「あ、ありすはありすのおちびちゃんとゆっくりしたいわ!?」
「そうか・・・おめでとう。君は更正プログラムを無事修了したよ」

男の予期せぬ言葉にありすは体を傾け、疑問符を浮かべた。
そして、意味が分からない、と男に話しかけようか迷うそぶりを見せた。
今、下手に質問したらまたお仕置きされるのではないかと葛藤しているらしい。

「もちろん、お前の子どものありす達も一緒だ」
「ゆゆっ、ほんとうに!?」
「ああ、お前の飼い主が戻ってくるまでこの施設の保護区で暮らすんだな」

男の言葉を聞いたありすは喜びのあまりに「ゆわーい!」と叫びながら飛び跳ねた。
それから、嬉しそうに体を揺らしながら歌を歌い始める。
久しぶりの再会を、ようやく訪れた平穏を待ちきれないといった様子で。

「ああ、でもその前に・・・」
「ゆっ!?・・・ゆぅ?」

男がおもむろに手を伸ばすとありすはとっさに身を強張らせ、目をきつく瞑る。
懐かしい浮遊感を感じたありすが恐る恐る目を開けると、彼女は男の右腕に抱きかかえられていた。
そして、彼女には見えなかったが、彼の左手には使い捨てのライターが握られていた。

「条例に則ってレイパーになっても害が及ばないようにしないとな」

男が素早く親指を動かすとライターに火が灯り、ありすの底部を焦がす。
一瞬、今までに感じたことのない感覚に彼女は呆然となるが、強烈な痛みによってすぐに意識を引き戻され、叫んだ。

「ゆぎゅああああああああああ!やべでええええええ!?あ゛、あぢゅいいいいいい!!?」

ついさっきまで幸せの予感に緩んでいた頬は、垂れ下がっていた目じりは、のほほんとした笑みは全て苦悶の表情に塗り固められている。
何とかその痛みと熱から抜け出そうと必死に身をよじり、底部や頬を動かすが、所詮はゆっくりの力。
抵抗もむなしく、ライターの火はありすの底部を後頭部付近からあご付近へ向けて、右へ左へと蛇行しながらゆっくりと進んで行く。

「ゆひぃ!い゛、い゛や゛ぁあああ゛ぁああ゛!?や゛っ、やべで、ゆ゛っぎゅぢぃいいい゛い゛いい!!?」

男は思わず耳をふさぎたくなるような彼女の絶叫をものともせず、淡々と底部を焼き続けた。

「はーい、動けないクソれいぱーの完成!」
「ゆひっ・・・ゆひぃ・・・」

痛みのあまりに涙で頬をふやけさせ、いまだに意識が朦朧としているありす。
男はそんな彼女の様子にかまうことなく、髪の毛を引っつかんで今日までありすの暮らした部屋を後にした。
わざと痛みを伴うように手を振りながら、まりさ種4匹が暮らしているスペースへと向かう。

「さあ、久しぶりのご対面だ!」
「ゆぶぅ!?」
「ゆゆっ!あ、ありす!?」

男はありすを乱暴に4匹の暮らす大きなケージの中に放り投げるとどこかへ去っていった。
が、今のありすにとってあの男のことなど瑣末な問題。
彼女にとって最も大事なこと、それは1週間ぶりに再会を果たしたまりさと3匹の子ども達のことである。

「まりさ、おちびちゃん・・・ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね、ありす!」
「「「ゆっくちしていってね!」」」

久しぶりに他の同属と言葉を交わしたことに、大好きなだーりんと成長した子ども達に会えたことにありすは感涙した。
近寄って行って頬ずりをしたい、頬に口づけをしてあげたい・・・そんな想いばかりが募ってゆく。
しかし、底部を焼かれたありすは跳ねることはおろか、男に放り投げられて床に横向きに倒れた姿勢から起き上がることすら叶わない。

「まりさ、おちびちゃん!ありすおきれないの!ゆっくりおこしてね!」
「「「いやだよ!まりしゃれいぱーなんかたしゅけたくないよ!」」」
「ゆゆっ!?」

ありすは思わずありもしない自分の耳を疑った。
今、すでに子ゆっくりサイズに達したまりさ達が口にした言葉が信じられないらしい。
彼女達はどこかきめぇ丸にも通じる、ありすを小馬鹿にしたような嫌らしい笑みを浮かべている。

「そ、そんなこといわないでね!あ、ありすはおちびちゃんのとかいはなままよ!」
「「「ままだって。おお、きみょいきみょい」」」
「ゆぐっ!ど、どうぢでぞんなごどいうのおおおお!?」

ありすの涙ながらの叫びもどこ吹く風。
助けようとする様子など一切見せず、遠巻きからニヤニヤ笑いながらずっと彼女の様子を伺っている。
ありすは彼女達に助けを求めることを諦め、今度はまりさに声をかけた。

「まりさ、ありすをゆっくりおこしてね!」
「ゆっくりりか・・・」「おかーしゃん、そんなれいぱーとゆっくちしないでね!?」
「そんなことちたら・・・まりしゃ、おかーしゃんのこときらいになるよ!」
「しょーだよ!れいぱーにちかづいたらちんじゃうよ!」

どうやらまりさには別れる前と同様にありすのことを気遣っているらしい。
一歩踏み出した所で子まりさ達に邪魔されたものの、心配そうな面持ちで彼女を見守っている。
もっとも、子まりさ達に嫌われることを嫌がって助けようとはしなかったが。

「よお、まりさ達。ゆっくりしてるか?」
「ゆゆっ!おにーしゃん、ゆっくりしちていってね!」
「「「まりしゃたちはいつもゆっくちちてるよ!」」」
「そうかそうか。でも、申し訳ないがこいつらも追加だ。しばらく我慢してくれ」

何の前触れもなくそのケージの傍へやってきて会話に加わったのはお面の男。
どうやら子まりさ達との関係は良好らしく、親のまりさも含めて全員が彼にゆっくりした笑顔を向けている。
しかし、その笑顔は男が手にした水槽の中にいるものの姿を目の当たりにした瞬間に消え去った。

「おにーしゃん、なにしょれ?」「ぜんぜんゆっくちできないよ!」
「しょーだね!なんだかぜんぜんゆっくちできないれいぱーだね!」
「ゆゆっ、おちびちゃんたちのしまいでしょ!そんなこといったらまりさおこるよ!」

水槽の中にいるものの正体は言うまでもなく異形に作り変えられた赤ありす達。
あるものは細長く伸ばされた上でとぐろを巻いた格好にされて、どこか前衛的なオブジェのようになっている。
あるものはピザのように平たく、あるものはシースルー、あるものは目が4つ、あるものは完全焼け饅頭。
かつて同じ部屋で幸福を分け合った赤ありす達の正視に堪えない姿を見て、彼女たちは顔をしかめた。

「ゆぐぅ・・・!ぜんぜんゆっくちできないよ!?」
「おにーさん、やめてね!ゆっくりできないものもってこないでね!?」
「ゆえーん!ごあいよー!ゆっくぢでぎないよー!?」
「お、おちびちゃんたち・・・」

まりさは子まりさ達の暴言を諌めようとするが、彼女もまた赤ありす達の姿を見て固まってしまった。
当然だろう。自分と同種の、それも血肉を、もとい餡子と皮を分けた子どもが常軌を逸した異形になっているのだから。
ぷるぷると震えながら、ゆっくりと水槽の中のものから目を逸らし、静かにつぶやいた。

「まりさ、おちびちゃんたちにゆっくりできないことをいってほしくないよ・・・」
「ゆっぐ・・・でもぉ、ゆっぐぢぃ」「でもぉ・・・」「ゆぅ・・・!」
「やべでね!ありずのおぢびぢゃんにひどいごどいわないでね!?」
「ま、当然の反応だよねぇ♪ 何にせよ、皆そこでゆっくりしてね!」

お面の男は子まりさ達の反応を一通り眺め、満足した所で赤ありす達を水槽からケージに移し変え、意気揚々と立ち去った。



ありす達は名称も知らない施設の、保護されたゆっくりを飼育するためのケージの中にいた。
ケージは飼い主の男性に与えられた部屋の半分ほどの広さしかないものの、一家全員が入るだけのスペースはあった。
バスケットボールサイズの成体ゆっくりはまりさとありすの2匹。
更にちゃんとした食事を貰えなかった為に成長できず、未だ赤ゆっくりのありす種が6匹。
もっとも、まともな球体をしていないものもいるので簡単にあれこれと比較できない状況ではあるが。
それとは対照的に十分な食事を貰えたおかげですくすく育ったまりさ種の3匹は子ゆっくりサイズに成長していた。
ありす一家11匹の1週間ぶりの再会。
なのに、家族の中で明るい笑みを浮かべているものは1匹もいなかった。

「ここからここまではまりしゃたちのおうちだよ!」
「ゆっくちできないれいぱーはこっちこにゃいでね!」
「きたらやっちゅけるよ!ぷくうううううう!」

まず、3匹の子まりさは1週間前までは普通に接していたありす達に異常なまでの警戒感を抱いていた。
彼女達をれいぱーと呼んで蔑み、近づくことはおろか話しかけられるだけでも不快感をあらわにする。
ありす達は彼女達の身に起きたことを知る由もなく、ただおろおろと狼狽するばかり。

「ゆ、ゆぅ・・・おちびちゃん・・・」

そんな子まりさ達を見ながら、本来彼女達を叱るべき立場にあるまりさも何も出来ず顔をしかめることしか出来ないでいる。
ありすと目を合わせては済まなさそうにするものの、口止めされているのか事情を話そうとはしない。
彼女の情けない姿にありすは少々苛立ちを覚えたが、男に酷い目に遭わされた経験が仕方のないことだと思わせた。

「ゆえーん、ぎょわいいいいいいい!?」
「どほぢぢぇいじわりゅぢゅるのおおおお!?」
「「「ゆえーん」」」

しかし、誰よりも哀れなのは想像を絶する拷問の後に家族から罵声を浴びせられる赤ありす達だろう。
何か落ち度があるわけでもなく、男に酷い目に遭わされた上にこれである。
抗議しようにも、反抗しようにも、まともに動けるものが殆どいない彼女達には可哀想な被害者ぶるのが精一杯。

「やめてね!かぞくでこんなの・・・ぜんぜんとかいはじゃないわ!」

ありすも必死に子まりさ達を叱り付けるが、彼女達はまったく言うことを聞く気配を見せない。
それどころか、「れいぱーはゆっくちできないね!」などと、自分達の罵詈雑言を棚に上げて大声を上げるありすを馬鹿にした。
どうやら、ありすはもはや母親ではなく、有害で危険でゆっくり出来ないレイパーでしかないらしい。

「ゆえーん、ゆっぎゅぢできにゃいよおおお・・・」
「おきゃーしゃん、ゆっくちー・・・」
「おちびちゃんたち、なかないでね!」

このような状況でありす種がゆっくり出来る筈もなかった。
子まりさ達の気まぐれで思い出したように罵声を浴びせられてはその都度ゆっくり出来ない気持ちにさせられる。
せめて母にすがり付こうにも、葛饅頭になった末妹と、4つ目の赤ありす以外はそれさえも叶わない。

「まりしゃはとってもゆっくちちてるね!」
「ゆぅ~ん!おねーしゃんもゆっくちちてるよ!」
「みんにゃでおうたをうたおうね!ゆ~ゆ~♪」

その一方で、赤ありす達をゆっくり出来なくさせている当人達はとてもゆっくりしていた。
数で勝るありす達を隅のわずかな空間に追いやった上で、ケージ内の大半を占拠しているのだから当然だろう。
ましてや、自分達より圧倒的に弱い存在が傍にいて好きなように出来るという事実は彼女達に暗い優越感を植え付ける。
言ってしまえば、新しい玩具を与えられたようなものなのだ。

「ゆぅ・・・しょーだ!ありしゅたちもおうちゃをうちゃうよ!」
「ゆゆっ!しょーだにぇ!ゆっきゅちうちゃおうね!」
「「ゆ~・・・」」「ゆっくりできないおうたをうたわないでね!ぷくううううう!」

理由なんて何一つ必要ない。
強いて言うなら、そこにありす種がいるから・・・ただそれだけのことである。
それだけの理由で、子まりさ達は赤ありす達を罵り、侮辱し、嘲った。

「ゆぐっ!ゆぴぇえええええええん!?」
「どほぢぢぇしょんのごぢょいうにょおおおお!」
「「うっひゅひぃ・・・」」

ようやく再会できたのに、その日は1日中ずっとこんな調子。
それでも、ありす達はきっと明日になれば元通りになると信じて、涙を堪えて眠った。



翌日。彼女達の期待に反して、子まりさ達の嫌がらせは徐々にエスカレートしてゆく。
昨日は言葉と威嚇だけで済んでいた赤ありす達への嫌がらせに、物理的な暴力が加わり始める。
最初に目を付けられたのはピザのように平べったくなってしまった三女ありすだった。

「まりしゃ、ぜんぜゆっくちちてないね!」
「しょーだね、ぜんぜゆっくちできないね!」
「そんなこといわないでね!おちびちゃん、ゆっくりいやがってるわ!」

自分達は構わないとばかりにありす達のスペースに侵入してきた子まりさ達は三女ありすを取り囲んでいた。
彼女は目も見えず、音もあまり良く聞こえないながらもゆっくり出来ない状況にあることだけは理解し、怯えてみせる。
が、今の子まりさ達にとって、彼女が恐怖に震える姿はとても愉快なものだった。

「いやがってるんだって」
「こんなのきょわいかおしてるだけだよ、ゆっくりりかいちてね!」
「おお、きょわいかおきょわいかお」

怯える姿すらも嫌悪感を催すほどに醜いといわんばかりに三女ありすを罵り続ける。
彼女は状況を正しく把握することすらもままならず、ただゆっくり出来ないことに恐怖し、めそめそと泣く。
子まりさ達はそんな甘ったるい匂いのピザが涙を流す光景を見ながら「おお、きもいきもい」と大笑いした。

「ゆゆっ!おもしろいこちょかんがえたよ!」

やがて、ただ罵るのに飽きた長女まりさが三女ありすの広がった皮の端を軽く踏みつけた。
飛び乗ったわけでもなければ、それ以上の何かをしたわけでもなく、ただ彼女の皮の端っこを踏みつけただけ。

「ふひぃ?!」

それは目がまったく見えず、聴力もあまり良くない三女ありすにとっては突然の苦痛だった。
何の前触れもなく薄く延ばされた皮を伝ってやってくる強烈な重みと痛み。
いつそれがやってくるかも分からないそれに恐怖し、まともに動かない口をもごもご動かして「ふぁえへへ」などとつぶやいている。

「ゆぅ、なにかふんぢゃったよー?」

今度は長女まりさを倣って次女まりさが三女ありすの右頬付近を踏みつける。
抵抗することもままならない三女ありすは「ふいぃ」と不気味な悲鳴を上げるのが精一杯。

「やめてあげてね!いたがってるわ!?」

彼女に代わってありすが叫ぶ。
しかし、昨日と同様に彼女の言葉は子まりさ達に何の影響も及ぼさない。

「ゆーきょわいよー、きょわくてにげようとちたらなんかふんぢゃったよ?」

それどころか彼女達を調子に乗らせてしまった。
わざとらしく怖がる振りをしながら、三女まりさが三女ありすの額付近に飛び乗った。
端を踏むだけの長女次女の時とは明らかに異質の痛みを受けた彼女の体から脂汗のようなものが噴き出し始める。

「ひゅひいいいいいいいいいい!?」

出せるはずもない声を絞り出して悲鳴を上げる姿はどう見ても可哀想な赤ありすではなく、おぞましい化け物。

「ゆえぇ・・・ぜんぜんゆっくちできないよぉ・・・」
「きょわいね、おねーしゃん」
「ちかたないね!こんどはほかのことゆっくちあそぶよ!」

本能的にこれ以上は危険だと感じ取ったのだろう、3匹は三女ありすから離れ、今度は全身を焼かれた赤ありすの方へと駆けて行く。
それから、話しかけても彼女が一切返事をしないことを確認すると、彼女を体当たりで転がしながら、自分達のスペースへと戻っていった。

「ころころ~」

何も見えない、聞こえない、感じない赤ありすをボール代わりにして遊び始めた。

「おねーしゃん、まりしゃにもちょーだいね!」
「ゆっくちあげるよ!」

そう言って長女まりさはボールを三女まりさにパスした。
彼女達の様子は同じおもちゃを一緒に使える仲良し姉妹といった風で、とてもゆっくりとしている。
・・・ボールがもともと彼女達の姉妹の焼かれた赤ありすでなければ、の話だが。

「まりしゃ、そっちにいったよ!」
「ゆーーーっ」
「すごくゆっくちはやいころころだね!」

子まりさ達が楽しそうにボール遊びに興じる傍らで、まりさはただ狼狽するばかりだった。
「おちびちゃんたち、やめようね!ゆっくりしようね!」などと弱々しく主張するものの、子ども達には完全に無視されてしまっている。
そんな彼女の醜態を眺めながらありすもまた、弱々しくため息をついた。

「ゆえーん、やめぢぇね!やめぢぇあげでね!?」
「ゆぴぇえええええん!ありしゅのおねーぢゃんがぁ!?」
「「ひゃふぇふぇへー」」

とりあえず目の見える赤ありす4匹のは一生懸命抗議の声を上げる。
すると、子まりさ達は赤ありすボールをに体当たりするのをやめ、ありす達の方に振り向いた。
ただし、その目は家族を見る目ではなく、次に遊ぶおもちゃを選んでいる目だった。

「「ゆっくちとんでね!」」
「ゆっくちとぶよ!」

2匹の子まりさが紐の両端を咥え、全身を使ってそれをぶんぶんと振り回す。
その力で紐が豪快に回転し始めると子まりさが何とか跳ねられそうなだけの空間的余裕が生じ、そこに残りの1匹が飛び込んだ。
いわゆる縄跳びであるが、縄は細長く伸ばされてしまった長女ありす。

「ぴょーん!ぴょーん!」

子まりさは器用にタイミングを見計らって飛び跳ねて赤ありすを避ける。
口でリズムを取りながら目で縄の動きを追いかけて、何度も何度も縄をかわしてみせる。

「ひゅひ!?ひゅぃ!?」

一方、振り回されている赤ありすは床に叩きつけられ、叩きつけられた後も床に擦り付けられる痛みが彼女を襲った。
その都度、自分の真上を子まりさの底部が通過して行き、いつ潰されるかわからないという恐怖感が襲う。
ようやく床から解放されたかと思えばゆっくり出来ない速さで振り回され、また床に叩きつけられる。
未だに中身が噴き出していないことが奇跡的な状況だった。



「よぉ、まりさとレイパー共。ゆっくりしてるか?」

赤ありすを用いた縄跳びは皮肉にもお面の男がケージのある部屋に入ってきたことで終わりを迎える。
子まりさ達の興味は男に移ったらしく、赤ありすを適当に放り捨てるとケージの端へと跳ねていった。

「「「おにーしゃん、ゆっくちちていってね!」」」
「はいはい、ゆっくりゆっくり・・・で、レイパー共は挨拶なしか」
「ふんっ・・・」

相変わらずいやみったらしい口調の男の嫌味を聞き流し、ありすはそっぽ向いた。
赤ありす達も彼女に倣って男に対する敵愾心を隠そうともせずにそっぽ向く。
すると、彼女達の態度に子まりさ達が憤った。

「ゆゆーっ!おにーしゃんにあやまれー!」
「しょーだよ!れいぱーはおにーしゃんにゆっくちちないであやまってね!」
「あやまらないとおこりゅよ!ぷくううううううう!」

どうやら、彼女達は男のことをたいそう気に入っているようだ。
男も彼女達のことを気に入っているらしく、そんな彼女達の頭を指で撫でると、美味しそうな餌を目の前に置く。
それから、お面越しにでも分かる邪悪な笑みを浮かべて、ありす達の方に見るからに不味そうな餌を放り投げた。
その一連のやり取りを見て、ありすは我が子の豹変の原因をようやく察知する。

「お、おにーさんが、おぢびぢゃんにへんなことをおしえたのね!?」
「変なこと?何のことだよ?」
「ありすはとかいはーのゆっくりしたありすよ!ゆっくりできないれいぱーじゃないわ!ぷんぷん!」

ありすの言葉を聞いた男は「何だそのことか」と事も無げにつぶやくと得意げに、かつ嫌みったらしく話し始めた。

「レイパー、つーかありす種全般はまりさ種を好むからレイパーに注意するように教えるのの何が変なことなんだ?」

本当に何が悪いのか分からないと言わんばかりの口調で。
それどころか正しいことをお前の子どもに教えてやったんだから感謝しろといわんばかりの態度で。

「でも、ありすたちはれいぱーじゃないわ!」
「うん、で? お前達が何と言おうとこの子達が怖がるんだからどうしようもないだろ?」

これまたさも当然のような口調で。

「ゆううううううううううううううううう!!」

そのあんまりな態度に憤りを隠せないありすが思わず唸る。
しかし、その行動は男には何の効果なく、代わりに彼の傍にいた子まりさ達を怯えさせてしまった。

「な、おちび共。ビデオで見たとおりだろ?とかいはのありす、なんて言ってるがアレが正体だ」
「きょわいよー」「ゆっくちできないよ・・・」
「覚えているか? あのレイプしているときの醜悪な顔を。産まれた子どもまでレイプするクソっぷりを」

この瞬間を待っていたと言わんばかりに、男は畳み掛ける。
自分の失敗に気づいたありすは急いで取り繕おうとするものの、男の怒涛の語りに割って入ることが出来ない。
もっとも、彼女が何を言った所で、今の子まりさ達を説得することは限りなく不可能に近いのだが。

「分かるか、まりさ達。ありすってのは皆どうしようもないクソレイパーなんだ」
「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」
「いや、ありすなんてのは嘘だ。あいつらの名前はれいぱーだ。ゆっくりありすじゃなくて、ゆっくりれいぱーだ」
「しょーだね!れいぱーだね!」

子まりさ達はありす種やまりさの狼狽をよそに、男の言葉を心底楽しそうに復唱する。
何度も何度も「ありしゅはありしゅじゃないよ!れいぱーだよ!」と男と一緒に大声で叫ぶ。

「ゆううううううう!おねがいだからもうやべでええええええええ!?」
「やだ」
「「「れいぱーはゆっくちだまってね!」」」

その時、ありすは不意に気づいてしまった。
子まりさ達の笑顔は1週間前と変わらず、どこまでも純粋であることに。
大好きなお兄さんに褒めてもらうために彼に同調しているに過ぎないということに。

「良く言えたな、ちびども!偉いぞ!」
「「「ゆっへん!」」」
「はいはい、なーでなーで」

男がそっと額に指を添えると、子まりさ達は心底嬉しそうに目を細める。
本来なら、ありすとまりさと飼い主の男性があの男のポジションにいたはずだった。
しかし、その座を男に奪われ、子まりさ達にとってのゆっくり出来ることが彼の色に汚されてしまった。

「んじゃ、俺は仕事に戻るわ」

3匹の頭を撫で終えた男はすたこらさっさと部屋から立ち去り、気を良くした子まりさ達は眠くなるまでありす達を罵倒し続けた。
彼女達が眠った後で、ありす達もゆっくり出来ない現実から逃げるように、ぐっすりと夢の世界へ旅立って行った。



「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「みゃみゃー!ゆっきゅちししゅぎだよ!」
「おかーしゃんはねぼすけしゃんだにぇ!」

翌朝、子ども達に起こされたありすが顔を上げるとそこには6匹の赤ありすと3匹の赤まりさ。
みんな丸々としていて、頬はつやつやで、金色に輝く髪がとても美しい。
間違いなく、ありすの良く知っている可愛らしい我が子の、仲良し家族の姿がそこにあった。

「ゆ~ん、いっぱいあそんだからおつかれなんだよ!」
「そうだな、昨日は遠くまで出かけたからなぁ」

声のした方を振り向くとありすの大好きな男性とまりさの笑顔があった。
一瞬、どうしてなの?と首を傾げるがその様子を見た男性とまりさも首をかしげる。

「どうした?」
「どうしたの、ありす?」
「ゆぅ?・・・ゆゆっ、なんでもないわ!」

が、今そこにある幸せの大きさに彼女の瑣末な疑問は流されてしまった。
まずはまりさの元へと跳ねて行き、彼女のもっちりした柔らかい頬に頬ずりをする。
まりさは一瞬恥ずかしそうに頬を染めながら身を引くが、まんざらでもなさそうな笑みを浮かべて彼女に身を委ねた。

「ゆゆっ!おきゃーしゃんだけじゅるいよ!」
「「ありしゅもしゅりしゅるしゅるー!」」
「「ゆっきゅちいしょぐよ!」」

すると赤ゆっくり達が一斉にありすとまりさと男性の方めがけて跳ねてきた。
先頭を走るのは3匹の赤まりさ。
みんな、まりさそっくりのとっても格好良くて強そうで元気いっぱいのゆっくりした子達だ。

「まりしゃがいちばんだよ!」
「ゆーっ!まりしゃまけにゃいよ!」
「ゆゆっ、まっちぇね!まっちぇね!」

負けず嫌いな彼女達は姉妹同士競い合いながら我先にと先頭争いを繰り広げている。
その後ろに続くのは長女と次女の年長組赤ありす2匹。
どちらもありすに負けず劣らずの可愛らしい都会派のレディーだ。

「ゆっくりー!ゆっくりー!」
「ゆゆっー!」

甘えん坊の次女ありすはわき目も振らずまりさ達を追いかけて両親の元を目指している。
その表情は真剣そのもので、一刻も早く母に甘えたいことを言葉よりもはっきりと示していた。
一方、彼女のすぐ後ろを走る長女ありすはしきりに後ろの様子を気にしていた。

「ゆぅ・・・ありしゅのいもーちょ、だいじょうぶかなぁ?」
「「ゆっくちちてりゅよ!」」
「いもーちょはいもーちょでもいもーちょのことじゃにゃいよ!」

どうやら第三集団の双子のことを気にしているのではなく、最後尾の2匹の心配をしているようだ。
最後尾の2匹・・・つまり、運動の苦手な三女ありすと皆より一回り小さい末妹ありすのことである。
とは言え最後尾の2匹もどこかに障害があるわけでもなく、少し運動が苦手なだけなのでいささか過保護のきらいがある。

「ゆゆっ、まりしゃがいちんびゃんだよ!」
「ゆふぅ・・・にばんさんだったよ!」
「ゆ~・・・さんばんだよ・・・」

そうこうしている内に、先頭集団の赤まりさ3匹がありす達の下に到着。
赤まりさ達はありすを見上げてにへらと頬を緩める。
彼女達のその笑顔を見て愛しさがこみ上げてきた彼女は何も言わず3匹に順番に頬ずりをした。

「ありしゅもちゅいちゃよ!」
「ゆっきゅちー!」

その後すぐに次女ありすと長女ありすが到着し、両親の傍へと跳ねてくる。
それから双子のありす姉妹や最後尾の2匹も無事彼女達の元にたどり着き、ありすの頬に口づけをした。

「ゆぅ~ん!とってもゆっくりできるわ!」

最高の笑顔を浮かべて、ありすは飛び跳ね・・・



底部が焼かれ飛び跳ねることが出来ないという現実を、容赦なく突きつけられた。
跳ねたつもりで床から1ミリも浮き上がっておらず、ずっと地べたに這いつくばったまま。
その現実を目の当たりにして、笑顔が一瞬にして悲しみで曇ってしまった。

「おねーしゃん、れいぱーがへんなことちてるよ!」
「おお、きもいきもい」
「れいぱーはちっともゆっくちできないね!」

そんなありすを遠巻きから眺めながら、子まりさ達は鬱陶しい笑顔を浮かべていた。
彼女達より二回りほど小さな、どこかで見たことのあるこんがり焼けたボールを蹴り合いながら。
どうやらそれが今の彼女達にとってのブームらしい。

「ゆあああああああああ!ありずのおぢびぢゃあああああああん!?」
「おねーしゃん、まりしゃにもぼーるちょうだいね!」
「ゆっくちりかいちたよ!」

ボールがやはり自分の娘であることを確認したありすの叫びを無視して、子まりさ達はボールに体当たりを繰り返す。
赤ありすはころころと転がりながら他の子まりさの方へと転がって行き、反対方向からの体当たりを受けて止まる。
皮が焼けてまともに喋れない状態の赤ありすが何を思っているか知る術はない。

「おねーしゃん、まりしゃにぼーるさんちょうだいね!」
1匹の子まりさがボールを持っている子まりさに向かって元気良く叫ぶ。
その声を聞いた子まりさはそっちの方にボールを転がす。
「ゆーっ!こんどはまりしゃにちょーだいね!」
ボールを受け取った子まりさも同様にボールに体当たりを食らわせて、また別の子まりさめがけて転がす。

「おねーしゃん、まりしゃにぼーるさんちょうだいね!」

1匹の子まりさがボールを持っている子まりさに向かって跳ねながら叫ぶ。
その声を聞いた子まりさはそっちの方にさっきよりも力強くボールを転がす。

「ゆーっ!こんどはまりしゃにちょーだいね!」

少し軌道の逸れたボールをちゃんと受け止めた子まりさも同様にボールに体当たりして、また別の子まりさめがけて転がす。

「おねーしゃん、まりしゃにぼーるさんちょうだいね!」

また1匹の子まりさがボールを持っている子まりさに向かって元気良く叫ぶ。
その声を聞いた子まりさが今度は軌道が逸れないようにボールを転がす。

「ゆーっ!こんどはまりしゃにちょーだいね!」

楽々とボールを受け取った子まりさもボールに体当たりを食らわせて、また別の子まりさめがけて転がした。

子まりさ達はボールを受け止め、助走をつけてボール、もとい赤ありすにぶつかるだけの単調な遊び。
しかし、子まりさ達はその単調な反復を飽きることなく延々と繰り返す。
この遊びは昼に男が餌を持ってくるまで延々と続けられた。
そして・・・・・・

「あ、そこの焼けレイパー死んでるな。おやつ代わりに食ってもいいぞ」
「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」

男の言葉に従って、3匹はろくに生死の確認をしないまま赤ありすを食べ始める。
赤ありすは徐々にその体積を減らして行き、数分後には影も形も無くなってしまった。
かつての姉妹を何の抵抗もなく食い殺す子まりさ達を見て、ありすは叫んだ。



「ゆがあああ!もうゆるざないよ!まりざだぢはずっどゆっぐりさぜでやるうう!」→ありす虐待エンドレス『まりさ』へ

「ありずだぢなにもわるいごどぢでないよ!どほぢでそんなごどずるのおおお!?」→ありす虐待エンドレス『母』へ

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最終更新:2022年05月21日 22:09