降りしきる雨の中、ありすはただ闇雲に歩き続ける。
土砂降りと言っても差し支えないその雨量は、既にありすの身体を溶かし始めている。
だがありすは止まらなかった。ただ前へ、それこそ亡霊のような足取りで前へと進む。

上空に広がる雨雲は、それはまるでありすの心情を表現したような暗さだった。
いや、それすらもまだ生ぬるいだろう。
今ありすの胸中には、例えようの無い悲しみと絶望だけが渦巻いている。

いや、違った。
悲しみと絶望と、そして疑問が渦巻いている。
何故、こんな事になったのかと。どうして、こんな事になってしまったのかと。

何故、まりさはありすを捨てたのだ。ありすはとても幸せだったはずなのに、何故。
何故、まりさはあのれいむと番になっているのだ。まりさの妻はありすだったはずなのに、何故。
何故、まりさと出会ってしまったのだ。出会わなければ、こんな思いをすることも無かったのに、何故。

何故、何故、何故・・・・・・。
疑問は尽きることは無い。雨に打たれながら、ありすは自問を続けている。



そして、ふと思った。
まりさが妬ましい。ありすを捨てたあのまりさが妬ましい。
れいむが妬ましい。ありすからまりさを奪ったあのれいむが妬ましい。



尽きぬ疑問を溶かすように火が灯った嫉妬は、一気に燃え広がる。
そうだ。妬ましいのだ。あの二匹が。ありすを置いて、幸せそうに暮らしているあの二匹が。

悲しみも、絶望も、溶かしつくされ、燃やし尽くされていく。
最早ありすの心にただ在るのは、嫉妬という名の炎、いや業火。

止まることの無かった涙が、その色を変えていく。
紅い。まるで血涙。一体饅頭であるその身体の何処にこんな紅さを持っていたのか。
あるいはこれこそが憎しみの色なのだろうか。

降りしきる雨の中、ありすは歩き続ける。
その瞳の中は確固たる意思に彩られ、身体を融かす雨をすら意にも介さないとばかりに進んでいく。
意思の名は嫉妬。その瞳を焦がす憎しみの炎は、どうしようもないほどに美しく深い翠色だった。





今、ありすの目の前には飼い主である男が立っている。
彼が差した傘によって雨は遮られ、もうありすの肌を濡らす事は無い。
しかし、遅かった。最早ありすの身体は崩れかけ、命の炎は尽きようとしている。

「・・・・・・ありす・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・おにいさん」

悲しみを湛えた表情でありすを見下ろす男に、ありすは話しかける。
微かな声。雨にこそぎ取られたように、ありすの声は小さく、弱弱しかった。

だが、それでも。
それでもありすの声は、しっかりとした意思を持って男に伝わる。
まるで、憎しみによって命を繋いでいるかのように。

「おにいさん・・・・・・ありすは"おに"になりたいわ・・・・・!」

その声は雨音に遮られても尚、辺り一面に響き渡る。
地獄の底から響いてくる亡者の声のように。悲しみに哭く鬼のように。

「そして・・・・・・あのねたましいれいむを・・・・・・まりさを・・・・・・!!」

既に半壊であるはずの身体から、何処にそんな力があったのかと思わせるほどの声が響く。
その目から流れるのは赤々とした、いやそれすら生ぬるいと言えるほどの真紅。

「・・・・・・無理だ。お前は死に掛けている。もう何処にもそんな力は残されていない」
「むりじゃないわ・・・・・・!!ありすは・・・・・・たとえしんだってまりさたちを・・・・・・!!」

断ずる男の言葉に、ありすは怨嗟の声をぶつける。
無理だなんだと理屈で測れるほどありすの憎しみは弱くなかった。

「ぜったいに・・・・・・!!ぜったいに、ありすは・・・・・・!!ありすは・・・・・・!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「ありすは・・・・・・・!!まりさを・・・・・・!!れいむを・・・・・・!!」
「・・・・・・・・・・・・本当に、いいのか?」

ぽつり、と。
そう男は漏らす。
まるで、ありすの復讐を助けることが出来るかのように。

「本当に、例え死んでも、いやそれ以上に酷い結果が待ち受けていたとしても、お前はそれを望むのか?」
「・・・・・・もちろんよ・・・・・!!ありすが・・・・・・どうなろうとも・・・・・・かまわないわ・・・・・・!!」
「・・・・・・そうか」

いくら言ったところでありすの憎しみを燃え滾らせると解っていながら、それでも男はありすに尋ねた。
決して後悔しない様に。ありすも、そして自分自身も。

「聞け、ありす。お前の身体は水を吸いすぎた」
「・・・・・・そう」
「もう俺にも処置不可能なくらいに、お前の身体は壊れている。このままだと、お前はいずれ死ぬ」
「・・・・・・そう」

お互い淡々と事実を話し、そして聞く。
ありすには死ぬつもりなど一切無い。まだやらなくてはならない事があるから。
そして男も、このままありすを死なせるつもりも無かった。

「だけどな、ありす。もしかしたらお前を助ける方法があるかもしれない」
「・・・・・・そのほうほうって?」
「これだ、ありす。この強化薬がある」

そう言って懐からアンプルを取り出す男。
ガラス容器の中には、深緑の液体が保管されている。

「この薬はお前の身体能力を上昇させる効果がある。勿論、耐水性能もだ」
「・・・・・・・・・」
「この薬を使えばお前は助かって、そしてまりさたちに復讐する力を得られる、かもしれない」
「・・・・・・・・・」
「いいか、あくまで可能性だぞ。助かるという保証は何処にも無い。それに・・・・・・」

そう説明し、言いよどむ男。
ありすは喋らず淡々と男の話を聞き続けている。

「・・・・・・この薬には副作用がある、らしい。被験者をバケモノに変えてしまう」
「・・・・・・・・・」
「元の姿に戻ることも出来なくなる。もし助かっても一生バケモノの姿のままなんだ」
「・・・・・・・・・」
「だから、ありす。本当にいいんだな?本当にバケモノになってまで復讐をする覚悟が・・・・・・」
「・・・・・・・・・ふふっ」

唐突に、ありすは哂った。
思わず言葉を呑む男。今度は、ありすが話し始める番だった。

「ふふふっ・・・・・・やだわ、おにいさん。あったんじゃない、そんないいものが」
「・・・・・・・・・」
「おにいさんもひとがわるいわ・・・・・・はじめからそれをだしてくれればよかったのに」
「・・・・・・・・・」

滲み出る狂気をそのままに、ありすは哂っている。
血涙を流しながら哂うその姿は、ひどく物悲しく、そして恐ろしい。

「ねぇ、おにいさん。ありすは"おに"になりたいっていったでしょう?」
「ふくさよう?ばけもの?べつにいいじゃない。そんなのやすいものだわ。むしろ、のぞみどおりかも」
「まりさたちにうらみをはらせるのに、なんでそんなことをきにするの?」

滔滔と話すありすに、男は薄ら寒いものを感じていた。
最早このありすは男が知っているかつての優しいありすではない。
憎しみに取り付かれた一匹の怪物がいるだけだ。

「さぁおにいさん。それをはやくありすにちょうだい」
「・・・・・・・・・」
「なにしてるの?それがあればまりさたちにうらみがはらせるのよ?」
「・・・・・・・・・」
「ねぇ、おねがいよ。はやくそれをくれないとありすしんじゃうかも・・・・・・」
「・・・・・・・・・解ったよ」

男はアンプルの頭を折り、ありすに薬を飲ませた。
緑色の液体をごくごくと嚥下してゆくありす。
その表情は陶然としている。まるで美酒を飲んでいるかのように。

「ん、ふぅ・・・・・・おいしかったわ、おにいさん」
「・・・・・・・・・」
「ん、ふふ・・・・・・これで・・・・・・これでまりさたちに・・・・・・っ!?」

恍惚の表情でそう言ったありすの身体が、ごぼりと泡立つ。
早くも薬の効果は出始めていた。ありすの肉体が変質を起こそうとしている。

「・・・・・・っ!ふふ・・・・・・ふふふ・・・・・・!あははははっ・・・・・・!!」

だがそんな身体の事など眼中に無いかのように、ありすは笑い始める。
その声には紛れも無い歓喜が含まれていた。

「これでっ・・・・・・!!これでありすをすてたまりさに・・・・・・!」
「あのにくいれいむにうらみをはらせるっ・・・・・・!!」
「あは・・・あはははは・・・・・・あはははははははははははははっはっははっっっ!!!!!!!」

男は、ただありすを見つめ続ける。
覆水は盆に帰らない。
まりさがありすを裏切ったことも、男がありすを変えてしまったことも、もう元には戻せないのだ。

「あはははhはははハハハハハハhあはあハハハあああgはgはがアアアハハハああああハハハハハハっっっっ!!!!!」

降りしきる雨の中、ありすの哄笑とも狂笑ともつかない声が木霊する。
これは産声。
心に育んだ怨念の卵から、遂に殻を破って現れた鬼の声だった。



ありすのお腹にいたはずの赤ちゃん。
憎しみに囚われたありすにその鼓動はもう聞こえなかった。










それから二十一日の時が過ぎ―――――










今、まりさは暗い森の中を全力疾走している。
何故全力疾走しているかって?
決まっている。逃げているのだ。



まりさは幸せだった。
まりさには妻がいた。綺麗なれいむ。まりさの最愛の妻だ。
まりさには子供がいた。赤れいむが3に、赤まりさが2。皆親に似て優しく、そして勇敢な子供達だ。

朝起きて挨拶とすりすりをして、狩りをして皆でむーしゃむーしゃする。
まりさの狩りの腕は一級品で、今まで家族を飢えさせたことなど一度も無い。
皆が満腹になるまで食べて、それでしあわせーっと言ってご飯は終了する。

狩をしない時には皆でお散歩にいく。
森の中にあるいろんな物を見て、そしてとてもゆっくりするのだ。
捕食者に襲われても大丈夫。まりさは何度もれみりゃを撃退した事だってある。

そうして家に帰り、またむーしゃむーしゃとご飯を食べて、みんなで寄り添いあって眠る。
ゆっくりとしてはこの上ない幸せ。
それもこれもまりさが優秀だからだ。



だが、そんな幸せは壊された。
とっぷり日も暮れたある晩のこと、そいつは現れた。

まりさが知恵を絞って組み上げた扉。
れみりゃやふらんの体当たりにもびくともしないはずの堅牢な入り口が、それこそ木っ端のように粉砕された。

突然の轟音にまりさたちが驚いている隙に、そいつは巣の奥まで入り込んできた。
あっという間にまりさたちの目の前に肉薄してきたそいつは、赤れいむを一瞬で掴み上げる。

「ゆっ、おちょらをとんでるみちゃぶ!!!!」

感嘆の声を上げようとした赤れいむを、最後まで言い切らせずにそいつは握り潰す。
入り口が破られてから僅か5秒の惨劇に、誰もがその事態を認識できない。

「ぼびょえ゛!!」
「ぷぇ゛!!!」
「ゆ゛びぃ!!!」
「ばびょっ!!!」

目にも留まらぬスピードで次々と残りの赤ゆっくりを握り潰してゆくそいつ。
まりさとれいむがそのことにようやく気付いたのはそれから3秒後のことだった。

「ゆ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!おぢびぢゃんだぢをごろじだふらんはゆっぐりじねええぇぇぇ!!!」

そういって飛び掛るれいむを、そいつのアッパーカットが出迎えた。
底部から脳天まで一気に突き抜けた拳は、天井に餡子の花を咲かす。

違う。そいつはふらんじゃない。まりさは震えながらそう思う。
れいむはそいつのことをふらんと呼んだ。なるほど確かに胴体を具えた金髪のゆっくりはふらんに見えるだろう。
だが違う。そいつにはふらん特有のあの宝石のような羽が無い。そもそも羽と見受けられるようなものが無い。
服装も違う。赤を基調としたふらんと比べて、そいつの服は黒や、茶、青だ。れみりゃでもない。
そして金髪から覗く人間の耳を尖らせたようなもの。

いや、そんなことではない。
服の違いなど些細なことだ。羽の有無などどうでもいいことだ。耳なんてあっても無くても変わらない。
それより重要なのは―――まるで魂を蝕むようなほど美しい、その瞳だ。

そいつは巣に入ってきた時からずっとまりさとだけ目を合わせ続けていた。
闇から覗く深緑の双眸。
飲み込まれそうなほど深いその瞳に、まりさは動くことすら忘れて爛々と光るそいつの目を見続けていた。

「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!」

魂を震わせるようなれいむの絶叫に、まりさははっと気付く。
このままここにいれば殺される。
れいむはまだ息があるが、その次はまりさだ。

そう思った次の瞬間には、まりさは巣の外へ向けて走り出していた。
逃げ出せるのは今しかない。このチャンスを逃したら、自分に待つのは死だけだ。
既にれいむや赤ちゃんのことなどどうでも良かった。大切なのは、自分が生き延びる、ただそれだけ。

そいつは動かない。
今だ絶叫をあげ続けるれいむを解体し、まりさを追うそぶりすら見せなかった。

だが、見続けている。
そいつは―――その怪物は、昏く光る2つの緑眼をまりさに向け続けていた。
逃げるまりさもまた、その背中に視線を感じている。

ふとまりさはその双眸に、一瞬だけ既視感を覚えていた。



月の光だけを頼りに、まりさは夜の闇を全力疾走する。
とにかく離れなければ。あそこから少しでも。
夜に徘徊する捕食種のことは思い浮かばなかった。

張り出した木の根を飛び越え、低い木の葉を潜りながらまりさは考える。
一体あれは何者だ。あんなゆっくりは初めて見る。
確かにあれはゆっくりだ。だが、まりさが今まで一度も見たことが無いゆっくりなど限られてくる。

ふらんすら破れないはずの入り口をあそこまで容易く粉砕するそのパワー。
一瞬で肉薄し、5匹の赤ゆっくりをあっという間に握りつぶしてのけるそのスピード。
どれをとっても尋常ではない。通常の捕食種を遥かに超えている。

そして何より不可解なのは、あの怪物はまりさたちを食べるそぶりすら見せなかったことだ。
捕食種ならば食べるために巣を襲い、まりさたちを食うだろう。それは解る。
だが、あの怪物は違った。まるで、まりさたちを殺すことそのものを目的としているかのような・・・・・・・。

急に、視界が開けた。
まりさは森を抜けたのだ。

遠くには人家の光がある。
ああ、あれはあの農場を経営している人間のおうちだ。まりさは安堵する。

とにかく一旦人間の家へと逃げ込もう。
あれからしばらく時間が経っているが、まぁいい、どうせ大丈夫だろう。なんと言ってもまりさはありすの夫なのだ。
きつい労働も、今の危険に比べれば屁のようなものだ。やはり作っておくべきは現地妻だ。
そんなことを思いながら、まりさは農場へ向かうため小川にかけられた橋へと急ぐ。





そして、止まる。
月の光を受けてより一層目立つ翠の目。
橋の上にはあの緑眼の怪物が立っていた。





振り返り逃げ出そうとする暇も無く、怪物はまりさを掴みあげる。
逃げられない。どれだけもがこうとも怪物の指はがっちりとまりさの後頭部に食い込んでいる。
そしてそのまま持ち上げられる。足場をなくし、力なく宙を蹴る底部。

「ゆっ・・・ゆああああぁぁっ!!ゆひゃあああああああああああああああ!!!!」

それでも恐慌に陥ったまりさはじたばたと足掻く。
逃げないと殺される。れいむの様に。赤ちゃん達の様に。
しーしーを垂れ流しながら、みっともなく暴れまわる。

そんなまりさを哀れむかのように、クスリ・・・と小さく笑う声。
その声の主は、間違いない。今まりさの後ろにいる、あの怪物だ。

「どうしたの、まりさ・・・・・・?そんなにおびえちゃって・・・・・・」

初めて怪物が口を開いた。
あの惨劇を招いた張本人とは思えないほど、優しく、憐憫に満ちた声。
まるで夜闇を恐れる子供を慰めるかのような、慈母の響き。

「ゆああああああああああああ!!!たずけでぐだざいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

まりさの行動は早かった。
言葉が通じる相手だとわかると、途端に命乞いを始める。

「たすける・・・・・・?もしかしてまりさはだれかにいじめられてるの?こわいわねぇ」

まるで他人事のように、その怪物は嘯く。
まりさの命を握っているとは思えない、軽い口調。いや、命を握っているからこそなのだろうか。

「はなじでぐだざいいいいいいいいいい!!まりざもうおうぢがえるううううううううう!!」

またも恐慌に陥り、暴れだすまりさ。
思わず口をついて出てしまった言葉に、怪物は反応した。

「おうち・・・・・・?おうちって、あのもりのなかにあったあなのことよね?」
「はいいいいいいいい!!ぞうでずうううううううううううう!!!」

一も二も無く肯定するまりさ。
ここでこの怪物の機嫌を損ねることだけは遠慮したかった。

「すてきよねぇ・・・・・・あんなおうち。わたしもいっかいすんでみたいわ。
 あ、でもいまはあかちゃんのざんがいとか、れいむのなかみとかでたいへんなことになってるでしょうけど。
 こわいわぁ。いったいだれがやったのかしら?」

ペラペラと怪物は喋りだす。
自分で引き起こした惨劇すら、他人事のように語る怪物にまりさはより一層恐怖を募らせる。

「あ、そうだ。ねぇまりさ。れいむからあなたに、おみやげがあるそうよ」

べちゃり。

まりさの顔に掛けられた濡れた何か。
まりさはそれを良く見ようとして・・・・・・そして。

「ゆぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」

絶叫を上げた。
今、まりさに掛かっているものの正体はれいむの死骸。
中身を全て取り除かれたれいむのデスマスクが、恨めしげにまりさを睨み付けている。

「すてきよねぇ・・・・・・おくさんからのおみやげでしょ?きっととってもいいものにちがいないわ、ねぇまりさ?」
「そっ、そうでずうううううううううううううううううう!!!」

絶叫を聞いていなかったかのような怪物の問いかけに、まりさは必死で理性を繋ぎとめながら答える。
今答えなければ殺される。まりさの本能がそう叫んでいた。

「あら?もしかしてきにいらない?じゃあしょうがないわね、すてちゃいましょう」

デスマスクを引っぺがし、そのまま地面に放り捨てる。
ズタズタになったれいむの残骸を、更に踏みつけ壊してゆく怪物。

「さぁきれいになった。やっぱりまりさにはれいむなんてにあわないわよねぇ?」
「はいいいいいいいいいいい!!!そうでず!!れいむはくずでず!!」
「いいへんじね、まりさ。やっぱりまりさはそうおもってたのね」

抑揚も軽やかに、怪物は続ける。

「ちょっとまえにね、まりさたちのかぞくをみにいったことがあるのよ、わたし」
「しあわせそうでねぇ・・・・・・なかもよさそうで。りそうのかぞくってかんじ?」
「ほーんと・・・・・・妬ましかったわぁ♪」

まりさには解る。
この怪物の楽しげな声、その薄皮を一枚めくれば、そこには殺意の牙が並んでいることを。

「ところでまりさ。まりさはいったいどこへいこうとしてたの?きになるわねぇ」
「はいいぃ!!にんげんざんのおうちへいごうどじでまじだぁ!!!」
「まぁ、にんげんさんのおうちへ?」

全ての問いに即座に答えるまりさ。
それを受けて、怪物は驚いたような声を出す。

「まりさはもりのゆっくりでしょう?にんげんさんのちかくにいったら、あぶないわよぉ」
「まりざはがいゆっぐりでじだ!!だがら・・・たぶん、だいじょうぶでずぅ!」
「まぁ、かいゆっくり?すごいのねぇ」

また驚いたような声を出す怪物。
あくまで驚いた「ような」であって、本当に驚いているわけではないのは明白だった。

「なんでかいゆっくりのまりささまがこんなへんぴなもりであぶらをうってたの?ねぇ、おしえてよ」
「はい゛ぃ!!まりざはもりのゆっくりでじだけど、かいゆっぐりのありずどけっごんじだんでず!!
 でも、そこのせいがつがぐるじぐなっでにげだじだんでず!ぞれがら、まりざはもりにもどっででいぶど・・・・・・」
「ああ、いいのよそこまでしゃべらなくて。わたしがききたいのはそこじゃないから」
「はい゛ぃ!!」

キリリ、とまりさに食い込む指の力が増した、気がする。
迂闊なことを言えば死ぬ。再度そのことを確認するまりさ。

「ふぅ~ん。せいかつがくるしくなってにげた・・・・・・。あのていどで?ちょっとやわねぇ、まりさ。
 ま、そんなことより、まりさ。
 ねぇ、まりさ。まりさにはおくさんのありすがいたんでしょ?」
「はいぃ!そうでずうううぅぅぅl!!!」
「ね、まりさ。まりさはそのありすとれいむ、どっちがすきなの?」
「ゆぅっ!?」

突然わけの分からない質問に、初めてまりさは言いよどむ。
そんなまりさを見て、怪物の気配に苛立ちが生じた。

「・・・・・・どうしたの、まりさ?もっとぱっときめてくれなきゃ、ありすがかなしむでしょ?
 それとももしかして、まりさはれいむのほうがすきだったり・・・・・・するのかしら?」
「ちがいばず!!ばりざはあでぃずがだいずぎでず!!!でいぶなんでごびぐずでず!!!」

今度は明らかに指の力が増した。
弾かれるようにまりさは答える。

「・・・・・・そうよねぇ~♪やっぱりまりさにはありすがおにあいよねぇ~♪」
「はい!!ぞうでず!!」

一体何の話をしているのだろう?
まりさは疑問に思う。今のこの状況と、まりさの好みとどう関係があるのだ。

「それにしてもまりさったらひどいゆっくりよねぇ。ありすのおなかにはあかちゃんがいたのよ?
 それをほっといてほかのおんなをつくるなんて・・・・・・まったくつみつくりだわ、妬ましい」

何故知っている。
何故ありすが妊娠したことを、この怪物は知っているのだ。

「・・・・・・ねぇ、ところでまりさ?わたしのこと、みおぼえはないかしら?」
「ゆ゛ぁ゛っ!?」

またも理解不能の質問。
あちらはともかく、まりさは今日初めてこの怪物を見たのだ。
思わず口をつむぐ。

「・・・・・・あら?わからない?まぁそもそもまりさはあっちのほうむいてるからね。わからなくてもむりはないわ」
「でもしょっくねぇ。もしかしたらこえだけでもいけるとおもってたのに」
「まぁやっぱりこえもちょっとかわっているし?それもしょうがないか」

変わっている?
もしかしてまりさは、この怪物に以前出会ったことがある?
解らない。一体誰だ。

くるりと、まりさの向きが変わる。
怪物と一緒の方向を見る向きから、怪物と見合う体勢へ。
月の光が、まりさと怪物を照らしだす。



そしてまりさは、声にならない絶叫をあげた。
美しい。
緑眼を擁したその顔は途方も無く美しく・・・・・・そして餡子に濡れていた。
れいむの中身だったもの。怪物は血化粧ならぬ餡化粧を施したその顔で笑いかける。

「どう?まりさ、これでわかったんじゃない?」
「ゆわわ・・・・・・ゆわわ・・・わ・・・・・・」

再びしーしーを漏らす。
そんなことすら意に介さぬ怪物は笑顔を作り、まりさを見つめ続ける。
いや、笑顔ではない。深い翠を湛えたその瞳だけは、欠片も笑っていない。

「あらぁ・・・・・・?これでもわからないの・・・・・・?まったくにぶちんさんね、まりさ」
「じゃあしょうがないわね、ここでだいひんとぉ」
「ちゃんとあててくれなきゃ、おこっちゃうわよ、まりさ?」

奈落よりも深いその眼に吸い込まれるような錯覚を覚える。

「『ゆ?まりさ?』」

「『ゆっ、いいわよ、まりさ。そんなにがんばらなくても』」

突如、何かを言い始めた怪物。
これがヒント?一体何がヒントだというのだ。
・・・・・・いや、待てよ。この言葉、どこかで・・・・・・

「『でも、まりさ・・・。まりさ、つかれてるじゃない。いいからきょうはやすんで・・・・・・』」

「『わ、わかったわよ、まりさ・・・・・・』」

・・・・・・そうだ。
この言葉は、農場を出る際に交わした会話だ。
この会話を知っているのは、まりさを除いてこの世にただ一匹だけのはず。

「『う・・・うん!まりさ、きたいしてまってるわね!』」

「『ゆ?・・・ゆゆ・・・♪』」

信じたくない。
だが、この怪物は『大ヒント』と称してこの片割れの会話を繰り広げている。
それが意味する者は一体何か。

つまり、この怪物は一体誰なのか。

「あっ、あっ、あっ、あでぃずううううううううううううううううううう!!!?」
「『わかったわ、まりさ!がんばってね!』・・・・・・だいせいかい。ここまでしないとわからないなんて、妬ましいわ」
「なっ、なっ、なんでええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
「なんでって、きまってるじゃない。あなたにあうためよ、まりさ」

そして昏く哂う、怪物、いや、ありす、だったもの。
今この瞬間も双眸はまりさを捉えて離さない

「ねぇまりさ、あなたはれいむよりありすのほうがすきっていってくれたわよね?」
「ゆうぅっ!!?」
「そうよね?まりさ」
「はい゛ぃ!!そうでずうぅ!!」
「それじゃあこのよでいちばんあいしているのはありすってことになるわよね?ねぇ、まりさ」
「はい゛っ、はい゛っ!!ぞのどおりでずううううううぅぅぅ!!!」

最早頷くことしか出来ないまりさ。
事態は理解の範疇を軽く超えている。

「よかった!じゃあ、ねぇまりさ。このよでいちばんあいしてるありすのおねがい、きいてくれる?」
「きぎまず!!きぎまずがら、だずけでぐだざいいいいいいいいぃぃぃ!!!!」
「ああ、それがききたかったわ、まりさ。それじゃあね、まりさ。ありすのおねがい・・・・・・」










「いま、ここで、しんでくれない?」










「・・・・・・ゆ?」
「ああ、ころすのはわたしがやってあげるわ。だいじょうぶ、ただすごくいたくてくるしいだけよ」
「ゆあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」

今度こそ恐慌に陥り、死ぬほどの力を振り絞って逃げようとするまりさ。
怪物は少し指に力を込める。
それだけで、まりさは逃げ出すことはおろか動くこともままならなくなった。

「ねぇ、どうしたの、まりさ?もしかして、しにたくないの?」
「いやじゃああああああああああ!!!!!しにだくないいいいいいいいいいいい!!!!!」
「だめよ、まりさ。『ありすのおねがいをきく』って、いっちゃったじゃない」

涼やかな顔をして、まりさに死刑宣告を告げる怪物。
その眼に宿る狂気は本物だ。まりさが死ぬことをなんとも思っていない、そんな瞳。

「だいじょうぶよ、まりさ。あのときのわたしにくらべたら、たいしてくるしくなんてないかもよ?」
「・・・・・・ゆぅっ!?」

そっと空いていた片腕を上げ、まりさの顔を撫で始める。
柔らかな指先は頬をなぞり、唇をなぞり、瞼をなぞり・・・・・・そして左の眼窩に突き入れられた。

「ゆっぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

月夜にまりさの絶叫が木霊する。
そんなことに構いもせずに、怪物はまりさの眼球を撫でるように指をかき回し始めた。

「ゆ゛あ゛っ!!いだい、いだいいいぃぃ!!!ぬいでえええええぇぇぇ!!!ぬいでえええぇぇぇぁぁぁぁあ!!!」

きゅぽん、と気の抜ける音。
怪物の指は引き抜かれた。ただし、まりさの眼球を伴って。
おそらくは視神経であろうひも状の物体に指を絡ませながら、怪物は陶然と呟く。

「まりさのおめめ・・・・・・きれいよね。妬ましいわ・・・・・・はむっ」

そのまま一口に、怪物はまりさの目玉を口に含んだ。
口の中でころころと転がし、涙と付着した餡子を味わう。

ぶちゅり。

口の中で、眼球を噛み砕く音。
漏れ出るシロップを嚥下し、残った眼球も咀嚼し、ゆっくりと飲み込んでゆく。

「んん・・・・・・おいしいわ・・・・・・まりさの」

妖艶な魅力を振りまき、そう言ってのける怪物。
まりさの残された右目には、最早それは死神か鬼かにしか映らない。
そして怪物が次に狙うのは、まりさの唇。

「んっ・・・・・・んふぁ・・・・・・あふ・・・・・・」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!?ん゛ゥーッ!!!」

抵抗できないようにまりさの口をこじ開け、そこに己の舌を滑り込ませる。
まりさの口内を蹂躙してゆく怪物の舌。
皮肉にも自分の眼球の味は、どうしようもなく甘かった。

「んっ・・・・・・ふッ」

ぶちり。

「・・・・・・ッ!!!~~~~ぎゃああああああああっ!!!」

二人が離れる際、怪物はまりさの唇を噛み千切っていた。
艶やかな怪物の唇の奥で、まりさの唇は咀嚼され、また飲み込まれてゆく。

「・・・・・・んふ。やっぱりまりさはおいしいわぁ。おもったとおり、妬ましい」
「でもまだまだおわりじゃないわよ?まだまだまりさをあじわいたいもの」
「さぁ、がんばってね、まりさ。そしてわたしに、そのひめいをもっときかせて」





髪を抜かれた。
麺を啜るようにして、怪物はまりさの髪を食べてゆく。
まりさは絶叫する。

頬を剥がされた。
少しずつ味わうように、怪物はまりさの頬を噛み切っていく。
剥がされた頬からまりさの絶叫が迸る。

舌を抜かれた。
一気にむしゃぶりつき、怪物は勢いよくまりさの舌を飲み込んでゆく。
声にならない絶叫のような音をまりさは発する。





そして、今。
最早まりさに声を出す気力など存在していなかった。
襤褸雑巾ですらここまではないと言うほどに、まりさは嬲られ、消耗している。

「・・・・・・そろそろおしまいかしら?とてもたのしかったわ、まりさ」

怪物がそう呼びかける。
開かれたまりさの右目はただ震えてその深緑の双眸を見つめるだけ。

「・・・・・・ねぇ、まりさ。あなたがわたしをおいていかなければ、こんなことにはならなかったのに」

まりさは答えない。
そんな体力はまりさには無い。いや、それは問題ではない。それより大切なことがある。
まりさの心は既に死んでいた。答えられるわけが無い。

「あなたはこうかいしてる?わたしはこうかいしてないわ、まりさ」

怪物は両の手を使ってまりさを掻き抱く。
その胸に抱きこまれたまりさの左眼窩から、餡子がほとばしる。

「だって、こんなけつまつをむかえられたんですもの。これでまりさはわたしのもの。だれにもわたさない」

両の手に込められた力が強くなってゆく。
傷だらけの顔面を胸に押し付けられたまりさは、徐々に歪に変形してゆく。

「これであなたとわたしはひとつになるの。・・・・・・さようなら、まりさ。愛していたわ」

直後。
行き場を失った餡子が、まりさと言う風船を割って、弾けた。

降り注ぐ餡子を受け止める怪物の表情は、恍惚そのもの。
恐らくは絶頂すらも経験しているのではないだろうか。





やがて餡子の雨が止んだとき、そこにいるのは美しく、そして哀れな一匹の鬼だった。

「・・・・・・ふ、ふふ。ふふふ・・・・・・うふふふふ・・・・・・」

何処からとも無く聞こえてくる声。
鬼の口から漏れ出るそれは、地獄の響きにも、乙女の唄にも似ていた。

「ふ、はは・・・・・・あはは・・・・・・!あははははは・・・・・・っ!!」

止まらない。
哄笑は止まらない。
月夜の橋の上で、鬼は一人、孤独に、優雅に、そして悲しく哂う。

「あはははははははははは・・・・・・っ!!!!!あははははははははははははははははっ!!!」

この世の中で真に恐ろしいものとは一体なんだろうか。
類稀なる力を持った鬼?違う。
夜の闇を乗り越え忍び寄ってくる妖怪?それも違う。

覚えておくといい。それは、嫉妬だ。
「嫉妬は緑色の眼をした怪物で、人の心を餌食にして弄ぶのです」と、とある劇作家は書いたそうだ。
橋の上で哂うこの鬼もまた、最も恐ろしい怪物にその心を喰われた者に過ぎない。

「あはははhはははハハハハハハhあはあハハハあああgはgはがアアアハハハああああハハハハハハっっっっ!!!!!」



ふと、鬼の頬に一筋の血涙が流れた。
その理由を鬼は知らない。
ただ哂いながら哭くその鬼は、酷く滑稽にも、悲しくも、そして美しくも見えた。










「実験はほぼ成功だよ。
 完全な四肢の形成、知能の異常な上昇、そして変異は最小限・・・と。
 ここまで変質が良い方向に発揮された例は初めて見るよ。まさに奇跡といっても良い」
「・・・・・・・・・」
「できれば継承個体として彼女の子供を調べてみたかったんだが、それは無理なようだね。
 我が子を取り込んだと言うのもこの事例の面白いところだよ・・・・・・あるいはそれこそが重要なのかな」
「・・・・・・・・・」
「残念ながら変質のメカニズムは最後まで解らなかったが、今回の結果で一つ言える事がある。
 この薬も、使いようによってはあのような進化とも言えるものを促すと言うことだ。
 今後は成分を徹底的に調査し、変質の安定化を計ることにしよう」
「・・・・・・正直、後悔している」
「あのありす、いや、今となってはあの外見はどう見てもぱるすぃ・・・・・・の事かい?
 君が気にする必要はないと思うよ。彼女は彼女なりに目的を果たしたんだ」
「・・・・・・悪いが、俺はお前の事を嫌いになりそうだよ」
「それは困る。僕はキミの事が好きなのでね。キミに嫌われたら悲しくて死んでしまうかもしれない。
 大丈夫だよ。彼女にはキミや、他のゆっくり達がついている。彼女が道を踏み外しそうなら、キミ達が導いてあげれば良い。
 ・・・・・・それに、なんとなく彼女の気持ちもわかるんだよ。僕も一応女だからね」
「・・・・・・わかるとは、何が?」
「自分を捨てられた悲しみ。そして捨てた相手が幸せになっていることへの嫉妬。ああなっても不思議じゃない。
 ・・・・・・柄にもないと思うかい?研究の事しか頭に無い僕が、色恋を語るだなんて」
「・・・・・・いや、思わない。・・・少しだけすっきりした、ありがとう」
「どういたしまして。・・・・・・ところで報告を見る限り、まるで宇治の橋姫伝説を再現しているようだね」
「・・・・・・お前はまたそういう事を言う。少しは俺に気を遣ってくれ」
「いや、すまない。・・・でもね、キミの演じた役割は一体なんだと思う?」
「・・・・・・貴船の神様だな」
「その通り。まるでゆっくりにとって人間達は神様とでも言うべきなのかね、この場合は。・・・正確には、人間以上も含めてだけど」
「やめてくれ。そういうのは好きじゃない」
「・・・・・・今度のデートは取り止めにして、旅行に変更しようか。行き先は貴船神社。
 丁度彼女の縁結びも兼ねて。キミなら僕を連れて行くことが出来るだろう?どうだい?」
「・・・・・・ああ、そうだな。デートとか旅行とかと言うところがちょっと気になるがいいだろう」
「やたっ。彼女にも良縁を用意してあげなくてはね」










今日も橋の上で一人、ありすだったものは立っている。
その視線の先は森の中。幸せそうなゆっくりを見つけ出し、殺すのだ。
何故殺すか?簡単だ。憎いから。妬ましいから。

近寄る者は片っ端から殺した。
捕食種だろうと被捕食種だろうと大差ない。全て皆平等に屠ってきている。
唯一の例外は仲間であったはずの男の飼いゆっくり達。だがそれでも、もう馴れ合う気は起きなかった。

今日も上空を心配そうに見回る影がひとつ。ふらんだ。
ここ最近、心配して姿を見に来てくれるらしい。
頭が垂れる思いだが、今となってはありがた迷惑にしか感じなかった。

何故この橋の上に立ち続けているのかと問われれば、答えに詰まるだろう。
解るはずも無い。かつてありすが抱いた思い出を、今も手放したくないと心の何処かで思っているなどと。

最早手に入らない幸せを、必死にもがいて手に入れようと足掻くこの滑稽さ。
だがそれでも止められない。過日の幸せに縋るしか彼女には残されていないからだ。
あるいは今からでも遅くないのに、頑なに彼女はそれを拒んでいる。

今日もまた一組、幸せそうなゆっくりの番を見つけた。
途端に燃え広がる嫉妬の炎。
双眸に照らされた深緑が、また一段と深みを増した。

幸せそうな二匹の笑顔が、恐怖に引き裂かれるときにだけ、ほんの少し彼女の炎は弱まる。
それも長くは続かない。またすぐに獲物を待ち構える日々が続くのだ。

今日も橋の上で一人、ありすだったものが立っている。
見つからない幸せを探すかのように、爛々と開かれた瞳に映るのは深い深い翠の色。
嫉妬という名の怪物に取り込まれた哀れな犠牲者は、来る筈の無い幸せを待ち続けるのだ。










<了>









―――――
あんまり書き溜めていない書き溜めです。おはこんばんちは。
元ネタは作中でも言われていた通りの「宇治の橋姫伝説」とタイトルから「鉄輪」のミックスです。
アリスとパルスィって似てるよね。外見とか五寸釘とか。そう思って書き始めました。
意外と原作キャラの元ネタは面白い話が盛りだくさんなのでネタにしやすいです。
あと橋姫って鬼とかの一種とも取れるんですね。酒呑童子とか茨木童子とか。「鬼切」とかも橋姫を斬って名付けられたらしいし。
そんな鬼どもを倒しまくる頼光四天王マジ人外魔境。

ちなみにこのあと、ぱるすぃはけーねやすいか、ゆうぎと大激闘を繰り広げたり
見るに見かねたお兄さんから差し向けられたみょんに討伐されてデレるなどといった展開がありますが、めんどいのでパス。
虐めというかバトルものになっちゃうしね!

書いてる途中「緑眼のジェラシー」聴いてたらなんかテンションが嫌な感じに上がって書いた。
あと、思いっきりネタ被りしてしまったことが痛いです。その代わりこんなダラダラと書いたんですけど。
ネタは思い浮かんだらすぐ書けって事ですね。
あーぱるすぃを抱きしめてクンカクンカスーハースーハーしたい。

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最終更新:2022年05月19日 12:51