「まりしゃ!これからもずっとゆっくりしようね!」
生まれたときから一緒だった。
「まりさ!これとってもおいしんだよ!」
一緒に行動して一緒の物を食べた。
「まりさの髪ってとってもきれいだね!うらやましいよ!」
私の金髪が綺麗だといつもほめてくれた。
「まりさ・・・!がんばってかわいい子供をつくろうね!」
家族になることを決めたときから大家族を目指していた。
「まりさは狩りが上手だね!いつもごちそうありがとう!」
子供が生まれてからは持ち前の運動神経でたくさんの虫や木の実を巣に持って帰った。
「まりさ!だいすきだよ!」
いつも言ってくれた愛の言葉。いっつもいっつも。

私だって好きだった。愛していた。嫌いだったわけが無い。
確かに喧嘩もしたしそっぽ向いたりもしたけど傷つけたいなんて思わなかった。ましてや殺したいなんて思うわけが無い。
思ってなかったのに・・・見捨てた。私は自分の子供を、れいむを見捨てた。見捨ててしまった・・・!!!
それに嘘もついた。些細だったはずのその嘘はあの時、子供達にとって唯一の希望だった。
見られもした。顔を見られ、背中も見られた。


違うんだよ。違うんだって。別に嘘は・・・言ったけど・・・あの状況とは違ったから。
仕方ないじゃない・・!私がいてどうなったの?ただ一緒に食われるだけじゃない!助けられるわけが無かったんだよ!!
そんな目で私を見ても無駄!呼びかけても無駄!助かろうとすることが無駄!


じゃあ私が逃げたことは無駄じゃなかったの?


え・・・?なんで?なんでそういうことぉおおおおおおお!!!!
「無駄なわけないよおおおおぉ!!!そんなこと言わないでよおぉおおおおお!!!」




私とれいむは赤ん坊の頃から仲がよくいつも一緒に遊んでいた。
他の子とも遊んではいたけどお互い二人きりで遊ぶのが一番楽しかった。
遊んでいる途中に食べ物を見つけたりすれば二人仲良くそれを分け合った。
れいむは私の周りのゆっくりの中で唯一私の髪をほめてくれた。人間らしい感情だなどと馬鹿にされるかもしれないが
そのれいむの言葉は私の体にとても響いた。
ゆっくりという簡単な生き物にとってそういう縁は次第に愛へと変わっていく。
月日が流れるのは早く、私たちが成体へと育った頃にはお互いにそういう意識をし合っていた。
その後の展開は早かった。ご多分に漏れず、私とれいむも将来を誓い合う仲へと発展していた。
交尾、妊娠が終わりれいむの頭に子供が生り始めると私たちは将来の子供達とのゆっくりライフを語り合った。
子供は何匹欲しいだとか、巣はどこに作ろうかとか、人間達に対する意識の持ち方を教えてあげようとか。
突拍子も無い夢や目標を語る私にれいむはいつも微笑んでくれた。それは赤ん坊だった頃から変わること無い笑顔だった。

一ヶ月後、新しく新調した巣には元気な子供達が20匹程騒いでいた。
特別賢くもないが格段に馬鹿なわけでもない、ただ無邪気な子ゆっくり達を見て私は毎日癒された。
母親であるれいむは子供達の世話を必死にこなしていた。
好奇心に負けそうになり巣から出そうになる子供を止めたり、泣き止まない子供に歌を歌ってあげる等
その姿は正に母親の鏡だった。
一方の私はというとひたすら食料集め、狩りに力を注いでいた。
もともと運動は得意だったから普通のゆっくりよりも多くの珍しいごちそうを巣へと運んでいた。
私がそのごちそうの山を運ぶ度にれいむと子供達は目を輝かせて私とごちそうを交互に見比べたのだった。
おいしそうに虫や木の実をほおばる私の家族。
それを見るだけでもまた、私の狩りの疲れはスーッととれていった。

そう、私にとっては家族の幸せが何よりの食事だったのだ。そうだ。そのはずだ。
だからこそ私は体が泥だらけになってもおいしいごちそうを持ってきたのだ。ほらね。間違ってない。
そんな私をれいむはもちろんのこと、子供達も尊敬していた。当たり前だけどね。

「おとーさんはすごいなあ~。こんなにおいしい食べ物をいつもとってくるんだもん!」
「湖で遊んでた子達にまりさ達のお食事の話をしたらみんなだらだらよだれを垂らしてんだよ!」
「ねーどうしておとーさんはそんなにすごいの?」
子供達はいつも私に質問をしてきた。それは大きくなったら私のようになりたいという思いからきていたのだろう。
「ゆっ!それはね~」
軽い気持ちだった。別に信じてもそんな場面が実際にあるわけないとタカをくくっていたのだ。
「おとーさんはれみりゃ二匹をいっぺんに倒してゆっくりと食べことがあるからだよ~!」
「ほんとー!?」
「ゆぅぅ!!すごいよおとーさん!」
「れいむ今度友達に自慢するよ!」
「だめだよ!これを知られるとれみりゃが嫉妬してその子達を襲っちゃうかもしれないからね!この話は誰にも内緒だよ!」
「ゆぅ・・・わかったよ、おかーさんにもいわないよ!」
「誰にも内緒だよ!」
「ゆっ!みんな良い子だね!」
これでこの嘘は誰にもバレずに私は子供達からより多くの尊敬を集めることができる。
親ならば一度はやるであろうそんな行為。ただそれだけのちょっとした嘘だった。

あの日。
私はいつも通り巣からちょっと遠出し、子供達のためにごちそうを集めていた。子供達の為に。
夕方、捕食種も出てくるこの時間にまともなゆっくりは出歩いたりはしない。
だが、私は捕食種からも逃げ切れるだけの逃げ足を持っているのでこの時間ギリギリまで食事を集めていた。
それでももう日も暮れはじめている。ここが瀬戸際だ。
私は口の中いっぱいにごちそうを詰め込み家路につこうとした。そのときだった。あれは、私の5m程先を飛んでいた。
「「「う~う~かりかり~♪」」」
捕食種の代名詞ゆっくりれみりゃ。通称れみりゃ。我がままで団体行動がまともにとれないくせに他のゆっくり種よりも
攻撃性、腕力がある為に捕食種として幅をきかせている、正直腹立たしい生き物だ。
そんなれみりゃが・・三体?どうして?
野生のれみりゃなら一匹でも十分食事は確保できるはず。一匹で行動する方が手慣れているれみりゃが三匹とはいえ群れを作るなんて。
だがその時はそんなことは大して気にならなかった。
重要なのは彼らが私に気づかずにどこかに消えてくれることだった。
息をひそめてれみりゃが見えなくなるのを待った。
人でいう五分程だろうか。れみりゃ達は私の視界から完璧に消えた。
今日も生き残ることができた、緊張から解き放たれた私はふぅと一息吐いた。口の中から虫の足がひょっこりと出てくる。
ああそうだ、このごちそうを早く子供達とれいむに食べさせてあげないと。私も早く帰らないと。
木陰から這い出た私は再び家路につきはじめた。


      • ここで気づく。今私が進んでいる道。この道は・・・あああこの家路はああああ
今れみりゃ達が進んでいった道だああああああああああ!!!!

私は急ごうとした。れみりゃ達よりも速く家に着こうとした。だけど・・だけどお!!!
進んだられみりゃが前にいるぅ!!三匹もいるから回り込んでたら気配で気づかれるよぉ!!!
私はその場で立ちすくんだ。進めばれみりゃ、止まれば家族が・・・
どうしようどうしようどうすればどうすればどうすれば
ああああああああああああああああああああああ


待とう。
今行ったられみりゃに食べられる。そしたら家族には何も伝えられない。そうだ、この判断は正しい。
普通のゆっくりには到底思いつかない冷静な判断だ。そうだそうに違いない。
れいむも子供達も同じことを言うだろう。よし待とう、そうしよう。

こうして私はその場所ですこーしだけゆっくりした。別に怖かったわけではない。これは作戦だ。
家に着いたばかりのれみりゃ達の虚をつく。私ならできる。そうだあれは作戦だったのだ。そうに違いない。
だから私が一眠りしてしまったのも作戦だったのだ。体力温存の為の作戦。そうに違いない。

目を覚ますと外はもう夜だった。綺麗な月が出ていたこと、それが三日月であったことは覚えている。
ただ、そこからどうやって家族のもとへ行ったのかは覚えていない。
気づいた時には体中傷だらけで自分の巣である木から10m程離れた所の木陰にうずくまっていた。
私は静かに巣の様子を覗いた。あのれみりゃ達がここをスルーしてくれていることを願って。
      • だがそこには奴ら三匹が当然であるかのように立っていた。
そして聞こえる笑い声、叫び声、泣き声。
あぁ、一体何匹が犠牲になったんだろうか。せめてその中にれいむは、れいむだけはいないことを願うしか無い。
暗い夜が三日月の光のおかげで幾らか明るんでいる。
いつもだったら子供達と一緒に軽くこの辺をお散歩しようと思う程のいい夜だった。
だが今日は違う。一緒にお散歩ができる子供達が今や1、2、3、・・・
あれ?全員確認できる。子供達どころかれいむもはっきりと生きている。
じゃあいったいれみりゃ達は何をしているんだ。まさか遊びにきているわけではないだろうに。

この瞬間、私はさっき聞こえていた叫び声と泣き声を完璧に忘れていた。
その二つの声が遊んでいる時に聞こえてくるわけが無いのに。
しかし、その甘い考えも次に聞こえてきた悲鳴で軽く吹き飛ぶことになった。

「いやあああああ!!!おくちがあああああああ!!!」
「う~!お口もっとかぱかぱしろ~!」
その悲鳴はれみりゃの一匹が私の子供の口を限界以上に開こうとした時に我が子から発せられたモノだった。
一体そんなことをして何になるのか。れみりゃは執拗に子供の口をカバの様にしようとしているらしい。
「いはあああああああ!!!おふひがはけふうううううう!!!」
「なれ~!かばさんになれ~!う~!!」
「ふ、ふりだよ~!ほれいほうひらはなひよぉ~!!」
「わっからな~い♪なにいってるのかわっからな~い♪う~!うぅぅぅぅ~!うっ!!」
あぁ!とうとう力任せにれみりゃが子供の口を引き裂いた!れみりゃの手にピピッと餡子が小さく飛び散る。
当然子供はその痛みに黙って耐えられるわけが無い・・
「いはああああああんんんっっむごああはあああああんんっむごはあああああ!!!!」
「うっう~!ぱかぱかぱかぱか~♪」
叫び続ける子供におかまい無しに口をぱかぱかと閉じたり開いたりさせるれみりゃ。
止むことの無い子供の叫び声がれみりゃの手によって滑稽な声へと変わっていく。
「う~あきた~う~」
もう飽きたのか子供の口の開閉を止めるれみりゃ。そのままここから立ち去ってほしい。
そんな願いが届くわけが無いことは今日彼らを見たときから分かっていた。
「おめめぶちゅ!」
おもむろにれみりゃは口裂けの子供の眼に指二本を差し込んだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
まるでお化け提灯の様に口が開きっぱなしの子供にはそれ以外の叫び声ができなかった。
その痛みが私の耳を通して共感できる程に、その叫び声は痛ましい。
「ぱかぱかがこれでりゃくりゃく~!れみりゃてんさい!う~!!」
眼に指を引っかけることができるので握る手間が省けた、ただそれだけで私の子供の眼を奪ったというのか・・・
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おがあああざあああんはあ゛あ゛あ゛あ゛!!!おどーざあああああんはあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

やめて。呼ばないで。今は助けにいけない。まだそのチャンスはきていない。それが来るまでここで待たなきゃいけない。
「おどおおおおざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛んんはあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
無理、助けにいけない。その場の空気がまだ適した物じゃない。
「どおおおおおおおおおおざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛はあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
無理だって・・・!気づいてよ・・!れみりゃ三匹が戦闘態勢にすぐにはいれるこの・・・並び・・布陣?そう、布陣。
それがしっかりしている今は助けにいけない。今は耐えて・・・!
「どお゛お゛お゛お゛お゛はあああああ・・・・」
声が止んだ。

「う~ねむっちゃった~」
「じゃあつっぎ~♪」
「いやああああ!!どおしでええええ!!!どおしてこんなことするのおおおおおお!!?」
れいむの叫び声が聞こえる!そうだ、何ですぐ食べないでこんなことをわざわざ三匹でするんだ!
「にんげんにきいた~♪」
「たっくさんいじめると~ゆっくりはとっってもおいしくなるって~♪」
「だかられみりゃたちでいじめるの~♪おいしいゆっくりあまあまするため~♪」
そんな・・・私たちにそんな恐ろしい呪いの様な特徴があったなんて・・・
ということはあそこにいる皆今の子供みたいに酷い目にあうことになるの・・?
改めて目を凝らす。
10匹しっかりといる子供の五匹はもう既に大地に寝そべっている。
皆どこかしらからか餡子を少し垂れ流している。
あれで生きてるなんて。余程このれみりゃ達は手慣れているのだろう。
じゃあ、私が今あそこに躍り出ていったら。

まだその時期じゃない。チャンスを待つんだ、チャンスを。

「おねがい!もうやめて!れいむがなんでもしますからぁ!!!」
      • え?何いってるのれいむ。そんなこと言ったら!
「なんでも?」
「なんでもぉ?」
「なんでも~♪」
あああほら調子乗ってきたじゃないかああああああ
やめてれいむ。れいむがいなくなったらそれこそ耐えられない。それだけはだめなんだよ。それだけは。
他の子達は・・・いや、それは言ってはいけない。それも言ってはいけないんだ。
「おくちあ~んしておくち!」
「ゆっ・・!わかったよ!あ~ん!」
「よいしょ!」
あっ、一匹のれみりゃが手近にあった、いや、いた私の子供をぎゅっと掴んだ。
「ぐゆっ!?ななななに!?ゆっくりはなしてね!」
「ぽーい!!」
当然れみりゃは子供の声に耳も貸さない。そのまま思いっきりれいむの口の中に子供を放り投げた。
「うごぇ!!?むぐぅうう!!!」
口に入った途端他のれみりゃがれいむの口を強く抑えた。まさか共食いさせる気じゃあ・・・
「うー!これかられみりゃ達がれいむをぼこぼこにするよ!お口の中の子を潰さなかったられいむのかち~」
「でも潰したられ見りゃたちの勝ち~!」
「お口から子供だしたら、そのときはすぐにあまあま~ね♪」
「!!!!!!」
れれれれいむをぼこぼこにする!?
いや、やめてえ!!そんなことしてなんになるのお!!

「それじゃあすたーとぉ!!!」
「・・・!んぐぅ!んぐっ。んぎぃ!!?んごぉ!!」
「ぼっこぼこ~ぼっこぼこ~れいむのおかおをぼっこぼこ~♪」
「おいしくな~れ!おいしくな~れ!」
三匹がかりで前後左右に均等に拳をれいむに沈めていくれみりゃ達。
口の中の子供に多少の衝撃が伝わるのかうっすらと幼い悲鳴が聞こえてくる。
「ゆぎぃ!?おがーしゃんなにぃ!!?だして!暗いよ!ゆっくりできないし・・ひぃっ!?」
れみりゃの拳がどずんどずんと音を立てる。最初よりペースを上げているのだろう。
人間にとってはとるにたらないその幼い攻撃も、れいむやその子供にとってはまるで鉄球の様に響くのだろう。
「おがーさああん!!くらいよお!!うるさいよお!!だしてええええ!!」
くぐもった声は止まるのをやめない。その情けない声は助けを呼んでいるだけだ。
これだから子供はだめなんだ。私だったら隙をみてすかさずれみりゃ達に攻撃を仕掛けるだろうに。
そう、私だったらあの真正面のれみりゃが手を引いた瞬間に・・・
「おどーざあああんん!!!おどーざあああああん!!!おどおおおおおおおざああああああああんん!!!!」

「おとーさん・・・そうだよ!おとーさんがきたらお前らなんかやっつけてもらうんだからね!」
「おとーさんは強いんだよ!れみりゃ達なんてぽんぽーんだよ!」
「お前らなんか明日の朝ご飯になっちゃえ!」
れいむが子供達に訴えかける様に睨みつけている。その顔は今まで私ですら見たことが無い程の緊張感と喪失感に満ちている。
れみりゃ達の手が止まった。
「れみりゃたちよりつよい~?」
「ぽんぽ~ん?」
「あしたのあさごは~ん?」
「「「それじゃ~あ!」」」
各々のれみりゃ達が一匹ずつ子供達を握り
「「「今日の夕御飯を~!!」」」
「いや!やめてえ!うんぐ!!?」
それを・・・あああ、れいむの口の中に放り込んでぇえ
「「「はやめにするう~!」」」
三匹でまた殴りはじめたぁ!!!
「うぐぅ!?おぶ!!うぎい!ぐんぐ!!ぐうううううううう!!!」
「いやあ!!暗い狭い!!なんで入ってきたのお!!?びゅ!?」
「いだいいい!ちゅぶれりゅううううう!!」
「おがーさんのおお!!!おがーざんの歯がささっだああああ!!!」
「れいむのりぼんがあ!!おかーさんの喉のんぎゅ!!?べへぇ!?れいむあんこがぁぁぁ!!!」
さっきの4倍の体積がれいむのお口の中に入り込んでる・・・!
あれじゃあ子供達どころかれいむの餡子もでてきちゃうよおお!!

動くしか無い。作戦なんてどうでもいい。ただれいむを助けたい!ここで止まったらゆっくりがすたる。
いくぞまりさぁ!これがほんとのゆっくりだまし・・

「あぁ!おとーさんだぁ!!!」

「ゆっ!?おとーさん?」
ばか

「本当だ、おとーさんだあ!!」
バカァ

「おとーさん!はやくれみりゃ達を明日のご飯にしちゃってね!!」
馬鹿馬鹿馬鹿ぁ・・・

「うっう~♪おっとーさんを~みっけたみっけた~!」
バカアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
倒す前にばれっちゃったじゃないかあああ!!こんなんで倒せるわけないよおおおお!!!!
これだから馬鹿な子供はだいっきらいなんだよ!!しね!さっさと死んでね!!!
    • でも、れいむ、れいむをたすけないと!!

「・・・んぐ・・!むぃさぁぁ・・・」
れいむ・・・口を開けられないのにそれでもまりさに助けを求めてるんだね。わかったよ、今すぐ
「おとーさん!おかーさんの口かられいむ達を助けてね!」
「はやく!はやくだしてぇ!」
「でてるぅ!まりさの体からあんこがぁ!!」
「れいむのぉお!れいむのリボンがぁああ!!!」
うるさいよ!!馬鹿な子供達は少し黙っててね!
そもそもお前達が騒ぐからタイミングを失ったんだよ!そのままれいむに食べられちゃってね!
「がお~た~べちゃ~うぞ~♪」
うわあああああきたあああああああ!!!
作戦作戦作戦作戦さくせんさくせんさくせんさくせんサクセンサクセンサクセンサクセンskすかうsっkすあkすえかう
「「「がお~!!!」」」

むりいぃいぃぃぃぃ!!!!いやあああああああああああああああああ!!!
「おとーさん!?」
「どーじでにげるのおおおおおお!!!」
「まっておとーさん!まってええええ!!!!」
「・・・・・・!!!!むぃ、むぃさあ!?まりさあ!!」
「あ!おくちあけたあ!えいっ♪」
「ゆぎゅう!?おがあざ・・・」
「ああああああ!!!れいむのおおおおおおお!!!」
走りながら気持ちを落ち着けていくまりさの後ろで二つの悲鳴が聞こえた。
ああ、れいむの悲鳴も聞こえる。でも大丈夫。悲鳴が聞こえるって言うのは生きてるってこと。
今はまず自分の安全の確保だ。
「またみえた!えいっ!」
「いぎゃあ!!いやああああああ!!!」
「おがーざんおくちしべてえ!!!」
「はやくはやくぅう!!!」
「ああああああああああ・・・」
「うっう~あまあm・・・・」
声が次第に遠ざかっていく。待っててねれいむ。きっと助けるからきっと。


「まてぇ~オトーサーン♪」
「朝ご飯にしてみろ~♪」
だれかたすけてぇ!!!だれかぁ!!!!
二匹のれみりゃがまりさをおってくるよぉ!!
こんなに頑張ってるのにあの二匹はまるで諦めない。羽で空を飛んでるのに森の木々をすいすい避けていく。
ずるいずるい!まりさもお空を飛んでにげたいよぉ!!
今まりさの願いが叶うなら翼をください!ゆっくりの神様ぁ!!

ゆっ!これは・・・!目の前の景色は、神様が願いを叶えてくれたのだろうか。そうこれなら飛べる、とても高く素早く!でも・・・

崖じゃあ生きられないよぉ!!がみざまぁ!!!
「うっう~おいつめたぞぉ~!」
「めいどのじかんだぞぉ~!」
追いつめられたぁ!!
おねがいじまず!子供達はあげるからまりさはたべないでくだざい!おねがいじまず!
「子供達はたべちゃうよ~」
「でもおとーさんもたべちゃうよ~」
やめでえ!!まりさはおいしくないからあ!ウンコみたいな味がするからあ!
「じゃあおとーさんのいじめ方はぁ」
「馬乗りでぼっこぼこ!」
いやあ!だずげでえ!!うぎゅぅ!?なにもみえないよぉ!!?
「あごの方は短くて乗れないからお目めに乗っかってぼっこぼこ!」
いやああああああああああああああ!!!!いやだあああああああああああああああああああああ!!!!!


        • あれ?なぐられない?
どうしたんだろ。怖くて目をつぶっちゃったけど今は暗闇を作った元凶も消えてみるみたい。
何か聞こえる。ちょっと目を開けてみよう。フェイントだったらイヤだよぉ・・・
「・・・・ぎゃ・・・・ああああ・・・・・」
ゆっ!?れみりゃがれいむの上で痛がってる!?
叫んでるみたいだけどれみりゃの両足がまりさの耳をちょうど押さえつけていた何を言ってるのか分からないよ。
あ、どいた。
「いっぎゃああああああ!!!おめめがあぁ!!」れみりゃのお目めがぁ!!!!!」
叫んでいるれみりゃが手で押さえている目を見るとそこはぶくっと大きく腫れている。
一体何が怒ったのか。私は今までに出したことが無い様な大声で叫んだだけだ。それがダメージにでもなったというのだろうか。
その謎は私の足下にある物が解決してくれた。
そこにはお口に入れてたごちそうの数々、山菜、木の実、ダンゴムシ、ムカデ。
「ささったぁ!!おめめに虫さんがささったぁ!!!」
そう、れみりゃの目には私が叫び声とともに勢いよく吐き出したムカデの顎がうまい具合に刺さったのだ。
「う・・うぅ~?う・・うー・・・!」
今までに無い程騒ぎわめく仲間に戸惑いを隠せないもう一匹のれみりゃ。
チャンスだ。これこそ私が求めていた絶好の機会だった。
静かにもう一匹のれみりゃの背後に回った私は絶好の機会の中の最高の機会をじっと待った。
声を出しては終わりだ。だが心配は無い。私はあの子供達の様に愚かでは無いのだから。
そして今、二匹のれみりゃが私と崖の直線上に揃った。よしっ!
「ゆっくりしねええええええええ!!!!」

スッ

!?交わされた!馬鹿な!タイミングはばっちりだったのになんで!?
「うっう~ば~か!そんな大声だしたら・・・」
「いだいいいい!!!たずけでえええ!!!」
「う~!じゃま!どいてえ!!うー!!」
眼を押さえるれみりゃがもう一匹のれみりゃにまとわりつく。未だに痛みは引かないらしい。
むしろ激しくなっているのだろうか。その動きはこの場所の地形を全く忘れた動きだった。
「いやー!はなしてえ!!押さないでえ!いやー!!」
「いだいよお!!れみりゃのおめめだれかなおしてえ!!!ああ・・・ああああああ」
「「あああああああああああ!!!!!」」
抱き合ったまま奈落へと吸い込まれていく二匹。
片方が飛ぶことを忘れたままもう一匹に抱きついている為互いに空を飛ばずに仲良く落ちていった。

しかし・・・夢ではないだろうか。このゆっくりまりさである私が捕食種二匹相手に見事に勝ち星を奪ったのだ。
そうこれは、あの、子供達についた、些細な嘘が、現実になった瞬間なのだ・・・
ぃぃぃいやったあああ!!!勝ったよれいむ!みんな!まりさはとってもつよいつよいおとーさんだよ!
ゆぅー!これでれいむにも嘘つきだなんて思われないよ!子供達もよりいっそう喜んでくれるだろうね!
たのしみだなあ、ゆっゆっー!!
『すごいなあーおとーさん!』
『れいむ今度ぱちゅりーにじまんしちゃお!』
『まりさもおとーさんみたいになりたいよぉ!』
『さすがまりさだね、かっこいいよ!』
ゆっふっふ。皆の喜ぶ姿が目に浮かぶよぉ。
ただいまぁれいむぅ!ゆっ?


現実に戻された。
私の家はいつもより茶色な土壌、気にこびりついた子供達、こちら側に背中を向けて直立しているれいむと一緒に私を出迎えてくれた。
直立・・・いやまて、本当にれいむは生きているのだろうか。既に顔がないということもあり得る。
私は酷く冷静なままれいむの顔をゆっくりと直視しにいった。そこには
あった。いつもとは違い歪にぼこぼこになったれいむの顔が私をしっかりと見つめていた。

た、ただいま。れいむ

私はなるべくれいむの体に差し障りの無い様に静かに帰宅の言葉をつぶやいた。
いつもの様にゆっくりしていってねと言っては本能のままに体を動かしてしまうかもしれないと思ったからだ。
今のれいむの状態ではそれだけでもダメージになりかねない。いやあ、賢い私。

「どうして」
ん?
「どうして帰ってきたの」
何を言っているのか。ここは私たちの家だから帰ってきたのだ。
「どうして帰ってこれたの」
また馬鹿なことを、いつも住んでいるんだから道ぐらい当然知っている。いったいどうしたっていうんだ。
「どうしてかえってこれたのおおおおお!!!!」
えっ!?

「あんなに子供達がまりさのことを信頼してたのになんであそこで逃げたのぉ!!!
皆おとーさんおとーさんって必死にさけんでたのにぃ!!!それなのにぃ・・・ぞれなのにぃ!!!!」
ま、まってれいむ。口から餡子が飛んでるよ。
あれ?れいむ、口の中は別に怪我してない。ってことは・・・

「はじめてきいたよ!まりさ、れみりゃを二匹も倒したことがあるんだって!?」
ゆっ!どうしてしってるの!?そうだよ、さっきそこの崖で見事に私が、

「なんでそんな嘘をこどもたちについたのお!!」
ゆっ!?

「あんな嘘を聞いてなかったらまだ希望を持たずに楽になれたろうに・・・!
あんな嘘のせいで子供達は余計な期待を抱いてしまったんだよ!!
れみりゃ達に敵うはずのおとーさんがなんで私たちをおいて逃げたの?
おとーさんは私たちのことが嫌いなの?って叫びながられいむに聞いてたよ!!!」
いや、嘘じゃないよ!まりさは本当に

「みんな!みんなぁ!!!みんなしんじゃっだああああ!!!れいむのこどもだぢいいいいい!!!
まりさが助けにきてくれればどうにかなったかもしれないのにぃ!!!まりさながおとりになってくれればぁ!!!」
な、なんてことを言うの!!ひどいよれいむ!!
「まりさなんて食べられちゃえばよかったんだぁ!!!家族を守れないまりさなんて大嫌いだ!!
しねぇ!!!ゆっくりしねえええええ!!!」


なんて言ったの今。
しね?れいむがまりさにむかってしね?
違う・・・そんなことれいむは言わない。そんなひどいことれいむは言わない。
そんな汚いことをれいむはいわない。絶対に言わない,れいむは言わない。

一緒に遊んだれいむは
一緒にごはんをたべたれいむは
髪をほめてくれたれいむは
家族になったれいむは
狩りをほめてくれたれいむは
大好きだと言ってくれたれいむは
そんなこと・・・そんなことおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお



「おまえはれいむじゃない!!まりさのれいむなんかじゃない!!しねえ!!さっさとしねええ!!!!!」
ぼこぼこのれいむに体当たりをかましその上でストピングを始めるまりさ。
もうれいむ自身に抵抗する力は無かった。
「おまえは偽物だ!かえせ!!本物のれいむをかえせえ!!」
「そう思ってれば!まりさは一生そうやって自分の都合のいい様に生きていけば!!?」
「だまれえ!!れいむの偽物はだまってしねえええ!!!」
「ごめんね、皆・・・こんなおとーさんを選んだれいむが馬鹿だったよ・・・」
「だまれぇ・・・!だまれえええええ!!!!」
「次に生まれるときはぱちゅりーと結婚しようね。」
「だまってよおおおおおおおおおおお!!!!!!」
れいむが潰されているにもかかわらず、まりさとれいむとの会話はまるで電話での会話の様にスムーズに進んだ。

1時間後、まりさの足下には餡子一粒の隆起さえ見当たらなかった。
それでもストピングを続けるまりさは気づかない。気づけない。
「だまれ!だまれ!!だまれえええ!!!」
誰に言ってるのか。少なくとも後ろのモノに対してではなかった。
「だまってってばあああああああ!!!れいむうううううううう!!!!」
崖の下の惨状を見たそのモノはまりさを食料とすら思っていない。
ただ必死に叫び続けるまりさをどうやって苦しめるか考えていた。
そうだ、こいつがはねるのをやめたら・・・


「だまってえええええええええ!!!おねがいいいいいいいいいいいい!!!!」

半日後、まりさは自分の嘘を完璧に立証することになる。

まりさが勝てたのはやはり二匹までだったのだ。


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最終更新:2022年05月03日 17:28