その日を境にゆうかは元気を無くし、狩りに行かず
花畑に侵入してきたゆっくりもみょんに任せっきりとなった。
栄養のあるモノを食べれば良くなると考えたみょんは一匹で必死になって獲物を集めた。
その量は普通の成体ゆっくりが数匹がかりで集める量にまで達した。

しかし、食べさせようとしても少量しか手をつけず、ゆうかは日増しに弱っていった。

夜は毎日自分の持てる知識を授けた。
「みょん、よく聞くのよ…」
「…」
「人間って知ってるかしら?」
「知ってるみょん。ずっと前にゆうかと一緒に見たみょん」
「ああ、そうだったわね。みょん、よく聞きなさい…。」
ゆうかは人間の危険性を語った。
ゆっくりの力ではもはやどうにもならないほどの強さと知恵を持ち、
ひとたび暴れれば群れのような大きな集合ですら敵わない暴君。
しかし、同時に慈悲深い者もいて、運良くそのような人間の庇護を得られればどんな危機でも
助けてもらえるだろう。

そのほかにもドスまりさなどの大型ゆっくりに絡まれたときの対処方法
など、ゆうかの経験に基づく知識も伝えられた。
もっとも、みょんではその話の半分くらいしか記憶できなかったが。





そしていくの襲撃から一月後

「それにしても何でゆっくり共の襲撃が無くなったんだろ?」
「さあ、な。馬鹿で愚鈍なゆっくり共の事だ、どうせ自滅したんだろ」
「まぁそんなところだろうかねぇ。これであの糞饅頭共が全滅だったら最高なんだけどな」
「繁殖力が唯一の取り柄だからそれはないと思うよ」

二人の若者が森の中をさまよい歩く。
最近、住んでいる村でゆっくりの襲撃がぴたりと止み、
「もしかしたら、群れの数を増やして一斉に襲いかかる気なのかもしてない」
と警戒した老人達に派遣されてきたのだ。

「数を増やして襲撃だなんて器用なまねできるわけ無いだろってんだ、じじい共め」
「念のためだ、そうぼやくな」
二人は規則的に饅頭に踏みつけられてつぶれたのであろう草を見つけた。

「これはすごいな」
二人が目にしているのは花畑。
ゆっくりの足跡をたどると、途中川があったが花畑に着いた。

「ふむ、これはここにゆっくりゆうかがいるって事だな」
「ゆっくりゆうか?」
「ああ、花とか野菜とか育てられる珍しい奴だ。上手く調教すれば貴重な労働力だ。
…ふむ、明日村の男達連れてきて捕獲するか」
「じゃあ、今日は一旦帰ろうぜ」

若者二人は来た道を戻り、帰路についた。

「まずいことになったみょん!」
背の高い花に身を隠していたみょんがつぶやく。
もはやこの花畑は安全でない。明日にも人間達がゆうかを攫いにやってくる。
逃げなければならない。
しかも、ゆうか自身は未だ回復の目処が立っていない。

みょんが頭を悩ませていると
「ゆ! お花さんがいっぱいだよ!!!」
「きょうからここはれいむ達のゆっくりぷれいすだよ!!!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」
人間達が来た方向の反対側からゆっくり達が侵入してきた。
その数なんと数十匹。ゆっくりの群れの襲撃である。

なぜこんな時に!?
みょんは木剣を構え、斥候と思われるゆっくり達に向き直った。

「ばひゅっ!!!」
花畑の外側の花は毒花で構成されている。
それを食べたゆっくり達は体が爆発したり、ぐずぐずに溶けたりして凄惨な死を迎えた。

死の現場を見たゆっくり達が泣きわめく。
その間にも毒花を食べたゆっくりは次々と死んでいった。


なんとか、この花畑が毒花畑と勘違いして去ってくれないものか…!

「むきゅ! 外側のお花さんはどくが入ってるから食べちゃ駄目よ!!!
中にあるお花さんを食べるのよ!!!」
「ぱちゅりーの言うとおりにしてね!!!」
しかしみょんの思いも虚しく、群れの知恵袋であろうぱちゅりーが
毒花で花畑を囲っていることを看破し、大型のれいむが中に侵入することを指示した。
ぱちゅりーの指示を群れ全体に伝えたゆっくりれいむを見て、みょんは思い出した。
(こいつら!)
みょんを迫害し、殺そうとした群れのゆっくり達であった。
行き過ぎた繁殖の結果、元いた場所には餌がなくなり、
みょんを突き落とした崖を迂回し、たどり着いたのだ。

「くそ!」
みょんは思わず飛び出した。

「ここはゆうかとみょんのお花畑みょん! 余所者共は皆殺しだみょん!!!」
木剣を構え宣戦布告。

「ゆ、汚いみょんだよ! 汚いみょんはさっさと出て行ってね!!!」
「いなかものな汚いみょんはありすが殺してあげるわ!」
「むきゅ? いま、ゆうかって言ったわね? …」
早速、群れのゆっくり数匹がみょんに襲いかかった。

「ゆっくりしねー!」
「みょん!」
ずぱっ!
襲いかかってくるゆっくり達はみょんの事を覚えてなどいなかったが、
みょんはしっかりと覚えていた。

みょんを馬鹿にして遠くから石を投げ、
みょんが殺されそうになったときにゲラゲラと笑っていた連中だ。

そのゆっくり達はみょんの横薙ぎ一閃で真っ二つになった。

「ゆ"ー! まじざ! ばりさーーーーーー!!!」
「どぼじでごんなごとするの"おお"おぉ"ぉぉ"お!!!」

「む、むきゅ! 戦闘部隊! 戦闘部隊!!!」
ぱちゅりーの号令で駆けつけたゆっくり達は皆木の枝を構え、みょんに向き直った。

「あのゆっくり出来ないみょんをさっさと殺してね!!!
ゆっくりとつげきーーーーー!!!」
「「「「ゆーーーー!!!」」」」

かつん! かつん!

みょんは冷静にたたみかかるゆっくり達の太刀をいなした。

ずぶっ!
「ゆぎゃあああぁぁ!!! なんでまじざをこうげきずるんだぜええぇぇぇ!!!」
ずぱっ!
「わがらなよおおぉぉぉ!!!」

大勢でリンチしようと囲んだはいいが、多対一での戦い方を知らないゆっくり達は
みょんにいなされているうちに同士討ちを始めた。

みょんは勝機を待った。
しばらくすると同士討ちや戦意喪失して逃げ出すゆっくりが多発し、
結果戦えるゆっくりは残り二匹となった。
しかも二匹ともぜぇぜぇと息を切らしている。

みょんは周りを見回した。
群れのゆっくり達がやってきた方向からは今なおゆっくり達がやってきている。
このまま消耗戦を続けても勝ち目はないだろう。
ご意見番であろうぱちゅりーと長れいむは信じられないと言った表情でみょんたちを見守っていた。
たかだか汚らしいみょん一匹に群れの精鋭達が手こずっている姿を見て動揺しているのだ。
そしてちらりと後ろを見た。
「…!!!」
花畑を元気に飛び跳ねるゆっくり達。
進んでいる方向には自分たちの巣がある。

(ゆうかが危ない!)




先ほどの宣戦布告でぱちゅりーはみょんの口から発せられた
「ゆうかとみょん」と言ったことから、ここにゆうかがいることを知ると、
群れのゆっくり達にゆうかの確保に向かわせた。
理由は簡単。ゆうかに花を育てさせる、ひいては群れの食料を生産させるため。

「ゆっ!」
ずぱっ!
「ぶびゅるっ!」
「ゆ"っゆ"っゆ"っゆ"っ!」

-----時間がない!
みょんはいつもならば確実に弱るまで待っていたが、
残された時間が少ないことを知ると、残りの二匹にものすごいスピード(ゆっくり比)で詰めより、
横薙ぎ一閃で二匹を真っ二つにした。

そして二匹を始末すると、急いで巣に跳ねていった。
「む、むきゅ! みんな、あのみょんを始末するのよ!」
「急いでね! みんなゆっくりしないでね!!!」
みょんを追わせようとするも、先ほどの戦いでみょんの強さを見せつけられたゆっくり達は
追跡をぐずった。
お前が行け、いやお前が行けを繰り返すゆっくりにぱちゅりーが頭を悩ませていると、

がさがさ

「ゆ! みょん! 遅すぎるよ!!!」
「むきゅ! やっと来たわね!」



「はぁ、はぁ、」
みょんは途中追いついたゆっくりを殺しながら巣に向かったために、
思いの外時間がかかってしまった。

「ゆうか!」
みょんが巣に入り目にした光景は







「………」
「んほおおおおぉぉぉお!!!」
「ぎもちいいんだぜええぇぇぇ!!!」

自分の敬愛するゆうかが頭から茎を生やし、ゲス共に犯されている場面だった。
ゆうかの目は虚ろで、ただ身をゲスとレイパーに揉まれていた。

「ぐ…こ、この糞饅頭がーーーーーー!!!」
怒りのまままりさとありすを吹き飛ばし、二匹に詰め寄る。

「ゆべっ! なにずるの! ごのいだかものおおおおぉぉぉ!!!」
「いだいんだぜぇぇ!!! まりささまになにするんだぜええぇぇぇ!!!」

ずばっ! ずばっ!
みょんは憤怒の形相で二匹を真っ二つにした。

ずばっ! ずばっ!
二匹は断末魔をあげる間もなく息絶えたが、みょんの怒りは収まらない。
すでに死に体である二匹をこれでもかと言わんがばかりに切りつけ、破壊する。

「じねえええぇぇぇぇ!!! くずどもがああぁぁぁぁぁ!!!」
ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ! ずばっ!

「…みょん」
そんなみょんを止めたのはゆうかの小さな囁きだった。

「! ゆうか! しっかりするみょん!!!」
はっと我に返りゆうかの下へ跳ね寄る。

「みょん、ゆうかはもう助からないわ。」
「みょ、みょ…」
みょんは泣きそうになるがゆうかは気にせず続ける。

「ふふ、見てよみょん。ゆうかの頭。情けないよね、あんなゲスに犯されちゃって…
見ればわかると思うけど、ゆうかは子供が作れない体なの」
ゆうかの茎には本来ついているはずの実ゆっくりがついておらず、茎だけが伸びている。
茎にあまり栄養を吸い取られていない今なら助かるかもしれない。
みょんはそう考え、

「ごはんをいっぱい食べれば助かるみょん!!!」
「ゆうかは沢山生きたわ。長すぎるくらいね。それに沢山殺したし、沢山犯したわ」
「…よく聞いてね。ゆうかはどうあがいてももう長くない。
『寿命』なの。これ以上生きられないの。
………でも、足りないの。もっと殺したいの。もっと犯したいの」
「だからね、みょん」


















「ゆうかを、食べて」













「みょ!? そ、そんなこと…」
「うぅん、『食い殺して』って事じゃないわ安心して。
ゆうかはね、みょんの中で生き続けるの。
みょんに残さず食べてもらって、みょんの一部になって生きるの
それで、みょんを守りながら沢山殺して、沢山犯して…」

「だから、ゆうかが生きているうちに、食べて」
「みょ、みょ、みょ…」
涙が止まらなかった。

「さあ、お食べなさい」
みょんは安らかな表情で待つゆうかに近づき…



















































「なんで止めてくれなかったみょん!?」
「仕方ないわ! ありすが自分から行くって言ったんだもの!」
「ゆ! 言い争っても仕方ないよ」
師みょんは自分の妻であるありすがゆうかを確保しに言ったと聞いて焦った。

長れいむやぱちゅりーはゆうかを便利な食品製造係程度にしか思っていないが、師みょんは知っていた。
ゆっくりゆうかは捕食種で、しかもかなり獰猛な種族であることを知っている。
作戦もなしにむりに突っ込めば食い殺されるのがオチだ。

この二匹を問いただすだけ時間の無駄と判断した師みょんは急いで花畑を跳ねていった。
ゆうかの巣の場所は切り殺されたゆっくり達の死体が教えてくれる。
師みょんは嫌な予感に駆られながら全力で跳ね、ゆうかの巣へ。

「ゆぅ、はぁ、」
ゆうかの巣にたどり着き、中を覗く。
そこには涙を流しながらゆうかと思わしき緑髪の残骸を食べている傷だらけのゆっくりみょんだけいた。
(しばし傷みょんとする)

「…」
師みょんはこちらを無視する傷みょんのそばを通り抜け、奥へ。
ヒカリゴケに照らされた饅頭の残骸。
片方は餡子と皮の残骸。もう片方はカスタードクリームと皮の残骸。

師みょんの鼓動が高鳴る。
カスタードの残骸の中に見えるカチューシャは…自らの妻のカチューシャ。

「みょおおおぉぉぉ! ありすううううぅぅうぅ!!!」


師みょんの慟哭は傷みょんにも届いたが、傷みょんはこれからの行動を思案していた。
ゆうか亡き今、この場所にとどまって戦うこともままならないだろう。
たとえ、傷みょんが群れを撃退できたとしても、明日人間達がゆうかを探しに来る。
もしそのときに見つかれば人間に殺されてしまうだろう。
仮に人間から逃げ延びても、また群れの残党が襲撃にくる事は想像に難くない。

-ならばどうするか?
簡単だ。自分がこの花畑を放棄すればよい。
そうすれば明日人間の手によってこの群れは確実に滅ぼされる。
しかし、その後も人間はこの花畑に来るだろう。
もはやこの地は安息の地ではなくなった。移らなければ命に関わる。
まだ死ねない。もっと犯して、もっと切られて、もっと殺したい。

結論は出た。
この花畑を放棄する。
善は急げと言わんがばかりにみょんはかつての巣を放棄し、巣から出て花畑を脱出しようとすると

「待て!!!」
師みょんが傷みょんを呼び止めた。

「お前か…お前がありすを殺したのか!!!」
「ふぅ、そうだみょん、それがどうかした?」
振り向く傷みょん。太陽に照らされ、傷も顔もリボンもはっきりと見えた。

「ふ、ふざけるな!!! おまえのせい…で…」
ただの汚い傷みょんだと思っていた師みょんはかつての弟子との再会に、顔を真っ青にした。

「な、何で…」
「『あのとき殺したはずなのに』って思っているみょん?」
「…!!!」
「…ここで語らう気はないよ。明日、お日様が出てきたらあの崖の上に来るみょん」
傷みょんはそれだけ伝えて、花畑に身を隠しながら去った。
途中、薬草となる花を集めながら。





「むきゅ~! みょん! ゆうかはどうしたの!?」
「ゆ! ありすとまりさが殺されてたよ! 他の子達も殺されてるよ!
どういう事なの!? ゆっくり説明してね!!!」
長れいむをぱちゅりーに事情を説明した。
過去に処刑したはずのみょんが現れてありすとまりさを殺したこと。
そのみょんがゆうかを食い殺していたこと。

「むきゅ! そんなの信じられないわ! みょんはなにか隠してるわね!?」
「正直に言わないとれいむ怒るよ!」
「そのぼうれいに言われたみょん。明日、ゆっくり崖に来るようにって」
皮肉なのだろうか、傷みょんが指定した場所はかつて師みょんが傷みょんを突き落としたあの崖だった。

「ゆゆゆゆゆゆ…」
「むきゅ…………」
二匹は黙りこくってしまった。
実はあの事件が冤罪であることは二匹とも分かっていたのだ。
いくらレイパーの子供とはいえ、子ゆっくりが成体ゆっくりを犯し殺すことなど出来るわけがない。
二匹では他の犯人の検討がつかなかったため、無理矢理子みょんを犯人ということにして場を納めた。

いつもは気に入らないことはさっさと忘れてしまうようなゆっくりであったが、
その事件だけは餡子の片隅にいつまでも残り、師みょんが指した崖を見て完全に思い出したのだ。

「むきゅ、わかったわ。みょん、明日あそこに行ってぼうれいをやっつけてきなさい」
「ゆ、れいむもお願いするよ。わるいぼうれいさんをゆっくりやっつけてね」
二匹とも自分が関われば恐ろしい目に遭うと予測し、
師みょんに解決を押しつけてしまうおうと考えた。

その日は全員で花畑でおうち宣言し、花畑の花に早速食らいついた。
移動や傷みょんの反撃で元いた数よりもめっきりと数を減らした群れからすれば
この花畑の花は食べきれないほどある物に思えた。
実際、節約もなしに食べ続けてもこの群れの数なら一週間はもつであろうほどの花が咲いている。
赴くままに花を食い散らかし、無防備に眠るゆっくり達。
皆が思い思いにゆっくりしている中、師みょんだけはいつまでもありすの死を悲しみ、
同時に傷みょんのことを考えていた。


翌日。
師みょんは朝日と共に起き上がり、木の棒を二本用意し、崖めざし出発した。
足手まといとなるゆっくりがいないせいか、その足取りは軽い。
おかげで群れ単位で移動したときは数日がかりで移動した距離を数時間程度で進む事が出来た。
崖につく頃には日は完全に登り切っていて、傷みょんを照らしていた。

「ようやくついたね」
「…教えるみょん。なんでありすを殺したの?」
「ああ、それね。ゆうかをれいぷしていたからだみょん」
「嘘だみょん! ありすがそんなこと…」
「『んほおお』とかいいながられいぷしていたよ?
実は心当たりがあるんじゃない? あの時、みょんに濡れ衣を着せたのも…」
「ゆ! …で、でも、みょんはゆうかを食い殺していたみょん!
そんなやつの言うことなんて信用できないみょん!!!」
「食い殺した? 勘違いも甚だしいね。みょんはゆうかと一つになったんだよ?
お前達のような下等饅頭共と一緒にしないでほしいみょん」
「な、な、」
「全然覚えられなかった花の名前も、効能もすっかり覚えられたし、
体もまるで生まれ変わったかのように軽いみょん
今ならゆっくりを百匹殺すことも、犯すことも簡単にできそうな気がするみょん」
「ゆ、ゆうかのようなゲスになったんだね…」
師みょんは木の枝を構えた。

「裏切り者とどっちがゲスかな?」
「ゆっ!?」

「ゆうかはお前と違ってみょんを絶対裏切らなかったよ。
れいぷされて死にそうになったときもみょんのことを気遣ってくれたみょん
裏切り者が気安くゆうかのの悪口を言わないでほしいみょん。」
「ああ、そうだ。ゆうかと一つになったおかげであのときどうしてもわからなかった事がわかったみょん。
何でお前があのときみょんを裏切ったのか。
あのありすが真犯人で、みょんのことを犯人に仕立て上げたってことも。」

「ゆ…ゆ…」
もはや目の前にいる傷だらけのみょんはかつてのみょんではない。
ゆっくりみょんの姿をした怪物だ。

「いや、もうこれはどうでもいいことだみょん。
お前は裏切り者で、みょんはお前を殺してやる。これだけで十分だみょん。」
傷みょんも木剣を構えた。

-群れのゆっくり達を連れてくるべきだった。
師みょんは後悔した。
目の前にいる怪物に気圧され、体が動かない。
そんな中でも傷みょんは容赦なく距離を縮めてくる。

「後ろ、いや、花畑の方を見てみるみょん」
「ゆ!?」
突然傷みょんは花畑を見ろと言ってきた。
師みょんはそれが何を意味するのかわからなかったが、なぜか、見なければいけない気がして、
後ろを振り向いた。

「なにあれ!!!」
師みょんが見たのは複数の人間に蹂躙される群れのゆっくり達だった。

「人間だみょん。昨日、あのお花畑に来た人間がゆうかを探しに大勢でやってきたんだみょん」
「あ…あ……」
「みょんがわざわざお花畑を放棄したのを自分たちに都合良く解釈したのが失敗だよ?
どうせ、みょんが多勢に無勢で引き下がったとでも思っただろうけどね」
「まさか、こうなることを知ってわざと…」
「そうだよ。今日人間がお花畑に来ることはもう知っていたからわざと明け渡したんだよ。
これであの忌々しい群れは完全にお終いだね。
あんなに沢山の人間に囲まれたらもう一匹も逃げられないみょん」
「な、何でみょんを助けたの?」
「助けた? 勘違いしないで欲しいみょん。
お前はゆっくりゆうかとゆっくりみょんのハーフになったみょんの最初の犠牲者になるんだみょん」

師みょんは決心した。
-もはやこの怪物を一秒たりとも生かしておけない。
-ゆっくりの災厄となってしまったこの怪物を今ここで始末できなければ
-罪もない善良なゆっくりが、幾多のゆっくりの群れが犯され、殺され、滅ぼされてしまう。

「…お前は、みょんがまいた種だみょん。ここで刈り取ってやるみょん!!!」
一気に間合いを詰め、切りかかる師みょん。
傷みょんはかつてゆうかが自分に稽古をつけていた時のように木剣で受け流した。


すぱっ

ただ、違うのは木剣でいなしきれなかった切撃が体を切りつけたということだけ。
師みょんの猛攻で傷みょんは追い詰められていった。かのように見えた。

(…! もしかしたら、勝てるかもしれない!!!)
師みょんに芽生えた希望。
傷みょんは全く反撃してこないし、心なしか息が荒くなっている。
そして何より、傷みょんの体に新たに作られる傷。

-勝てる!
-もしかしたら、怪物というのは過大評価だったのかもしれない。

師みょんは攻撃を休むことなく続け、傷みょんを刻み続けた。

一方の傷みょんは切られる快楽に身を任せていた。
(あぁ、切って…みょんをもっと切って…)
至福の時を噛み締めるみょん。
昨日の再会から、ずっとこの瞬間を待っていた。
憎くて愛おしい相手。
かつて殺されそうになったときの痺れを空想し、
そこから上書きされた切られる事への快楽を混ぜ、身を切らせる。

しかし、楽しい時間ほど長くは続かない。

「はぁ、はぁ、」
傷みょんも師みょんも共に息を荒くしている。

「こ、これでとどめだみょん!!!」
師みょんは思い切り体を捻り、横薙ぎ一閃を放つ。

ひゅん!
しかし、その一撃は傷みょんに届くことなく空を切った。

「ゆ!」
傷みょんは後ろに跳ね、横薙ぎ一閃をかわすと、
今度は自分が体を捻り、横薙ぎ一閃を放った。

-まずいまずいまずい!!!
師みょんは身の安全を確保しようとしたが、疲労のためか体が動かない。
ずぱっ!!!

「み"ょお"おお"おぉ"ぉぉん!!!」
師みょんの体半分くらいまで木剣が切り裂く。
師みょんは断末魔の叫びを上げ、死という形でそのゆん生を終えた。

「…! ……………!!!」
傷みょんは木剣を強く噛み締め、漏れてしまいそうな絶頂の叫びをこらえる。
傷みょんの意識とは裏腹に体はびくん! と痙攣し、絶頂したことを物語っていた。

「はぁ、はぁ、」
また少しの刺激で絶頂してしまいそうな体を師みょんの死体に寄せ、息を整える。
傷みょんがゆうかから受け継いだのは身体能力と知識だけにとどまらず、性癖まで受け継いでしまっていた。
傷みょんの性癖は「切られて悦び、切り殺して絶頂する」というものになったのだ。

しばらく師みょんの死体に体を預けながら息を整えていたが、情欲は収まらない。
傷みょんがこの厄介な性癖を制御できるようになるのはもう少し後だろう。

未だ体の疼く傷みょんは師みょんの死体を犯し出した。

「はぁ、はぁ、んほおおおぉぉぉぉ!!! んほ、んほおおぉぉぉぉ!!!」
傷みょんの邪魔をする物はない。
群れのゆっくり達は人間達に刈り尽くされ、
他のゆっくり達は崖などという危ない場所には滅多に近寄らない。




      • 十数分後
「…」
犯しすぎてぐずぐずに崩れたかつての師みょんの死体を背に、
みょんはこれからの事を考えていた。

単純に犯して、殺して、好き放題暴れて回ればゆっくり達も逃げ出すか、
もしくはドスまりさがみょんを狩りに来るかもしれない。

(数の暴力には勝てないみょん。ドスまりさなんかも勝ち目はないみょん。)
安全に犯して殺して、欲を満足させるためにはどうすればいいか。








      • 数年後
とある村にて
「どぼじでごんなごどするの"お"お"おおお"ぉぉお"ぉぉ!!!」
人間の村を襲おうとしたドスまりさが返り討ちに遭い、
群れの全滅と自身の命の危機に陥っていた。

この群れは無計画な繁殖を重ね、食糧不足となった。
ドスまりさが自ら禁じていた人間との接触、つまりはお決まりの『協定』を結びに
村を訪れたところ、村人達の待ち伏せに遭い、全滅の憂き目にあったのだ。


一方、森の中。
「すっきりーーーー!!!」
傷だらけのみょんが絶頂していた。

みょんにはおびただしい傷があり、いくつかの傷はついさっきつけられた物だ。
みょんの眼前には真っ二つになったれいむの死体。
つい先ほどまでみょんを切り刻んでいた。
死ぬ直前まで、自分がみょんを殺せるものと勘違いし、
トドメを刺そうとして逆に一撃で殺された。


ゆうかを食べ、ゆうかの知識、身体能力、性癖を受け継いだみょんは
様々な群れに入り、その度に気に入った美ゆっくりを犯したり、
切られたり殺したりと思う存分欲望をかなえていた。
また、所属した群れも何らかの形で崩壊していた。

みょん自身が群れを崩壊に導いた場合もあれば、
みょんが何もしなくても勝手に自滅したこともある。

みょん自身が群れを崩壊させる時はゆっくり特有の嫉妬や強欲、怠惰や憤怒、色欲に暴食、果ては傲慢さを
利用して自滅に導く。

ある群れは越冬直前に交尾を禁止していたのだが、みょん自身がそれを何度も破り、
気に入った美ゆっくりと群れのゆっくり達が見守る中、何度も交尾し子供を孕ませた。
それを見たゆっくり達も発情し、群れは乱交会場に成り果て、
いざ越冬しようとすると皆食糧不足で誰も生き残れなかった。
ちなみにみょん自身は孕ませた美ゆっくりとその子供を食い殺して冬を越した。

また、ある群れでは畑荒らしを敢行するゲスゆっくり達をあがめる振りをし、
人間に立ち向かわせ、自らの手を汚すことなく、群れごと邪魔者を葬った。

一度だけドスまりさに殺されそうになることもあったが、ドスまりさの目玉に石のつぶてを当て、
ひるんだ隙に逃走し、近くの人間の里でドスまりさを嫌っている人間と協力して
ドスまりさごと群れを崩壊させたこともあった。

師みょんが警戒したとおり、このみょんのせいで殺されたゆっくりも、
崩壊させられた群れも少なくない。
だが、ゆっくりでは誰もそれを止められない。
このみょんの悪事を知るゆっくりは悉く殺され、
このみょんの悪事事態がゆっくりの社会では知られていないのだ。

このみょんは悪知恵が働く。
みょんが無茶な生活を続けても死なずに目的を果たし続けているのは、
この悪知恵のおかげである。

かつてのゆうかも力よりも知恵を使って
十数年という普通のゆっくりとしてはあり得ないほど長いゆん生を生き延び、
晩年は力と知恵をフル活用し、己の欲望もかなえた。
その記憶も力も受け継いだみょんは狡猾に立ち回り、
時には人間を味方につけ、己の目的のために数多くのゆっくりを奈落の底にたたき落とす。


「い"やあ"あぁ"ぁぁあ"あぁぁああ!!! おでがいじばず! ばりざだけはだずげでくださいぃぃぃ!!!」
「どずううううぅぅぅ!!! どぼじでぞんなごというのおおおぉぉぉぉぉ!!!」
「うわ、こいつら仲間割れしだしたぜ」
「あーあ、何が『ドスはみんなをゆっくりさせてあげるよ!』だ、
結局てめぇのは自己満足だったんだろ? なあ、ドスまりささんよ!?」
「ずいまぜんでしだああぁぁぁ!!! あやばりまずっ! あやばりまずからあぁあぁぁあ!!!!」


「…所詮でかいだけの饅頭みょん。あんな汚い饅頭はみんな死ねばいいみょん」
村の茂みに隠れてドスまりさが殺される様子を観察するみょん。
その表情はにやついており、観察すると言うよりも、ドスまりさの処刑をショーとして見ているかのようだ。
ざまあみろ。みょんは無意識のうちにそう言っていた。


「それにしても、あのみょんには助けられたな」
「ああ、うまくこいつら口八丁で丸め込んで、こっちの指定通りに動かしてくれたもんな」
「あれだけ出来た奴ならうちで飼ってやってもいいんだけどな」
「馬鹿言え! おめえみたいなヒゲ面のところに来るやつなんて、ゆっくりにだっていねえよ!」
みょんは決してこの場で姿を表さない。
下手に姿を現そうものなら何かにと理由をつけてみょんを殺そうとするだろうと考えているから。

ドスまりさへの憎悪と人間への過剰なまでの警戒。
これもゆうかが残したみょんへの贈り物。

時としてドスまりさを葬るために人間の協力を仰ぐこともあるが、その場合は入念な下調べをして、
初対面で殺害ないし虐待されないような相手を選び、ドスまりさの危険性を語る。
大抵はみょんが説明しなくてもドスまりさの危険性は認識しているようで、
みょんはドスまりさの動向を教え、準備を整えさせる。
後はドスまりさを適当におだて人間の里を攻めるように説得し、
人間と打ち合わせした時間に攻め込ませるようにそそのかす。

これだけでみょんは「人間に会う」というリスク以外のリスクはすべて回避し、
ドスまりさを人間に始末させてきた。

群れのゆっくりに稽古をつけ、屈強な兵士を育てて一緒にゲスやら
レイパーやらを撃退したりとの活躍をし、ドスまりさから信頼を得たり、
自分に対してあからさまに敵対心を持つゆっくりを暗殺し、自分の地位を上げることもしてきた。
ここまでしてドスまりさを嫌う理由、それはみょんにはわからない。
ゆうかの記憶には『ドスまりさ憎し』以外のドスまりさに関する記憶がないからだ。


だが、みょんはそれで良かった。
漠然としたゆうかの記憶。それがみょんとゆうかをつなぐ一番の絆であるから。


「…」がさがさ
みょんはドスまりさが息の根を止められたことを確認すると、森へ向かい、そのまま姿を消そうとした。

「……これは」
みょんは道中、人間の子供が落としたのであろうおもちゃの木剣を拾った。
今まで使った物の中でも一番堅くて太くて立派なモノ。

「こんな素敵な剣はみょんにこそふさわしいみょん」
みょんはいい物を手に入れたと悦び、そのままどこかへ去っていった。



      • 数日後
「さて、次はどこへ行こうかな…」

「ゆっ、汚いみょんだよ! さっさとここから出て行ってね!!!」
「(ただの馬鹿か。放っておくみょん)」

このれいむとの出会いがまさかみょんの命運を左右することになろうとは、
この時のみょんには知るよしもなかった。



終わり



      • 「さあ、お食べなさい!」って真っ二つなるはずじゃないの?
→作品の数だけ設定があるってことで。
とりあえず本SSでは「さぁ、お食べなさい」宣言したゆっくりを食べると、
知識、身体能力、その他諸々を継承するっていう設定にしました。
ちなみにゆうかも過去に他のゆうかから「さぁ、お食べなさい!」宣言され、食べたことがあります。

      • なぜゆうかの花畑が後になって発見されたの?
→群れのゆっくり達は崖が危険であるため、滅多に崖に近寄らなかった。
来たときに限って霧が濃くて見えなかった。

      • 一話目でゆうかのことを「旅の途中出会った」って言ってたけど
→ゆうか側の記憶です。

      • 二話目でゆうかになったりしたんだが
→中身が科学反応してそうなった。って補完してください

      • 二話目でみょんが自分の家族とかの記憶を思い出したりしてたんだが
→ゆうか側の記憶です。たまに混信して表に現れます。
自分をソ○ジャーだと思いこんでたク○ウドと似たような感じだということで一つ。

      • ゆうかが妊娠できない意味ってあるの?
→なければみょんに食べさせる前に死んでしまいます。
ちなみに妊娠できないのは生まれつきです。

      • ○○がおかしいのだが
→本スレとかで聞いてください。


最近はHENTAIモノを書きたくてしょうがなかったりします。


今まで書いたSS?
ドスまりさとゆうか1~3
ゆっくり闘技場(性)1
不幸なきめぇ丸
名物餡玉
行列の出来るゆっくり
スカウトマンゆかりん前・後
ファイティング親子とゆっくり
まりさの商売
ぱちゅりーの失敗1~4
盲点
進化
ぶっかけ!ぱちゅりー!
短い話を一つだけ
ありふれた話
対決!ドスまりさ!
被虐のみょん_その一
とあるきめぇ丸の一日
おさんぽバターみょん
さなえに首ったけ
ゆっくり兵団
不安のゆっくり1
幸せなゆうかのお話
短い話を一つだけ_2
短い話を一つだけ_3
ゆん園交響楽
掻き回してみた
短い話を一つだけ_4
被虐のみょん_その二

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年04月16日 22:21