※注意事項は6話までと同じです ご参照ください





【ばぁいおぅはざぁど ゆっくりぃ ふぉうぅ…】

          (8)

“カタカタカタ、チーン!”

「みょっ!?」

気が付くと桟橋近くの小屋の中にミョンはいた。
桟橋から魚を撃とうとして湖に発砲していたら、
その音を聴き付けた大亀に飲み込まれてしまったのだ。
何という卑劣な罠であろうか…。

「お魚さんは諦めて湖を渡るしかないみょんね…」

渋々諦めて先に進む事にするミョン。
ボートを操作して対岸を目指していく。
不気味に静まり返った湖面を半ばほど進んだ頃だろうか。
ボートの真下に水中から影が浮かび上がってきた。

「みょわっ!!?」

直後、船体に強い衝撃を受ける。
何とか振り落とされずに済んだが、ボートの先端にあった錨が沈んでしまった。

「みょっ!? 引っ張られてるみょん!」

安心したのも束の間、沈んだ錨が亀の体に喰い込んでしまった様だ。
錨とボートの先端はロープで繋がれており、ボートを亀に引っ張られているのだ。
慌ててロープを切ろうとしたが、少し鋭い木の棒などでは斬れる筈も無かった。

「倒すしかないみたいだみょん!」

こうして、亀に引っ張られているボートの上という不利な戦いが始まった。



「駄目だみょん! 揺れて狙いにくいみょん!」
「スネーク! 亀相手に普通の武器では歯が立たないぞ!
ボートに備え付けられている銛を使うんだ!」
「無理だみょん! 重くて投げられないみょん!」
「ならば発射台を使うんだ! 固定すれば銃弾の要領で打ち出せるだろう!」
「了解だみょん!」

手持ちの銃(木等を組み合わせた銃の様な物)に銛を載せて簡易発射台を作る。
どうして揺れるボートの上でゆっくりにそんな事が出来るのかは考えてはいけない!

「喰らえだみょん!」

ボウガンの様にバネ仕掛けで発射される銛。
放物線を描いて飛んでいくが、亀の甲羅に当たって弾かれてしまった。

「なんて硬い甲羅だみょん!」
「やはり甲羅に攻撃しても無駄か! 脚や尻尾という甲羅以外の部分を狙うんだ!
狙いにくいが頭を狙えば効果的な筈だ!」
「大部分が甲羅で覆われているなんて反則だみょん!」
「泣き言をいっても仕方あるまい! パロディである以上、同じ相手は許されない!
そして、登場させたからには整合性も取らなくてはいけないのだ!」
「一体何の話だみょん!?」

大佐の謎の言葉に気を取られている内に、湖面に浮かぶ流木にぶつかってしまった。

「ゆわっぷ!?」
「大丈夫か、スネーク!? ボタン連打で泳ぐんだ!」

流木に当たって衝撃で、ミョンはボートから湖に投げ出された。
ミョンは訓練によって水への耐性を付け、舌を使って泳ぐ事も出来るのだが、
やはり水中では思う様に動けない。
何とか水面をもがきながら進んでいくが、殆どスピードが出なかった。

「わぷっ、ゆぷっ!!」

息を吸い込んでから口を閉じる事で水面に浮き袋の様にして浮かび、
舌を隙間から出してオール代わりにして進むのだが、
徐々に空気が漏れ、嫌でも水を飲み込み、水を吸収して体が重くなっていく。
やがて、ゆっくりである己の体に限界が訪れ、段々と沈んでいった。

「も、もう駄目だみょん…」
「諦めるな! 船まで後少しだぞ!!」
「もっと…、ゆっくり…、したかった…。 ゴボゴボゴボ…」
「スネーク! まだゆっくりするんじゃない! スネーク、スネーク!!」

水中へと沈み行くミョンの体を、大亀が丸呑みにして潜っていった…。

You Are Dead ...



“カタカタカタ、チーン!”

「ごほっ、ごほっ! もう水泳は勘弁して欲しいみょん…」

再び小屋の中に戻されたミョン。
心なしか体がふやけている気がするが、きっと気のせいだろう。

「思っていた以上に難関だみょん…。
引っ張られているから注意しないと流木にぶつかってしまうみょん…。
湖に投げ出されたらもうどうしようもないから気をつけないと…」
「スネーク、それならば体にロープを巻いておき、船に括り付けておけばどうだ?」
「なるほど! それなら投げ出されても縄を引けばすぐ戻れるみょん!」

確かにこの方法は有効だったが、亀を倒す事自体には影響しなかった。

「みょ!? 亀が水中に潜って消えたみょん!
ミョンに恐れをなしたみょんか!?」
「スネーク! 後ろ、後ろー!」
「………? 何もいないみょんよ?」
「だから、スネーク! 後ろ、後ろだー!!」
「大佐、さっきから何の冗談だみょん!?」
「いや、コントの話ではなくて後ろにだな…!」
「後ろには何もいな…、ゆぎゃあああああああっ!!?」

現れては潜り、現れては潜りを繰り返した亀は、密かにミョンの後ろに忍び寄っていた。
それにミョンが気付いた時にはもう遅い。
亀の大口がミョンをボートごと飲み込んでいった…。

You are Dead ...



“カタカタカタ、チーン!”

もう何度この音を聞いたか分からない位戦い続けている。
(何度目か分からないのは3以上数えられないからという理由もある)
水中に潜り暫く姿を消して、遠くから口をあけて突進してきた時は、
余りの恐怖に狙いが定まらず、そのまま飲み込まれてしまった。
辛うじて倒しかけたものの、亀とボートを繋いでいたロープが体に巻きつき、
斬る事も出来ず一緒に湖の底に沈んだ事もあった。
緊張の余り、ボートに乗ろうとして脚を滑らせて溺れて終わった事もある。
これほど失敗続きでは、最早、詰みゲーの域である。
失意で放心状態のミョンは歌いだしてしまった。

「♪気が付いたら~ 同じ面ばかりプレイ~ そしていつも同じ画面で終わる~
諦めずに~ 何度も亀に挑戦するけど~ すぐに食べられて終わるよ~
命綱があれば~ 楽にボートに戻れるけど~
何回やっても何回やってもあの亀さん倒せないよ~
あの突撃何回やっても避けれない~
後ろで構えて~ 撃ち続けても全て甲羅に弾かれる~
コンティニューも試してみたけど難易度最低で下がらない~
だから次は絶対勝つ為に~ ミョンは作戦だけは最初に考えておく~」
「♪倒せないよ~」

大佐もノリノリでお歌を歌っている。




“ティウンティウンティウン・・・”

何だか、ゲームオーバーの音楽までソレっぽくなってきたところで変化が訪れた。
何度も空しい挑戦と馬鹿な事を繰り返している内に、
最初にレジ(タイプライター)を鳴らした日付から7日経過してしまったのだ。
(何度もやり直しになっているミョンにとっては時間経過は無いのだが)
それは、幾度も戦いを挑む中、ミョンと大亀の間に奇妙な友情が生まれ始めた頃だった。
いつもの様に諦めずに大亀に挑戦しようと湖に漕ぎ出たミョンは、
湖面に浮かぶ何か大きな物の姿を発見した。
何だろうと思って近づき、その正体にミョンは驚愕した。

「大佐、大亀を発見したみょん。 永遠にゆっくりしている」
「どういうことだ?」
「老衰…、じゃないかしら?」
「戦いの最中に寿命が尽きたという事か」
「ええ…」
「スネーク、君の勝ちだ」
「…そうは思えないみょん」
「奴はミョンとの戦いを望んでいたみょん。
だがミョンは奴を裏切り…」
「スネーク、何を言っている? これは任務だ。
決闘でも、ゲームでもないんだぞ」
「ゲームだとは思うわよ」
「トーホーで金バッジでも狙ってるつもりか?」
「ああ、そうみょんね…」
「任務を遂行することだけを考えるんだ」
「…了解」

通信を切り、亀の遺骸に向き直るミョン。
戦友に、そして良き好敵手に別れを告げ、ミョンは対岸目指してボートを進ませた。

「何で私が復帰したのに誰もコメントしないのよ!!」

ユユコ・ハニガンの叫びが湖面に空しく響いた…。



対岸へと無事辿り着いたミョンだったが、突然眩暈に襲われた。
戦闘があった訳でもないのに何事かと思ったのも束の間、
今度は喉が詰まった様な感覚に咳き込むと、少量だが餡子を吐いていた。
歪む視界、ふら付く足元、何とか手近の小屋に入り込んだが、
そこで意識を失って倒れこんでしまった。
一体ミョンの身に何が起きたのだろうか…?

Capter 1-3 END ...



……………。

ミョンとの通信が再び途絶えた。
少量とはいえ餡子を吐く程の自体、ミョンの体を蝕むモノは何か?
このままミョンは目覚めないのだろうか…?






【長らくお待たせしました。
ゲーム以上の強敵っぽい大亀でしたが、原作が老亀という事でこの勝利方法です。
散々引っ張っておいてがっくり来た方もいらっしゃるでしょうが、
前回の投稿から7日以上空けているという小細工に免じて許してください…。
実際のデルラゴですが、オオサンショウウオですので甲羅はありませんし、
頭でも体でもどこを攻撃しても大丈夫です。 ご安心ください。

こっそりハニガンを復帰させましたが、今後も大佐は友情出演するかも知れないです。
復帰するのは次回でも良かったのですが、元ネタではもう一人会話に参加するので
あえて今回で復帰させました。

ただ、漸く1-3終了なので、これからは省く所を増やさないと駄目ですね。
通常のザコ戦等は省かないと終わりが見えそうにありません…。



しかし、これは本当に虐待話と言えるのだろうか…?】

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最終更新:2022年05月21日 21:50