった。たまに来る人間だ。その人間はたまにゆっくりを選んで連れて行く。
痛みをこらえてどこに行くのか?とたずねるとゆっくりできるところだと人間は答えた。
以来れいむは人間に連れて行ってもらえることだけを夢見て餌を食べ続けた。
しかし結局どうあがこうとその夢は叶うことは無い。このれいむはきっと一生叶わぬ夢をみながら死んでいくのだろう。





次に見るのは50センチほどの深さの水が張られた広いプールだ。
ここにはプラスチックで一平方メートルほどづつに分けられた囲いの中に二匹づつ成体まりさが居た。
そしてみなどちらか一方がにんっしん!をしている。
ここでは近年人気のある水上まりさの品種改良を行っているのだ。
まりさの帽子は水の上に浮けるという特性を生かした水上まりさは他のゆっくりにはない物珍しさと飼い易さで人気だが、
いくら水に浮くと入っても所詮はゆっくりの飾りである。長時間水に浮かべておけばいつかは水に溶けて沈んでいってしまう。
それを加工場でまりさの帽子に特別な処理を施すことで溶けないようにしているのだが問題があった。
この方法だと繁殖した場合、赤まりさが沈んでいってしまう。
ショップに行って加工場に頼めば赤まりさにも同様の処理を施すことが可能だが、それではめんどくさいし金もかかるとの声が多かった。
そこで加工場は品種改良を行い水上まりさから生まれてくる赤まりさの帽子にもあらかじめ防水加工がされている状態にしようとしていた。
ゆっくりの飾りにはいまだ謎が多いが飾りに何らかの影響があれば体にも影響があるというのは確認されている。
そこで防水加工したまりさ同士をかけあわせることで防水加工されている状態のまりさが生まれるのでは?ということだった。
もちろん人間もただ見ているだけは無く、両性のものを選び血を濃くしていったり、餌に特別なものを混ぜたりしてはいる。
しかし、いまのところ結果は芳しくない。


「ゆっゆ~ん♪まりさのかわいいあかちゃんうまれるよぉ~♪」


「ゆぅ~ん♪さすがはまりさとまりさのあかちゃんだね!とってもゆっくりしてるよぉ~♪」


頭上の茎になった赤まりさを見て微笑む二匹のまりさ。そのときぷるぷるとまりさが震え始めた。


「ゆ!!うまれるよ!!まりさのあかちゃんうまれるよ!!」


「ゆゆ!!ちょっとまってね!!・・・いいひょ、ゆっひゅりうんひぇね(約:いいよ、ゆっくりうんでね)!!」


そういうと妊娠していないほうのまりさは大きく口を開けあかゆっくりを受け止める体制に入る。
そしてにんっしん!しているまりさがそれを棒で固定する。ここには足場が無いためこのような出産体制をとるのだ。


ぷるぷる・・・ぷるぷる・・・ぷちっ


ついに一匹目が茎から離れ、そのまままりさの口の中に吸い込まれていく。
どうやら着地も上手く言ったらしい。そして


「ぅ・・ゅ・・・ゆっく・・・ゆっくちちていっちぇにぇ!!」


大きな声を上げる赤まりさ。親の二匹は感動しながら


「ゆっくりしていってね!!(ゆっひゅりしていっふぇね!!)」


と答える。しかしここでアクシデントが起こる。妊娠しているほうのまりさが挨拶したときに棒を放してしまったのだ。
結果・・・。


「ああああああ!!まりさどこいくのぉぉぉぉぉぉ!!あかちゃんがおちちゃうでしょぉぉぉぉぉぉ!!」


「まりひゃこそどひょいくにょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ひゃやくもどっひぇきひぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(約:まりさこそどこいくの、はやくもどってきて)」


そう、二匹が離れてしまったのだ。このままでは生まれてきた赤ゆっくりが水に落ちてしまう、なのでにんっしん!しているほうのまりさはいそいで棒を拾おうとするが・・・


「ぼうさんゆっくりそこでまっててね!!・・・ゆあああああ!!ぼうさんがなきゃまえにすすめないよぉぉぉ!!」


そう、前に進むための棒が流されてしまっているのでにんっしん!まりさにはどうすることもできない。
そして非にんっしん!まりさも生まれたばかりのまりさを口の中に入れているので棒を咥えることができない。
結果


「ゆ!!まりさのおちびちゃん!!うまれないでね!!まだうまれちゃだめだよ!!ゆぅぅぅぅぅ!!だめぇぇぇぇ!!」


ぷるぷる・・・ぷちっ


「ゆっく・・・がぼっ!!がぼごぼごぼ・・ごばっ・・・ぶくぶくぶく・・・」


「まりさのおちびちゃんがぁぁぁぁぁぁ!!(まりふぁのおふぃふぃひゃんふぁぁぁぁぁぁぁ!!)」


「まりちゃのいもうちょぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


結局この二匹から生まれて無事だったのは最初に生まれた一匹だけだった。


そして違うまりさのところでは・・・


「おちびちゃんたち~まえにすすむときはこうやってこぐんだよ!」


「「「「「ゆっくちりきゃいちたよ!!」」」」」


赤まりさたちの教育の真っ最中だった。
親まりさが生まれてきた五匹のゆっくりに人間から与えられた棒を使った進み方を教わっているのだ。


「ゆ~しょ・・・ゆ~しょ・・・」


赤ゆっくりたちはおそるおそる水に棒をつけ、前に進もうとする。
そんな光景を見て微笑む二匹の親まりさ。


「ゆぅ~♪まりさ、まりさたちのおちびちゃんたちとってもゆっくりしてるね!!」


「そうだね!!それにまりさたちににてとってもかしこいね!!」


しかしそんな光景も続かない。この実験はまだ完成していないのだから。


「ゆ?おきゃーしゃん、にゃんかまりちゃにょあししゃんがちゅめちゃいよ?」


「ゆ、まりちゃもだよ。にゃんかゆっくいちできにゃいよ・・・」


続いて他のまりさたちもそうだそうだと続く。もちろん帽子が溶けてきているのだが親まりさはその原因も対処方法もわからないので


「ゆ、おちびちゃんたち。ごめんね、でもおかーさんたちにもどうすればいいかわからないよ・・・ゆっくりがまんしてね・・・。」


というほか無い。しかしそうしている間にも帽子はどんどん溶けていくそして・・・


「おきゃーしゃんたちゅけちぇぇぇぇぇぇ!!」


「まりしゃのあちがとけちぇるよぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「いやぢゃぁぁぁぁぁぁぁ!!まぢゃちにちゃくにゃいぃぃぃぃ!!」


「「おちびちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」」


いそいで赤まりさのところにすすむ二匹だがそうしている間にも赤まりさ達はどんどん沈んでいく。
結局四匹は沈んでしまいなんとか助けて帽子のふちに乗せた一匹も帽子は溶けて体は水に侵食されぶよぶよにふやけていた。
そして最後は


「ゅっ・・・もっちょ・・・ゆっくちちたきゃ・・・」


「「まりさのおちびちゃんんんんんんんんんんんんんん!!」」


こうしてこの二匹のまりさの赤ゆっくりは全滅した。そこに人間がやってきた。


「お~、なんだちびたち死んだのか?」


「そうなのぉぉぉぉぉぉ!!まりさたちのおちびちゃんがぁぁぁぁぁ!!」


「みんなみずさんにしずんじゃっでぇぇぇぇぇぇ!!ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!」


しかし人間は気にもしないでプラスチックの囲いにつけられた時計に目をやっている。


「ふ~む・・・三日と五時間ちょいってとこか・・・大して伸びてないな・・・。やはり簡易防水剤の併用を・・・」


「にんげんさんきいてるのぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「ん?ああ、ごめんごめん。まあ気にすんなよ。次は帽子水に溶けない赤ゆっくりを生んでくれよな。」


「そうじゃないでしょぉぉぉぉぉ!!もうまりさたちをここからだじでぇぇぇぇぇぇ!!」


「もうみずさんのうえはやだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「はっはっは、じゃあがんばれよ~」


「「にんげんさんんんんんんんんんんん!!きいてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」



まだまだ研究は続きそうである。











あとがき


なんか加工場というより研究所っぽかったですね。








作者 甘党







今まで書いたもの

  • ゆっくりコールドスリープ
  • ゆっくりを効率的に全滅させるには。
  • ユマンジュゥ
  • きれいなゆっくりの作り方
  • ゆっくり達のバザール
  • ゆっクエ
  • あるゆっくり達の冬篭りと甘い罠
  • ラジコンうーぱっく
  • 笛吹き男とゆっくり
  • 死後のゆっくり

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最終更新:2022年05月03日 23:45