ゆっくり飛行隊 「日没戦線 19時30分」


エンジンに火が入ったP-⑨A シャープウーパックに登場する体つきゆっくりまりさ
シートベルトを締め、ハンガーからゆっくりと機体を出していく

滑走路につくと、通信機に向かって静かにしゃべる
「こちら13番機、離陸許可を」
「13番機、離陸を許可する」
「了解」
簡単に言葉を交わした後、エンジンの出力を上げる
ガクンと機体が揺れたと思うと一気に加速して滑走路を駆け抜けていく
速度が乗り切ったところでガクっと浮遊感が体を包む…機体が離陸した

暫く高度を上げて主脚を畳む、離陸が完了した
同じように上がってきた僚機2機を引き連れて南へ針路をとる
左についている14番機のれいむの声が通信機越しに入ってきた
「まりさ?本当に4m強もあるドスがいるのかな?」
「ドスにしては大きい方だと思うけど…確認してみないとわからないよー」
間にみょんが割り言ってくる
「どの道300匹近い群れを率いてるんだからドスとしてはそれなりに優秀だと思うけど・・・」
そう答えるしかなった
加工所からはかなり巨大なドスまりさを筆頭にした500匹近くの群れが人里近くまで降りてきており、今日昼ごろ、街の手前の雑木林にまで進んだ
睡眠時を狙ってドスまりさをせん滅、可能な限りのゆっくりに攻撃を加えよとしか言われていない
20分程南に行くと、目標の林に近づいていった
「こちらK13、暗くて視認が不能」
「K14、高度を下げて索敵します」
「K15、K14と同じく高度を下げます」
まりさは高度を上げて林の周りを大きく旋回して様子をうかがった

「暗くて地面がわからない・・・」
緊張でスティックを握る手も汗ばんでいるれいむ
ライトをつけ、5m程の高度を保って慎重に探していく
後方からはみょんが同じようについてきていた
その時、ひと際大きくはみ出したとがったシルエットを発見した
「こちら14番機!ドス!ドスを発見!かなり大きい!」
林の木々からはみ出るぐらいのかなりの大きさのドスを見て、一気に緊張が高まる
口の中がカラカラに乾いたような錯覚を起こした

「14番機!ドスが動いてる!音で起きそうになってるんだ!」
のそっと帽子が動いたのを機敏に察知したみょんがれいむにがなり立てる
「こちら15番機!ドスが動く!攻撃を!」
焦ったれいむがトリガーに指をかける、とんがり帽子のあたりにあたりをつけて、引き金を引いた
バババッと音が走る、その瞬間とんがり帽子が激しく左右に動いたかと思うと木々が激しく揺れた

日没19時30分―――ゆっくり飛行隊初の夜間戦闘の火蓋が切って落とされた・・・

「ゆぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「「ゆぎゃぁ!!」」
「「どずううううううううう!!どぼじだのおおおおおおおお!!!???」」
森を揺るがすほどの大声が響きわたる
ドスまりさの声に驚き鳥が一斉に林から飛び立つ
頭をかすめて帽子を穴だらけにしたれいむの放った機関砲は、ドスまりさの頭頂部の髪の毛の一部と皮膚ごと帽子一部、そして中で眠っていたゆっくり達の大部分をバラバラに吹き飛ばした
数発の弾丸が体を貫通しており、あんこが少量流れ出た、その時の痛みでドスまりさは大声を上げたのだ
ジェット機の様な轟音で叫びつつけあたりの木々を巻き込んでのたうち回るドスまりさ
「「ゆぎゃああ!!!」」
「「ゆびゅぅぅ!?」」
周りで寝ていたゆっくり達を100匹以上を巻き込みつぶしてしまうドスまりさ
「むきゅううう!?ドス!落ち着いて!」
残ったまりさの髪の毛にしがみ付いた群れのブレーンであるぱちゅりーが必死に叫ぶ
あたりのゆっくりは林の中心部へと避難していった
暫くして息を整えたドスは上空を旋回する3つの光に気がついた
「むきゅ!あのほしさんがどすとなかまをころしたのよ!」
状況を把握したぱちゅりーがドスにそう叫ぶ
「ゆううううううう!!よぐもおおおおお!!!!」
咀嚼をした後、大きく口を開いて狙いを定めるドス
一番低くを飛んでいた光に狙いをつけ、ドススパークを放った
光はドススパークの光にかすったかと思うとオレンジ色に火を吹いた

「ゆあああああ!!13番機!まりさあああ!ドススパークにあたった!操縦不能!不能!」
けたたましく警告音が鳴り響き、バランスを崩してグルグルと視界が入れ替わっていく
必死に脱出レバーを引くがドススパークから引火し火が回ってしまい脱出装置が壊れてしまったようだ
「こ、こんな時にッ!ゆ―――」
ガチャガチャと何度もレバーを引く、そうして機体が空中で爆発した
機銃を放った後上昇したので、高度約15mで爆発した機体は火を噴きながら飛散していく
「「れいむ!!」」
まりさとみょんが声を上げた
まりさは通信機を操作して加工所へ連絡をつける
「加工所!加工所!こちら13番機!れいむが!14がやられた!援軍を!」
「このおおおお!よくもれいむを!ドゲスめ!」
「待て!待て!15番機!みょん!昇れ!昇れ!」
加工所の返事を待たずにまりさの制止を振り切って機体を下降させた
怒りに狂ったみょんの機体が滅茶苦茶に林に向かって掃射した


「星」を一つ落として上空を見まわすドスまりさ
残り二つの星の内一つがまたオレンジ色の何かを吐き出す
狙いはめちゃくちゃで逃げ遅れたゆっくり達にあたって行った
「ゆぴゅ!!」
「「ゆゆ!!おぎゃぁぁしゃあああ…びゅぅぁああ!!」」
「れいぶううううううう!!ゆびょぉ!!」
「いだいいいいいいいいい!!あでぃずのあんよがああああ!!!」
「ゆぎゅああああ!!なにもみないよおおおおおおおお!!!」
あたりは阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた
口の中にわが子を入れ、跳ねて逃げていたれいむは機関砲弾にあたって口の中の子供ごとボロクズの様になって地面に横たわった
父だったまりさも跳ね返った小石で頭の左半面を吹き飛ばし物言わぬ饅頭となった
また、あるありすは木にあたって飛散した小枝で底面の部分を刺し貫かれた
あるれいむは飛んできた小枝に目をやられた
それでも叫びながら必死に仲間が集まる林の中心部へと駆けていく
ドスがきっとゆっくりできないあの星をドススパークでやっつけてくれる―――
そう信じて息をひそめていた

一方ドスまりさはと言うと痛む頭にぱちゅりーを乗せ、石を大量に口に含んでいた
星が過ぎ去ってこちらに戻ってくるまで約10秒、持てる限りを尽くして土だろうが小枝だろうが構わず口に入れていく
「むきゅ!どす!ほしさんがきたわ!うしろよ!」
頭の上で位置を探り続けているぱちゅりーが叫んだ
ドスはぐるっと後ろを向いて上を向いた星が低い位置から大きくなっていく
そうして口の中に詰めた石を一気に噴き出した
「ぶふうううううううううううう!!」
凄まじい速度で石や枝、土の塊がみょんのP-⑨Aに向かってショットガンの様に飛んで行った

「わあああああああ!!」
大量の石やら何やらが飛んできてみょんの乗った機体に飛んできた
風防が割れ、石と割れたガラスがみょんにむかって飛び込んでくる
夜間飛行のためバイザーをしていなかったみょんの目にガラスが突き刺さる
「ゆぐぁ!目が!まりさ!目ぇやられた!」
「みょん!機を水平に戻すんだ!落ちる!落ちてる!」
「わがらないよぉぉお!ばりざあああ!どっちが上がどっぢが下がああああ!!」
視界を失いパニックになるみょん、石が当たったエンジン部分から黒い煙を噴き出し始めたかと思うと一瞬ガスッと音がしたかと思うと一瞬プロペラの動きが止まった、その時の揺れがみょんをさらに混乱させた
「ゆぁぁぁ!飛ば!飛ばじでぎだぁ!ごのぉぉ!!」
あさっての方向に機銃をばらまく、街の方へと発砲し始める、
「やめろ!街に向かって撃ってるぞ!みょん!ドスは暫く攻撃できない!こっちの指示に従え!」
「ゆ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
やがて機銃をすべて打ちつくすと、大声で叫びながら機体は煙をあげてグラグラと激しくがたつきながら、林を少し離れた南側の空地に墜落した
「みょん!」
「13番機、こちら10番機、これより11番機と共に餡子凝固剤を散布する、ドスまりさを林の外までおびき出してくれ」
2機のF-⑨Aがまりさの機体の左斜め上空を通過する、遅すぎる援軍だ
喉の奥から絞り出すように返事をすると、すぐにまりさは機体翻しギリギリの低高度で旋回を開始した

「むきゅ!ドス!もういちがばれてるわ!みんなといっしょにいったんまちのほうへにげましょ!」
「ゆうううう!わかったよ!みんなああああ!どすのところにあつまってねえええええ!」
ドスまりさは大声で避難している仲間に呼びかける
林自体は小さく、すぐに残りのゆっくり全てがあつまった
数は150ちょっと、さらに半数がケガをしている、殆どがドスがのたうち回った際に踏みつぶされており、その後みょんの機銃掃射で50匹程度のゆっくりがやられた
「むきゅ!どす!くちのなかとぼうしのなかにぜんぶのゆっくりをひなんさせるのよ!」
「ゆゆ!わかったよ!みんな!どすのおくちのなかとぼうしのなかにゆっくりはいってね」
不安を口にしながらドスの口の中に入っていく、口の中に入りきらなくなったら帽子の中にもぐりこんでいった
こうしてすべてのゆっくりの収容を終えたドスはすでに傷がふさがった体を大きく跳ねさせて林の外へ出た後、街の方へ全速力で跳ねていった

ライトをつけて林の外へ出たドスまりさを照らしながら低空を低速で旋回するまりさ
帽子の真中にぽっかりと穴が開いていた、その中からビッシリと蠢くゆっくり達が見える
「10番、11番、目標は林の外には出たがゆっくりを口の中と帽子の中に入れてるようだ、口の中と帽子の中のはドスが動けなくなると逃げるぞ」
「こちら10番機、了解、なんとかあの帽子の上部分を吹き飛ばしてくれ、K11、お前はその後口から出て逃げるゆっくりに凝固剤を投下しろ、いいな?」
「11番機、了解」
「13番機、攻撃を開始する」
まりさは機体を傾けてドスの方へと機首を向けてアビオニクスを操作し火器管制コンピューターを切り替える、
機体を右に傾けてドスの帽子の真ん中より少し下に狙いをつけてスティックを引きながらトリガーを引いた
バババっと音がした後、横一文字に発射された弾丸は見事ドスまりさの帽子の上部の殆どを吹き飛ばした
「ゆがあああああ!?ごわいよぉぉおおお!!」
「むきゅ!だいじょうぶよ!どすがなんとかしてくれるわ!」
「ゆっへっへ!いざとなればどすをおとりにしてにげるんだぜ!」
間髪入れずに10番機が翼下につるしていたポッドから凝固剤を霧状に散布する、ドスはそれを受けてもなお暫く跳ね続けていたがやがてグネグネと体を動かすことしかできなくなって止まってしまった
「ゆ"!ゆ"!がらだがおぼいよぉぉぉ・・・!おぐぢのながのみんな・・・ゆっぐりにげでね・・!」
なんとか口を開け、中のゆっくりを逃がすドスまりさ、ひと固まりになって街へ逃げ出すゆっくり達の上に今度は11番機が凝固剤を散布した
「「ゆぐぐぐ・・・」」
固まりになったまま身動きが取れなくなるゆっくり達、成功したようだ

「…13番機より加工所へ、ドスまりさとその群れは凝固剤で一時的に身動きが取れなくなった、トラックとヘリの手配を、こちらはもう燃料がないので先に引き揚げさせてもらう」
了承を得てそのまま月が光る夜空を飛行していく…総出撃数5機 未帰還数は2機―――

「何してるんだ?」
滑走路の外れに木切れを突き立てているまりさを見て加工所職員は声をかけた
「墓を建ててるんだ」
「あのみょんとれいむのかい?」
「うん」
加工所の職員が何かを話そうとしたとき遮るようにヘリコプターに吊るされたドスまりさが加工所の敷地に降り立った
凝固剤の作用が切れたようで体をグネグネと動かしながら抵抗を続けてた

「ばなぜえええええええ!!」
「うわ!こいつ動くぞ!注意して作業をしてくれ!」
加工所の職員が動きを完全に封じるために大型のバーナーで数人がかりで底部を焼いていく
「ゆぎゃあああああああ!!!ばりざのあんよがああああ!!!あづいいいいい!!!あづいいいいいいいいい!!!」
汗をダラダラとかきながらグロテスクにグネグネと動かすドスまりさ
別の加工所の職員は弱らせるために数人がかりで細長い杭を体中に突き刺した
「ゆべぇぇぇぇええ!!いだいいいいいいいいい!!!ぬいでええええええ!!!」
「この!まだ抵抗するぞ!もっと持ってきてくれ!」
「ゆぐぇぇぇぇぇえ!!!だずげでぐだざいいいいい!!ぼがのゆっぐりはわだずがらばりざだげはだずげでえええ!!!」
暫く大声で喚き散らしていたが、20本近く杭を刺されてようやく大人しくなったドスまりさ
そのまま加工所内へ運ばれていく

その光景を見ながらまりさは加工所職員に呟くように尋ねた
「そういえば、あのドスと群れのゆっくり達はどうなるんだろう?」
「ドスはデカいからなぁ、多分研究用になるんじゃないか?あとのゆっくりは繁殖用か食品加工用か…肥料用だな」
「どっちみち助からないって訳か…」
「しかしなんで人里近くまで降りてきたのかね?」
「大方、群れがでっかくなって無計画にあたりの物を食い散らかしたから食い詰めて降りてきたんだろうな」
「ドスになれば一人で暮らせるんだろ?何で群れを作るんだろうな…」
「一人でいたくても噂を聞きつけた他のゆっくりが集まるからさ、ご丁重にぱちゅりーが参謀役についてね」
タバコを取り出して火をつけながら職員はこう言った
「断ればいいのに」
「断れないよ、ドスにはね」
「ふぅん…ゆっくりの気持ちは人間にはよくわからんよ…」
そう言われてまりさはゆっくりと陽炎が立ちこめる滑走路をぼんやりと見ながらこう答えた
「こっちだって人間の考えてる事はわからないよ」

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最終更新:2022年05月03日 20:33