※ゆっくり膨らんでいってね!



ばきゅーむぷくー



「ゆゆーん、あかちゃんたち~ゆっくりうまれてねー♪」
「もうすぐ産まれるのか?」
「ゆっ、お兄さん!そうだよ、れいむのかわいいあかちゃんだよ!」

こいつは俺の飼ってるれいむ。
ご近所のまりさとすっきりし、4匹の子供を茎にぶら下げている。
赤まりさとは週一に会う程度の関係だったのだが、よほど気に入ったのだろう。

「しかし何でまた茎で妊娠したんだ?」
「ゆーん、あかちゃんはたくさんいるほうがゆっくりできるでしょ?」

こっちはお前だけでも手一杯なのに、そんなにポコポコ増やされたら破産する。
なので実は赤ちゃんにもなってない、実の状態で5粒ほど間引いているのだが…

「それでも4匹か…」
「ゆーん?」

何とも幸せそうなれいむ。
まりさ側の飼い主には妊娠形態を伝えていないので、一匹だけにしてから胎生でしたと言うつもりだったのだが。

「まさか一晩でさらに3匹も増えるとはな」

俺は深夜のうちに1粒だけ残して子供を間引いた。
だがまさか間引いた部分からまた実が出来るとは思わなかった。
実の頃は植物の実を千切っているようで気にならないが、ここまで大きくなると流石に気が引ける。
こんな時は虐待お兄さんとやらが羨ましい。



ふと気が付くと茎が揺れだした。
まだ産まれるわけではないが、赤ゆっくりにも意識があるのだろう。

「動いてるな」
「ゆっゆーん!まりさとれいむのあかちゃん、ゆっくりしていってねー♪」

まさに親バカ。
しかし気になる点が一つ。

「なぁれいむ、お前の頭に近いれいむの方が大きいよな?」
「ゆっ!?ゆー…たしかにそうだね、でもみんなれいむのかわいいあかちゃんだよ!」

茎に近い方が栄養、つまり餡子が多く流れるんだろう。

「ふーん、でもさ、このまま産まれると明らかにれいむの方が大きくなるな、れいむより小さいまりさとか(笑)」
「ゆゆっ!おにーさん、わらいはやめてね!ゆっくりできないよ」
「すまんすまん、ただまりさは大きくて頼りがいがある、れいむは小さくて守ってやりたくなるものなんだけどなぁーと思ってさ」

別に馬鹿にしたつもりはない、本心からそう思っていた。
れいむも『守ってやりたくなる』に反応したのか、まんざらでもない顔だ。
しかし茎にぶら下がる赤まりさは違った。

「……ゆっ!」
「ゆっ!?あかちゃん、ゆっくりしていってね!」
「ついに喋れるようになったか、それも『一番小さい』先頭のまりさが喋るとか、やるな」



「……ゆゆゆっ!ま、まり…」

本来はまだ喋れる程のサイズではないのだろう、無理に喋っているせいか、かなり辛そうだ。

「あかちゃん、むりしちゃだめだよ!ゆっくりしてね!」
「まりしゃは……ちいしゃく……なんか……ないよ」
「そうだよ、あかちゃんはちいさくなんてないよ!」



「いや、姉が根元で餡子を吸うんだから、小さいだろ」



…何故か真顔で突っ込んでしまった。
気まずそうにれいむと赤まりさの顔を見ると、それはもうトマトかと思うほどに顔を真っ赤にして震えていた。

「おねーしゃんがまりしゃのあんこしゃんを!よくもぉぉぉぉぉおおお!!」
「あかちゃんゆっくりしてね!おねがいだからゆっくりしてね!」




「ぷくーっ!」




ぷくーっ。
それはゆっくりが持つ威嚇のポーズ。
顔をいっぱいまで膨張させる事で、相手よりも自分の大きく見せ、戦う事無く追い払う手段。
当然威嚇に使うものだが、時として自分の感情を表す、つまり怒っている事を意味する時がある。
まさにこの赤まりさのぷくーっ!は『いま、まりさはものすごくおこってるんだよ!』を意味する。

「やめてね、やめてね、ゆっくりできないよ!」
「しょうがないな…」

俺は赤まりさの頬を軽く指で押さえた。
すると赤まりさは『ぷひゅるるるー』と言いながら縮んでしまった。

「ふぅ、おにーさんありがとう!」
「いや、別に構わな…っておい!」

指を離した途端に、赤まりさはまたもぷくーっ!を始めてしまった。
赤まりさ以外の赤ゆっくり達は、赤まりさの執拗なぷくーっ!に恐怖し、萎縮していた。
このままでは他の子供に悪影響を与えるかもしれない。

「おにーさん、どうしよう!このままじゃほかのあかちゃんたちがかわいそうだよ!」
「ってもなぁ…まりさだけ千切るか?」
「なにいってるの!ばかなの!」
「でもこのままだとなぁ」

そうだ!
頭に豆電球の浮かんだ俺は、隣の部屋からセロテープを持ってきた。

「こいつでまりさの口を塞げば膨らまないだろ」
「ゆぅ…かわいそうだけどしかたないね…」

先ほどと同じように指で頬を押し込む。

「ぷくーーー……ぷひゅるるるる…やめちぇね!まりしゃはおこっちぇ……むぐぐぐー!」

縮んだところで口元をセロテープで留めてしまう。
これで空気が吸えなくなったからぷくーっ!は無理だろう。

「……呼吸は……鼻はないけどどこからか吸うだろ、基本饅頭だし」

少し心配ではあったが、本当に大丈夫だった。
しばらく眺めていたが苦しそうにしている様子もなく、皮から空気を取り込んでいるようだ。
いや、そもそも空気が必要なのだろうか?

「さて、晩御飯の用意をしてくるかな」
「ゆーん、おにーさん、れいむははんばーぐがたべたいよ!」
「んな高いもん出すわけねぇだろ」

そして俺は台所へと向かっていった。





「おにぃざぁぁぁぁぁあああああん!!」




ふと居間かられいむの叫び声がした。
俺は料理道具の片付けも適当に、れいむの元へと駆けつけた。

「どうしたれいむ?」
「おにいいざぁぁぁああん、まりさがぁぁぁぁ!」

ドアを開けるとそこには茎を生やした先ほどのれいむ、その先端にはぷくーっ!をする赤まりさがいた。

「何でぷくーっ!ができるんだ?と言うかこいつ…」

大きい、異常に大きい。
胎生妊娠かそれ以上のサイズになっている。
茎もかなりしなっており、赤まりさは床に着かんばかりの状態だ。

「…!!」

目を見開き、一生懸命威嚇している。
赤まりさの怒りはそれほどのものだったのだろうか、今では根元のれいむとは比べ物にならないサイズだ。
むしろ根元のれいむ達が干からびていた。

「おにーさん!あかぢゃんが、れいむのがわいいあがぢゃんがぁぁぁぁぁ!!」
「これは一体…まさか!?」

赤まりさと茎の接合点を凝視すると、そこは目に見えて流れて行く餡子が視認できた。
どうやら無理矢理ぷくーっ!をするために、空気ではなく餡子を用いて行っているようだ。
その餡子はもちろん母親のれいむから供給されるはずだが、母親と赤まりさの間には赤れいむ達が繋がっている。
そこからも多量の餡子を吸収しているようだ。

「凄いな…ぷくーっ!の意地と言ったところか」
「がんじんじでないでなんどがじでよぉぉぉぉぉ!!」

ふむ、何とかしてやりたいのは山々だが、ここまでされると赤まりさを茎から千切るしか手はないだろう。
何よりこのまま放っておけば、他の赤れいむは干からびて死んでしまう。
これは赤ゆっくりの数を減らすチャンス!!

「…ダメだな、このまりさを切り離す以外に手はない」
「じゃあざっざとやっでよぉぉぉぉ!」

『バシッ!』

「ゆべぇッ!」

俺はれいむの頬を若干強めに叩いた。
その際に一番赤まりさに近い赤れいむが茎から取れた気がしたが見なかった事にした。
もう枯れてたし。

「お前は子供を見捨てるようなゲスゆっくりだったのか!」
「ゆ、ゆぅ…」
「このまりさは今、必死に生きようとしているんだ!それを殺すのか!」

今まで甘やかしてきたれいむにとって、初めての怒号だ。
それはもう怖いなんてものじゃないだろう。
何よりれいむ自身、赤まりさを見捨てようとしていた事を思い知らされたようだ。

「でも…このままじゃほかのあかちゃんがゆっくりできないよ…」
「他の子供もお前の子供だ、これから必死に生きようとするさ」
「…おにーさん」

そんなわけない。
一番赤まりさに近い赤れいむはもう床で完全に干からびている。
二番目の赤れいむも、もはやビニールハウスの苺狩りで見かける、茶色に腐りきった苺にそっくりだ。
根元のれいむに至っては、目が窪み息も絶え絶えの状態。

「ゆっ…ゆっ…ゆっ…」
「あかちゃん!?ゆっくりしてね!」
「なっ!?」

これには俺も驚きを隠せなかった。
もはや眼球もなく、ただ干からびて行くだけの赤れいむが喋りだしたのだ。
こんな窮地になってからじゃなく、もっと早く喋れよと言いたいが。

「もっと…ゆっくち…した…ゆぺっ!」

突然、時世の句すら言わせてもらえずに平らになってしまった。
さもストローで中身を吸われたかのごとく。

「……!!」

茎の先端を見ると、さっきよりさらに一回り大きくなった赤まりさがいた。
どうやら根元のれいむが喋った事により、苛立った赤まりさがさらに大きなぷくーっ!を行ったようだ。
その衝撃で全ての餡子を吸われてしまったのだろう。

「…れいむ、さっきの発言取り消すよ」
「ゆゆっ!?どういう事!」
「たった今、お前の赤ちゃんは全滅した」
「ゆ……ゆぎゃぁぁぁぁぁああああ!」






それから数日して、お相手のまりさの飼い主がこの赤まりさを欲しいと言ってきた。
俺は金銭的な意味もあり困っていたため、ここぞとばかり赤まりさを手放す事に承諾した。
れいむはと言うと…

「ゆーんゆーん、おかーさん、ゆっくりしようねぇー♪」
「ゆぐぅ…」

れいむにとっては大事な子供であり、同時に他の赤ちゃんを枯死させた張本人。
愛情と憎しみが交差する微妙な子育てであった。

「と言うわけで、そのまりさを引き渡す事になりました」
「ゆっ!?やだよ、まりさはおかあさんとはなれたくないよ!」
「どうするれいむ?」
「うん、わかったよ…まりさはむこうでゆっくりしていってね…」
「おかーさん!?どぼじでぞんなごどをいうのぉおぉおおおおお!」

れいむはもう疲れていた。
できるなら他の子供の仇を討ちたい、しかしこの子もまた愛する子供である。
そんなジレンマに耐えれなくなり、赤まりさの寄贈を承諾したのだ。

「よーし、じゃあまりさはこの箱に入ろうなぁ♪」
「いやだよ、おかあさん!たすけて!まりさはおかーさんといっしょがいいよ!おきゃーさん!おきゃーしゃん!おきゃぁーしゃぁぁぁあああ!?」




「………ぷくーっ!!」




悩みに悩んだ末にれいむが出した最後の挨拶。
それは今回の騒動を引き起こしたゆっくりへの威嚇。
力いっぱい膨らんだ威嚇。
ゆっくり最大の威嚇であり、怒りの表現。




ぷくーっ!だった…






あとがき

いかん、虐待とまではいかないにしろ明らかにお兄さんの性格が前半後半で変わってきてしまった…
正直名前のないキャラは扱いにくい…かと言ってオリキャラを出すのもちょっとなぁ。





ゆっくり信仰していってね!
ゆっくり新技術を導入していってね!
ゆっくり体調管理をしていってね!
虐待理由
協定
ゆっくりの能力を得たお兄さん
ゆっくり並列宇宙の旅
ゆっくり名言集
胴付戦隊ゆっくりじゃー
げすとじじいと吹雪の日
ゆっくり地球を守っていってね!_前編



おまけーね

「なかなか立派なぷくーっ!だったな」
「おにーさん…れいむはもうわからないよ…」
「確かに他の子供を殺した張本人であり、大事な子供だからなぁ」
「どうしてこんなことに……ゆゆゆゆゆっ…」

ずっと平和で悩みもなく暮らしてきたれいむにとっては辛い事件だったな。
初めての出産がこんな結果じゃ。
俺の可愛いれいむ、今日くらいはいつもより可愛がってやるか。

「よし、今日はハンバーグにするか」
「ゆゆっ!?はんばーぐ!?やったねおにーさん!ゆっくりしないではやくちょうだい!」

うわっ、なんかイラッときた…ハンバーグに辛子練り込むか。

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最終更新:2022年05月03日 23:31