※俺設定が山盛りです。
 ※すっきり表現があります。
 ※あにゃる表現もあります。







 「はなせっ!はなせええええ!きたないまりさのくせにっ!!」
 「ゆっへっへ、こんなとこまでついてきて いまさらはずかしがらなくてもいいんだぜ!?
  ゆふっ!ゆふっ!」

 とある薄汚れた路地裏の、業務用ポリバケツを横倒しにしただけのおうち。
 その中で黒いとんがり帽子が特徴のゆっくりまりさが、赤いリボンが特徴のゆっくりれいむに圧し掛かってしきりに下部をうちつけている。
 どちらも全身が透明な粘液で覆われ、かすかに雲の間から注ぐ月の明かりをぬらぬらと反射していた。
 次第にまりさの動きが激しくなる。
 人語を解し跳ねまわる不思議饅頭『ゆっくり』の性行為である、すっきりの絶頂が近いようだ。

 「ゆっふ!ゆっふ!ゆっふ!
 いいのぜれいむ!まりさはもうすっきりーしそうなんだぜ!!」

 「や゛め゛ろ゛ぉぉぉぉぉ!!ずっぎり゛じだぐな゛い゛ぃぃぃぃぃぃ!!」






                    ◇







 半日程前まで、れいむは飼いゆっくりで一切の不自由の無い生活を送っていた。
 それどころかゆっくりとしては破格の、わがまま放題の暮らしぶりだった。

 「こんなのまずくてたべられないよ!さっさとかわりをもってきてね!」
 「れいむはおにいさんのふかふかべっどさんがきにいったよ!
 ここですーやすーやするから、おにいさんはゆかでねてね!」
 「おにーさんのだいじなふぃぎゅあさんをこわしちゃった
 わざとだけどゆっくりゆるしてね☆」



 飼い主はホンの軽い気持ちで知り合いから赤ゆっくりのれいむを貰い、まともなしつけの仕方も勉強しないで飼い始めた。
 最初は赤ゆっくり特有の、ささやかなわがままだったのだろう。
 だが、甘やかして育てられたこのゆっくりは勘違いをしたいわゆる「ゲス」になってしまった。

 こうしてゲス化したれいむがやがてポイと捨てられてしまったのも仕方の無い事だし、実際そういう事はよくある事だ。
 元々この飼い主は飽きたらいつでも捨てられるように、最初かられいむの飼いゆっくり登録をしていなかった。

 ある時れいむは、お兄さんと出かけた街中でキレイな飾りを身に付けたゆっくりを見かけた。
 まん丸のコバルトブルーに金の縁どり、赤いリボンがまぶしい『飼いゆっくり登録バッジ』。
 そういえばれいむのお父さんもお母さんもこのバッジを付けていたっけ。

 「ゆゆっ!?おにいさん、れいむもあのきらきらのおかざりさんがほしいよ!」
 「駄目だ、ものすごーく勉強とかしないと貰えないんだぞあれは。
 れいむはお勉強キライだろ?」
 「ゆぅ~~~…」

 その時既に、お兄さんはれいむを捨てる気満々だった。
 どうして多額のお金を払ってこのクソ生意気なゆっくりを登録などするだろうか。
 かと言って、この人語を話す存在を踏み潰す事はさすがに気が引ける。
 だから、捨てる。




 「くそじじいぃぃぃぃ!!いまならゆ゛る゛じでや゛る゛がら゛ざっざどででごい゛ぃぃぃぃ」

 そしてれいむが寝ている隙に人気の無い場所に捨てられた後、目が覚めてからどんなに泣き喚いたとしても
 バッジの付いてない野良ゆっくりの事など誰も構いはしなかった。








                     ◇







 それから数時間後、途方に暮れている所に声を掛けてきたのがまりさだった。
 お帽子はしわくちゃで腐った生ごみの香りを放ち、髪は所々泥水でコチコチになっており、ニヤリと笑うと黄色い歯が覗く。
 野良ゆっくりとしての貫禄は充分すぎる程だった。

 「ゆっくりしていってね!れいむはもしかしたらいくところがないの?
 まりさのところにくるといいのだぜ ごはんもたくさんあるんだぜ」


 れいむは何の疑問も抱かずに、そのまりさに付いていったのが路地裏のポリバケツハウス。
 中には新聞紙が敷き詰められており、暮らすにはなかなか快適そうだった。
 まりさは奥からコンビニ弁当を持ってくると、器用にふたを開けてれいむの前に置いた。

 「こんびにさんのうらは たべものがかってにはえてくるんだぜ
 えんりょせずにむーしゃむーしゃするといいんだぜ」

 れいむは感動した。
 こんな気前のいいゆっくりと出会えるなんて幸運だよ。
 まりさはブサイクで汚くて臭いけど狩りは上手だし、特別に仲良くしてあげてもいいよ。
 れいむが可愛過ぎてきっとめろめろになっちゃったんだね。
 ここをれいむのゆっくりぷれいすにしよう。

 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」

 お兄さんと暮らして居た時と遜色ない食事。
 それを堪能していたその時。
 まりさが突然襲い掛かったのだ。

 そして冒頭からの続き。




 「「すっきりーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」」

 ビクビクと2匹の体が痙攣したかと思うと、次の瞬間にはぐったりとして動かなくなる。
 しばらく重なり合ったまま、荒い息遣いをする2匹。

 「ゆふう、たべものにつられるおばかなゆっくりを
 むりやりすっきりするのはやめられないのだぜ」

 先に起き上がったまりさが、新聞紙で体の粘液をだるそうに拭き取る。
 あまりにもショッキングな出来事に横たわったままシクシクと泣いていたれいむだが、自分の額から
 蔓がニョキニョキと生えるのを見ると飛び起きた。

 「ゆがあああああああ!?」

 見る見る伸びた緑の先には実ゆっくりが5つ。
 まだ種類を確認することは出来ないが、これでも立派に生命を宿している。

 「あかちゃんなんてほしくないのにぃぃぃぃぃぃ!!
 このくずまりさっ!!じねっ!!
 ゆ゛っっぐり゛じな゛い゛でじね゛ぇぇぇぇぇ!!」

 顔を真っ赤にして怒りに任せて体当たりを仕掛けたれいむだが、カウンターで体当たりを一度食らっただけで戦意を喪失した。

 「ゆべっ!!いぢゃいよぉぉぉぉぉ
 たしゅけてね!たしゅけてね!!」

 甘やかされて育ったれいむは、ケンカなんてした事が無い。当然の結果だった。
 先ほどまでの怒りの表情はどこへやら、仰向けに倒れたまま半べそをかいて命乞いをするれいむ。
 幸運にも?蔓と実ゆっくりは無事なようだ。

 「おお、よわいよわい。
 ゆっくりしてないでさっさとどっかにいくのだぜ」

 まりさにしてみれば、間抜けなゆっくりを無理矢理すっきりー!したかっただけなのだ。
 このまま子連れでおうちに住み着かれても困る。
 もう一度、脅すつもりで体当たりをするそぶりを見せると、れいむはすごすごと夕闇の中へ去って行った。

 れいむはとってもとっても不幸だよっ!!
 お兄さんに捨てられてっ。
 ゲスなまりさにレイプされてっ。
 これからシングルマザーとして生きてゆかないといけない。
 どうしてれいむだけこんなにふしあわせー、なんだろう…。

 それかられいむは、どこをどう這いずったのか良く覚えていない。
 気がつくととても広いお庭の、大きなお家に辿りついていた。
 きっと立派な人間さんが住んでいるに違いない、そう最初は思っていたがどうも人の気配がしない。
 もしかしたら空き家なのかもしれないし、そうだったら巣にしよう。
 試しにおうち宣言をしてみる。

 「ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!!」

 …いつまで経っても異を唱えるものは居なかった。
 人間さんも先客のゆっくりも居ない。
 その日から、そこがれいむのおうちになった。




                      ◇









 「と、いうわけだ。夏祭り本番まであまり時間が無い、しっかり頼んだぞ」

 昼休みにお兄さんが呼びつけられると、上司がいつもの通り事務用イスの上でふんぞり返りながら一方的に用件を言いつける。
 この片田舎の公民館でささやかに毎年開かれる、『夏祭り』。
 地域住民との交流を目的に、いくつかの地元企業が人と資材を出し合う。
 その会場である公民館の敷地にゆっくりがいつの間にか住み着いてしまい、祭りの準備が出来ないらしい。
 それをなんとかしろ、というのだ。
 お兄さんはここで、至極当然な疑問を口にせずにはいられなかった。

 「しかし、そういうことは普通お役所の仕事なのでは?公民館ですよ?」

 上司はふう、とため息を一つついてから忌々しげに答える。

 「半年前位に施行されたゆっくり保護条例は知ってるな?
 あれが実現したのは、町の有力者や市議会議員に重度の愛で派って奴が居たからだ。
 ゆっくりは知的な存在だからやたらに虐めたり殺したりするな、ってな。
 下手に力づくで事を運べば、条例で罰せられちまう。
 役所も腰が引けちまってて『現在検討中です』だってよ。
 こんなんじゃあ間に合うわけも無い。
 だが間に合いませんでした延期します、なんて言える訳もねえ。
 最初に言った通り、時間が無い。
 当てにしてた連中は皆めんどくさがって断りやがった。
 もうお前しか居ないんだ、やってくれるよな?」

 口では頼みながら上司の眼はもちろん断るわけ無いよな?と物語っている。
 ここでこの上司の不興を買うのも勿論マズイが、なによりゆっくりが関わっていると聞いた以上
 お兄さんの返事は決まっていた。

 「わかりました。やってみます」





                      ◇







 勤務時間の定時後、お兄さんは前任者と駐車場で待ち合わせた。
 祭りの開催に当たり、普段はほとんど人が近づかない公民館の電気、ガス、水道、トイレ等の設備のチェックと倉庫内の備品の確認という
 元々誰でも簡単にできるはずの役目だったが、ゆっくりのせいでバトンタッチせざるを得なかったというわけだ。

 「すみませーん、お待たせしましたー」

 前任者である女性がこちらに謝りながら走ってくる。
 転んだ。
 足元には何も無かったのに。

 「痛い…」

 起き上がるのに手を貸しながらお兄さんは思い出していた。
 会社にはドジ、ドベ、ドンくさいの3拍子が揃った通称「3D娘」が居るという伝説を。
 まさかその伝説を目の当たりにすることになろうとは。
 生まれて初めてゆっくりを見た時と同じ位の衝撃を受けるのだった。




 営業車でまず最初に向かったのは、女性向け雑誌等で有名なケーキ専門店。

 「れいむちゃんとね、約束したんですよ。
  すっごくおいしいあまあまを持って行ったらお引越ししてくれるって」

 まさかゆっくりの為に、領収書を切る時代がやってこようとは。
 この国はどうなってしまうんだ…。
 お兄さんはハンドルを握りながら大きくため息をついた。




                     ◇




 このおうちに辿りついた最初の朝、目覚めたれいむの額にはやはり蔓が生えていて五つの実ゆっくりが風に揺れていた。
 あの夜の出来事は悪夢では無く、覚める事の無い現実だった。
 蔓を引きちぎるという事も考えたが、まだ自分が赤ゆっくりの時に母親との会話を思い出した。

 「ゆ~ん、れいみゅはすごくゆっくりしちぇるよ!
 おかあしゃんはゆっくりしちぇるの?」
 「おかあさんはね、れいむたちあかちゃんがいるからゆっくりできてるよ
 あかちゃんゆっくりはすごくすごくゆっくりできるのよ」

 きっと自分は特別かわいい赤ゆっくりだったので、母親もすごくゆっくりできたのだろう。
 ということは、そんな自分の赤ちゃんならものすごくゆっくり出来るに違いない。
 それを見た他のゆっくりも人間もゆっくり出来るに決まっている。
 そうしたらきっとお礼にあまあまさんや色々なものをくれるに違いない。
 だから育ててみる事にした。



 そして現在、れいむは確かにゆっくり出来ていた。
 すぐお隣に住む人間が

 「れいむちゃんはシングルマザーで赤ちゃん育てるなんてすごいわねえ!
  あらあらかわいい赤ちゃんたちだこと!
  大変でしょうから、これおすそ分けね」

 と毎日あまあまを持って来てくれた。
 更にある日、敷地内にノラ犬が入ってき時もどこかで見ていたのだろうか、その人間はすぐに現れて
 しっしっと追い払ってくれたのだ。
 そんな事もあり、れいむは特別にゆっくりできるあかちゃんを見せてあげたり、自慢のおうたを聞かせてあげた。
 その人間もすごくゆっくり出来ているに違いない。

 そして今日もかわいいかわいい赤ちゃんたちとおうたの練習をしていると、昨日来たいじわるな人間のメスと
 もう一人の人間がやって来た。

 「ゆっ!ここはれいむたちのおうちだよ!かってにはいらないでね!!」
 「「「「はいらないでにぇ!」」」」







 お兄さんが3D娘と駐車場の入口に差し掛かると、成体サイズのゆっくりれいむを中心として
 左右にミカンSサイズの子れいむが2匹ずつ、合計5匹のゆっくりが整列してぷくーーをして出迎えてくれた。
 屋台や太鼓の櫓の資材を搬入するトラックが、こうやって通せんぼされるのが最大の障害らしい。
 うっかり轢いたりすれば愛護団体が黙っていないだろう。

 3D娘が一歩前に出る。

 「今日はね、約束していたすごくおいしいケーキを持ってきたんだよ」

 「あまあまちょうだいね!」
 「ゆっくりしてにゃいでしゃっしゃとよこしぇ!」
 「ちょうだいにぇ!ちょうだいにぇ!」

 お兄さんが手に提げた箱を見せると、饅頭どもはぷくーを解除してワラワラと足元に集まってきた。




 「がーつ!がーつ!」
 「うめっ!めっちゃうめ!」
 「あまいにょう!あまいにょう!」

 5匹のゆっくりによって蹂躙される高級洋菓子。
 それはみるみる姿を失ってゆき、あっというまに完食。

 「ね、すっごくおいしかったでしょ?
 今度はれいむちゃん達も約束を守って欲しいな。
 お姉さんも手伝ってあげるからお引越ししてね?」

 口の周りのクリームを夢中でベロンベロン嘗め回していた成体れいむが3D娘に向き直り
 わざとらしく眉を困ったようにハの字に曲げつつ体を右に傾けて、考え込むような仕草をする。

 「ゆゅぅ~~? れいむ『おひっこしをかんがえてあげる』とはいったけど、おやくそくはしていないよ?」
 「おきゃーしゃんはおやくそくしてないよ」
 「そんなこともしらないの?」
 「おねえさんはばかなの?」
 「これだけじゃぜんぜんあまあまさんたりないよ!」
 「もっともってきてにぇ!」

 「どうしてそんな事言うのぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」

 3D娘、なんて不憫な子っ!
 お兄さんは流石に見かねて助け舟を出す事にする。

 「あまり使われてないけど、ここの土地も建物も人間のものなんだ。
 そこに勝手に住み着いたのはキミ達で、本当なら追い出されても仕方が無いんだよ?
 他にちゃんとゆっくりできる場所を探してあげるから、ここは返してくれないかな」

 「そんなのうそだよ!にんげんさんはいなかったよ!
 いちばんにみつけたのはれいむだよ!!いいかげんなことをいわないでね!」
 「うそつきじじいはしね!」
 「ここはれいみゅたちのおうちだよ!」
 「でていけーー!」

 お兄さんの言葉に逆ギレした子ゆっくりがとうとう、いじわるなくそじじいに対して体当たりを開始する。
 ポムポムという音は1分程続いたが、バテたのであろう、荒い呼吸をしながら親の元に帰ってゆく。

 「どう?いたくてうごけないでしょ?
 れいむたちにさからうなんて ばかなじじいだね!」
 「つぎはてかげんしないからね!」
 「おお、よわいよわい」
 「あまあまをもってきたらゆるしてあげるよ!」

 口々に好き勝手な事をいいつつ横一列に整列した後、親れいむがずいと一歩?前に進み出る。

 「くやしいでしょ?でもれいむしってるんだよ!
 ゆっくりをいじめると、にんげんさんはむれからせーさいされるんだよね!
 ゆぷぷっ!ほーふくしたいでしょ?
 してみれば!?」

 そう言うと左の頬を差し出してモミアゲで指差し、「さあ、殴ってみろ」と言わんばかりのジェスチャー。

 「くっ…」

 さすがにイラっと来たが、そこは冷静なお兄さん。
 ぐっと奥歯を噛んで堪える。

 「できるわけないよね!
 れいむたちにはどんなおどしもつーよーしないよ!
 れいむたちはおひっこしするつもりはないよ!
 ゆっくりりかいしてね!
 ゆっくりりかいしたらさっさとかえってね!」

 お兄さんは余りにも言われっぱなしなのも癪だったので、ゆっくりたちを順番に睨み返す。
 子ゆっくり達は流石に怖かったのか、親れいむの背後にサッと隠れた。
 少しは溜飲が下がったし、これ以上ここにいたらお兄さんは手を出してしまいそうだったので。

 「今日はひとまず帰りましょう」

 3D娘にそう言うと踵をかえして歩き始めた。

 「ほらおちびちゃんたち、まけいぬがかえっていくよ!」
 「こわくないよ~べろべろべー!」
 「もうこないでね!べろべろべ~!」
 「れいむたちのだいしょうりだよ!べろべろべ~!」
 「れいみゅも!べろべろべ~!」

 登下校中の人間の子供の仕草で覚えたのだろうか、子ゆっくりが親れいむの背後からひょっこり半身だけ出して、
 モミアゲで器用にアカンベーをして二人の背中を見送った。






 無事?引継ぎも終わったので、3D娘は祭りの別の役目を与えられるだろう。
 それに今回のこの件は、お兄さんは自分一人で、自分のやり方で解決したくなった。

 「OKベイビー、ボクのハートに火をつけたぜ」





                     ◇






 ここはお兄さんの自宅。
 その奥にはゆっくり専用の虐待部屋。
 中央に置かれたテーブルにはゆっくりの拘束台があり、今その上にはゆっくりまりさがベルトで固定されている。
 ゆっくり保護条例。
 文字通り、人語を解する知的な存在のゆっくりを虐めたり殺してはいけないという条例。
 その中には「飼いゆっくりを野良ゆっくりが傷つけた場合の特例」がある。
 このまりさは、飼いゆっくりを言葉巧みに人気の無い場所に誘い出し、レイプしていた所をお兄さんに見つかりこうして捕まっている。
 この場合、お兄さんがこのまりさをどうしようと誰も咎める事は無い。

 「ゆ゛ゅ゛ぅ……」

 呻くまりさの底面には所々、ハンダゴテを突き立てられて出来た円形の焦げ跡があり、激痛のために跳ねる事は出来ずもう這いずる事しかできないだろう。

 「やあ、まりさ。おまたせ」

 扉を開け、部屋の主が入ってくる。
 そう、このお兄さんは虐待お兄さんだった。

 「も゛、も゛う゛ばり゛ざをゆ゛る゛じでぐだざい゛」

 右目がまぶたごと大量のねじで貫かれているため、残った左目で見上げつつ許しを請うまりさ。

 「だーめだめ、下らない条例のせいでしばらくご無沙汰だったんだし、たーっぷりと楽しませてもらうよ」

 にこにこと笑顔のままで、最近お気に入りの虐待道具であるハンダゴテをコンセントにつなぐお兄さん。
 次に小皿にラー油の小瓶の中身を全部空けるが、別に餃子を食べるわけでもない。

 「この前ネットで面白いモノを見かけてね。まりさに実験台になってもらうよ」

 このご時世、虐待お兄さんは全国規模のネットワークで常に情報交換をしているものだ。
 そこで今話題になっている『ゆっくりの完全去勢』を試してみることに。
 上手くいけば、ぺにまむ式もすりすり式のどちらのすっきりを出来るのに妊娠しなくなるという。
 植物型、動物型両方の妊娠をすることも妊娠させることも出来なくなるというので完全去勢と呼ばれる所以である。

 「な~に、簡単な事さ。
 これからこの熱~~~いハンダゴテを、まりさのあにゃるに突っ込んでペニペニの付け根あたりを充分に焼く。
 たったそれだけ。
 内部で焦げて引っ付いたら可哀想だから、ちゃんと油でコーティングしてあげるところがボクの優しささ」

 そう、お兄さんの虐待の半分は優しさで出来ています。
 ハナシは戻って上記のような方法で去勢が成立する事から、ぺにぺに(まむまむ)の奥のあたりで作られる遺伝餡のようなモノが
 交尾したゆっくり同士で交換し、どちらかの体内で結合する事で妊娠するのではないかという説が有力になりつつある。

 などと言っているうちにハンダゴテの予熱が済んでしまう。
 その先端に小皿のラー油を纏わせると、ゆらゆらと漂う白煙と共に独特の香ばし匂いがあたりに満ちる。

 「じゃ、早速いってみようか」

 お兄さんは身動きが出来ないまりさの顎の辺りのさらに下部、ひくひくと息づくあにゃるに先端をピタリと狙いを定めると
 一気に奥まで貫く。

 「ぎゅぼああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 ゆっくりらしからぬ絶叫をあげるまりさ。
 ラー油の所為でまずあにゃる周辺は焼け付くような痛みが走り、更に体内を直接熱せられた金属で掻き混ぜられているのだから仕方が無い。
 お兄さんが手に軽く前後に力を入れると、ハンダゴテはスムーズに動くという事はラー油の潤滑効果もバッチリのようだ。
 あとはもうしばらく時間をかけて、じっくりと内部を焼くだけ。

 しかし、公民館の一家はどう処理するべきか。
 条例の事を入れ知恵したり、毎日餌を与えている人間の存在も気になる。

 「じぬ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」

 …深夜に一家を拉致。
 ダメだ。いきなり一家が失踪したら黒幕の人間が行方を捜す。
 ゆっくり保護委員に通報でもされたら、痛い腹を探られる事になる。

 「も゛う゛や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 …超遠距離からの狙撃。
 それもダメだ。敷地内でゆっくりが変死したらやはり原因を探られる。

 「ゆ゛っ゛ゆっ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆっ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛……」

 ふと我に返ると、まりさは白目を剥いて舌をだらりと伸ばし、餡子を吐き出して痙攣していた。

 「ああごめんごめん、うっかり考え事しちゃってた。今はまりさとの時間なのにね」

 お兄さんは慌てて口からはみ出た餡子を戻してやり、オレンジジュースをその上から流し込んだ。
 その後にハンダゴテを抜き取ってはみたものの。

 「そういえば、本当に去勢出来たかどうか確認しようもないなあ」

 表情は変えず、空いた左手でポリポリと後頭部を掻くお兄さん。
 右手のハンダゴテからは、焼けた餡子の甘い匂いが漂っていた。





                      ◇





 翌日。
 お兄さんは再び公民館へ来ていた。
 ゆっくりの排除もそうだが、設備と備品のチェック等もさっさとやっておきたい。
 いっそガラスを割って内部に侵入とかしてくれれば大義名分も立つんだけどなあ、と思いつつ敷地に入ると
 建物の軒下、日陰のコンクリート地の上で一家仲良く身を寄せ合ってお昼寝タイムの真っ最中だった。
 ちょうど風通しも良いのだろう、髪や飾りのリボンもヒラヒラと揺れている。
 周辺には様々な菓子の包み紙や破片が散らばっている。
 食べるだけ食べて腹が膨れれば寝る。なんとも暢気なモノだ。
 お兄さんは起こさないように鍵を開けて公民館へ入って用事を済ますことにした。

 20分後、お兄さんが出てきた時に来たときに気付かなかったものを発見した。
 それはとんがり帽子が特徴のゆっくりまりさ。
 ミカンSサイズ位の大きさからしてまだ赤ゆっくりと呼んでもいいそれは、アスファルトの上に粉々に散らばった元ビスケットの様なものを
 必死に舌で掬い取って食べていた。

 「…ぺーりょ、ぺーりょ」

 もしかして昨日確認しなかっただけで、あの一家にはまだ家族がいたのかもしれない。
 お兄さんはポケットからプチビスケットを取り出すと、赤まりさに近づいて行った。

 「ゆっくりしていってね、まりさ。
 これ食べなよ、お腹空いてるんだろ?」

 「クズのまりしゃはこれでもたべちぇね!」そう言って意地悪な姉妹達が目の前で踏み潰したビスケットを舐め取るのに
 夢中でだったまりさは、突然話しかけられ目を上げると、山のように大きな人間がしゃがみ込んで地面の上に食べ物を置くところだった。

 「ゆっくりしていっちぇね、おにいしゃん。
 ゆぅ…、これたべちぇいいの?」
 「そうだよ、まりさが全部食べてもいいんだ。ゆっくり食べてね」
 「ゆっくりいただきます!むーーちゃ!!むーーちゃ!!」

 律儀にお礼だけ先に言うと、赤まりさは目前のビスケットにむしゃぶりつく。
 生まれて初めてのまともな食事に夢中の赤まりさを、お兄さんは細かく観察する。

 赤ゆっくりが単独で生活できるはずも無い、ということはあの一家の一員なのは間違いない。
 しかし全身が土埃で汚れ、それどころかあちこち傷だらけだ。
 あの小憎らしい他の子ゆっくり共は、キチンと親が世話していたのか一切そんなことは無かった。

 「しあわちぇ~~~~~!!」

 赤まりさがビスケットを平らげ、幸福感と満腹感の絶頂をそう言葉に表す。

 「なあ、まりさはここに住んでいるれいむの子供なんだろう?」
 「ゆ!そうだよおにいしゃん。
 まりしゃのおかあしゃんはしゅごいんだよ!こんなりっぱなおうちをもってて
 こぶんのにんげんしゃんが、まいにちあまあまをもってきてくれる りっぱなゆっくりだよ!」

 お兄さんの質問に、我が事の様に自慢気に答える赤まりさ。
 見上げて会話している状態で、さらにゆっへんと胸を反らすので今にも後ろにコテンと倒れそうだ。

 「でも、まりしゃはいらないこだって…。
 だいきらいなれいぱーにそっくりだって…。
 おねえちゃんたちもいもうとも まりしゃのことを『くずゆっくり』っていじめるにょ
 …どうちてまりしゃをいじめるの!?
 まりしゃくずじゃないもん…
 ゆえ~~~~~~~ん」

 さっきまでふんぞり返っていたかと思うと、今度は俯いたまま泣き始めた。
 これまで溜め込んでいた鬱憤が、見知らぬ人間に優しくされた事で一気に爆発したのであろう。
 しかしゆっくりとは、実にコロコロと表情が変わるものだ。

 「れいむのおうちにかってにはいるなくそじじい!!さっさとでていけー!!」

 赤まりさの泣き声で目を覚ました親れいむが、ボスンボスンと跳ねながらこちらに向かってくる。
 子ゆっくりたちは日陰から出たくないのだろう、昼寝をしていた日陰からお兄さんに向かって揃ってぷくー。

 「ああ、ごめんごめん。今すぐ出て行くさ。
 その前に、このまりさがいらない子ならボクが貰っていってもいいよね?
 すごく気に入ったんだけど」

 唐突にそう言われ、戸惑う赤まりさと親れいむ。
 赤まりさが自分を指差しているお兄さんと、親れいむを交互に見ること3秒。

 「いいよ!そのかわりたくさんあまあまをもってきてね!
 そのまりさとこうかんだよ!!」
 「ゆ!?ゆゆ~!?おかーしゃんっ!?」
 「ゆっくりりかいしたなら、さっさとそのいらないこをつれていってね!」

 親れいむからしてみれば、あの自分をレイプした屑ゆっくりに瓜二つの赤まりさは、生まれた時から見るのも嫌だった。
 だからと言ってゆっくり殺しをすれば体に死臭がついてゆっくりできない。
 これまでは死なない程度にイビりつつ、他のかわいい赤ちゃんたちのおもちゃにしていたのだが、
 この人間がたくさんのあまあまと引き換えに連れて行ってくれるのなら願ったりだ。

 「じゃあコレ位でいいかな?」

 お兄さんがまるで手品のように全身のあらゆる所からお菓子を取り出す。
 ズボンのポケット、クツの中、シャツの襟元、等等。
 あまあまが親れいむの目の前にうず高く積み上げられた。
 虐待お兄さんたるもの、ゆっくりを釣る為のお菓子のコレ位は常に持ち歩いているものである。

 「ゆっふっふ。しかたがないからこれでかんべんしてあげるよ!」
 「取引成立、と。
 じゃあこれからまりさはお兄さんの所の子になるんだよ」

 両手でそっと赤まりさを包み込むように持ち上げると、お兄さんは立ち上がって車の方へ歩き出す。

 「くずはゆっくりしてないでどこかにいってね!」
 「にどとかえってこないでね!」
 「せいせいしたよ!」
 「れいみゅもそうおもうよ!」

 軒下にいる姉妹たちも好き勝手な事を言いながら一人と一匹を見送る。

 「ゆぅぅ…。おかーしゃん!おかーーーしゃーーーーーーん!」

 お兄さんの手の上で赤まりさは必死に振り向いて、最後まで自分をあっさりお菓子と引き換えにした母親を呼び続ける。
 当の母親はかわいい子供達と、早速あまあまの山に飛びつくのに夢中で赤まりさの泣き声など耳に届いては居なかった。







                       ◇





 その日の夜。
 赤まりさはお風呂に入れてもらってさっぱりキレイになり、今は極上のゆっくりフードが山と盛られた皿の前に居た。

 「さあ、好きなだけ食べていいんだよ?」

 赤まりさの寝床にとゆっくり専用のふかふかのクッションを用意しながら、お兄さんは優しく微笑む。
 しかし、当の赤まりさはお兄さんの家に着いてからも塞ぎこんだままだ。
 どんなに辛く当たられても、辛抱強くあきらめずに愛情を求めた母親に完全に捨てられたのだ。

 「おにーしゃん、あのね…
 まりしゃは、まりしゃはあまあまさんなんかいらにゃいの」

 ポツリポツリと、やっと赤まりさが話し始めたのでお兄さんは黙って聞く事にした。

 「ふかふかのべっどで すーやすーやできなくてもいいの。
 おふろさんでさっぱりーできなくてもいいの。
 おかーしゃんのところがいいの。
 おかーしゃんのところにかえりたいの!
 おかーしゃんにすーりすーりしてほしいの!!
 おかーしゃんにぺーろぺーろしてほしいの!!
 おかーしゃんとおうたがうたいたいの!!
 お、おかーしゃんと…ゆぅ…ゆぅぅぅぅえぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 途中でいよいよ感極まって泣き出してしまう赤まりさ。
 お兄さんはよしよしと優しく赤まりさの頭を帽子越しに撫でながら

 「それはよく分かっているんだよまりさ。
 だからボクが、まりさのその願いを叶えてあげようと思って連れてきたんだ。
 気に入ったから欲しい、って言ったのもそのせいさ」
 「おにいしゃんがまりさをたしゅけてくれるの?」
 「そうだよ。その代わり、お勉強する事とか色々あるから頑張らないとね」
 「ゆっ!まりしゃおべんきょーがんばりゅよ!」
 「そうだね。まりさがお母さんと仲良くなれるようにお兄さんも頑張るよ」

 現金な事に泣いていた赤まりさは、もう泣き止んで。
 既に母親とのしあわせーな生活を手に入れたか如くの笑顔になった。




 勿論タダで助けてあげるわけじゃあない。
 まりさの純粋な思いを利用させてもらうよ。
 さあ可哀想なシンデレラ、ボクが魔法を掛けてあげる。
 この悪い魔法使いのお兄さんが。








 続きます。






 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
 おとうさんがんばるに対して「このお兄さんでゲス制裁モノも読みたい」との感想を頂いてから
 少しずつ書いていたのが、ようやく形になりました。
 8月中には完結するといいなあ。






 ※これまでに書いたSS


          2467 週末の過ごし方
          2519 この世の終わり
          2584 UFOキャッチャー
          2728 おとうさんがんばる
          2794 赤ゆが好き過ぎて
      小ネタ 2795 赤ゆが好き過ぎて 番外編
          2833 れいむがんばる
          2894 日曜の朝に
          2929 らっきー☆あいてむ

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年04月16日 22:16