【注意】
 ドスが出ます
 善良なゆっくりが死にます
 現実にゆっくりが居たらという話です





 協定違反によりドスが一つの村を壊滅させる事件がおきた。

「ああ。聞いた話だと、小山ほどある帽子を被ったやつが……」
「恐ろしや、恐ろしや、次はワシ等の村が……」
「その前に近隣の村や領主様方にも連絡を……」

 それが、一つの種の崩壊の始まりとなった。




 燃えるも燃える、木々が燃える。
 夜のカーテンが覆い隠すはずの森を、その森を飲み込んでいく炎が照らし出す。

「ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ!」

 そんな燃え盛る森の中を、大き目のまりさが炎から逃げるように必死になって走っていた。
 大きさは2メートルほどあろうか、普通のゆっくりにしては大きく、ドスにしては小ぶりなそのまりさは、木の枝が体を傷つけるのを構う事無く必死になって逃げていた。
 辺りからは木々が燃える音や、動物達の逃げ惑う声に混じって「あっちからデカイのが移動する音がしたぞ!!」「逃がすな、殺せ!!」という狂気交じりの人間の声が聞こえて来る。
 どうしてこんな事に、っとまりさは恐怖に震えながら考える。
 このまりさはこの森の中にあった世捨てドスの集落で生まれた、ドス同士の間から生まれた子供で、まだ子ゆっくりであった。
 ドスから子供が生まれる確立はほぼ奇跡に近く、集落の皆から可愛がられとてもゆっくりとしたゆん生を送っていた。
 つい先ほどまでも大好きな父と母と寄り添いながら、ゆっくりと眠っていたのだ。
 だがその幸せは突然打ち壊される事になった。突然飛んできた何本もの火の点いた矢と、ゆっくり出来ない危険なもの、『武器』を持って現れた沢山の人間の手によって。

「おとうさん、おかあさん……」

 父のドスまりさは戦って死んだ。ドススパークで応戦したものの、炎に燃える大木が折れて体に突き刺さり、傷と炎の二重の苦痛を味わいながら死んでいった。
 母のドスれいむはまりさをかばって死んだ。まりさを矢や火から庇う中、人間が放った袋から出てきたヌルヌルした液体『油』が全身にかかり、それに火が燃え移ってあっという間に火達磨となった。
 人間達は容赦が無かった、森が燃えることを気にする事無く火矢を使い、此方が体格的に進みにくい木々の間から距離をとって攻撃してきた。
 そして動けなくなったのを見計らっては一気に接近して手にした武器を突き刺し、容赦なく止めを刺していった。
 まりさ達は何故人間達がこのような事をするのか分からなかった。
 ただ人間達は血走った目で口々に「逃がすな」「殺せ」「逃せば俺達の村の番だ」っと叫んでいた。
 分けが分からなかった、自分たちは人間ともゆっくりとも関わる事無く、ゆっくり静かに暮らしていただけのはずだ。
 無論それを訴えた者も居たが、容赦なく殺された。
 今こうしてまりさが逃げられているのは、長を行っていた一番大きなドスが人間を引き付けてくれたおかげだ。
 長は囮となって残った者達を逃がしてくれたのだ。

「ゆっくりするよ……まりさは絶対ゆっくりするよ!!」

 まりさはただただ走る。人間に対する復讐など考えていない、ただ自分を逃がしてくれた皆の分までゆっくりする事だけを考えた。
 なぜならそれが、自分を助けてくれた皆の望みであり、まりさが出来る唯一の恩返しだからだ。

「……ゆ?」

 もうどのぐらい走っただろうか、火の手はすでに遠く、夜の闇に夜明けの白が混じり始めた頃、木々の向こう側に光が見え始めた。
 この怖い森から出られる、それを悟ったまりさは力を振り絞って光へと走る。
 この先にあるのは草原だろうか、それとも泉だろうか。なんにせよ、この先に行けばゆっくり出来ると思い、ただただ必死に走る。
 森を抜けたらまず、大好きな里の皆のため、死んだ皆が向こうでゆっくり出来るよう、逃げられた皆が無事であるよう祈って、心から「ゆっくりしてってね!!」を言おうと思った。
 光がドンドン近づいてくる。まりさは力の限り跳ね、光の中へと飛び込んだ。

「ゆっくりしてって……」

 まりさは最後まで言葉を口にする事が出来なかった。
 前に広がるその光景の中に、居るはずの無いと思っていたゆっくり出来ない人間が沢山居たのだ。

「い、いやだ……いやだよ……」

 人間達はこちらを見ていなかったが、すぐにまりさに気付いて慌てて武器を用意し始める。
 そんな光景を前にまりさは動く事が出来なかった、過労、恐怖、絶望。様々なものが内を蝕み体を動かす事が出来なかった。

「いやだぁぁぁぁぁぁ!!!! まりさをゆっくりさせてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

 まりさに向けて放たれる無数の矢、迫り来るその白刃の光がまりさがこの世で見た最後の光景だった。




「他のドスの報告は聞いていなかったが、はぐれ者か? 運の無いゆっくりだ」

 一団を指揮する立場にある男は、矢で毬栗の様になったドスを見ながら確実な止めを刺すよう指示を出す。
 彼らは別にこのドスを追ってきた訳では無かった、彼らは自分達の主であるこの一帯の領主の命令で近くに住まうドスの討伐に来た兵士達であった。

「まったく、面倒なものだ……」

 そう呟きながら、男は今回の一件の事を思い出していた。
 全ては遠くの村の一つがドスによって崩壊させられた事が始まりだった。
 本来はその一帯の主が片付けて終わるはずの事件は、その村に寄った旅の行商人がその事を旅先で触れ回った事で大事となった。
 噂は様々な形で広まり、最終的にはドスは食料を奪うため村を襲う生き物というモノへとなっていた。
 上のもの達が事態に気付いた時には遅かった、村々の人々はドスが襲ってくるという疑心暗鬼に囚われ、暴動一歩手間へという状況になっていた。
 そんな事態に対して立てられた対策は単純なものだった。原因、即ちドスや村近くにあるゆっくりの群の排除である。
 各地でドスの討伐隊が組織され、ゆっくりの群やドスの排除に動き出したのだ。
 また幾つかの村が協力して独自に単体のドスや、はぐれドスの村を探して狩っているという話も聞く。

 「なんにせよ、この流れは暫く止まらんか」

 もともとドスによって村に被害が出れば村から取り立ててる此方にも被害が出るのだ。
 この機会に出来るだけ狩ってしまおうと言うのが上の考えである。
 苦労するのは此方ばかりだっと愚痴をこぼしながら、男はドス討伐のため隊を進め始めた。




 今回全国各地で起きたこの大騒動、被害を受けたのはドスなどの大型種だけでは無かった。

「見つけたぞ、黒帽子だ!! 番とガキまでいやがる!!」
「ゆぎゃぁ!? は、はなじでぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「まりさやありすをはなしなさい! こんなのとかいはじゃないわ!!!!」
「「「「ゆ~、おそらをとんでるみたい~!!」」」」

 ある森の中、男達が巣穴からまりさとありすの家族を捕まえていた。
 親達は自分達を放すよう訴え、そんな親達とは対照的に子供達は人間の腕の中で楽しそうにはしゃいでいた。
 人間達はそんなゆっくりの様子に構う事無く、近くの開けた場所に掘ってあった深く大きい穴まで行き、そこに一家を投げ込んだ。

「ゆゆっ!? あれ? いたくな……ゆ!?」

 まりさは予想とは違う叩きつけられた地面のやわらかさに疑問を口にしようとして、すぐに止まる。
 答えはすぐに分かった、自分達の入れられた穴の中、そこに居た先客がクッションになったのだと。

「だずげで、まりざぁ……」
「れいむ、しっかりしてね! あんこさんださないでね!!」
「あまあまがいっぱいあるんだぜ!!」
「やめろまりざ! まりざのありずをだべるなぁ!!」
「かざり、まりざのかざりはどこ!?」
「うごかないでゆっくりしてね! ゆっくりできないよ!!」
「おじびじゃんが! おじびじゃんが!!」
「だじでぇ! ここがらだじで!!」
「まりさはつよいんだよ! ここからださないとひどいよ!!」
「もっどゆっぐりじだがっだ」

 穴の中には多くのゆっくりがひしめき合い、動く事すら困難な状態であった。
 そんな光景に呆然とする一家の誰もが気付かなかったが、ここに居るゆっくりの大半がまりさ種であった。
 状況を受け入れられない一家に構う事無く、また新たなまりさが穴の中に投げ込まれていった。
 しばらくして、先ほどよりもさらにゆっくり達が増えた頃、穴の周りに多くの人間達が集まっていた。
 それに気付いたゆっくり達は必死に出せ出せと訴えるが、人間達はそれを無視して何事かを話していた。
 そしてまとめ役らしき年配の男が「このくらいで良いだろう」っと結論を出すと、用意してあった藁などを穴の中に投げ込んでいった。

「ゆ~! くささんだよ!!」
「むーしゃむーしゃ、それなりー」
「まりしゃもくしゃしゃんたべるよー!!」

 落ちてきたものを自分達の餌だと思い群がるゆっくり達、だがその光景も長くは続かなかった。
 一人の人間が、手にした松明を穴へ投げ込んだからだ。
 火は藁に、ゆっくりの飾りに、髪に、そして本体へと瞬く間に燃え広がっていく

「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! まりざのがざりが!! がみがぁぁぁぁぁ!!!!」
「あづいぃぃぃぃ!! だずげでまりざぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ひさんこないでね、こないでね……ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「まりさはあっちににげるんだぜ!!」
「おかあしゃんまって……ゆびぃ!?」

 火無い方へと逃げようとするゆっくり達により、穴の中は阿鼻叫喚の地獄絵図の如き状態となる。
 だが逃げた方でも火が落とされていき、あっという間に穴の中は全て炎に飲み込まれえていった。
 熱い、助けて、何でこんな事を、様々なゆっくり達の悲鳴や懇願が辺りに響くが、人間達はソレに動じる事無く見ている。
 たまに何匹ものゆっくりが一箇所にあつまり足場になった所を、駆け上がって穴から出ようとする者もいたが、人間達が手にしていた棒などですぐに穴に叩き落されていった。
 悶え、苦しみ、絶望し、世を呪いながら、多くのゆっくり達が黒焦げになって死んでいった。
 さて、人間が何してるのかというと、まりさ狩である。
 一般的にゆっくり達の中でも、特にまりさ種はドスになる事が多いと言われている。
 また、まりさ種のドスは持ち前のリーダー気質から群のリーダになりやすく、蛮勇とも言われる勇敢さと行動力から人間の村に近づく事が多い。
 そこで人間達はドスになる前に駆除してしまえば良いとまりさ種を狩る事にしたのだ。
 無論対象はまりさだけではない、一家の場合はその子供や番も対象である。まりさ種の餡子が混じっている可能性があるからだ。
 この村では前もって広く底の深い穴を掘り、そこにまりさやその一家、偶然見つけた運の無いゆっくり達を中に放り込み、一気に焼却処分をおこなっていた。
 このような光景は形は違えど各地で見られた。
 こうして、ゆっくり達にとってはゆっくり出来ない時代が幕を開けたのである。




 それから、どれほどの月日が経ったであろうか。
 あれほど各地で上がっていたドスを殺せという声は何時しか消え、人間達にとってはもはや過去の事件となっていた。
 こうしてゆっくり達はようやく平穏な時間を取り戻す事が出来たのだ……ある一種類のゆっくり意外は。

「ゆっ! どこにいったの!! かくれてないででてきてね!!」
「むきゅ、こっちのしげみにゆっくりがとおったあとがあるわ!!」
「ゆっくりおうんだね、わかるよー!!」

 ある森の中、れいむ、ぱちゅ、ちぇんは必死になってあるものを追っていた。
 それはかつてゆっくり達をゆっくり出来なくさせた原因であり、すぐにでも永遠にゆっくりさせなければならない存在だった。
 相手の通った後を追って、先行するちぇんが走る。そして、茂みの奥に見える移動する黒い何かを追って、一気に速度を上げた。
 そして茂みを抜けたところで相手の姿をはっきり確認する事が出来た。それは黒い帽子を頭に乗せたゆっくり。

「わかる、わかるよー。まりさをみつけたんだねー!!」

 ちぇん達に追われるまりさはぼろぼろだった、自慢の帽子は破れ、体は打ちつけた後や噛まれた後があり、傷から餡子が漏れていた。
 それでもまりさは走る、恐怖を顔に貼り付けながら、必死になって逃げ惑う。

「ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ! ゆっ!……ゆぎぃ!!」

 だがソレも此処まで、もともと速度の違うちぇんに今のまりさが敵うはずも無く、体当たりを受けて近くの木に叩きつけられた。
 まりさはすぐに立ち上がろうとしてたが、もはや体力の限界か体を動かす事が出来なかった。

「ゆゆっ! やっととまったね」
「むきゅ、ちぇんのおてがらね」
「てれるよー」

 そうしている間に、れいむとぱちゅもちぇんに合流し、まりさを囲んだ。

「おねがいじます、まりざはなにもわるいごどじていまぜん。だずげでぐだざい、だずげでぐだざい」

 そんな三匹に必死になって命乞いをするまりさ、だがそれを三匹は汚い物を見る目で見ていた。

「うるさいよ! ゆっくりできないまりさはゆっくりしんでね!!」 
「ゆびぇ!?」

 まりさの頬を、れいむは自由に動くもみ上げで叩く。
 その衝撃でまりさの体がぱちゅへの方へと向く

「むきゅ! ほんとまりさはゆっくりのはじさらしね!!」
「ゆぎぃ!!」

 続いてぱちゅが口に銜えた木の枝でまりさを叩き、今度はちぇんの方へと体が向く

「まりさはさっさとしぬんだよー、わかってねー」
「ゆぐぅ!!」

 ちぇんもその尻尾を使い、まりさを叩く。そしてまりさの体はまたれいむへと向いた
 それは何度も何度も繰り返され、まりさが息絶えるまで続いていた。
 この時代、まりさ種はゆっくり出来ないゆっくりとして各種から追われる立場へとなっていた。
 ゆっくりにとっての地獄の時代、まりさが中心となって狩られ、自分達はそれに巻き込まれてると気付いたゆっくり達は、その憎しみを原因となったまりさ種へと向けていった。
 まりさのせいでゆっくりできない、まりさのせいで殺される、それらの憎しみは中の具へとしみ込んで行き、何時しかまりさはゆっくり出来ないゆっくりと認識されるようになったのだ。
 捕食種のように食われるからではない、めーりんのように鳴き声が不快だからでもない。
 ただそこに居るだけでゆっくり出来ないゆっくりとして、憎まれ殺されるようになっていた。
 もはやまりさは同属で暮らすか、流れ者として生きていく事しか出来なくなったのだ。
 このまりさも父まりさと母まりさと共に旅をして生きていたが、運悪く近くの群に見つかり、殺される事となった。
 そして同じくゆっくり出来ないゆっくりとなったモノがいる。
 言うまでも無いだろう、元凶であるドスである。
 まりさと同じように、度重なる人間のドス狩りによって、ゆっくり出来ないゆっくりとして認識されるようになったのだ。
 ゆっくり達から憎まれるならまだいい、中にはドスになった瞬間、ショックで大量の餡子を吐き出してそのまま死に絶えるモノが大半であった。
 ドスやまりさにとってまだまだ続く苦しみの時代、彼等がゆっくり出来る日は永遠に来ないのかもしれない。




 【あとがき】

 まりさ種を虐待するネタが大好きです。
 帽子をかぶってるのが、リーダー気取りなのが、同じ基本種のれいむより優れてる設定が多いのが。
 それら様々な要因のおかげで、まりさ種は善良、ゲス関係なくよく虐待したくなります。
 そんなわけでまりさ種インフレの一つドスをなんとなく殲滅してみたくなったので殲滅してみました。
 ついでにまりさも虐待してみました。
 稚拙な文書にお付き合いいただき、ありがとうございます


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最終更新:2022年05月22日 10:45